TSした俺は爆乳美少女 ~爆乳お姉さんたちに愛される百合ハーレム迷宮譚~ 作:TS百合好き
作者の性癖を詰め合わせた作品です。
評価・感想お待ちしております。
迷宮王国の朝は早い。
世界各地から探索者や商人が集まるこの国では、日の出とともに商店が開き始め、街のあちこちから荷車の軋む音や人々の威勢の良い声が聞こえてくる。特に迷宮の入口へと続く大通りは、朝から探索の準備を整えた者たちで賑わっており、これから一日の仕事へ向かう人々の活気に満ちていた。
そんな迷宮都市の一角、大通りから少し離れた場所に、一軒の宿屋が建っている。
決して豪華というわけではないものの、清潔な客室と美味しい料理、そして何より女性客でも安心して泊まれる環境が評判の、なかなか繁盛している宿屋だった。
「レインちゃん、おはよう!」
「おはよう、ミア。今日も朝から元気だね」
朝食を終え、食堂の一角で荷物を確認していた少女は、背後から聞こえてきた明るい声に振り返ると、柔らかな笑みを浮かべた。
年の頃は十代の終わり。腰の辺りまで流れる美しい栗色の長髪を持ち、その一部は白いリボンで留められた可愛らしい編み込みになっている。長い睫毛に縁取られた琥珀色の瞳は宝石のように澄み、整った目鼻立ちと柔らかな唇は、街中を歩けば誰もが振り返るほどの美貌を形作っていた。
身長は百五十四センチと小柄で、華奢な肩や細い腰、すらりと伸びた脚など、全体的には可憐な少女といった印象を受ける。
ただし、その胸元だけは例外だった。
小柄な身体にはあまりにも不釣り合いなほど豊かな胸は、専用に仕立てられた探索服と補助具によってしっかりと支えられている。それでも隠しきれない圧倒的な存在感は、華奢な体格との対比もあって、いっそう際立っていた。
彼女の名前はレイン。十九歳という若さながら、迷宮王国で探索者として活動している少女である。
「だって、今日はレインちゃんたちが迷宮に行く日でしょ? 朝からしっかり食べてもらわないとね!」
そう言って笑うのは、宿屋の看板娘であるミアだった。
淡い桃色の髪を顎の辺りで切り揃えた、愛嬌のある顔立ちの美女である。年齢は二十一歳。宿屋の仕事で培われた手際の良さと、誰に対しても分け隔てなく接する明るい性格から、宿泊客たちにも大いに慕われていた。
彼女自身も非常に女性らしい体型に恵まれており、食堂を歩けば男性客の視線を集めることも珍しくない。しかし、当の本人はそうした視線にも慣れているらしく、普段は特に気にした様子もなく、いつもと変わらない笑顔で仕事をこなしている。
「そういえば、レインちゃん。朝ご飯は足りた? おかわりもあるよ?」
「ううん、もう十分だよ。いつもありがとう。今日のスープも美味しかった」
「えへへ、そう? 実は今日の味付け、ちょっと変えてみたんだよね!」
「そうなんだ。いつもより香草の香りが良かった気がする」
「わっ、気づいてくれたんだ! 嬉しいなあ!」
嬉しそうに笑うミアを見て、レインも自然と頬を緩めた。
この宿屋の料理が美味しいのは今に始まったことではないが、こうして少しの変化にも気づいて褒めてくれる客というのは、料理を作る側にとっても嬉しいものらしい。
もっとも、ミアがレインに対して特に親しげなのは、単に宿泊客だからという理由だけではなかった。日頃から何かと顔を合わせる機会が多く、今では気兼ねなく冗談を言い合える程度には親しい間柄になっていたのである。
「あら、レインちゃん。もう出かけるの?」
「はい。今日は少し下の階層まで行く予定なんです」
「まあ、そうなの。気をつけてねえ。昨日は荷物を運ぶのも手伝ってもらっちゃったし、いつもありがとうね」
「いえいえ。あれくらいなら大したことありませんから。また何かあったら言ってください」
近くの席から声をかけてきた年配の女性に、レインがにこやかに応えると、それを聞いていた別の女性客も会話に加わってきた。
「レインちゃんって、本当に親切よねえ。昨日も廊下で困っていたお客さんを手伝ってあげていたでしょう?」
「それに、あんなに可愛いのに探索者としても優秀なんですってね。うちの娘にも見習わせたいくらいだわ」
「あはは……そんな、大げさですよ」
次々と褒められ、レインは少し困ったように笑った。
見た目こそ小柄な美少女だが、レインはもともと困っている人を放っておけない性格だった。
宿屋で重い荷物を運んでいる人がいれば手伝うし、小さな子供が迷子になっていれば、一緒に親を探してやる。そうした行動は本人にとってごく当たり前のことであり、特別なことをしているという意識はない。
しかし、何気ない親切も積み重なれば自然と周囲へ伝わっていくもので、今では宿泊客たちの間でもすっかり人気者になっていた。
「……本当に、あんたは相変わらずね」
そんな様子を少し離れた席から眺めていた女性が、呆れたような、それでいてどこか嬉しそうな声を漏らした。
赤茶色の髪をポニーテールにまとめた、緑色の瞳を持つ美女。レインよりも背が高く、動きやすさを重視した探索服に身を包んだ彼女は、すでに出発の準備を整えていた。
名前はリオナ。二十歳の探索者で、レインとは一年半以上もパーティーを組んできた。今では誰よりも気心の知れた相棒である。
「相変わらずって、何が?」
「誰にでも親切なところよ。昨日だって、自分の準備がまだ終わってないのに、ほかの人の荷物を運んでたでしょう?」
「でも、困ってたんだから仕方ないじゃないか。準備だってちゃんと終わったし」
「まあ、そうなんだけどね……」
リオナは小さく肩をすくめた。
何か言い返そうとして、結局は言葉を飲み込んだらしい。そんな二人の様子を眺めていたミアが、くすくすと笑いながら口を挟んだ。
「リオナちゃん、そういうレインちゃんのこと、結構好きだもんね?」
「……は?」
「あれ? 違った?」
「ちょ、ちょっと! 変な言い方しないでよ!」
「えへへ、冗談だってば!」
「絶対わざとでしょ、あんた!」
顔を赤くして抗議するリオナに、ミアは悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべている。
レインはそんな二人を交互に見つめ、思わず苦笑した。最近ではすっかり見慣れた光景になりつつあるが、二人とも仲が良いのは結構なことだと思う。
「ほら、レイン。そろそろ行くわよ。カトレアさんを待たせちゃうでしょ?」
「あ、もうそんな時間? 分かった。じゃあミア、行ってくるね」
「うん! ……あっ、ちょっと待って!」
椅子から立ち上がり、荷物を背負おうとしたレインを、ミアが慌てて呼び止めた。
「どうしたの?」
「えっとね……これ!」
ミアが差し出したのは、小さな包みだった。
中には焼き菓子が幾つか入っているらしく、包み紙の隙間から甘い香りが漂ってくる。
「休憩のときに食べてね。今朝焼いたばっかりだから!」
「わあ、ありがとう。ちょうど何か甘いものを持っていこうと思ってたんだ」
「本当? よかった!」
嬉しそうに笑ったミアは、レインが包みを受け取ると、その手を両手で包み込んだ。
「……それとね、レインちゃん」
「うん?」
「今日もちょっと深いところまで行くんでしょ? 無理だけはしないでね。怪我しちゃ駄目だよ?」
先ほどまでの明るい声音とは違う、少しだけ真剣な声だった。
レインが顔を上げると、ミアはすぐ近くから心配そうに見つめていた。普段は悪戯好きで、何かとからかってくる彼女だが、こうしたときに向けられる表情には冗談めいたものが一切ない。
迷宮へ向かう探索者が、必ず無事に帰ってこられるとは限らない。宿屋で働くミアは、そのことを誰よりもよく理解しているのだろう。
「……大丈夫だよ。リオナもいるし、今日はカトレアさんも一緒だから」
「うん。でも、レインちゃんって時々無茶するんだもん」
「あはは……気をつけるよ」
「……絶対だからね? ちゃんと帰ってきてね」
ミアは念を押すように、レインの手をきゅっと握った。
その真剣な眼差しに、レインは一瞬だけ言葉を失ったものの、すぐに柔らかな笑みを返す。
「もちろん。また夕飯を楽しみにしてるから」
「……うん!」
ぱっと表情を明るくしたミアは、ようやく手を離した。かと思えば、すぐにいつもの悪戯っぽい笑顔へと戻る。
「それじゃ、帰ってきたら今日の焼き菓子の感想、じっくり聞かせてもらうからね!」
「分かった分かった。楽しみにしてて」
「はーい! いってらっしゃい、レインちゃん!」
「いってらっしゃい。気をつけてねえ!」
「無事に帰ってきてくださいね!」
ミアだけでなく、食堂にいた女性客たちからも次々と声をかけられ、レインは少し照れくさそうに笑いながら手を振った。
「はい! いってきます!」
そうしてリオナと共に宿屋を出ると、朝の柔らかな日差しが二人を迎えた。
◇ ◇ ◇
宿屋から探索者ギルドまでの道のりは、それほど遠くない。
大通りを通れば人通りが多く、多少時間はかかるものの、朝から営業している店を眺めながら歩くのは悪くなかった。通り沿いには焼きたてのパンを並べる店や、探索者向けの道具を扱う商店が軒を連ね、威勢の良い客引きの声があちらこちらから聞こえてくる。
もっとも、レインの場合は道中で顔馴染みから声をかけられることも多く、なかなか真っ直ぐには目的地へ辿り着けないのだが。
「おっ、レインちゃん! おはよう!」
「あ、おはようございます!」
「今日は迷宮かい? 気をつけてな!」
「ありがとうございます。そちらもお仕事頑張ってくださいね!」
通りを歩いていると、顔馴染みの商人から次々と声がかかり、レインはそのたびに笑顔で応えた。時には立ち止まって二言三言、世間話を交わすこともある。
「あら、レインちゃん! 昨日はありがとうねえ!」
「いえいえ。あれから荷車の調子はどうですか?」
「おかげさまでばっちりよ。今度何か買うときは、ちょっとおまけしてあげるからね!」
「本当ですか? それは嬉しいです!」
露店の女主人と楽しそうに会話を交わすレインを、リオナは少し後ろから眺めていた。
「……あんた、本当に顔が広いわね」
「そうかな? ここに来てから結構経つし、自然と知り合いも増えるでしょ」
「それにしたって多すぎると思うけど……」
呆れたように言いながらも、リオナの表情は柔らかかった。
付き合いの長いリオナには、レインが街の人々に慕われる理由がよく分かっていた。時には世話を焼きすぎると思うこともあるけれど、困っている人を見過ごせないその性分を、彼女は嫌いではなかった。
そして、そんなことを考えていた矢先だった。
「あっ……!」
少し先の通りで、荷物を運んでいた年配の女性が小さな悲鳴を上げた。
どうやら抱えていた籠の持ち手が外れてしまったらしく、中に入っていた果物が石畳の上へ転がっていく。
「わっ、大変!」
それを見たレインはすぐさま駆け寄り、転がってきた果物を拾い始めた。
「大丈夫ですか? 怪我はありません?」
「ああ、ありがとうねえ。いやあ、急に持ち手が外れちゃって……」
「気にしないでください。拾うの、手伝いますから」
そう言って微笑むと、レインは散らばった果物を手際よく集めていった。
リオナもすぐに加わり、二人で協力して籠の中身を元へ戻していく。幸い、傷んでしまった果物はほとんどなく、すぐに片づけは終わった。
「よし、これで全部かな。あ、持ち手は……やっぱり壊れちゃってますね」
「そうなのよ。どうしたものかしらねえ」
「それなら、ひとまず紐で固定しておきましょうか。ちょっと待ってくださいね」
レインは荷物の中から予備の紐を取り出し、壊れた持ち手を手早く補修した。
探索者として活動していれば、荷物をまとめるための紐が必要になることも多く、簡単な応急処置はすっかり手慣れたものになっている。最後に軽く力を加えて強度を確かめると、レインは籠を持ち上げ、女性へ手渡した。
「これでしばらくは大丈夫だと思います。でも、帰ったらちゃんと直してくださいね」
「まあまあ、何から何までありがとう。可愛いだけじゃなくて、本当に頼りになるお嬢さんだねえ」
「あはは……ありがとうございます」
嬉しそうに何度も頭を下げる女性を見送り、レインがリオナのもとへ戻ると、彼女はなぜか少し楽しそうな顔をしていた。
「……何?」
「別に? あんたって本当に変わらないなと思っただけ」
「またそれ?」
「ええ。見た目がどうだろうと、そういうところは昔から一緒よね」
「……まあ、人助けするのに見た目は関係ないからね」
「ふふっ。そうね」
リオナはそれ以上何も言わず、レインの隣へ並んで歩き始めた。
その横顔には、どこか誇らしげな笑みが浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
探索者ギルドの建物へ到着する頃には、朝の賑わいも一段と大きくなっていた。
依頼を受ける探索者や、前日の戦利品を持ち込む者たちが行き交い、広い建物の中には活気のある声が響いている。受付の前にはすでに何人もの探索者が列を作り、依頼の掲示板の周囲にも人だかりができていた。
「おっ、レインちゃんじゃないか! 今日も可愛いねえ!」
入口付近で仲間と話していた男性探索者が、こちらへ気づいて片手を上げた。
何度か仕事を共にしたことのある顔馴染みで、気さくな性格の男である。
「もう、またそれですか? そろそろ勘弁してくださいよ」
「ははは! 可愛いものは可愛いんだから仕方ねえだろ!」
「はいはい、ありがとうございます。そちらも今日は探索ですか?」
「おう! ちょっと稼ぎに行ってくるところだ。お互い気をつけようぜ!」
「ええ。お気をつけて!」
レインはにこやかに手を振り返し、その場を離れた。
しかし、隣を歩いていたリオナは、なぜか少し不機嫌そうだった。
「……あいつも、毎回毎回よく飽きないわね」
「何が?」
「何がって……あんたを可愛い可愛いって褒めることよ」
「まあ、悪気があるわけじゃないし……」
「そうでしょうけど」
リオナは何か言いたげに口を開いたものの、結局は小さくため息をついただけだった。
そんな相棒の様子を不思議に思いながら、レインがギルドの奥へ目を向けると、受付から少し離れた場所に見覚えのある女性が立っていた。
深い翡翠色の髪を緩やかに波打たせ、その一部を片耳へ掛けた、黄金色の瞳を持つ気品に満ちた美女である。
白と金を基調とした神官服は清楚な印象を与える一方、身体の線に沿った仕立てや、動きやすさを考慮して設けられたスカートの切れ込みが、どこか艶やかな雰囲気を醸し出していた。
整った容姿と柔らかな微笑みは、まさしく慈愛に満ちた聖職者といったところだろう。
少なくとも、何も知らない者が見れば。
「あっ、カトレアさん!」
レインが声をかけると、女性はすぐにこちらへ気づき、花が咲いたような微笑みを浮かべた。
「おはようございます、レインさん。リオナさんも」
「おはよう、カトレアさん。待たせちゃった?」
「いいえ。私も先ほど来たところですから。……それにしても」
「ん?」
カトレアはレインの顔をじっと見つめると、少しだけ目を細めた。
「ふふっ。今日もとてもお綺麗ですね、レインさん」
「……えっ?」
「髪も綺麗に整えられていますし、その白いリボンもよくお似合いです」
「そ、そうかな? ありがとう」
突然の褒め言葉に、レインは少し照れたように頬を緩めた。
彼女の名前はカトレア・ヴェルディス。年齢は二十一歳。
神聖術を扱う戦闘神官であり、現在はレインたちとパーティーを組んで迷宮へ潜っている、頼れる仲間だった。
優れた治癒の技術と落ち着いた判断力を持ち、戦闘中には仲間の安全を第一に考えて行動する。仲間として非常に頼もしい存在であることは間違いないのだが、レインにとっては少々困ったところもあった。
「あら……レインさん。少し失礼いたしますね」
「え? どうしたの?」
「髪飾りが少しだけ曲がっています。直して差し上げましょう」
カトレアはそう告げると、ごく自然な動作でレインへ近づいた。
身長差のある彼女に促されるまま、レインが少しだけ頭を下げると、カトレアは細い指先で白いリボンへ触れ、丁寧に位置を整え始めた。
「……はい。これでよろしいですね」
「あ、ありがとう、カトレアさん」
「ふふっ。どういたしまして」
そこで終わっていれば、何の問題もなかっただろう。
しかし、カトレアはすぐには離れなかった。それどころか、レインの耳元へそっと顔を寄せると、周囲には聞こえないほどの小さな声で囁いたのである。
「……それにしても、本当に可愛らしいですね。こうして近くで拝見すると、つい見惚れてしまいます」
「……っ!?」
耳元をくすぐる甘い声に、レインは思わず肩を跳ねさせた。
「か、カトレアさん!? ちょっと、近いって!」
「あら。失礼いたしました。……お嫌でしたか?」
「い、嫌っていうか……そういうことを急に言われると、びっくりするから!」
「ふふっ。そうでしたか」
カトレアは穏やかに微笑みながら、ようやく一歩離れた。
しかし、その黄金色の瞳にはどこか楽しそうな光が宿っており、どう考えてもこちらの反応を楽しんでいるとしか思えない。
レインがそう確信したところで、隣から少し低い声が響いた。
「……カトレアさん?」
「あら、リオナさん。どうかなさいましたか?」
「いえ。そろそろ依頼の確認をしたいので、準備を進めませんか?」
「もちろんです。私もそのつもりでしたよ?」
「……そうですか」
にこにこと微笑むカトレアに対し、リオナの笑顔はどこか引きつっていた。
そして次の瞬間、彼女はレインの手を取ると、そのままぐいっと引き寄せた。
「ほら、レイン。行くわよ!」
「わっ!? ちょ、ちょっとリオナ!?」
突然のことに驚いたレインは、慌てて足を踏み出した。
不意に引っ張られたことで小柄な身体が前へ傾き、専用の装備に支えられた豊かな胸元が、動きに合わせて揺れる。
もっとも、レインも今では、不意に手を引かれた程度で足をもつれさせないくらいには、新しい身体の扱い方を覚えていた。しかし、その何気ない動きに、近くにいた一人の若い男性探索者が思わず目を奪われていた。
「…………っ!?」
真新しい革鎧を身につけ、手には探索者証を握った青年だった。
先ほどまでは案内板を見ながら落ち着かない様子で周囲を見回していたのだが、レインの姿を見つけた瞬間、ぴたりと動きを止めたのである。
最初は、その整った顔立ちに目を奪われただけだったのだろう。しかし、リオナに引き寄せられた拍子にレインの胸元が揺れると、青年の視線は思わずそちらへ吸い寄せられてしまったらしい。
そして、見てはいけないものを見てしまったとでもいうように、顔を真っ赤にして固まっていた。
「……あ」
その視線に気づいたレインが思わず足を止めると、青年もまた、こちらに気づかれたことを悟ったらしい。
「あっ!? す、すみませんっ!」
慌てて頭を下げる青年に、レインは少し困ったように笑った。
「ううん、大丈夫だよ。でも、あんまりじっと見られると、ちょっと恥ずかしいかな」
「ほ、本当にすみません!」
「ふふっ。気をつけてね。今日が初めての探索?」
「は、はいっ!」
「そっか。最初は緊張すると思うけど、無理だけはしないようにね」
そう言って微笑むと、青年はさらに顔を赤くしながら、何度も頷いた。
その様子を眺めていたリオナが、呆れたようにため息をつく。
「……まったく。あんたも、そんなに愛想よくしなくていいのに」
「え? でも、悪気があったわけじゃなさそうだし……」
「それは分かるけど。……まあ、いいわ」
リオナはそう言うと、握っていたレインの手を離そうとはせず、そのまま歩き始めた。
少し後ろでは、カトレアが口元に手を添えて楽しそうに微笑んでいる。
「ふふっ。レインさんは本当に人気者ですね」
「……カトレアさんまで」
「それだけお美しいのですから、皆さんが見惚れてしまうのも仕方ありませんわ」
「もう……そういうのはいいってば」
「あら。本当のことですのに」
そんな会話を交わしながら、三人は依頼の掲示板へと向かっていく。
しかし、レインの頭の中には、先ほどの新人探索者の反応が残っていた。
正直なところ、先ほどの青年の気持ちは理解できてしまう。
美しい栗色の長髪に、整った顔立ち。華奢な体格には不釣り合いなほど豊かな胸。もし目の前を歩いていたのが自分ではなく、こんな姿の女の子だったなら、きっと目で追っていたに違いない。
綺麗な女性も可愛らしい女の子も大好きだという性分は、今も昔も変わっていない。だから、青年を強く責める気にはなれなかった。ただ、いざ自分が見られる側になってみると、恥ずかしいものは恥ずかしい。相手の気持ちが理解できるからこそ、余計に複雑だった。
(……いや、分かる。分かるんだけどさあ……)
レインは心の中で深々とため息をついた。
かつては、自分が美女に囲まれて暮らすことを夢見ていた。
それこそ、綺麗で優しいお姉さんたちに好かれ、甘やかされ、いつかは夢のようなハーレムを築いてみたいと、本気で考えていたのである。
そして今、その夢に近い状況が目の前にある。
ミアは毎日のように気にかけてくれるし、リオナは相変わらず頼れる相棒だ。カトレアに至っては、隙あらばああして甘い言葉を囁いてくる。
傍から見れば羨ましがられてもおかしくない生活であり、実際、本人だって今の暮らしが嫌いなわけではなかった。
ただ、一つだけ。
どうしても、当初の予定とは違っていることがあった。
(……まさか、俺自身がこんな身体になるなんてな)
レインはそっと自分の胸元へ視線を落とし、何とも言えない表情を浮かべた。
憧れていた美女たちに囲まれた結果、自分までその一員として扱われている。しかも、今ではほかの男性から可愛いと言われ、見惚れられる立場になってしまったのだ。
人生とは、本当に何が起こるか分からないものである。
なにしろ――。
俺は、元々男だったのだから。