【ラブライブ!×伝説巨神イデオン】伝説ラブライブ! イデオン ~サンライズ50周年記念・因果の地平へ~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
大型モニターに映し出された、裏取引とスキャンダルの映像。
ネットへ拡散された暴露データの残光が、雑居ビルの密室を青白く染めていた。集まっていた男たちは逃げ惑い、報道陣のフラッシュが狂ったように焚かれている。
しかし、本家幹部の絵里先輩、海未先輩、ことり先輩は一切動じなかった。
「それが、あなたたちの最後の悪あがきですか?」
海未先輩が、モニターなど存在しないかのように歩み寄る。
「自分たちの危険な裏営業を棚に上げ、出所不明の情報で本家を貶める。どこまで腐敗すれば気が済むのですか、高坂穂乃果」
「捏造なんかじゃ……!」
私が反論しようとした瞬間、その鋭い眼差しに言葉を封じられた。
「名前を売り、生活をつなぐためなら、どんな相手にも笑顔を売る。あなたたちがしていることは、もはやスクールアイドルではありません」
「生き残るためにやってるのよ!」
にこ先輩が札束を抱え直して怒鳴る。
「綺麗事だけで、あたしたちは生きていけないのよ!」
絵里先輩が冷ややかに前へ出た。
「生き残るため? 笑わせないで。伝統を守る努力もせず、本家の許しも得ずに名を使い、裏営業でお金を稼ぐ。あなたたちが汚しているのは、先代が築いたμ'sの歴史そのものよ」
その傍らで、花陽ちゃんは何台もの端末を抱えていた。
暴露データの拡散経路を確認していた指が、絵里先輩の言葉を聞くたびに震えていく。
「花陽ちゃん。その端末を置いて」
ことり先輩が静かに告げた。
「真姫ちゃんも、凛ちゃんも、穂乃果ちゃんも。そんな方法で得たお金や注目を、本当に誇れると思っているの? 家族が知ったら、どれほど悲しむか考えたことはある?」
「あ……あぁ……」
真姫ちゃんが両耳を塞ぎ、床へ座り込む。
花陽ちゃんも端末の画面を伏せた。
「私たちは……ただ、記録を消されたくなかっただけです」
「だからといって、何をしても許されるわけではありません」
海未先輩の言葉に、花陽ちゃんは何も返せなかった。
凛ちゃんが不安そうに花陽ちゃんの袖をつかむ。
「かよちん、もうやめよう……」
花陽ちゃんは凛ちゃんの手を握ったが、端末を手放そうとはしなかった。
そこには逃走中の記録だけでなく、本家側の通信履歴や、私たちが存在していた証拠が保存されている。
「これを渡したら、私たちの言葉まで全部消されちゃう……」
「小泉。それは記録ではなく、あなたたちが相手を脅すために集めた武器です」
海未先輩の指摘に、花陽ちゃんの表情が歪んだ。
先輩たちが突きつけるのは、逃げ道のない正論だった。
私たちの生きる理由も、必死に守ってきた誇りも、正義という刃が切り捨てていく。
私たちは間違っている。
世間からも一門からも見捨てられた、逃亡者にすぎない。
それでも、ここまで耐えてきたものをすべて無意味だと認めることだけはできなかった。
「お静かに」
海未先輩は捜索差し押さえ許可状と、即時連行同意書を取り出した。
「これより、不法襲名および違法興行への関与の疑いで、あなたたちを拘束します」
警察官と報道陣が距離を詰める。
カメラが私たちへ向けられ、逃げ惑っていた男たちは壁際へ追い込まれていく。
万事休す。
お金も、隠れ家も、社会的な居場所も奪われた。
絶対正論の前に、私たちは完全な敗北を喫したのだ。
「花陽、データを守りなさい」
にこ先輩が低く命じた。
「でも、もう……」
「いいから持ってなさい!」
花陽ちゃんは怯えながらも、端末を胸へ抱え込んだ。
そのとき、にこ先輩の高笑いが響いた。
「正論? 伝統? 冗談じゃないわよ!」
札束を警察官へ投げつけ、古びた発煙筒を取り出す。
次の瞬間、猛烈な赤煙が密室を覆った。
「煙が……! 視界を確保してください!」
悲鳴と怒号の中、にこ先輩が私の腕を引く。
「走るわよ! 一年生たち、立ちなさい!」
「花陽ちゃん、真姫ちゃんをお願い!」
花陽ちゃんは端末を鞄へ押し込み、崩れた真姫ちゃんの腕を肩へ回した。凛ちゃんも反対側から真姫ちゃんを支える。
「真姫ちゃん、歩いて! ここにいたら捕まっちゃうよ!」
「もう……どうでもいいわ……」
「駄目だよ! 一緒に逃げるの!」
私たちは煙に巻かれた警察官や報道陣の間を抜け、非常階段へ走った。
背後から海未先輩の怒声が響く。
「逃がしません! どこへ逃げても、必ず責任を取らせます!」
階段を駆け降り、雨の歓楽街へ飛び出す。
その瞬間、花陽ちゃんの端末が警告音を鳴らした。
「ロケバスの位置に、複数の大型車両が集まってる!」
路地の先へ出た私たちは、そこで足を止めた。
唯一の家だったロケバスが、大型レッカー車に押し潰され、激しい炎を上げていた。
「あ……私たちのバスが……!」
真姫ちゃんが悲鳴を上げる。
花陽ちゃんは端末を握り締めたまま、炎を見つめていた。
画面には、辛うじて保存された通信記録と暴露データだけが残っている。
「これだけは……消させない」
花陽ちゃんが、泣きながら端末を胸へ抱いた。
退路は完全に断たれた。
雨の歓楽街へ、追撃のサイレンと本家幹部たちの足音が容赦なく迫っていた。
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