TSした俺は爆乳美少女 ~爆乳お姉さんたちに愛される百合ハーレム迷宮譚~ 作:TS百合好き
アステリアさんの研究所を訪れた翌朝、俺とリオナは探索者ギルドの訓練場へ向かっていた。
昨日の診察では、俺の身体が普通の変身魔術では説明できない状態になっていることが分かった。元に戻る方法は見つからなかったものの、アステリアさんは引き続き調べてくれるという。今はその言葉を信じるしかない。
研究所からの帰りには、ベルナさんの工房にも立ち寄っている。以前お願いした普段着とは別に、今の身体に合う探索用の防具を作ってもらうためだ。ただ、肝心の戦い方が決まっていなかったので、胸や腰への負担を抑える基本部分だけ先に発注し、細かな調整は後回しにしてもらった。
『まずは身体を動かして、何が必要か確かめてみたらどうかしらぁ』
ベルナさんの助言はもっともだ。男だった頃の長剣は今の体格に合わず、盾も固定具を直さなければ使えない。どんな装備にすべきか決めるには、今の自分を知る必要があるだろう。
ちなみに、リオナが預けた魔導銃はまだ調査中だった。希少な迷宮産の武器だけに、内部を慎重に確かめたいらしい。こちらも気になるが、まずは俺の戦闘能力をどうにかする方が先だ。
「……レイン、本当に無理はしないでよ? 今日は様子を見るだけなんだから」
「分かってるって。いきなり迷宮に潜るつもりはないよ」
「そう言いながら、調子に乗って転んだりしないでしょうね」
「信用ないなぁ……。ちゃんと危なそうならやめるから」
リオナが心配するのも無理はない。女性になってからの俺は、歩くことにさえ苦労していたのだ。それでも、いつまでも彼女に守られてばかりはいられない。少なくとも、以前どおり前衛を務められるかどうかは確かめておきたかった。
◇ ◇ ◇
ギルドの訓練場は、屋外の広い敷地に標的や武器棚が並ぶ施設だ。新人探索者の基礎訓練から、熟練者同士の模擬戦まで行われるため、俺も男だった頃には何度となく利用していた。
ただし、今日は少々勝手が違う。
「……なあ、リオナ。やっぱり俺、見られてないか?」
「……見られてるわね。今のあんた、外套を着てても目立つもの」
門をくぐった途端、何人かの探索者がこちらを振り返った。視線の先がリオナではなく俺だと分かると、どうにも居心地が悪い。しかも、顔に見覚えのある探索者まで混じっている。以前なら気軽に挨拶できた相手なのに、今の姿で声をかけたところで本人だと信じてもらえるか怪しかった。
「リオナと一緒にいるところを見られたら、レインはどこへ行ったって聞かれそうだな……」
「そうね。いずれ話すことにはなるでしょうけど、今は訓練が先よ。奥の仕切られた区画を借りましょ」
「助かる。練習より事情説明で疲れそうだもんな」
訓練場の端には、パーティー単位で使える小さな区画がいくつか設けられている。受付で利用料を払い、人目を避けやすい奥の区画へ入ると、ようやく肩の力が抜けた。
別に、今の姿を一生隠して暮らせるとは思っていない。探索者を続けるなら、知り合いにもいつか事情を説明する必要があるだろう。ただ、今は自分自身さえ戸惑っているのだ。もう少し落ち着いてからにしたかった。
「さて、まずは軽く走ってみるか」
ベルナさんの補助具を確かめ、ゆっくり走り出す。普段の歩行には慣れてきたし、胸の揺れも以前よりずっと抑えられている。ところが、速度を上げて方向転換した途端、思っていた位置に足が届かず、身体が大きく傾いた。
「うわっ、ととっ!」
「ちょっと、レイン!」
「大丈夫! ……いや、思ってたより難しいな」
身長は百七十八センチから百五十四センチへ縮み、脚の長さも歩幅も変わった。頭では理解していても、急な動きでは男だった頃の癖が出てしまう。おまけに胸元の重みで重心も違うのだから、以前と同じように動けるはずがない。
リオナに言われるまま速度を落とし、踏み込む幅を意識して何度か往復すると、少しずつ足運びが安定してきた。問題は、ここからである。
俺は訓練用の片手剣と盾を借り、木製の標的へ向き直った。
「じゃあ、いつもの動きを試してみるよ」
「ええ。私は横で見てるから、無理しないでね」
盾を構え、踏み込んで剣を振る。何度も繰り返してきた動作だ。ところが、木剣の先端は標的の手前で空を切った。
「……あれ?」
間合いが、遠い。男だった頃なら十分に届く距離なのに、今の腕と脚では足りなかったのだ。
「レイン、もう少し前じゃない?」
「ああ、分かってる!」
意識して踏み込みを深くすると、今度は剣が届いた。しかし、身体が前へ流れて盾を戻すのが遅れる。斬り返しでも腰と腕の動きが噛み合わず、何度試しても以前の感覚には戻らなかった。
「……くそっ。剣の振り方まで忘れたわけじゃないのに」
思わず歯噛みする。敵との間合いや攻撃のタイミングは分かる。それなのに、自分の身体だけが思い描いたとおりに動かない。決して一流ではなかったが、剣と盾の扱いにはそれなりの自信があっただけに、想像以上に悔しかった。
「……レイン、少し休みましょ。無理に昔の動きを再現しようとしてるでしょ?」
リオナの指摘に、俺は渋々剣を下ろした。一年半も一緒に戦ってきた相棒の目は誤魔化せないらしい。
「でも、剣術の経験までなくなったわけじゃないんだから。今の身体に合う動きを覚え直せばいいじゃない」
「……そうだな。ただ、前と同じ武器が一番いいとは限らないか」
「だったら、別の武器も試してみたら?」
その一言に、俺は武器棚を振り返った。
◇ ◇ ◇
短い剣は扱いやすいが、失った間合いを補いにくい。長い剣では今度は取り回しに苦労する。そこで片手用の木槍と盾を試してみると、突きなら比較的楽に標的へ届いた。
「……おっ、これは悪くないな」
「剣より遠くまで届くものね」
「ああ。でも、斬り払う攻撃が使いにくいのは惜しいな。俺、今まで剣で戦ってきたからさ」
「それなら……あれなんてどう?」
リオナが示した先には、刃のついた長柄武器が並んでいた。その中から、小柄な俺でも扱えそうな短めの一本を手に取る。
「……グレイブか」
長い柄の先に幅のある刃を備え、突きだけでなく斬り払いにも使える武器だ。前世の日本で見た薙刀に少し似ている。知識としては知っていたが、自分で使う機会はほとんどなかった。
両手で構え、標的へ突きを放つ。続けて刃を斜めに振り下ろすと、木製の刃が乾いた音を立てた。
「……おお、いいかも!」
「さっきより楽しそうね」
「斬る動きもできるし、間合いも補える。もちろん、慣れないから先端がぶれるし、戻すのも遅いけど……練習する価値はありそうだ」
何度か構えを変えながら振ってみる。剣とは重心も軌道も違うが、斬撃の経験がまったく無駄になるわけではないらしい。以前の動きを取り戻すのではなく、今の身体に合う動きを新しく覚えていく。そう考えると、少し気持ちが軽くなった。
だが、喜んでばかりもいられない。
「……問題は、盾を持てないことなんだよな」
グレイブは基本的に両手で扱う武器だ。片手で無理に振り回すのでは、威力も制御も心許ない。おまけに、狭い迷宮の通路では長い柄が邪魔になる場面もあるだろう。
「そうね。あんたが盾を使わないなら、私も今までと同じ位置取りじゃ危ないかもしれないわ」
「ああ。俺が前で攻撃を受け止めるつもりだったのに、リオナまで危険にさらしたら意味がないし……」
間合いの長さだけで武器を決めるわけにはいかない。リオナと組む以上、二人で安全に戦えることが何より大切なのだ。
そこで、ふと昨日の診察を思い出した。
「……そういえば、アステリアさんが俺の魔力について、何か気になることがあるって言ってたよな」
「魔力量や適性を、次に詳しく調べたいって話?」
「ああ。もしかしたら、魔術の使い方も変わってるんじゃないかと思ってさ」
男だった頃の俺は、魔力を身体の内側で巡らせる身体強化が得意だった。反対に、火球などの攻撃魔術はからきし駄目で、何度練習しても小さな火花を出すのが精一杯だったのである。
「……あんた、昔ずいぶん悔しがってたものね。あの小さな火、覚えてるわよ」
「うっ……忘れてくれていいんだけど」
この世界では、男性は身体強化、女性は魔力を外へ放つ術を得意とする傾向がある。もちろん個人差はあるし、性別だけで適性が決まるわけではない。それでも、身体も魔力の感覚も変わった今なら、以前とは違う結果が出る可能性はあるはずだ。
「もし攻撃魔術が使えたら、離れた敵にも対応できるだろ? それに防御魔術まで覚えられれば、両手武器の弱点も補えるかもしれない」
「……身体強化と魔術を組み合わせるってこと?」
「ああ。魔法戦士みたいな感じかな」
言葉にすると、少し格好いい。もっとも、近接戦闘と魔術の両方を高い水準で扱える探索者は多くない。身につけるのに時間がかかるうえ、同時に使いこなす技術も必要だからだ。
「でも、あんたが本当にそんな戦い方をできるようになったら、相当目立つんじゃない?」
「……まあ、そうだろうな」
「今だって容姿のせいで注目されてるのに。珍しい力まで知られたら、面倒な人たちに目をつけられるかもしれないわよ」
それは俺も気になる。できれば元に戻る方法を静かに探したいし、余計な騒ぎは避けたい。だが、目立たないことだけを優先するつもりもなかった。
「必要もないのに見せびらかすつもりはないよ。でも、使える力があるのに隠して、そのせいでリオナが怪我でもしたら嫌だろ?」
「……え?」
「目立つのが怖いからって、助けられる相棒を助けなかったら本末転倒じゃないか。俺たち、二人で迷宮を歩いてきたんだからさ」
そう言うと、リオナはなぜか黙り込み、ふいっと顔を逸らしてしまった。ちらりと見えた耳が少し赤い気もする。
「……あんたって、本当に……」
「ん? どうした?」
「……何でもないわよ、馬鹿」
「えっ、何で!?」
「そういうところ、昔から変わらないって思っただけ」
どういう意味なのかは分からなかったが、声はどこか嬉しそうだった。
俺はもう一度グレイブを構え、ゆっくりと標的へ突きを繰り出した。まだ狙いは安定しない。それでも、剣を振っていたときのような行き詰まりは感じなかった。
元に戻る方法を探すことと、今の身体で強くなることは両立できるはずだ。女の子になったからといって、リオナの相棒でなくなったわけではないのだから。
「……よし。武器は魔術の適性を調べてから決めよう。ベルナさんにも、その結果を伝えて防具を仕上げてもらえばいい」
「賛成。今日はそろそろ終わりにしましょ。もう十分動いたでしょ?」
「そうだな。……次の検査、ちょっと楽しみになってきたよ」
グレイブを武器棚へ戻しながら、俺は久しぶりに、探索者としてのこれからを前向きに考えていた。
◇ ◇ ◇
それから数日後、俺とリオナは再びアステリアさんの研究所を訪れていた。
前回の診察で次の検査日を約束しており、今日は魔力量と魔術適性を詳しく調べてもらう予定だ。あれからも軽い訓練は続けていたが、走るときの重心や長柄武器の扱いにはまだ課題が多い。だからこそ、今の自分にどんな魔術が使えるのか、ぜひ知っておきたかった。
「……何だか、前に来たときより緊張するな」
「ふふ。前は元に戻る方法が分かるかもって、ずいぶん緊張してたじゃない」
「それは今も気になってるよ。でも今日は、別の可能性もあるからさ」
受付で名前を告げると、ほどなくして前回と同じ研究室へ案内された。
「こんにちは、レインさん。リオナさんも、お待ちしておりました」
「こんにちは、アステリアさん。今日もよろしくお願いします!」
銀紫色の髪を流し、片眼鏡をかけたアステリアさんは、相変わらず落ち着いた雰囲気の美女だった。……うん、何度見ても綺麗だな。もっとも、今日は見惚れている場合ではない。
「前回から、お身体の調子はいかがですか?」
「大きな変化はありません。ただ、訓練してみたら以前の剣術がうまく使えなくて……」
俺は訓練場で試したことをかいつまんで説明した。短くなった手足と変わった重心。槍やグレイブを試したこと。そして、できれば身体強化に攻撃魔術や防御魔術を組み合わせてみたいこと。
「なるほど。これまでの近接戦闘の経験を活かしつつ、新しい魔術も習得したいのですね」
「はい。前は攻撃魔術が苦手だったんですけど、今なら使えるかもしれないと思って」
「可能性はあります。ただし、魔力量が多いことと、上手に魔術を扱えることは別ですよ。身体強化と放出系の魔術を同時に扱うなら、相応の訓練も必要でしょう」
「……やっぱり、簡単じゃないんですね」
「ええ。でも、まだ適性を調べていませんから、結論を急ぐ必要もありません」
アステリアさんの穏やかな返事に、俺は頷いた。才能があると分かったわけではない。それでも、可能性が残されているだけで嬉しかった。
「それと、もう一つ聞いてもいいですか? 両手でグレイブを使う場合、盾の代わりに防御魔術で身を守ることはできるんでしょうか」
「可能ではあります。ただ、魔術は展開に時間がかかるものもありますし、維持に魔力を消費します。盾が不要になるとは限りませんよ。咄嗟に使うには習熟も必要です」
「……なるほど。武器だけ先に決めない方がよさそうですね」
「そうですね。まずは今のレインさんに何ができるか、確かめてみましょう」
そう言って微笑んだアステリアさんは、ふと俺の表情を見て目を細めた。
「前回よりも随分と前向きになられたようですね」
「……そうかもしれません。元に戻る方法は探したいですけど、今の身体で何もできないままじゃ嫌なので」
「ふふっ。それは良いことです。もちろん、元の身体に戻すための調査も続けますよ」
「ありがとうございます!」
俺は改めて頭を下げた。元に戻れる保証がないのは不安だが、だからといって立ち止まっているつもりはない。少しずつでも、できることを増やしていきたかった。
「では、さっそく測定を始めましょうか」
案内された部屋の奥には、銀色の台座を中心にいくつもの結晶を組み込んだ魔導装置が設置されていた。床には複雑な紋様が刻まれ、淡い光が静かに流れている。
「最初は魔力量の測定です。こちらの結晶に手を添え、身体の内側にある魔力を意識してください。無理に流し込む必要はありません」
「分かりました」
リオナが少し離れたところから見守る中、俺は透明な結晶へそっと手を置いた。
アステリアさんが装置を起動すると、周囲の紋様が淡い紫色に輝き始める。俺は目を閉じ、男だった頃から慣れ親しんだ魔力の感覚を探った。
……やっぱり、違う。
身体の奥にあるものは以前と同じ魔力のはずなのに、その広がり方がまるで違って感じられる。戸惑いながら意識を集中させていると、掌を通して結晶へ何かが伝わっていくのが分かった。
そのときだった。
「…………?」
アステリアさんが、小さく息を呑んだ。
気になって目を開けると、彼女は片眼鏡の奥の瞳をわずかに見開き、結晶の内部に浮かび上がった紋様を見つめていた。
「……アステリアさん?」
呼びかけても、すぐには返事がない。いつも落ち着いている彼女の表情が、先ほどまでとは明らかに違っていた。
……え? 何か、おかしな結果でも出たのか?
期待と不安が入り交じる中、俺は淡い光を放つ結晶を見つめた。