TSした俺は爆乳美少女 ~爆乳お姉さんたちに愛される百合ハーレム迷宮譚~ 作:TS百合好き
ベルナさんの工房を出た俺たちは、次の目的地である教会へと向かっていた。
迷宮都市には世界各地から様々な種族や信仰を持つ人々が集まっており、街のあちこちに神殿や教会が建てられている。その中でも、俺たちが向かっている教会は規模が大きく、日頃から怪我人の治療や呪いの診察などを受け付けている場所だった。
もっとも、これまでの俺には縁遠い施設でもある。探索中に多少の怪我を負うことはあっても、治癒魔術を使える探索者に手当てを頼んだり、ギルドで紹介された治療師に診てもらったりすれば、大抵のことは済んでいたからだ。
まさか、自分の性別が変わったことを相談するために訪れる日が来るとは思わなかった。
「なあ、リオナ。こういうのって、本当に教会で診てもらえるのかな?」
「さあね。でも、呪いが原因なら何か分かるかもしれないでしょ? 少なくとも、何も調べないよりはいいと思うわ」
「それもそうか。……頼むから、簡単に治せる呪いだったりしないかな」
「そうだったらいいんだけどね」
リオナの返事に、俺は小さく息を吐いた。
昨日から今日にかけて何度も思ったことだが、今の身体は決して嫌いではない。むしろ、自分でも驚くほど可愛らしい容姿になってしまったことには、正直なところ喜んでいる部分もある。
とはいえ、だからといって男に戻ることを諦めたわけではなかった。
この身体では以前のように剣を振れるかも分からないし、これからの生活を考えれば不安なことはいくらでもある。せめて、元に戻る方法が存在するのかどうかだけでも分かれば、少しは気が楽になるのだが。
そんなことを考えているうちに、目的の教会へと到着した。
白い石造りの大きな建物は、正面に立つだけでもなかなかの迫力がある。入口の上には神聖な紋様を模した装飾が施され、開け放たれた扉の向こうからは、静かな祈りの声と人々の話し声が聞こえてきた。
「行くわよ、レイン」
「ああ」
リオナに促され、俺は少し緊張しながら教会の中へと足を踏み入れた。
◇ ◇ ◇
教会の内部は、外観から想像していた以上に広かった。
高い天井を支える白い柱が左右に並び、奥には大きな祭壇が設けられている。壁には色鮮やかな装飾が施され、窓から差し込む夕方の陽光が床へ柔らかな模様を落としていた。
祈りを捧げるための空間とは別に、治療や相談を受け付けるための窓口も設けられているらしい。俺たちは案内板を確認してから、そちらへ向かうことにした。
「こんにちは。ご相談でしょうか?」
受付に座っていた若い神官の女性が、俺たちに気づいて声をかけてきた。
「あ、はい。ちょっと診てもらいたいことがありまして」
「承知いたしました。お怪我でしょうか? それとも、何かお身体の不調が?」
「ええと……どちらとも違うというか……」
いざ説明しようとすると、思っていた以上に言葉が出てこなかった。
何しろ、俺自身にも何が起きたのか分かっていないのだ。呪いにかかったのか、それとも別の魔術的な現象なのか。そもそも、女性になったこと以外に目立った体調不良があるわけでもない。
どう説明するべきか迷っていると、隣にいたリオナが口を開いた。
「実は、原因の分からない身体の変化が起きてしまって。呪いなのかどうかも分からないんですけど、そういうことに詳しい神官の方に診ていただくことはできますか?」
「身体の変化、ですか?」
「はい。少し特殊な事情があるので、できれば人のいないところで詳しくお話ししたいんですが……」
神官の女性は一瞬だけ不思議そうな顔をしたものの、すぐに事情を察したらしく、穏やかな表情で頷いてくれた。
「分かりました。詳しいお話を伺う必要がありそうですね。少々お待ちいただけますか? 呪いや魔術による異常について診察を担当している者がおりますので、確認してまいります」
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げると、女性は受付を離れ、奥の通路へと姿を消した。とりあえず、門前払いされることはなかったらしい。
「……なんとかなりそうだな」
「まだ診てもらってもいないでしょ。気を抜くのは早いわよ」
「分かってるって。でも、こういう事情を説明するのって、思ってた以上に難しいんだな」
「そりゃそうでしょ。私だって、事情を知らなかったら信じられないもの」
リオナは周囲に聞かれないよう声を落とし、改めて俺の顔を見つめた。
「……まあ、そうだよな」
リオナの言葉に苦笑しながら、自分の身体へと視線を落とす。
長い茶色の髪に、細い腕と小さな手。そして、どう考えても男だった頃には存在しなかった、非常に豊かな胸元。
昨日までの俺を知っている人間が見ても、同一人物だとすぐに信じてもらえるとは思えない。
そんなことを考えていると、ほどなくして受付の女性が戻ってきた。
「お待たせいたしました。担当の神官がお話を伺えるそうです。こちらへどうぞ」
案内されたのは、礼拝堂から少し離れた場所にある小さな部屋だった。
室内には机と椅子が置かれており、奥の棚には幾つもの書物や小瓶が整理されている。窓から差し込む光も穏やかで、落ち着いて相談するにはちょうどよさそうな空間だった。
そして、その部屋には既に一人の女性が待っていた。
「初めまして。私が本日の診察を担当いたします、ルシアと申します」
椅子から立ち上がった女性が、柔らかく微笑みながら一礼する。
(……ん? ルシア?)
聞き覚えのある名前に、俺は思わず目の前の女性を見つめ直した。
白銀色の長い髪に、温かみのある金色の瞳。頭からは牛を思わせる角が伸びており、その特徴から牛系獣人の女性であることが分かる。整った顔立ちには穏やかな優しさが漂い、白と紺を基調とした神官服もよく似合っていた。
そして、何より目を引くのが、その見事な体型だった。長身で均整の取れた身体は女性らしい曲線に恵まれており、とりわけ胸元は、ゆったりとした神官服を着ていても隠しきれないほど豊かである。
(……いや、待てよ。この人って、もしかして……!)
頭の中に浮かんだのは、前世で遊んでいた美少女ゲーム『爆乳迷宮ハーレム ~美姫たちと甘い冒険生活~』の記憶だった。
あのゲームには、牛系獣人の女性神官が攻略対象として登場していた。生真面目で面倒見がよく、主人公を優しく癒してくれる年上ヒロイン。その名前も、確かルシアだったはずだ。
(……やっぱり! あのゲームのルシアさんじゃないか!?)
セレナさんやミアさんだけでも驚いたというのに、今度はルシアさんである。まさか、これほど立て続けにゲームのヒロインたちと出会うことになるとは思わなかった。それにしても、実物はゲームの立ち絵以上に美しい。目の前で微笑む姿を眺めていると、つい見惚れてしまいそうになる。
(……いやいや、落ち着け俺。今日は身体を診てもらいに来たんだろう)
セレナさんと初めて会ったときの失敗を思い出し、俺は慌てて気持ちを切り替えた。あのときのように妙な声を出して、リオナに呆れられるのだけは避けたい。
「はじめまして。レインといいます。今日はよろしくお願いします」
どうにか普段どおりの挨拶ができたことに内心で安堵しながら頭を下げると、ルシアさんは穏やかな笑顔で応えてくれた。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。そちらの方は?」
「リオナです。レインとは同じパーティーを組んでいます」
「そうでしたか。どうぞ、お二人ともお掛けになってください」
勧められるまま椅子に腰を下ろすと、ルシアさんも机を挟んだ向かい側に座った。
「受付の者からは、原因の分からない身体の変化があったと伺っています。まずは、どのような症状なのか教えていただけますか?」
「はい。その……ちょっと信じられない話だと思うんですけど」
「ご安心ください。ここで伺ったお話を、ご本人の許可なく他の方へ言いふらすようなことはいたしません。それに、呪いや魔術には、私たちにもまだ解明できていないものが数多く存在していますから」
そう言って微笑むルシアさんを見て、俺は少しだけ肩の力を抜いた。
どうやら、話しやすい人のようだ。
「実は俺……昨日まで、男だったんです」
「…………はい?」
ルシアさんが、きょとんとした表情を浮かべた。
……うん。やっぱり、そういう反応になるよな。
「ですから、昨日までは身長も今よりずっと高くて、身体つきも普通の男だったんです。それが迷宮を探索しているときに、よく分からない現象に巻き込まれてしまって……気がついたら、こんな身体になっていました」
「…………」
「その、信じられないですよね?」
「い、いえ。申し訳ありません。少し驚いてしまいました」
ルシアさんは一度ゆっくりと息を整えてから、改めて俺の顔を見つめた。
「つまり、迷宮で原因不明の現象によって、男性だったお身体が女性へ変化してしまった、ということですね?」
「はい。俺自身にも、どうしてこうなったのか分からなくて……」
「なるほど……。確かに、非常に珍しい事例です」
ルシアさんは真剣な表情で頷くと、机の上に置かれていた書類へ視線を落とした。
「まずは呪いの有無を確認しましょう。ただ、先にお伝えしておきますが、私にもすべての呪いを判別できるわけではありません。未知の術式が関係している場合、十分な結果を得られない可能性もございます」
「それでも構いません。お願いします」
「承知いたしました。それでは、少し失礼いたしますね」
ルシアさんが両手をこちらへ向けると、その指先に淡い金色の光が灯った。柔らかな光はゆっくりと広がり、俺の身体を包み込んでいく。温かさを感じるものの、不快感や痛みはまったくない。
どうやら、これが神官の使う診察用の術らしい。
俺が興味深く光を眺めている間、ルシアさんは何かを確かめるように目を細め、しばらく集中していた。
やがて光が収まると、彼女は小さく息を吐いた。
「……不思議ですね」
「えっ?」
「少なくとも、私が識別できる範囲では、一般的な呪いに見られる反応が確認できません」
「……それって、呪いじゃないってことですか?」
「そう断言することはできません。ですが、少なくとも既知の呪いとは異なるようです。今のお身体にも、直ちに治療が必要と思われる異常は感じられませんでした」
その言葉を聞いて、俺は思わずリオナと顔を見合わせた。
呪いではないかもしれない。それ自体は喜んでいいことなのだろうが、同時に、元に戻す方法も分からないということになる。
「……そうですか」
「申し訳ありません。お力になれず……」
「あっ、いえ! 謝らないでください。こうして調べてもらえただけでも、凄く助かりましたから」
慌ててそう答えると、ルシアさんは少し安心したように微笑んだ。
「ありがとうございます。ただ、魔術による肉体の変質であるならば、教会よりも、魔術そのものの構造を研究されている方のほうが詳しいかもしれません」
「魔術の研究者、ですか?」
「はい。もちろん、必ず原因が分かるとは限りませんが……少なくとも、別の角度から調べる価値はあると思います」
なるほど。呪いの専門家に分からないなら、今度は魔術の専門家というわけか。
すぐに元へ戻れると期待していた分、残念な気持ちはある。それでも、調べるべき方向が一つ見つかっただけ、何もしないよりは前進したと考えるべきだろう。
「ありがとうございます、ルシアさん。今度、魔術の研究者にも相談してみます」
「ええ。どうか、あまり無理はなさらないでくださいね。慣れないお身体での生活は、思っている以上に大変なこともあるでしょうから」
「はい。でも、ルシアさんに診てもらえて良かったです。何も分からなかったら、もっと不安になっていたと思うので」
「……まあ」
俺が笑顔でそう伝えると、ルシアさんは少し驚いたように目を瞬かせ、それから嬉しそうに微笑んだ。
「そう言っていただけると、私も嬉しいです。何かお困りのことがありましたら、いつでもご相談くださいね」
「はい! そのときは、またよろしくお願いします」
そう答えると、ルシアさんはもう一度、俺へ優しい笑顔を向けてくれた。
……うん。
美人なうえに優しくて、しかも仕事も真面目。思わず見惚れそうになるのを堪えながら、俺は改めて礼を述べるのだった。
◇ ◇ ◇
教会での診察を終えて外へ出ると、街は夕暮れを迎えていた。通りでは店じまいを始める商人の姿も見られたが、探索者向けの商店が集まる区画では、まだ多くの店が営業を続けている。
結局、元の身体に戻る方法は分からなかったものの、少なくとも一般的な呪いではなさそうだということは判明した。すぐに命に関わるような異常も見つからなかったので、ひとまず安心してもよいのだろう。
「……さて、これからどうする?」
教会を出たところで尋ねると、リオナは少し考えてから俺の髪へと視線を向けた。
「そうね。まだ時間もあるし、日用品を買いに行きましょうか」
「日用品?」
「櫛とか髪を洗うものとか、色々必要でしょ? あんた、そんなに髪が長いのに、ろくに手入れの道具も持ってないじゃない」
「……ああ、言われてみれば」
男性だった頃の俺は短髪だったので、髪の手入れにそれほど手間をかける必要はなかった。もちろん身だしなみには気を配っていたが、今のような長い髪を毎日整えるとなれば、事情はまったく違ってくる。
「あと、髪留めとかリボンも見ておいたほうがいいわね。今のままだと探索するときに邪魔になるでしょうし」
「リボンかぁ……」
「何よ。その反応」
「いや、ちょっと楽しそうだなって」
「……あんた、本当に女の子になったことを楽しんでるわよね」
「そりゃ、困ってることも多いけどさ。せっかくこんなに可愛いんだし、似合うものを探すくらい楽しんでもいいだろ?」
そう答えると、リオナは呆れたようにため息をついた。
「……まあ、別にいいけど」
そんなやり取りをしながら向かったのは、女性向けの日用品を扱う店だった。
店内には櫛や髪飾り、香油、化粧品などが所狭しと並んでいる。中には迷宮で採取された珍しい植物や魔物由来の素材を利用した商品もあり、探索者として見覚えのある素材が、思いがけない形で売られていることに驚かされた。
「へえ……この花、香油にも使えるのか。前に採取依頼で集めたことがあるぞ」
「知らなかったの? 結構人気があるのよ。普通のものより少し高いけど、香りが長持ちするんですって」
「なるほどなぁ。……あ、このリボン可愛い」
「……話を聞いてた?」
「聞いてるって。ほら、これ俺に似合いそうじゃない?」
そう言って手に取ったリボンを髪へ当ててみると、リオナは一瞬だけ言葉を詰まらせた。
「……まあ、似合うんじゃない?」
「おっ、本当? じゃあ、これにしようかな」
「もう少しほかのも見てから決めればいいでしょ」
「それもそうだな」
結局、その後もあれこれと商品を見て回り、櫛や洗髪料、髪用のオイル、いくつかの髪留めやリボンを買うことになった。
店員からは肌用の美容品まで勧められたのだが、こちらはひとまず必要になってから考えることにした。何しろ、今の俺の肌は不思議なくらい綺麗で、今のところ乾燥や肌荒れに困っているわけでもない。
むしろ、店員から普段どんな手入れをしているのか尋ねられて、返答に困ってしまったほどだ。……これも、女性化の影響なのだろうか。
「……そういえば、レイン」
買い物を終えて店を出たところで、リオナが何かを思い出したように声をかけてきた。
「ん?」
「あんた、昨日からお風呂に入ってないんじゃない?」
「風呂? ……あ」
言われて初めて思い出した。
昨日は迷宮から戻ってきたあとも意識がなく、目を覚ましてからは身体が女性になっていたことで大騒ぎ。今日は今日で朝からあちこち歩き回っていたので、風呂に入ることなどすっかり忘れていたのである。
「……そういや、入ってないな」
「やっぱり! もう、ちゃんとしなさいよね。まあ、あんたの場合は不思議なくらい綺麗なままだから、私も今まで気づかなかったんだけど……」
「そうなんだよな。汗臭くもないし、髪もさらさらだし。これも何かの魔術なのかな?」
「さあ? そのあたりも、今度調べてもらったほうがいいんじゃない?」
「そうだな。……って、待てよ」
そこで、俺は重大なことに気づいた。
「……なあ、リオナ」
「何よ?」
「俺って、もう銭湯の女湯に入れるんだよな?」
「…………は?」
リオナが、何を言っているのか分からないとでも言いたげな表情を浮かべた。
しかし、考えてみれば当然の話だ。
今の俺は、どこからどう見ても女の子である。昨日まで男だったとはいえ、現在の身体で男湯に入れば、それこそ大騒ぎになってしまうだろう。
「……いや、だって今の俺は女の子なんだぜ? だったら女湯に入るのは合法だろ?」
「……あんたの場合は違法よ!」
周囲に聞こえないよう声を潜めて尋ねると、リオナもまた、声を押し殺しながら怒鳴るという器用な真似をしてみせた。
「……なんでだよ?」
「……昨日まで男だったあんたを、ほかの女の子たちと一緒にお風呂になんて入れられるわけないでしょうが」
「……いやいや、今は完全に女の子なんだから問題ないだろ」
「……身体はね! 中身は相変わらず女の子が大好きなレインでしょうが!」
「……まあ、それは否定しないけど」
いや、しかし、俺としては別に変なことを言ったつもりはない。今の身体なら男湯に入るほうがよほど問題だろうし、女湯を利用するのはごく自然な発想ではないだろうか。
……まあ、元男性として多少の興味があることは否定しないが。
「と、とにかく! ミアさんの宿なら、部屋ごとにお風呂がついてるでしょう? それを使えばいいじゃない」
「……え?」
「何よ?」
「個室に風呂って、ミアさんの宿って結構いいところだったんだな!」
「……あんた、昨日から泊まってるのに気づいてなかったの?」
「いや、俺が前に泊まってた宿なんて風呂そのものがなかったしさ。まさか部屋についてるなんて思わないじゃん」
「まあ、昨日はそれどころじゃなかったものね……」
リオナは納得したように頷いたものの、すぐに俺の全身を見回し、何かを考えるように首を傾げた。
「……それにしても、あんた、大丈夫なの?」
「何が?」
「女の子の身体の洗い方、分かってる?」
「……え?」
思いがけない質問に、俺は瞬きをした。
「いや、普通に洗えばいいんじゃないのか?」
「そんな簡単に言うけど、その長い髪をちゃんと洗える? 乾かすのだって大変なのよ。それに……」
そこでリオナの視線が、俺の胸元へと落ちた。
「……その胸だって、色々大変でしょうし」
「……まあ、確かにな」
この二日間で嫌というほど実感しているが、今の俺の胸はとんでもなく大きい。着替え一つ取っても以前とは勝手が違うのだから、風呂でも何かしら苦労する可能性は十分にある。
そう考えたところで、俺はふと思いついた。
「……じゃあさ、リオナ」
「何?」
「一緒に入って、色々教えてくれない?」
「…………え?」
リオナの動きがぴたりと止まった。俺の顔を見つめたかと思うと、なぜか気まずそうに視線を逸らし、数秒ほどの沈黙のあと、その顔がみるみる赤く染まっていく。
「あ、あんたっ! 自分が何を言ってるのか分かってる!?」
「えっ? いや、分からないことだらけだし、教えてもらえたら助かるかなって……」
「だからって、何で私が一緒にお風呂に入ることになるのよ!」
「いや、今の俺たちって女同士だし……」
「そういう問題じゃないでしょうが!」
「……あ」
そこでようやく、自分が何を頼んだのか理解した。
確かに、今の俺は女の子である。
しかし、リオナは昨日まで男だった俺を知っているし、何より一年半も一緒に探索してきた相棒だ。そんな相手から突然、一緒に風呂へ入ろうと誘われたら、いくら同性になったとはいえ困惑するに決まっている。
「わ、悪い! 今のはちょっと考えなしだった!」
「まったくもう……。本当に、そういうところは全然変わらないんだから」
リオナは真っ赤な顔のまま、大きくため息をついた。
……しかし、そこまで怒らなくてもいいじゃないか。そう思わなくもなかったが、これ以上余計なことを言えば、ますます怒られそうなので黙っておくことにした。
とにもかくにも、今日の用事はこれでひととおり終わった。
教会での診察では元に戻る方法こそ分からなかったものの、今後調べるべき方向は見えてきたし、日常生活に必要な道具もある程度揃えることができた。
残る問題は、初めての女性の身体でのお風呂である。
……正直なところ、少し楽しみでもあった。
もっとも、それを口にすればリオナに何と言われるか分からないので、俺は買い物袋を抱え直すと、何食わぬ顔で宿への帰り道を歩き始めるのだった。