TSした俺は爆乳美少女 ~爆乳お姉さんたちに愛される百合ハーレム迷宮譚~ 作:TS百合好き
女の子になってから迎える、初めての朝。
窓の向こうから聞こえる人々の声に耳を傾けながら、俺は寝台の上で小さく息を吐いた。
昨日は慣れない身体に振り回されっぱなしだったが、一晩眠ったおかげか、少しは気持ちが落ち着いたらしい。少なくとも、目を覚ました途端に自分の胸を見て悲鳴を上げるようなことはなかった。もっとも、だからといって今の姿に慣れたかと聞かれれば、首を横に振るしかないのだが。
「……重い」
上半身を起こそうとしたところで、思わず本音が漏れた。身体を動かすのに合わせて胸元の巨大な膨らみがずっしりと揺れ、寝台から起き上がるだけなのに、以前とはまるで勝手が違う。
昨夜、ミアさんが応急処置として巻いてくれた布のおかげで、多少は胸の重さを支えられているものの、きちんと身体に合う下着はまだない。これだけの重量を身体の前側に抱えている状態には、そう簡単に慣れられそうもなかった。
かつての俺は身軽さを活かして敵の懐に飛び込み、剣と盾を使い分けて戦っていた。それなのに今では、寝台から降りるという何でもない動作にさえ気を遣わなければならない。おまけに、ため息をつく自分の声まで妙に高くて可愛らしいのだから、どうにも調子が狂ってしまう。
「……はぁ。早く元に戻る方法を見つけないとな」
胸元から視線を逸らし、今度は背中に流れる長い髪をまとめようとする。しかし、昨日まで髪を結ぶ習慣などなかった俺には、これもなかなか難しい。何度か手探りで束ねてみたものの、うまくまとまらず、結局諦めてそのまま背中へ流すことにした。
ちょうどそのとき、部屋の扉が軽く叩かれた。
「レイン、起きてる?」
「ああ、起きてるよ。入っていいぞ」
「じゃあ、入るわね」
扉を開けて入ってきたのはリオナだった。赤茶色の髪をいつものように高い位置で結び、動きやすい探索者装備に身を包んでいる。肩には使い慣れたクロスボウを背負い、腰回りにも必要な道具を揃えているところを見ると、もう出発の準備は済ませたらしい。
「おはよう、リオナ。もう出かけるのか?」
「ええ。朝のうちに出れば、夕方までには戻れると思うわ」
「そっか。悪いな、俺がこんな状態じゃなければ一緒に行けるんだけど」
「今のあんたを迷宮に連れていく方が無理よ。まだ身体の動かし方も分かってないんだから、今日は大人しくしてなさい」
あまりに正論で、反論の余地もない。昨日、部屋の中を歩いただけでも重心の変化に戸惑ったのだから、そんな状態で魔物と戦えば、剣を振るより先に足を取られて転んでしまうだろう。
「……そうだよな。それで、手伝ってくれる人は見つかったのか?」
「ええ。前に臨時パーティーを組んだことがある知り合いに声をかけてあるわ。それから、ギルドを通してポーターも二人雇う予定。あの量だから、全部を一度に運び出せるかは分からないけどね」
「なるほど。確かに、あの宝物庫は結構な量があったもんな」
昨日、迷宮の隠し通路の先で発見した宝物庫には、金銀財宝だけでなく、見たこともない装備品がいくつも残されていた。守護者を倒したときには一攫千金を確信したものだが、その直後に謎の魔法陣が起動し、俺はこの姿に変えられてしまったのである。
当然、それからは財宝どころではなかった。リオナは意識を失った俺を助けることを最優先し、持ち帰れるはずの装備品まで諦めて迷宮を脱出してくれた。あの場所には、俺が長年使ってきた剣と盾も置き去りになっている。
「……俺の装備も、頼めるか?」
「もちろん。ちゃんと持って帰ってくるわよ」
「ありがとう。今の身体じゃ、もう使いこなせないかもしれないけどさ」
「それでも、あんたの大事な装備でしょ? 置いてくる理由にはならないわよ」
当たり前のように言われて、胸の奥がじんわりと温かくなる。リオナとは一年半ほど一緒に探索してきたが、こういうところは昔から変わらない。口では文句を言っても、いざというときには迷わず力になってくれる、本当に頼もしい相棒だった。
「それと、財宝の取り分についてなんだけど」
「ああ。手伝ってくれる人たちには、ちゃんと報酬を渡してくれ。危険な迷宮に入ってもらうわけだし、相場より多めでも構わないから」
「そのつもりよ。現物での支払いでも構わないか、事前に確認しておくわね」
「頼むよ。俺も今の身体に合う服や装備を揃えないといけないし、財宝が無事に回収できれば助かるな」
「そこは心配しなくていいわ。あんたの取り分はちゃんと確保しておくから。今までどおり、必要な経費を引いて二人で分けましょ」
「ああ。それなら安心だ」
昨日も取り分の話はしたが、リオナの孤児院への仕送りまで俺の事情で減らすわけにはいかない。もちろん、彼女もそれを望んでいないだろうし、俺たちがこれまで大切にしてきた約束でもある。
そんなことを考えていると、リオナは何かを察したように小さく笑った。
「……あんたって、本当に変わらないわね」
「何が?」
「別に。何でもないわよ」
顔を背けた彼女の口元が、ほんの少しだけ緩んでいる。理由を聞いてみようかと思ったものの、その前に廊下から足音が近づき、扉の向こうから明るい声が届いた。
「おはよう、二人とも! 朝ごはんの準備ができたよ!」
顔を覗かせたのは、この宿の看板娘であるミアさんだった。柔らかな桃色の髪を揺らし、いつもの仕事着で微笑む姿は今日も愛らしい。
「レイン、身体の調子はどう? 昨日よりは少し楽になった?」
「はい。おかげさまで、昨日よりは少し慣れてきた気がします」
「それなら良かった。あ、そうそう! 昨日話してた服なんだけど、朝までに少し調整してみたの。ちゃんとしたものが用意できるまでの間は、それを着ていてね」
「えっ、本当ですか!? ありがとうございます!」
「ふふっ。お礼なんていいよ。胸元はどうしても余裕が足りないから、完全には合わせられなかったんだけど……外套も使えば、短い外出くらいなら何とかなると思うよ」
ミアさんが用意してくれたのは、胸元に余裕を持たせるよう縫い直した服と、身体をすっぽり覆える外套だった。今の俺にぴったりというわけではないものの、少なくとも布を巻いただけの姿で外へ出るよりは、ずっと安心できそうだ。
「……本当に助かります。何から何までお世話になっちゃって」
「もう、遠慮しなくていいんだってば。それより、今日は教会に行く予定だったんだよね?」
「ああ、そうだった。……でも、リオナは財宝の回収に行くし、俺もまだ身体を上手く動かせないから、今日は見送ろうと思ってるんです」
「そうなんだ。だったら、まずはちゃんと外を歩けるようにしないとね。服のこともあるし、焦らず一つずつ片づけていこう?」
「……はい。そうします」
できることなら一刻も早く元の身体に戻る方法を知りたい。しかし、今の状態で一人で教会へ向かい、途中で転んだりしては元も子もない。まずは必要なものを揃え、落ち着いて出かけられるようにすることが先だろう。
「それじゃ、朝ごはんにしようか。リオナも、出かける前にしっかり食べていってね!」
「もちろんよ。今日は結構動くことになりそうだし」
「レインのことは私に任せて。お仕事の合間に様子を見に来るから、安心して行ってきてね」
「助かるわ。よろしくね、ミア」
いつものように笑い合う二人を眺めていると、不思議と気持ちが落ち着いてくる。身体が変わってしまったことは大事件だが、こうして頼れる人たちが身近にいてくれるのは、本当にありがたいことだった。
こうして、俺たちの新しい一日が始まった。もっとも、今日の俺にできることといえば、二人の厚意に甘えて宿で大人しく待っているくらいなのだけれど。
◇ ◇ ◇
朝食を終えると、リオナは宝物庫の財宝を回収するために迷宮へ向かい、ミアさんも宿屋の仕事へ戻っていった。
一人で部屋に残された俺の耳には、食堂で談笑する客たちの声や、廊下を行き来する従業員の足音が届いてくる。昨日までなら今頃はリオナと肩を並べ、迷宮の中で魔物を警戒しながら歩いていたはずだ。それが今では寝台に腰掛け、相棒の帰りを待つことしかできない。
「……何だか、落ち着かないな」
別に休養が嫌いなわけではない。探索者にとって身体を休めるのも大切な仕事だし、怪我をしたときには無理をしないよう、普段から心がけている。
ただ、今回は傷が癒えれば元通りという話ではなかった。身体の大きさも重心も変わり、これまで当たり前にできていたことさえ、一つずつ確かめなければならないのだから、どうにももどかしい。
俺はミアさんが用意してくれた服に着替えると、姿見の前に立ってみた。
胸元には少々無理があるものの、ゆったりとした服のおかげで昨日よりは随分とましになった。外套を羽織ってみれば、体型の極端な部分もある程度は隠せそうだ。
「……うん。これなら、何とか外を歩けるかな」
ただし、鏡に映っているのは、どう見ても可愛らしい女の子である。
長い栗色の髪に琥珀色の瞳。小柄で華奢な身体に、現実離れしたほど大きな胸と腰回り。昨日ミアさんに採寸してもらった数字を思い返しても、今ひとつ実感が湧かなかった。
身長は154センチ、バストは150センチ。ウエストは55センチしかないのに、ヒップは105センチもあるというのだから、我ながら滅茶苦茶な体型だと思う。
「……本当に、何でこんな身体になったんだろうな」
男だった頃の俺なら、間違いなく目を奪われていたであろう美少女。しかし、いざ自分がその身体になってみると、喜ぶどころか不便なことばかりである。
特に問題なのは、今まで当たり前にできていた動作が、思った以上に難しくなっていることだろう。
俺は姿見から少し離れると、部屋の中をゆっくり歩いてみることにした。
昨日より足取りは安定しているが、急に向きを変えようとすると、やはり胸の重さに身体が引かれてしまう。そこで足の運び方を少し変え、上半身をなるべく揺らさないよう意識してみると、先ほどよりも幾分か動きやすくなった。
「……なるほど。こういう感じか」
何度か繰り返すうちに、少しずつ感覚が掴めてきた。
もっとも、歩くことと戦うことでは話が違う。試しに剣を振る動作を思い浮かべてみたものの、今の身体で以前と同じように動けるとは到底思えなかった。
男だった頃の俺は、身体強化を使って素早く間合いを詰め、長剣と盾を使い分けながら戦っていた。相手の動きを見て踏み込み、攻撃を受け流し、隙を見つけて反撃する。何年も訓練を重ね、ようやく身につけた戦い方だ。
しかし、腕も脚も短くなり、重心まで変わってしまった今では、同じ動きを再現するのも難しいだろう。
「……せめて、身体の動かし方くらいは覚え直さないとな」
そう呟き、俺は無理のない範囲で歩いたり向きを変えたりしてみた。
今は剣を振ることすら難しいかもしれないが、だからといって探索者として積み重ねてきた経験まで消えたわけではない。身体の変化に慣れ、装備を整え直せば、またリオナと迷宮へ潜れるようになるかもしれないのだ。
しばらく練習を続けたところで、さすがに疲れを感じ始めた。
「……ふう。これだけで結構疲れるんだな」
寝台へ腰を下ろし、窓の外へ目を向ける。通りでは商人が荷車を引き、探索者らしい一団が談笑しながら行き過ぎていった。人々の営みも、迷宮都市の賑わいも、昨日までと何一つ変わらない。
変わってしまったのは、俺の方だけだ。
「……早く戻りたいな」
独り言は、考えるより先に口から出ていた。
女の子は好きだし、綺麗な女性も可愛らしい女性も大歓迎だ。だが、だからといって自分が女の子になりたかったわけではない。できることなら男の身体を取り戻し、これまでどおり探索者として迷宮を歩きたい。
とはいえ、元に戻る方法がすぐに見つかる保証もない。
まずは身体に合う服を揃え、教会で診察を受ける。それでも原因が分からなければ、今度は魔術に詳しい人を探してみればいい。焦ったところでどうにもならないのだから、一つずつできることを片づけていくしかないだろう。
そう考えると、少しだけ気持ちが軽くなった。
その後はミアさんが届けてくれた昼食を食べたり、部屋の中で軽く身体を動かしたりしながら過ごした。何度か歩く練習を繰り返しているうちに、最初ほど重心の変化に戸惑うこともなくなってきた気がする。
そんなことをしているうちに、いつしか窓から差し込む日差しは、午後の柔らかな色へと変わっていた。
◇ ◇ ◇
リオナが戻ってきたのは、夕方になる少し前だった。
「レイン、ただいま!」
「おかえり、リオナ!」
聞き慣れた声に反射的に立ち上がった俺は、部屋へ入ってきた彼女の姿を見て胸を撫で下ろした。さすがに多少の疲れは見えるものの、目立った怪我はなく、足取りもしっかりしている。
「無事だったんだな。良かった」
「もちろん。あの守護者はもういなかったし、道も覚えてたからね。帰りは荷物が多くて少し大変だったけど、問題なかったわよ」
「そっか。本当にありがとう。……それで、財宝は無事に回収できたのか?」
「ええ。さすがに全部は無理だったけど、価値の高そうなものを中心に持ち帰ってきたわ。ただ、その前にあんたへ返しておきたいものがあるの」
リオナは肩から下げていた大きな荷袋を床に置くと、外側に括りつけてあった二つの包みを解いた。
現れたのは、使い込まれた長剣と、何度も修理を重ねてきた盾。どちらも俺が探索者になってから大切に使い続けてきた、見慣れた装備だった。
「あっ……!」
「ちゃんと持って帰ってきたわよ。宝物庫の入り口近くに残ってたから、すぐに見つかったの」
「……ありがとう、リオナ」
俺は差し出された長剣を受け取り、慣れ親しんだ柄を握りしめた。
何年も使い続けてきた武器である。傷の一つ一つに見覚えがあるし、握り慣れた柄の感触だって、簡単に忘れるものではない。
ただ、今の身体では以前よりもずっと重く感じられた。
「……やっぱり、これがあると落ち着くな。でも、さすがに今の俺には長すぎるかもしれない」
「ふふっ。ずっと使ってたものね。無理に振り回したりしないでよ?」
「分かってるって。……まあ、ちょっと残念だけどさ」
かつて178センチあった身長は、今では154センチ。24センチも縮んでしまえば、当然、使いやすい武器の長さも変わってくる。盾にしても腕の長さや筋力が以前とは違う以上、装備を調整するだけで済むのかさえ分からなかった。
それでも、大切にしてきた武器が無事に戻ってきたのは素直に嬉しい。
俺は長剣を元の鞘へ収めると、改めてリオナへ向き直った。
「……本当にありがとう。リオナこそ、疲れてないか? 俺を助けてくれたばかりなのに、今日も迷宮へ行ってもらっちゃって」
「大丈夫よ。それに、あのまま財宝を放っておく方が気になったもの。誰かに見つかる前に、少しでも回収しておきたかったしね」
「それもそうか。……で、実際どれくらいあったんだ?」
「かなりの量よ。古い貨幣や装飾品、宝石、それに用途の分からない魔導具まであったわ。全部を持ち帰るのは難しかったから、今回は価値が高そうで運びやすいものを優先したの」
話を聞く限り、あの宝物庫にはまだ相当な財宝が残っているらしい。
もちろん、すべてを回収するには何度か往復する必要があるだろう。見つけたものの中には鑑定が必要な魔導具もあるというし、今すぐ売り払うより、慎重に整理した方が良さそうだ。
「手伝ってくれた探索者とポーターには、約束どおり報酬を渡しておいたわ。見つかった貨幣と装飾品の一部を使ったけど、みんな納得してくれたわよ」
「良かった。危険な仕事を引き受けてもらったんだし、ちゃんと払わないとな」
「ええ。今回持ち帰った分は、ひとまず宿で預かってもらえることになったから、落ち着いたら二人で整理しましょ。鑑定が必要なものもあるし、すぐに全部売る必要はないと思うわ」
「そうだな。……それにしても、思ってた以上の大当たりだったんだな」
「そうね。あんたが女の子になったことを除けば、ね」
「そこを除けばな!」
思わず声を張り上げると、リオナが楽しそうに笑った。
人の身に起きた大事件を何だと思っているのかと言いたくなるが、こうして軽口を叩き合えるくらいには、俺たちも落ち着いてきたのかもしれない。
「それでね、レイン。財宝の中から、あんたにも見せたいものがあるの」
「見せたいもの?」
「ふふっ。これよ」
リオナが荷袋から取り出したのは、布に包まれた細長い物体だった。
慎重に布を解くと、複雑な魔術紋様が刻まれた金属製の銃身が姿を現す。その形を見た瞬間、俺は思わず身を乗り出してしまった。
「……あっ! それ、宝物庫で見つけた魔導銃じゃないか!」
「ええ。ちゃんと回収してきたわよ。あのときは置いてくるしかなかったけど、これだけは絶対に持って帰りたかったの」
そう言って微笑むリオナは、どこか誇らしげだった。
無理もない。魔導銃は迷宮の奥深くからごく稀に発見されるという、極めて希少な武器なのだから。
内部構造の多くは解明されておらず、現代の技術では同じものを新しく製造することができないとされている。射撃の得意なリオナにとって、これほど魅力的な戦利品はないだろう。
「……良かったな、リオナ。あのときから、ずっと気にしてたもんな」
「当然でしょ? こんなもの、もう二度と見つからないかもしれないんだから!」
「ははっ、そりゃそうだ。……でも、使えるのかな?」
宝物庫で発見したときにも見たはずだが、こうして改めて眺めると、その精巧な造りに驚かされる。
長い銃身には細かな魔術紋様が刻まれ、持ち手の部分にも見慣れない装置が取り付けられていた。弓やクロスボウとはまったく異なる構造で、どうやって魔力を射出するのかさえ分からない。
「見たところ壊れてはいないと思うんだけど、詳しいことは分からないのよね。下手に魔力を流して暴発させたりしたら大変だし、ちゃんと調べてもらうつもりよ」
「……それがいいな。せっかく手に入れたのに、使い方を間違えて壊しちゃったらもったいないし」
「ええ。それに、もし使えるなら、私の新しい武器になるかもしれないでしょ?」
リオナの緑色の瞳が、期待に輝いていた。
俺だってその気持ちは分かる。探索者にとって、新しい武器を手に入れるというのは、それだけで胸が躍る出来事なのだ。
しかも魔導銃ともなれば、これまで使ってきたクロスボウとはまったく違う戦い方ができるかもしれない。
「……それで、その魔導銃を調べてもらえる人に心当たりでもあるのか?」
「もちろん。あんたの服のこともあるし、ちょうどいいから一緒に相談しようと思って」
「……俺の服?」
首を傾げた俺に、リオナは呆れたような視線を向けてきた。
「あんた、まさか忘れてたんじゃないでしょうね? いつまでもミアから服を借りっぱなしというわけにはいかないでしょ」
「ああ、そうだった! いや、忘れてたわけじゃないんだけど、装備が戻ってきたらつい……」
「……まったく。そういうところは本当に変わらないわね」
ため息をついたリオナだったが、すぐに表情を和らげた。
「実はね、魔法衣装や魔導具を作っている、腕のいい職人さんがいるの。今のあんたみたいに普通の服が合わない場合でも、何とかしてくれるかもしれないわ」
「へえ。そんな人がいるんだ」
「ええ。ちょっと変わったところもあるけど、腕は確かよ。魔導銃のことも相談できると思うし、せっかくだから今日のうちに顔を出してみない?」
魔法衣装と魔導具を扱う職人か。
そういえば昨日、リオナがそんな人の噂を聞いたことがあると言っていたっけ。どうやら、既に心当たりがあったらしい。
「それは助かるな。今の俺に合う服や下着が必要だし、できれば装備のことも相談したいんだ」
「そうね。ただ、まずは普段の生活で困らないようにするのが先よ。戦闘用の装備は、身体の動かし方を覚えてから考えましょ」
「……まあ、それもそうか」
取り戻した長剣と盾を眺めながら、俺は小さく頷いた。
もちろん、以前のように迷宮へ潜れるようになりたい気持ちはある。しかし、今の身体では歩くことさえ練習が必要なのだから、いきなり戦闘用の装備を揃えたところで使いこなせるとは限らない。
まずは普段の生活に必要な服を用意し、少しずつ身体を慣らしていく。そのうえで、自分に合う武器を探せばいいのだろう。
「……分かった。じゃあ、その職人さんのところへ行ってみようか。名前は何ていう人なんだ?」
「ベルナさんよ。魔法衣装と魔導具の職人で、以前から何度かお世話になっているの」
「ベルナさん、か。……うん。覚えた」
初めて聞くはずの名前なのに、何となく引っかかるものがあった。
……いや、気のせいだろうか。
そういえば、セレナさんやミアさんのときも、似たような感覚があったような気がする。
もっとも、今はそれよりも目の前の問題を何とかする方が先だ。リオナが信頼している職人なら、きっと力になってくれるだろう。
「それじゃあ、準備しようか。ミアさんが朝に直してくれた服もあるし、外套を羽織れば何とか歩けそうだ」
「ええ。でも、その前にミアへ声をかけておきましょ。勝手に出かけたら心配するでしょうし」
「そうだな。それに、服のお礼も改めて言いたいし」
俺は朝から何度か練習した動きを意識しながら立ち上がると、外套を羽織った。
まだ身体の重心には慣れないし、長い髪や大きな胸にも戸惑うことばかりだ。それでも、昨日よりは少しだけ自分の足でしっかり歩けるようになった気がする。
取り戻した剣と盾は、今の俺には以前ほど頼もしい武器ではなくなってしまった。けれど、探索者として積み重ねてきた経験まで失われたわけではない。
何より、こうして困ったときに力を貸してくれる相棒がいる。
「……よし。それじゃあ行こうか、リオナ!」
「ふふっ。ええ。きっとベルナさんなら、力になってくれると思うわ」
リオナの心強い言葉に頷き返し、俺は彼女と一緒に部屋を出た。
元の身体へ戻る方法はまだ分からない。それでも、今できることを一つずつ片づけていけば、きっと何かが変わっていくはずだ。
そんな期待を胸に抱きながら、俺たちはベルナさんの工房へ向かうことにした。