ボッコボコにしてやんよ!! 作:おいらだぜ!
おいらボコだぜ!島田流との初めての戦車道の試合で勝利だぜ!
素人なおいら達が経験者とまともにやり合えないなら、おいらがまともじゃなくなるのが一番だな!
戦車が砲弾を発射するのではない、
戦車の体当たりは規則違反じゃないからな、行ける時は奇策でも邪道でもガンガン狙うぜ!
という訳で戦車と一緒に回収してもらって自分の陣地に戻って来たぜ。さっそく西住師範に褒めて貰おうと思ったら西住姉妹に奇襲されちまった!
「ぼこおかえり~!」
「ぼこつよーい!!」
何と言う事だ、百戦錬磨のおいらがちびっ子二人に先制攻撃を喰らうなんてこいつら凄まじい才能だぜ!
しかし!ボコに抱き着くだけじゃあボコボコとは言えないな!おいらが本当のボコボコ見せてやるぜ~!!
「きゃー!」
「きゃー!」
うへへへへ、ここがええんか、ここがええんか。これが必殺のW
「おかえりなさい、ボコ」
西住師範だ~!おいら勝ったぜ!褒めてくれよ~!!がんばったんだぞ~!!
「これはこれは……野生の獣かと思えば随分と飼いならしたものですね」
「……うぇ!?島田流家元!?」
おいらはバックステップで飛びだし、低く構える。これは相手の動きに呼応して土下座を行う為の予備動作だ!!
「ふむ、まるで臆病な小型犬。しかし戦車に乗れば獣に化ける……貴女、戦車を突っ込ませたのは誰の作戦かしら」
「おいらだぜ」
「貴女、西住流の門下ではないのかしら?随分と規範から外れているように思えるのですが」
「おいらは戦車道を初めて二週間だ、西住流の門にすら触ってないぜ」
二週間、その言葉に島田流家元の島田千代は眉を顰める。
操縦手、通信手、砲手、装填手。これらに比べて車長なら素人でも成り立つ?
そんな訳がない、車長は人間の大脳、全ての外部情報の集積箇所であり全ての行動の意思決定権を持つ者。
例え一つしか作戦が無かったとしても、連携が乱れれば戦車は十全に動かない。
「それでは、どうやってこれ程の連携を取れるようになったのかしら?戦車に乗りながら西住流の教官にでも教わったの?」
「ん?いや、最初はおいら達はおいら達だけで練習したぜ?」
「成程、まずは自分達で戦車に乗ってみてどんなものかと体験してから―――」
「いやいや、そもそも戦車が無かったからおいら達
錆ついたような動きで西住師範を見る島田流家元、いや違うんすよみたいな顔をしながら相手に顔を見せないように顔を逸らした西住師範。
「そ、そう。それじゃあ戦車に乗ったのはいつからなの?」
「ん?確か―――3日!!!」
にこやかに三本の指を立てたボコを見て
二人が帰ってくるまで退屈だったおいら達は、ボコの歌を歌いながら楽しく遊んでいたのだった。
「おいらは小久保心穂!あだ名はボコ!よろしくな!!」
「「「よ、よろしくおねがいします……」」」
西住流の訓練所、ここにオイラと師範が連れて来た戦車乗りの三人は立派な制服に身を包んで立っていた。
三人の名前は
「この度、おいら達は二週間後に試合を行う事となった!そして西住師範のご厚意によりこの演習場の一部を貸していただく事となった!」
おお、と三人から声をが漏れる。しかし疑問を覚えた寧子が手を上げる。
「あの…ボコさん。戦車は何処にあるんですか?」
「ないぞ」
「……え?」
「戦車は後で来る、それまではおいら達だけで練習する!ついでに寝泊まりもここだ!!」
「「「はぁ!!?」」」
余りの事態に素が出る三人、もしやと思って渡された背嚢を漁ると出て来たのは各種サバイバルグッズ一式でホテルとかは無しだ。
「自分達で食料と寝床を調達しながら二週間でおいら達は強くなる!この―――桜島でな!!」
戦車が無いのに戦車道?流石にこれはあんまりではないのか?不良娘達は逃げ出したくなったし逃げたが即捕まった。
「いいか、戦車道だろうが喧嘩だろうが気合と根性と工夫で何とかなるもんだ」
そう言って始まった彼女達の練習は―――たった一組だけの騎馬戦から始まった。
「足並みを揃え、意識を束ね、自分達が何を行っているかをリンクさせる」
「視界もゴーグルをつけて遮り、砲塔旋回速度も装填時間も実際の戦車、今回は38(t)を想定して行う」
「おいら達が元は一つであった事、自分達が戦車だった事を思い出すまで、これを繰り返す」
「何度でも、何度でも繰り返す」
それは実際に行われた、体幹と足腰を鍛えながら異なる数値が生み出す黄金比が体に刻み込まれるまで。
「崖から降りろ!オイ、誰が滑って行けって言った!飛べよ!虎に翼」
骨の髄と心の底に、深く深く刻み込まれるまで。
「ボコさん、ここまでする必要って……あるんですか?」
その日の訓練を終えて夜が来る、焚火を囲みながら飯を食べているとチュー子が疑問を投げかけた。
「戦車に乗れるんだぞ?それにやるからには勝つのが武道だろ。お前達は違うのか?西住流だろ?」
「……私は、違うかもしれません」
「私も」
チュー子に続いて他の二人も続いた、それなら何で戦車道をと思ったが話は続きそうなので口を噤む。
「普通を学べば、普通になれるかもしれない。そう言われてここに放り込まれました」
「ふむん」
「家に居たくなかった、勉強だって嫌いだった、人に何かやらされるのが大嫌いだった」
「ほーん」
「……偉そうな人が嫌いで、口先だけの人が嫌いで、嘘ばっか吐く場所が嫌いで。だから皆と馬鹿みたいに過ごせる日々は大好きでした」
「ほえー」
ボコの間の抜けた返事に三人はボコを睨みつけるも、ボコは飯を口に運びながら視線で続きを促した。
「だから西住流に放り込まれて、以前に西住師範にお会いしたことがあるんです。この人もどうせって思って私達は反抗して……西住流
「戦車に乗ればスカっとするもんだと思ってた、だけど甘かった。勝てればいい、その勝つのがこんなにも難しいことだとは思っていなかった」
「それに結局、面倒な人間関係や確執がどこに行っても着いて来る。だからもう……嫌になってしまって」
「ふーん、じゃあウチ来る?」
「……え?」
「おいら、ボコられグマのボコっていう商品を取り扱ってるんだよね。今はただの零細だけど、会社が大きくなったら役員だぜ~」
先程まで口に運んでいたスプーンで空を指し、ボコは夢を語り出す。
「おいらはボコられグマのボコを世に布いてビッグになる!そして同時に戦車道を究める!」
「戦車道を……究める?」
「ああ、そうさ。いいか?戦車道の歴史において、遠くない未来に時代を巻き込む暗黒の時代が訪れる」
「暗黒の時代!?」
「時代を巻き込む!?」
「権力と利権と利益に囚われて、無辜の人々が巻き込まれる事件が起きるのさ」
まるで見て来たような物言いと予言の様な発言に三人はひどく驚きうろたえた。
「……その未来では何が起こるんですか?」
「一人の少女が全ての罪を背負わされ、少女に関わる全ての子供達が厄災に見舞われる」
「何故そんな事に」
「大人たちの所為さ、あるいはおいらも、あるいは時代によっても」
「……西住流も、島田流もですか?」
「国も、企業も、社会も、戦車道連盟も、二大流派も全てだ」
「そんなの!一人の子供が、子供達が、抵抗出来るわけがないじゃないですか!」
「そうだ、だからこそ、おいらは戦車道を究める」
先程まで話す側だった不良娘三人が、身を乗り出して話の続きを促した。
「時代の歯車は、誰にも止められない。摩擦の音と不協和音を巻き散らしながらも確実に訪れる」
「故に闇を切り裂く為の道を敷き、戦車道を以って善意と祈りで舗装する」
「闇をやり過ごす事は出来る、しかし闇に対抗できるのは悪だけだ」
「故においらは、悪に堕ちる―――子供達のために」
三人は止めていた息を吐き、そして尻もちを突いた。
「……聞いても、いいですか?」
「おう」
「私達が頑張ったら、気に食わない大人たちに一泡食わせられますか?」
「おう!」
「西住流も?島田流もか?」
「そうだ!」
「国も、企業も、社会にも?」
「その通りだ!」
「おいら達が三日後の試合で勝てば、おいらの夢の一歩目が始まるのさ!」
「……その夢、私達も見てみたいです」
「私も」
「自分も」
「大歓迎さ!!」
小久保心穂は、ポケットからボコの人形を取り出して夜の空へ掲げて見せた。
「ボコられグマは不屈の証、どんなに絶望を叩きつけられても自らが希望となって立ち上がる!」
「おいらも、お前達も、きっと散々不平不満を言ってきたけどさ。多分自業自得な所もあるんだと思う―――けどさぁ、罪もないのに罰を受ける。こんなふざけた事があるかよ!!」
「―――そうだ!」
「大人たちは!社会はいつもそうだ!」
「自分に従わない、そんな価値観だけでこっちを一方的に悪者にしやがる!」
「そうだろう?」
そう言ってボコが背嚢から取り出したボコ人形をネコ、チューコ、マーオとあだ名を呼んで三人に手渡した。
「だからこそ、本当の悪になろう。気に入らないものをぶっ飛ばして、スッキリしようぜ」
「ボコっち…」
「ボコさん…」
「ボコねぇ……」
「呼び方バラバラだな!?」
皆で一頻り笑って、月が輝く夜空を見上げて希望に輝く悪の道について語り明かした。
「おいら達は戦車道を進み、戦車道がおいら達の道を切り開く」
「おいら達はチームだ、時に血の繋がりすら超えてクィアプラトニック・リレーションシップよりも固くおいら達はここに結ばれる」
「おいら達は戦車の内外において永遠、そしてその繋がりはこの四人を超えてもなお不変」
「おいら達はここに誓う、おいら達が、おいら達であった事を遺すために!!!」
「「「はい、お姉さま!!!」」」
闇属性のミカかな?
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