【ラブライブ!×伝説巨神イデオン】伝説ラブライブ! イデオン ~サンライズ50周年記念・因果の地平へ~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
暗い雨の夜、ドローンの電磁ノイズによってロケバスの照明と電子系統は完全に停止していた。
雨粒が鉄板を打ち叩く無機質な音と、車内に充満する少女たちの荒い吐息。
暗闇の中、私のスマートフォンだけが、残量わずかなバッテリーの灯火を淡く放っていた。
「ねえ……どうするのよ、これ……」
真姫ちゃんが膝を抱え、掠れた声で呟く。
画面に表示されている銀行アプリの口座残高。
そこに刻まれていた数値は、182円だった。
ガソリン代、高速料金、日々の粗末な食費。
そして何より、本家からの追撃をかわすために全国の裏演芸場や地下ライブハウスへ支払ってきた興行の手打ち金の滞納分。
私たちの手持ちの資金は、完全に底をついていた。
「指名手配されてるから、バイトなんてできるわけないじゃない……。親の口座は凍結されてるし……私、私もう、お腹が空いて……っ」
凛ちゃんが自分のお腹をぎゅっと抱きしめ、狭いシートの上で小さく丸まる。
限界だった。
本家(バッフ・クラン)からの執拗な社会的抹殺の包囲網は、私たちの命綱である金を根こそぎ奪い取っていたのだ。
「騒がないでよ、みっともない」
後部座席の暗がりから、にこ先輩の声が響いた。
彼女はスマホの灯りに照らされながら、乱れた制服の胸元にそっと指を滑らせ、不敵な笑みを浮かべていた。
「金がないなら、作ればいいのよ。あたしたちには、まだ世界中の男どもを狂わせる最強の商材があるじゃない」
「え……?」
私が息を呑んだ瞬間、にこ先輩は1台の暗号化された通話アプリを起動させた。
画面に映し出されたのは、裏街の怪しげな地下イベントのブローカー、通称タニマチの男の顔だった。
「おやおや、噂の2代目矢澤にこちゃんじゃないか。本家から破門されて、警察にも追われて大変そうだねぇ」
「無駄話はいらないわ。今すぐ現金の用意ができる裏営業を寄越しなさい。あたしたちを誰だと思ってるの? μ'sの名跡を継ぐ、最高の美少女たちよ?」
「ハハハ! いい度胸だ。ちょうどいい案件があるよ。裏街の怪しげな地下撮影会と、太客の男性たちを相手にした過激な手売り接触チェキ会だ。触らせて、プライベートな連絡先を教えて、密室でサービスすれば……1夜で50万は硬い」
「なッ……!?」
真姫ちゃんの顔から血の気が引いた。
「触らせる……!? 密室でサービスって……そんなの、ただの……身売りじゃないですか!!」
「嫌なら断ってくれて構わないよ? ただし、明日のガソリン代も払えずに警察に御用となるか、本家の連中に捕まって一生を棒に振るかの二択だがね」
ブローカーの嫌らしい笑い声がスピーカーから漏れ出す。
「……受けるわ」
にこ先輩は即答した。
「にこ先輩!? 駄目ですよそんなの! 私たち、スクールアイドルなんですよ!? そんな不潔な真似……っ!」
私が叫ぶと、にこ先輩は激しい勢いで私の胸ぐらを掴み、そのままシートへ押し倒してきた。
顔が急接近する。
汗と甘い香水が混ざり合ったにこ先輩の吐息が、私の唇を濡らす。
「黙りなさい穂乃果! 綺麗事で腹が膨らむ!? 綺麗事のまま本家に頭を下げて、惨めに逮捕されろっていうの!? あたしたちが生き残るためなら……2代目μ'sの名を輝かせ続けるためなら、なんだって売ってやるわよ!!」
にこ先輩の瞳には、狂気と、底なしの自己保存のエゴが燃え盛っていた。
その迫力に押され、私は何も言い返せなくなった。
背筋を駆け抜けるのは、自分たちの尊厳と身体が削り取られていく背徳の悪寒。
(あぁ……私たちはついに、アイドルとしても、人間としても……一線を越えてしまうんだ……)
深夜2時。歓楽街の雑居ビルの地下。
ネオンの怪しい光が落ちる密室で、私たちは裏手売り興行のステージに立たされていた。
集まったのは、ネットの炎上を見て大金を払ってやってきた、歪んだ欲望を瞳に宿した男性客たち。
「うわぁ……本当に本物の高校生だ……」
「写真より可愛いじゃん。おい、もっと近く寄れよ」
衣装は、肌の露出を極限まで高めた、破れかけた音ノ木坂の制服。
客たちの下品な視線が、私の首筋、鎖骨、胸元、そして太ももを舐めるように這い回る。
はい、チェキ撮りまーす。抱きついて、もっと密着して!
ブローカーの指示に従い、男の太い腕が真姫ちゃんの細い腰に回される。
「ひっ……! や、やめて……っ!」
「我慢しなさい真姫! 笑顔を作るのよ!」
にこ先輩が冷たく叱責する。
真姫ちゃんは目元に涙を溜めながら、男の胸元に身体を押し付け、歪んだ笑顔を作った。
男の手が、制服の裾から真姫ちゃんの白桃色の肌へと潜り込んでいく。
屈辱と絶望。
だが、その代償として、私たちの手元には札束が次々と叩きつけられていく。
(あ……あはは……。すごい……お金だ……。これで明日も走れる……にこ先輩と一緒にいられる……っ!)
恐怖と身売りの快楽が脳内で混ざり合い、私の感覚は狂っていった。
生き延びるためなら、愛されるためなら、自分の身体なんていくらでも切り売りしてやる。
狂気の燃料が、乙女たちの不潔な堕落と引き換えに、どろりと燃え上がっていく。
「さあ! 次の客よ! もっと金を出しなさい!!」
にこ先輩が札束を握り締め、胸元に抱き抱えながら叫んだ、その時だった。
バリーンッ――!!!
密室の強化ガラスが、外部からの強烈な打撃によって粉々に砕け散った!
きゃああああっ!?
煙と悲鳴が充満する現場に、ゾクッとするほど冷たい足音が響く。
集まった男性客たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、姿を現したのは――。
黒のフォーマルなスーツに身を包み、冷酷な眼差しで私たちを見下ろす、2年生の本家幹部――絢瀬絵里、園田海未、南ことりだった。
「……ここまで落ちぶれましたか、不法者たち」
海未先輩の声には、吐き気を催すほどの蔑みと、絶対的な正義の怒りが込められていた。
「身体を売り、男たちに肌を触らせ、金を貪る……。それがあなたたちの言う新しい輝きですか? 淫乱な面汚しどもめ!」
「絵里……海未……っ! なんでここが……!?」
にこ先輩が札束をかばうように後ろへ下がる。
絵里先輩がゆっくりと歩み寄り、床に落ちていた手売りチェキを足蹴にした。
「あなたたちの情報、警察と報道陣にすべて提供させてもらいました。……2代目μ's、裏風俗営業で現行犯逮捕。明日、全国のテレビとネットで放映されます」
「な……ッ!???」
真姫ちゃんが絶叫し、その場に崩れ落ちた。
「あなたたちの尊厳も、スクールアイドルとしての未来も、今日この場所で永久に終わりです。……自業自得よ」
カメラを持った報道陣と、警察官たちが一斉に踏み込んでくる!
社会的抹殺の完璧な罠!
絶体絶命の密室で、にこ先輩が血走った目で懐から取り出したのは――本家幹部たちの決定的な性スキャンダルが保存された暗号化USBメモリだった。
「終わるのはあんたたちよ本家ぇぇぇぇっ!!」
にこ先輩がメモリを壁の大型モニターに叩きつけた瞬間――狂乱の映像が室内とネット空間へ一斉に暴発した!
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