Neptune Ⅱ~蒼海の追跡者~ 作:R提督(旧SYSTEM-R)
今回は閑話休題として、前作「蒼海の守護者」でもやったQ&A方式の世界観説明回をやろうと思います。第四章に向けての箸休め程度にお読みいただければ幸いです。それではどうぞ。
Neptune世界観設定part.2(Q&A方式)
Q.MOSAD制度とは何ですか?
A.作中世界の日本国防軍におけるMOSAD(Maritime Officers Studies And Development/海軍・沿岸警備隊士官留学育成制度)とは、同じ海上軍種である海軍と沿岸警備隊の若手士官同士を双方に派遣し、一定期間派遣先で勤務させることで、お互いの軍種の任務やその思想などについて、相互理解を深める制度です。これを継続的に実施することで、統合作戦における軍種間の差異をお互いが理解し、円滑な作戦遂行に役立てる狙いがあります。
階級的には概ね、海軍であれば少佐~中尉、沿岸警備隊であれば三佐~二尉の幹部・士官が派遣の対象となります。なお、前作「蒼海の守護者」では、国防海軍の岩城雅也准尉が、掌通信士としてこの制度を用いてふそうに派遣されていますが、これは育成というよりもふそうに臨時搭載したSSM-1Bの運用が目的であったためで、例外的な措置となります。いわばウルトラCってやつですね。
Q.派遣先の艦長は、所属軍種が異なる派遣士官に対してどこまで命令できる?
A.派遣士官は、階級や俸給などは派遣期間中も派遣元のものをそのまま用いる一方、一定以上の期間派遣される場合には、指揮系統的には臨時で派遣先の士官名簿に名前が載ります。ただし外様ではあるため、例えば海軍少佐である司の場合であれば、名簿掲載順は三佐の最後尾者の後ろ、一尉の最先任者よりも前、という順番になります。
このため、艦長側は原則として自身の艦の正規の乗員と同様に、派遣士官に対して命令を下すことができます。ただし、配属される分隊については原則派遣元の承認を必要とする事項となるため、司のように配置変更が必要となった場合には、作中の蒼が肥後にしたように派遣元の責任者に願い出る必要があります。
Q.MOSAD派遣士官って、ふそうに派遣された場合は全員浴室でのアレ食らうの?
A.はい、全員対象になります(笑) 総員配置の際は、誰が誰を呼びに行くことになるかはその時にならないと分かりませんので。現場の即応性向上を目的とした訓練であるため、期間中複数名が派遣されていれば、全員受けることになります。なお、厳密に言うとこれはMOSAD派遣士官に限らず、「臨時で乗ってきた外部の男性乗員」が対象になります。浴室で事故を起こす可能性は、男性乗員は構造的に全員秘めてしまっているので。従って、文民である篤志も受けさせられてるわけですね。
なお、作中の「慣熟訓練」はそれなりに厳密に軍事的ロジックを組んだものとはしていますが、現実の海自や海保が採用するとは当然全く考えておりません。あくまで、読者サービスも含めたお色気シーンを、単なる幕間ではなく実際の任務にも影響を及ぼす演出として使うための、本作独自の工夫程度に考えてください。
Q.沿岸警備局は軍事基地なのに、一般市民が訪問できるのは何故?
A.一言で言うと、沿岸警備隊が海保の後継組織だからです。
日本国沿岸警備隊は、海上警察機関である現実世界の海上保安庁を、法執行権限を持つ軍隊として発展的解消したものです。第10話でも沢渡がおばーに説明している通り、海保が担っている任務は全て沿岸警備隊にそのまま引き継がれている、という設定になっています。
このため各地に所在する沿岸警備局は、蒼が言う通り警備船隊司令部としての機能に加えて、市民からの通報対応などの行政サービスを提供する拠点ともなっています。もちろん沢渡が説明したとおり、入庁にあたり事前予約が必要だったりするなど、軍事拠点ゆえの制限はありますが、陸海空軍と比べるとより市民に開かれている、ということは言えると思います。
Q.沿岸警備局には、どんな部署がある?
沿岸警備局、というよりそれ自体も含めた基地全体の組織としては、大体下記のような部門・施設が存在します。
・警備船隊司令部 配下にある警備船隊に対し、作戦等の指揮監督や国防海軍への通報・軍種間調整等を行う
・統括部 沿岸警備局長を主に作戦面から支える。現実の自衛隊における幕僚部に相当
・警備救難部 海上犯罪・海難救助・防災を管轄する
・科学測量部 海洋調査・海図・情報提供を管轄する
・交通部 航行安全・航路標識及び関連手続きを管轄する
・総務部 来庁者受付・案内・広報・担当部署への取次ぎを管轄する
・オペレーション室 警備船隊司令部内にあり、市民からの118番通報を受け付ける
・基地警備隊 施設の警備、来庁者に対するエスコートなどを行う
下記は沿岸警備局ではなく、警備局が所在する基地側の部門・部隊となります。
・基地業務隊 部隊及び機関に係る厚生、会計、給養、車両、施設及び海上予備員の収容その他の業務を行う。現実の海上自衛隊、作中の国防海軍と同様
・警備船隊 配下の沿岸警備艦及び巡視船艇で構成される船隊。現実の海自の水上戦群、作中の国防海軍の護衛隊群に相当
・港務隊 港湾運用/支援、港湾/水路防衛を担当する。海自・国防海軍と同様
・留置部 身柄拘束した被疑者を一時留置する施設の管理・運営を担う
Q.なぜ麻薬取締官の浦賀篤志が、軍艦ふそうに乗っている?
A.ふそうの正規乗員だけでは、薬物事案の捜査に関する専門知識が不足するためです。
沿岸警備隊は今作のような、密輸事案にも対応しているため、コンソルシオ相手に限らず薬物に関連する拿捕作戦は少なからず実施しています。しかし、彼らはあくまで船の専門家であるため、薬物事案特有の専門知識や情報を、必ずしも持っているわけではありません。また、いわゆる囮捜査は沿岸警備隊員には認められていない権限であるため、そこで得た情報を活用する意味でも篤志のような捜査官の同乗は必要です。
Q.麻薬取締官は軍人に命令できる?
A.できません。指揮命令系統が異なるため、あくまで要請ベースで協力を依頼する形になります。同様に、軍人側も取締官に対して命令することはできません。なので、第4話で蒼や黒川が慣熟訓練に参加するよう結果的に仕向けたのも、一応厳密には命令ではありません…、一応。まぁ、実際問題あそこで残留する判断をしたのは、結果的に正しかったとは思います。
Q.海上で犯人を逮捕した場合、その後の捜査は誰が担当する?
A.通常は麻薬取締官が中心となりますが、今回の場合は篤志が既に潜入捜査に出ているため、いわゆる顔バレが発生することにリスクが存在します。そのため、動線管理の意味でも沿岸警備隊側が中心になるでしょう。その範囲内で、両者が引き続き協力して実施する形になると思います。沿岸警備隊が海上での現行犯逮捕、船内捜索、証拠物の保全を担当し、麻取が薬物の鑑定や流通経路の解明を担当する、といった役割分担になりますね。
Q.複数の艦艇が共同で目標を追跡する場合、情報はどう共有される?
A.前作「蒼海の守護者」でも登場した、海軍戦術情報システム(Naval Tactical Information System/NTIS)が基盤となります。沿岸警備隊指揮システム(Coast Guard Operation System/CGOS)といったOS系、リンク16といった通信系など、複数システムを統合した戦術情報システムです。「海軍」とつく通り、基本的には海軍が運用するシステムですが、作中世界では法律上、沿岸警備隊が運用する艦艇にも設置が義務付けられています。
なお、NTISは口頭では「エヌティス」ないし「エンティス」と発音されますが、こちらはアメリカ海軍が現実に運用するNTDS(Naval Tactical Data System)を参考とした架空のシステムとなります。CGOSも同様に架空のシステムとなっており、こちらは「シーゴス」と呼ばれます。
Q.密輸船を沈没させず、航行不能にする理由は?
A.密輸船は「守護者」でも登場した工作船などと同様、現場では「該船(取り締まり対象の船舶)」として扱われます。該船と認定された船は、被疑者となる運航人員の身柄や、証拠物となる搭載物、あるいは船体そのものを出来る限りそのまま取り押さえ、証拠として司法接続することが必要となります。
沿岸警備隊は軍隊ではありますが、平時はあくまで法執行機関としての仕事をするため、こうした場面で該船を沈没させるのはご法度です。「守護者」ではるなが第六十二円竜丸を独断で沈めた際、ふそうクルーが激怒した理由の一端も、そこにあるわけですね(もちろん、柳田が怪我をさせられたのが一番大きいのですが)。
次回からは本編に戻る予定です。どうぞお楽しみに。それではまたお会いしましょう。