TSした俺は爆乳美少女 ~爆乳お姉さんたちに愛される百合ハーレム迷宮譚~ 作:TS百合好き
翌朝。
女性になって三日目を迎えた俺は、ベッドの上でゆっくりと身体を起こした。
「……んんっ。よく寝た……」
大きく伸びをしようとして、胸元にかかる重みに思わず動きを止める。
……ああ、そうだった。
昨日のお風呂で嫌というほど思い知らされたが、今の俺は身体を動かすだけでも、男だった頃とは勝手が違うのだ。特に胸の重さは相変わらずで、朝から自分の身体に文句を言いたくなってしまう。
もっとも、昨夜は随分ぐっすり眠れた。
久しぶりに湯船へ浸かって身体を温めたおかげなのか、それとも昨日一日歩き回って疲れていたからなのか。理由は分からないが、目覚めはなかなか良かった。
「……よし。今日も頑張るか」
小さく気合いを入れ、ベッドから降りる。まずは顔を洗い、髪を整えて、それから着替えだ。
……うん。
こうして並べてみると、やること自体は男だった頃と大して変わらない。問題は、その一つひとつに以前よりも時間がかかることである。
特に長い髪の扱いは、まだまだ慣れそうになかった。昨夜リオナに教えてもらったことを思い出しながら櫛を通してみたものの、背中まで流れる髪を綺麗にまとめようとすると、どうしても手間取ってしまう。
「……うーん。難しいな、これ」
鏡の前でしばらく格闘してみたが、結局、納得のいく仕上がりにはならなかった。
……まあ、仕方ないか。今日のところはミアさんに相談してみよう。そんなことを考えながら、ベルナさんに調整してもらった胸の補助具を装着する。すると、それまで身体の前側にかかっていた負担が随分と軽くなった。
……やっぱり、これがあると全然違うな。
昨夜の入浴を経験した今では、補助具のありがたみが以前にも増して身に染みている。改めてベルナさんに感謝しながら服へ袖を通すと、身支度を終えた俺は、リオナと約束していた時間に合わせて一階へ向かった。
◇ ◇ ◇
「おはようございます、レインさん!」
階段を下りると、食堂の準備をしていたミアさんが笑顔で声をかけてくれた。
「おはよう、ミアさん」
「昨日はよく眠れましたか?」
「うん。久しぶりにぐっすり眠れたよ。お風呂もすごく気持ち良かったし」
「それは良かったです。うちのお風呂、結構評判がいいんですよ?」
嬉しそうに微笑むミアさんを見て、俺もつられて笑顔になる。男だった頃から可愛いと思っていたが、こうして朝から笑顔を向けられると、何だかこちらまで元気が出てくる。
「……あら?」
そんなことを考えていると、ミアさんが俺の髪へ目を向けた。
「レインさん、今日は髪をまとめないんですか?」
「ああ、実はちょっと苦戦しててさ。昨日リオナに髪の手入れは教えてもらったんだけど、自分でまとめるのはまだ難しくて……」
「ふふっ。最初は難しいですよね。よかったら、私がお手伝いしましょうか?」
「えっ、いいの?」
「もちろんです!」
思いがけない申し出に甘えることにすると、ミアさんは近くの椅子へ俺を座らせ、慣れた手つきで髪を整え始めた。
櫛を通して絡まりをほどき、片側の髪を丁寧に編み込んでいく。その手際は見事なもので、俺が散々苦労していた作業を、あっという間に終わらせてしまった。
「はい、できました!」
「おお……!」
手鏡を借りて確かめてみると、長い茶色の髪が片側で綺麗に編み込まれ、昨日買ってきたリボンが可愛らしい飾りになっていた。
……うん。これはいいな。
「すごい! ありがとう、ミアさん!」
「どういたしまして。レインさんは髪がとても綺麗ですから、こういう髪型もよく似合いますね」
「へへっ。そうかな?」
「はい。とっても可愛いですよ!」
美少女から可愛いと褒められるのって、何だか嬉しいな。もちろん、自分が男だったことを忘れたわけではない。それでも、今の姿を褒めてもらえるのは、素直に悪い気がしなかった。
「……あら、もう準備できてたの?」
そんなことを考えていると、背後から聞き慣れた声がした。振り返ると、ちょうどリオナが食堂へ入ってくるところだった。
「あっ、リオナ。おはよう!」
「おはよう。……って、髪、綺麗にしてもらったのね」
「うん! ミアさんにやってもらったんだ。どう? 似合ってる?」
そう尋ねると、リオナは一瞬だけ俺の髪を見つめ、それから小さく息を吐いた。
「……似合ってるわよ」
「本当?」
「本当よ。あんた、そういう髪型が似合う顔になったんだから、もう少し自覚しなさい」
「ははっ。何だよ、それ」
思わず笑ってしまうと、リオナは呆れたように肩をすくめた。
……まあ、褒めてくれたんだから、良しとしよう。それから三人で少し雑談を交わしたあと、俺たちは朝食をいただくことになった。
今日の予定は、探索者ギルドでの相談である。
昨日、教会でルシアさんに診てもらったものの、俺の身体を女性へと変えた原因は分からなかった。一般的な呪いではなさそうだということは判明したが、それ以上は専門の魔術研究者を頼ったほうが良いらしい。
とはいえ、俺にはそういった専門家の知り合いがいない。そこで、まずはギルドへ相談し、心当たりのある研究者を紹介してもらおうという話になったのだ。
「……で、何時頃に行く?」
朝食を食べながら尋ねると、リオナは少し考えてから答えた。
「そうね……。朝一番は避けたほうがいいと思うわ」
「ああ、確かに。あの時間帯は混むもんな」
「ええ。依頼を受ける探索者が集中するし、受付の人たちも忙しいでしょう? 込み入った相談をするなら、少し落ち着いてからのほうがいいわ」
「なるほどな。じゃあ、十時過ぎくらい?」
「それくらいがいいんじゃない?」
「よし。それでいこう」
俺たちは食後もしばらく宿で過ごし、予定していた時間になってからギルドへ向かうことにした。
◇ ◇ ◇
午前十時を少し過ぎた頃。リオナと並んで歩きながら、俺は見慣れた迷宮都市の街並みを眺めていた。
通りには買い物をする住民や荷物を運ぶ商人たちが行き交い、そこかしこから賑やかな声が聞こえてくる。今日も普段と変わらない、活気に満ちた朝だった。
通りすがりの人々から時折視線を向けられるのは相変わらずだったが、昨日ほど戸惑うことはなくなっていた。
……まあ、いつまでも気にしていたら、まともに街も歩けないしな。それよりも、今日はもっと気になることがある。
「……それにしても、今日はちょっと緊張するな」
「ギルドの相談?」
「ああ。俺が本人だって、ちゃんと信じてもらえるかな」
「大丈夫よ。私も一緒に説明するんだし、必要なら本人確認の手続きをしてもらえばいいでしょう?」
「……まあ、それもそうか」
リオナの言葉に、俺は少しだけ気持ちを落ち着けた。
何しろ、今の俺は以前とは容姿がまったく違う。
男だった頃に身につけていた探索者証も、今は首から提げていない。仮にいつもの格好でギルドへ入ったところで、顔見知りの職員たちから本人だと気づいてもらえるかどうかは怪しかった。
そんなことを考えながら歩いているうちに、目的の建物が見えてきた。
「……よし。行くか」
「ええ」
リオナと顔を見合わせて頷き、俺たちはギルドの扉をくぐった。
内部は予想どおり、朝の混雑が一段落したところだった。依頼掲示板の前にはまだ何人かの探索者が集まっていたものの、受付の列は短く、職員たちにも多少の余裕があるように見える。
これなら、込み入った相談を持ちかけても大丈夫そうだ。
「……あ、いたわね」
リオナの視線を追うと、見覚えのある女性が受付に座っているのが見えた。
青みがかった黒髪に、澄んだ青い瞳。品のある整った顔立ちと穏やかな微笑みは、前世で見慣れたゲームの立ち絵を思い出させる。
セレナ・アルディナ。最近このギルドへ配属された受付嬢であり、前世で遊んでいた美少女ゲーム『爆乳迷宮ハーレム』に登場する、俺の最推しヒロインである。
一昨日、初めて会ったときには、あまりの衝撃に変な声まで出してしまった。……いや、あれは仕方ないだろ。まさか、前世で何度も画面越しに眺めていた憧れの女性が、実際に目の前に現れるなんて思わなかったのだから。
しかも、今の俺は女性になっている。以前とは容姿がまるで違うのだから、セレナさんが俺を見ても同一人物だとは気づかないはずだ。
「……レイン?」
「あっ、いや、何でもない!」
「……本当かしら」
リオナが少しだけ疑わしそうな目を向けてきたものの、俺は気づかないふりをして受付へ向かった。
「こんにちは。……あら、リオナさん!」
俺たちに気づいたセレナさんが、柔らかな笑顔で声をかけてくれる。
「こんにちは、セレナさん」
「今日はどうなさいました? それと、そちらの方は……」
セレナさんの視線が、リオナから隣に立つ俺へと移った。少しだけ首を傾げると、改めて穏やかな微笑みを浮かべる。
「初めてお見かけする方ですね。探索者のご登録をご希望でしょうか?」
「……あー」
思わず間の抜けた声が出てしまった。まあ、やっぱりそうなるよな。
今の俺は、どこからどう見ても見知らぬ美少女である。一昨日までの男の姿とは背丈も顔立ちもまったく違うし、今日は探索者証も身につけていない。そりゃ、新しく登録しに来た女の子だと思われても仕方ないか。
「ええと、その……」
何と答えるべきか迷っていると、隣にいたリオナがすっと一歩前へ出た。
「すみません、セレナさん。今、少しお時間は大丈夫でしょうか?」
「はい。どうされました?」
「実は、ちょっとご相談したいことがありまして。できれば、ほかの方には聞かれない場所でお話ししたいんですが……」
「……個別のご相談、ですか?」
セレナさんは一瞬だけ不思議そうな表情を浮かべたものの、すぐに真剣な顔になった。
「承知しました。少々お待ちいただけますか?」
「ありがとうございます」
セレナさんは近くにいた別の職員へ声をかけ、受付を少しの間代わってもらえるよう頼んでくれた。
それから俺たちを案内してくれたのは、ギルドの奥にある小さな相談室だった。
机と椅子が置かれた室内は、探索者同士の揉め事や依頼に関する相談などで使われているらしく、余計な装飾もなく落ち着いた雰囲気だった。
「こちらなら、ほかの方にお話を聞かれる心配はありません。どうぞ、お掛けください」
「ありがとうございます」
俺たちが椅子へ腰を下ろすと、セレナさんも向かい側に座った。
「それで、ご相談というのは?」
「……ええと」
俺はリオナと顔を見合わせた。
ここまで来た以上、事情を説明するしかない。もっとも、セレナさんに男だった頃の俺を覚えてもらえているかどうかは、少し不安だった。
「あの、セレナさん。以前、レインという探索者に会ったことは覚えていますか?」
俺が尋ねると、セレナさんは少し考えるように目を細めた。
「レインさん……。はい、覚えていますよ。確か、リオナさんとパーティーを組んでいらっしゃる方ですよね?」
「あっ、そうです!」
「先日、こちらの受付に来られたときにお話ししましたから。……それで、レインさんがどうかなさったんですか?」
「……その」
俺は思わず言葉に詰まった。何しろ、今の姿で自分がレイン本人だと言っても、簡単には信じてもらえないだろう。
すると、隣のリオナが小さく息を吐いた。
「……セレナさん。落ち着いて聞いていただきたいんですけど」
「はい?」
「……そのレインが、今、私の隣にいるこの子なんです」
「……え?」
セレナさんの視線が、ゆっくりと俺へ向けられた。そして、しばらく俺の顔を見つめたあと、きょとんとした表情を浮かべる。
「……あの?」
「……ええと。レインです。本人です」
「…………はい?」
……うん。やっぱり、そういう反応になるよな。俺は苦笑しながら、一昨日の迷宮で起きた出来事を簡単に説明することにした。
探索中に原因不明の現象に巻き込まれたこと。その結果、身体が女性へと変化してしまったこと。そして、教会で診察を受けたものの、一般的な呪いではなさそうだということしか分からなかったこと。
もちろん、今回の相談に関係のない探索の成果については、今は話さなかった。まずは女性化してしまった身体について、相談することが先だからだ。
「……というわけで、今はこんな姿になってしまっているんです」
「…………」
説明を終えても、セレナさんはしばらく何も言わなかった。やがて、ゆっくりと俺とリオナの顔を見比べる。
「……つまり、目の前にいらっしゃるこの方が、先日お会いしたレインさんご本人だと?」
「はい」
「……男性だったレインさんが?」
「はい」
「……女性になってしまった、と?」
「……そのとおりです」
俺が頷くと、セレナさんはようやく大きく息を吐いた。
「……驚きました。まさか、このようなご相談を受けることになるとは思いませんでした」
「ですよね……」
「リオナさんも、間違いなくご本人だと?」
「ええ。私も同じ場所にいて、レインが魔法陣の光に包まれるところを見ました。光が消えたときには今の姿になっていて、そのまま私が迷宮から連れ帰ったんです」
「……そうですか」
セレナさんは真剣な表情で頷いた。
「それでしたら、念のため探索者証も確認させていただいてよろしいでしょうか?」
「あっ、はい。ちょっと待ってください」
俺は持ってきた荷物を探り、男だった頃から使っていた探索者証を取り出した。今の姿で首から提げるのは少々ためらわれたため、今日はしまっておいたのである。
セレナさんは探索者証と俺の顔を見比べ、続いてリオナの証言を改めて確認した。
「……確かに、登録されているレインさんの探索者証ですね。ただ、容姿がこれほど変わってしまったとなると、ギルドとしても正式な本人確認や登録情報の変更が必要になると思います」
「……やっぱり、そうですよね」
「はい。ですが、そちらは担当部署に確認してからご案内します。今のお話ですと、まずは身体の変化について調べることが先でしょうか」
「はい。実は、その件で魔術に詳しい方を紹介していただけないかと思いまして」
「魔術の専門家、ですか……」
セレナさんは少し考え込むと、何かを思い出したように顔を上げた。
「……それでしたら、心当たりがあります」
「本当ですか!?」
「ええ。迷宮から発見された未知の術式や、魔術による特殊な現象を研究されている方がいらっしゃいます。少々変わった方ですが、腕は確かですよ」
そう言って、セレナさんは机の上に置かれていた紙を取り出した。
「アステリア・ルナヴェールさんという、エルフの魔術研究者です。現在は迷宮都市の魔術研究所で研究をされています」
「アステリア……さん?」
その名前を聞いた瞬間、俺は思わず姿勢を正した。
アステリア・ルナヴェール。その名前、間違いなく聞き覚えがある。というか、前世で遊んでいた『爆乳迷宮ハーレム』に登場していたエルフの魔術研究者と、まったく同じ名前ではないか。
セレナさんにミアさん、そして昨日のルシアさんに続いて、またゲームで見覚えのある名前である。いくら何でも、そんな偶然が立て続けに起こるものだろうか。
「……レイン?」
「あっ、いや! 何でもない!」
リオナに声をかけられ、俺は慌てて姿勢を正した。
まだ同姓同名の別人という可能性だってあるんだから落ち着こう。もっとも、エルフで魔術研究者という時点で、かなり怪しい気もするのだが。
「その方は、魔術の解析に関しては非常に優秀だと聞いています。今回のような特殊な事例でしたら、何か分かるかもしれません」
「ぜひ紹介していただけませんか?」
「もちろんです。紹介状をお書きしますね。ただ、今日すぐに診ていただけるかどうかは、研究所の予定次第になりますが……」
「それでも構いません! ありがとうございます!」
「ふふっ。どういたしまして」
セレナさんは微笑むと、紹介状を書き始めた。
ゲームでも面倒見のいいお姉さんという印象があったけれど、実際に会ってみると、それ以上に頼りになる。
それに、こうして間近で見ても、やっぱり綺麗だ。
整った顔立ちはもちろん、落ち着いた物腰や丁寧な言葉遣いにも、どこか育ちの良さが感じられる。ゲームで最推しだったという事情を抜きにしても、十分に魅力的な女性だと思う。
そんなことを考えているうちに、紹介状が完成したらしい。
「はい、こちらです。研究所の受付でお渡しください」
「ありがとうございます、セレナさん!」
「いえ。お役に立てるかどうかは分かりませんが、少しでも原因が明らかになるといいですね」
「はい!」
俺が笑顔で頷くと、セレナさんも嬉しそうに微笑んだ。
「……レイン」
「ん?」
「……顔、緩んでるわよ」
「……マジか」
小声で指摘してきたリオナに慌てて表情を引き締めると、セレナさんが不思議そうに首を傾げた。
「どうかされましたか?」
「あっ、いえ! 何でもないです!」
「……そうですか?」
危ない、もう少しでまた変なところを見られるところだった。俺たちは改めてセレナさんへ礼を言うと、紹介状を受け取り、相談室をあとにした。
廊下へ出たところで、俺は手元の紹介状に記された名前をもう一度確かめる。
アステリア・ルナヴェール。……まさか、本当にゲームに出てきたあのアステリアさんだったりするのか?
もちろん、今は自分の身体について調べることが最優先だ。それでも、前世のゲームに登場していた女性と同じ名前を聞いてしまえば、どうしたって気になってしまう。
果たして、どんな人物が待っているのだろうか。そして何より、俺の身体を元に戻すための手掛かりは見つかるのか。
期待と不安、それにほんの少しの好奇心を胸に、俺はリオナとともに魔術研究所へ向かうことにした。