テイワットでエロ漫画つくった結果www 作:鉄棒ぬらぬら
転生した。
漫画家(と小説家)になってみた。
稲妻の三奉行ほどではなくともそこそこの歴史と財力を持つ家の末娘に生まれ、そこそこ甘やかされて育った私。
転生者特有の下駄履かせた知識レベルを神童と勘違いされて教令院に留学を勧められたのが齢12の頃。どうせ大人になったらそこらの一般人と大差ないレベルだろうなと内心考えつつも前世の記憶と現世の心、それぞれから発する好奇心に誘われるままに因論派に入学を果たした。
しかしゲーム作中でも散々語られていたとはいえど、草神不在の教令院はおおむね箱入りで育った私にとっては余りにも息苦しい場所だった。魔鱗病やら世界樹の汚染やらで後がないのは理解の範疇といえど、実学重視の利益主義・権威主義も相まって常日頃からピリついた空気が蔓延していた。心の弱い者ならあそこに居るだけでストレスで倒れてもおかしくないだろう。
さらに私物を盗まれたり水を掛けられたりといった学生たちから嫌がらせがやたらと多かった。幼少期から勉学に励んできた学者の子にしてみれば、のんきな顔した外国人が優秀な評価をいとも簡単に掴み取り、教員から高評価を得ているというのはさぞかし気に食わなかっただろう。おまけに背丈が小さいことも災いしたのかもしれない。
挙句の果てに卒業プロジェクトとして手掛けていた「娯楽による犯罪抑止の効果」──日本のアミューズメント施設がアメリカで流行していた話を何となく記憶していた──について記述した論文を「教令院の名誉を汚す悪しき研究」などと変な連中に抜かされその場で燃やされてしまった。
すっかりやる気を失った私はヤケになって当の学生たち暴行を働きその勢いで退学、単身フォンテーヌへ渡ったのであった。
フォンテーヌで優雅な生活……なんて、そうは簡単にいかなかった。
簡単な接客や小売りで糊口を凌ぐ生活を送る中、ふと思い立って八重堂やフォンテーヌの各出版社が募集していた小説新人賞に応募してみた。
前世も含めた経験が功を奏し、書籍化にも恵まれたけれど、その先に過酷な日々が待ち受けているとは思いもしなかった。
ある出版社では、リテイクを命じられた回数は50を超えてから数えるのをやめた。やっとのことで書き上げたと思ったら、そもそも自作が新作会議の俎上に上がったことはなく、全て担当の机の抽斗に眠ったままだった。余所では勝手にタイトルや本文が変更されることはざらにあった。挙句の果てに勝手に舞台化されて新人役者の踏み台にされたこともあった。
今となっては懐かしいツイッターで散々流れていたエンタメ業界の闇にテイワットでも触れるのかよと枕を濡らした日々だった。
とはいえ、八重堂は真っ当だったし、スチームバード新聞での連載という良縁にも恵まれたので、少なくとも食うに困ることは無かった。
話は変わるが、私は留学前から漫画家もやっていた。
前世の私を魅了させた数多くのエンタメがこの世に存在しない絶望を払拭するには自分で作るしかないと一念発起した結果である。
10歳の時に新人賞受賞の知らせが家に届いた際は、両親や兄姉を大いに困惑させ、同時に心配させた。私はというと、前世では特に少女漫画界隈では学生のうちにデビューが少なくないことを思い出し、デビューを決意し、海の向こうでも漫画を描き続けた。
ただ遠距離に加え、学生の身分では忙しいことを理由に、読み切りや単巻完結、長くても三巻までの短い話を作り続けた。
フォンテーヌへ移り住み、大人になってからは成人向け……いわゆるエロ漫画も手掛け始めた。BLも百合も、おねショタもショタおねも、NTRも触手もケモも、欠損も石化も人格排泄も、とにかく覚えている限りの前世の性癖は全部漫画にした。法の国らしく表現規制が厳しいため、メリュジーヌやらドラゴンマシナリーやらあの手この手で規制を潜り抜けようと努力した日々もあった。
次第に需要が増えていったのか、似たようなものが流通するようになった。風の噂でスメールやスネージナヤでも流行っていると聞いた。
今になって、考える。
「さすがに18禁用ペンネームを「新世界の神」にしたのは、不味かったでしょうか……」
現在時刻は午前4時(多分)、場所はサーンドル河の路地裏の影。
ちらほらと怪しげな影が行ったり来たりしているのを私はこっそり盗み見ていた。
正体不明の不審者集団に殺されかけ、命からがら逃げだし、複数人に追いかけ回されてはや数時間。状況は全く持ってよくない。
脚にかすった銃弾の傷が痛くてたまらない。止血はしているものの痛みはどうしようもないし、おまけに機動も下がっていいことなしだ。
不審者たちから逃げ続ける中ずっと思考を巡らせ続けたのだが、犯人の正体にさっぱり心当たりがない。いや犯罪都市フォンテーヌだから知らぬうちにどこかで恨みを買っていたのかもしれないけど、大規模な犯罪組織とはまるで縁がない。
偶然か計算のうちかは不明だが、よりにもよってモンドへの引っ越しをほぼ完了した日に襲撃されるとは思いもしなかった。
一月前、西風騎士団からの手紙──仕事の依頼、それも結構長期──を受け、面白そうだとモンドへの移住を決めた。
不要な物は処分し、仕事道具や服などはすでにモンドへ発送済み、大切な原稿や財産なども北国銀行に預けているため、事実上今の私はほぼ手ぶら。喪って困るのはこの命くらいなものである。
手紙のやりとりで雑談ついでに連続少女失踪事件の話をしたら心配されたのか、西風騎士団から迎えの人員が派遣される手はずになっている。何としても合流しなければならない。幸いにして待ち合わせ時刻は今日の午前中のため、ひょっとしたらもうフォンテーヌに入っている可能性だってある。とにかくこの場をやり過ごし、待ち合わせの時間まで生き延びる。実に単純明快だ。
「とはいえ、果たしてどちらにいらっしゃるやら」
人の気配が無くなったのを確認し、よたよたと動き始めた。
当たり前だがこの世界はゲームそのままではない。国家間の距離がたったの数kmなんてことはなく、それぞれの国が相応の広大な面積を有しているのだ。このフォンテーヌ廷も建物の数はゲーム以上に多い。宿泊サービスが受けられるのはホテルドゥボールだけでなく、大小さまざまな宿があちこちに存在する。その中からピンポイントでモンドの騎士が泊まっている建物を見つけ出すのは当たり前だが困難に決まっている。
「いたぞ! 追え!」
「囲め囲め!」
「うえぇ……」
男たちの声と足音が響く。
痛む脚に鞭打って走り出した。
前世の記憶に頼りながら、脳内にマップを描きだす。
よく考えたらこんな人気のない暗がりに逃げ込むのは間違いだった。ひょっとしたら向こうに誘導されたかもしれない。
まだ人のいない道を何とか駆け抜ける。この道を真っ直ぐに進めば地上に出るはずだ。
「たーすーけーてー!!!」
ついでに大声で叫び、そこらで拾った金属パイプで壁や地面をガンガンと殴りつける。耳障りな金属音が辺り一帯に響き渡った。
危ない目にあったらとにかく叫んで助けを呼ぶこと。実行が随分と遅くなってしまったがやらないよりはマシだろう。
「ンぐおおおおおおおおおおお!!! たすけて! たすけてー!」
「誰かヤツを黙らせろ!」
「クソッ、思ったより足が速い!」
「あーあーあーあー! たすけてくださいー!!」
バタバタバタ、バンバンバン、と雨音の様な足音と銃声が背後からみるみる迫ってくる。
正直脚はもう限界だし、疲れて元気はないし、眠いし、喉痛いし、嫌になる。
「このアマがっ、これでも喰らいやがれ!」
「へぁ──ウグッ、ブホッ!?」
地上まであと少しのところで、背後から衝撃を受けた。何か投げつけられた?
顔面から倒れ込んだ途端に背中から思いっきり踏んづけられ、背後から首をわしづかみにされる。勢いよく持ち上げられた次の瞬間、顔と腹を何度も殴られた。
「あぐ……ふ、ぅ」
「やっと大人しくなりやがった……おい、ロシ持って来い!」
「えっ、命令は抹殺だけでは? 勝手に使ったらボスがどうなるか……」
「どうせ殺すならそれまで何してもいいだろ。ここまで手間掛けさせたんだ、殺すだけじゃ気が済まねえ」
「それもそうだ。連続少女失踪事件の一つってことにしておけば何も問題はない」
あぁもう、本当におしまいなのか。
多少は転生ライフも楽しめたけれど、こんな形で終わるなんて信じたくない。気まずくて会えずじまいの家族にちゃんと謝れていない。留学に補助金を出してくれた社奉行の人だってそうだ。スチームバードの担当者。連載継続も合意したのに。エロ本の出版を手伝ってくれた協力者。新しいネタを思いついたから手紙送るって話だった。何より、漫画の新人賞に丁寧なコメントをくれて、娯楽小説の分野に飛び込んでも応援してくれた八重編集長。あの人にお礼がちゃんとできてない。まだやりたいことなんてたくさんあるのに。
だれか助けて──
「──凍れッ!」
「もう逃げ道はないよ!」
「痺れさせてあげる」
「何だッ!? グワアァッ!!!」
余りにも 聞いたことのある 声がする
頭が真っ白になった瞬間、高所を火焔が、中空を紫電が、足元を冷気が奔って行った。男たちの悲鳴と倒れ込む音が聞こえる。
「何者だ!」
「下衆に名乗る名は無いな」
「邪魔しやがって、せめて標的だけでも!」
「このっ、絶対許さないんだから!」
頭上で発生しているのは間違いなく元素力の発露。でもこれは、もしかして、もしかするのか?
衝撃と全身の痛みで身動きが取れない私。状況がうまく把握できない。
「ふぅ……やっと大人しくなった。あんた、大丈夫? あっ、もしかして!」
「まぁ。すごい偶然ね。間にあって良かったわ」
「ったく、アイツらひどいことしやがる。待ってろ、すぐ手当てするから」
静かになった路地裏。私は倒れ込んだまま動けない。
掛けられた声と差し出された手にまた硬直する。心なしか手足が震え、鳥肌が立っている気がした。しかし、ここで止まっていても話が始まらない。意を決してその手をとり、支えられながら起き上がる。
予想通り、そこに居たのは三人の男女だった。見覚えのある顔。聞き覚えのある声。よく知る姿。凄まじい感動を表情の下に抑え込みながら、真っ直ぐ恩人に向き直る。
「小笠原白雪と申します。仕事が始まる前に御迷惑をおかけいたしました、騎士様方」
薄闇の中、三人に正座で一礼する。
テイワット歴20と数年の転生者にとって、二回目となるプレイアブルキャラとの対面でもあった。
***
それから。
例の男たちは警察隊に逮捕・連行されていった。
事情聴取や諸々の手続きは迎えの騎士──リサさん・ガイアさん・アンバーさんがほとんど対応してくれた。来るとしたら実際に手紙をやりとりした副団長さんかな、さすがに忙しいから一般西風騎士かな、なんて適当に考えていたものの、まさかの豪華メンバーが送迎担当。至れり尽くせりで恐縮である。
出発を一日遅らせることも提案されたが、さっさとこの国から離れたかったため、無理をいって太陽が中天を過ぎたあたりでフォンテーヌを発った。
道中の雑談で、ガイアさんとアンバーさんが送迎担当に立候補したのは単純に私のファンで直に会いたかっただけという話になった。
あわよくばサインをもらえないかという魂胆もあったらしく、アンバーさんは恋愛要素多めの冒険もの、ガイアさんはたまにギャグが挟まるダークファンタジーのコミックをそれぞれ持ちよっていた。悪い気はしないので普通にサインをした。リサさんはといえばモンドに戻ってからじっくりお話ししてからサインをもらいたいという。何だか少し身構えてしまうのは何故だろうか。
「あぁ……そういえば、思い至りました」
「えっ、何が?」
「例の連中、確かロシという違法薬物の売買やってる組織の人間ですね。私の本が爆売れして、流れる金が減ったのが動機だと思います」
「一理あるわね。こういう時、稲妻では「風が吹けば桶屋が儲かる」というのでしょう?」
「詳しいですね」
そうして、途中集落に立ち寄り休みつつ、お喋りしながらゆっくりペースで旅路を進み、ついに自由の国に到着した。
前世のプレイ経験からくる実家の様な安心感も相まって、湖に浮かぶモンド城は見えたときは思わず涙が出てしまったほどである。
「おいおい、まだ城に入ってもいないぜ、白雪先生?」
「ふふっ、喜んでもらえてよかった。何があってもわたしたちが守るから、安心してね」
「これからよろしくお願いするわ、先生」
微笑む三人。吹き抜ける温かで優しい風が、来訪者を歓迎しているようだった。
散々な目に遭ってきたが、ここでなら新しい仕事と素敵な生活を両立できるかもしれない。心機一転。色んなものが蓄積した心身を切り替えるように胸いっぱいに空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
ここはゴールではない。やるべきこともやりたいこともたくさんある。ただ、久しぶりにワクワクする気持ちが抑えられなかった。
「とりあえず……おっぱいとお尻、どっちが人気か調べるところから始めようかと思います」
「「「うん?」」」
Q.エロ漫画作るとどうなる?
A.殺されかける。
エロ漫画要素薄いし原作キャラほとんど出てないけどまぁ導入ってことで
次回以降も妙に濃いオリキャラとか出てきます