夜の森林の中を4つの人影がFASTヘルメットに装着した微光暗視装置を頼りに前進していた。それぞれが得物を構えつつ前進していると突如、目の前に巨大な黒い物体が現れた。
「伏せろ!」
「あれなんだ?」
「!?戦車だ!!」
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翌々日の月曜日の夕方、森林付近の空き倉庫に件の4人が集まっていた。この4人は、大洗女子学園に所属する普通科2年生で、学園内で非公式のサバゲ同好会を設立している一般生徒だった。尚、現在いる空き倉庫は学園の敷地内にある同好会が(勝手に)使用している建物である。
「で、あの戦車はどういう車両か分かった?」
会話もそこそこに、早速リーダーの多須ミヤコが他3人に尋ねた。
「残念ながら」
「装軌車としか」
「…まぁ、それはそうなんだけど」
ポイントマンの吉田サキとライフルマンの東ミクもミヤコと同様で情報が手に入らなかったようだったが、マークスマンの金田ユイが戦車一覧表が載った雑誌を徐に取り出した。
「実は友達に戦車に詳しい子がいて、この本を借りてきたんだ」
「はぇ~詳しい子いたんだ」
雑誌を開いてミヤコが撮った写真をもとに全員で探していくと、ある車両が候補に挙がってきた。
「形状からしてM18GMC…かな?」
「砲口のマズルブレーキとサイドスカートが付いてないね」
「でも、この車両は砲塔に蓋がついてるよ?ハッチもあったし」
「えぇ…じゃあ、亜種だよきっと。それか希少種」
あーでもないこーでもないと考察を繰り広げた結果、とりあえず戦車は戦車という事に落ち着き、話はエンジンは動くかどうか等の方向に進んでいった。
更に日は進み、とある休日。戦車のもとに集合した4人は早速各ハッチを開けて中身を調べ始めた。戦車自体はしっかりと密閉されており、且つ木陰のちょっとした広場に置いてあったので、表面に苔等が多少付いてはいるが、状態は良好だった。車内には砲弾はなかったがジップロックで密封された取扱説明書が置いてあった。
その他では、エンジンオイルとミッションオイル、そして燃料は満タンではないが枯渇もしていなかった。
「誰かエンジン回せたりする?」
少し間をおいてミクが操縦席に潜ると幾つかスイッチを操作してエンジンを始動させた。
力強い轟音が周囲に響く中、ユイが尋ねた。
「どこで扱い方を習ったの?」
「説明書を読んだのよ」
この日はミクの操縦で戦車を空き倉庫に駐車させて解散となった。以降は戦車の清掃や整備方法を模索、調査して実践していくことになった。
「そういえば全部英語だったな」
ある日、サキが車内清掃している時に各種計器や表示を見てふとボヤいた。
「あっ、そうだ!こうすればいいんじゃないかな」
サキは英語表記の上から和訳した文言を印字したテプラを貼り付けていき、ついでに車内の危険箇所と注意箇所にも貼っていった。
「これで良し」
「…官給品?」
これらテプラを見たミヤコが呟いた。
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「聞いた?転校生が来るみたいだよ?」
「はぇ~この時期に珍しいね」
「ミヤコのクラスに行くって聞いたけど、どう?緊張してる?」
「まだ心の準備が…太陽みたいな人だったら炭化しちゃう」
「私達どちらかというと陰よりだしね」
転校生は西住みほという名前らしい。休み時間に友人の武部さんと五十鈴さんが挨拶に行くらしい。
「いってら〜」
「ん?何言ってるの?」
武部さんが首を傾げ、続けて五十鈴さんが微笑みながら尋ねてきた。
「ミヤコさんも一緒に行きませんか?」
「…一緒に行くよ」
なんやかんやあって4人で食堂に行くことに。前3人の後ろにトレーを持って並んでいると西住さんが名前と誕生日を当て始めた。
「多須ミヤコさん。10月15日生まれ」
はぇ~すっごい(白目)。
「名前だけじゃなくて、誕生日まで覚えてるなんて凄いですね」
「いつでも友達ができてもいいように覚えてるんです」
はぇ~すっごい(白目)。
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なんか生徒会長以下3名が西住さん連れて行ったんですが。ちょっと様子見に行くかと席を立ったら、武部さんと五十鈴さんも同時に立ってた。じゃあ任せるかと思ったら五十鈴さんに手を引かれてしまった。あっ、ちょ、待ってくださいよ〜。
西住さんの目が死んでる…。放心状態で保健室に向かう姿を見て、すかさず武部さんと五十鈴さんがついて行った。ええい、ままよ!(便乗)結論、自分の心に正直に生きるのが一番良いって、それ言われてるから。
生徒会が戦車道のPRをするらしい。…戦車カッケー!やっぱり戦車道は最高やな!
あ、西住さん。そうだよね、一時の感情に流されてしまった私を許してくれ。すまん!悪かった。
え?「私に構わず戦車道選んで」って?バカヤロー友達置いて楽しくできるか!
︙
「皆戦車道選んだの?」
「まぁ、せっかく戦車見つけたしね」
「何かの縁だと思って」
「あ、そっか」
「ミヤコにも事情というか、考えがあっての事なんでしょ?ならそっちでも楽しみなよ」
「私達いつでも会えるしね」
「そうだよ」
︙
昼時、生徒会に西住さんが呼び出されてしまった。案の定、戦車道を履修しない考えを改めさせるためだった。にしても、なんか必死過ぎません?
西住さんの両脇を武部さんと五十鈴さんで固めて守ってるから、斜め後ろから遠巻きに見物させてもらうぜ。
脅しは良くないと後ろでうんうん頷いていると突如火の粉が降ってきた。
「生徒会に逆らうとなればこちらにも打つ手がある。例えば、非公式の同好会を解散させるとかだ。勝手に空き倉庫を使用しているという名目で」
「ファッ!?横暴が生徒会の権利でも、これは横暴すぎでしょう!」
「多須さん?」
「いや、これは…。い、今はその話は関係ないでしょう」
「しかしね、我々としては学園の規律を調査する立場にあるのだから」
「…ッ…解散させてもらっても、別に、構わない。が、何があったかわからんけれども、やりたくない事を人に無理強いするのはダメでしょう」
たまらず西住さんの斜め前に躍り出てしまったが、まぁ仕方ない。
「あの!私…」
どわぁ!びっくりしたぁ!
「戦車道やります!」
たまげたなぁ…。
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戦車道履修者が戦車車庫の前に集まっていた。
「あ、ミヤコ!やっぱ戦車道する事にしたんだ」
「ま、多少はね?」
とりあえず同好会組を西住さんに紹介し、その後ユイが別の友達の所に話しに行った。
「どんな戦車に乗るんですか?」
確かに気になる。
「パンターですか?ティーガーですか?」
「レオパルト」
「ルクレール」
「エイブラムス」
「57mmを積んだハーフトラック」
「違う」「違う」「違う」
扉を開けて出てきたのはボロボロのIV号戦車だった。ボロ過ぎぃ!えっ、戦車自分で見つけるスタイルなの!?
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一番に戦車を運び込んだのはサバゲ同好会だった。聞けば、少し前に偶然見つけてからは少しずつ整備していたとのことだった。道理で自走して来れたわけだ。
しかし、この車両は記録上はM18GMCとなっているが細部が少し違う。主な点は以下の通り。
・トルコンにロックアップ機構が付いている
・砲塔に天盤と装填手と車長用ハッチ(車長用はペリスコープ付)が付いている
調べてみると現在の戦車道レギュレーションへの改定前の車両のようで、新規にこのような改造を施す事は出来ないが既に改造が施された車両は違反にはならないらしい。
特にM18GMCを対象にしたこの手の改造は異例だった様で、現在までにこの1両しか存在しない幻の車両のようだった。
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10式戦車のダイナミック登場から少しして、チーム対抗の模擬戦が開始された。
「任務呼称、車長!」多須ミヤコ
「砲手!」金田ユイ
「操縦手!」東ミク
「装填手!」吉田サキ
「乗車用意、乗車!」
M18の前にヘッドセット付きFASTヘルメットを被った4人が横一列に並び、其々の任務を呼称した後に回れ右して各々のハッチから車両に乗り込んでいった。
「操縦手前へ」
エンジンが唸り声を上げ18トンの車体がみるみる加速していく。
前進間、車長ハッチと装填手ハッチからそれぞれ顔を出しているミヤコとサキが周囲を警戒する。
林内を前進中、サキが2時方向に移動中のM3中戦車を発見した。暫くして車体側面をこちらに向けて停車し、こちらには気づいていないようだった。
撃つなら今しかない、そう考えたミヤコはすぐに命令を下した。
「操縦手、前方30の位置で停止。装填手、徹甲弾装填。砲手、目標右敵戦車、射撃用意」
車体が停止し、油圧旋回機構によって砲塔が右旋回し仰俯角の調整によって目標を照準に捉える。
サキが砲弾架から徹甲弾を取り出し直ぐ様砲尾環から薬室に押し込む。抽筒子が砲弾によって倒されると同時に閉鎖機が上がり、サキは装填完了ボタンを押した。尚、このボタンは増設した物である。
「装填よし!」
装填完了ランプが点灯している事を確認したユイは射撃準備が完了した事を報告する。
「照準よし」
「撃て!」
轟音と閃光と共に徹甲弾がM3中戦車の側面に飛翔していく。飛翔した砲弾は側面装甲に見事命中し白旗を揚げさせた。
「敵戦車撃破!」
「ヤッター!」
近くで幾つか砲声が聞こえ、その方向に進むよう指示を出した。
見晴らしのいい所に出て見ると、つり橋を渡っているIV号戦車が岸にいる2両を撃破した所だった。
「砲塔左旋回!目標移動中の軽戦車!装填手、徹甲装填!」
「目標確認」
「装填よし!」
38tが隙を突いてIV号戦車に接近しているのを確認したミヤコは直ぐ様IV号戦車を援護する指示を出した。
「撃て!」
移動目標への射撃になったが、偏差が甘かったようで初弾は後方に着弾してしまった。こちらに気づいた38tが停車し砲塔旋回している。
「続けて撃て!」
2射目は38tとほぼ同時の砲撃となった。
<ふっふっふっ…ここがお前らの死に場所だ!>
放たれた2つの砲弾はお互いに交差…する事はなく、M18の砲弾のみが正確に着弾した。
「命中!敵戦車撃破」
「続いて…あっ」
ミヤコは残るIV号戦車に照準を合わせるよう指示を出そうとしたが、砲口と目が合い、続いて閃光が煌めくのを確認した。
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「やるわね、あの子達」
蝶野1尉はみほの事もさることながらM18の乗員についても注目していた。初の訓練で初の戦車戦で見せた乗員の練度から、今後の活躍に大きく期待していた。
「ミヤコさん達凄いです。初めて戦車を操縦したとは思えないです」
「いやぁ~それ程でも。皆の協力があってこそだから」
「私は普段からポイントマンやってるからな」
「私はマークスマン」
「なんかできた」
「えぇ…」
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