後宮の司書になったので、死ぬ気で政争から遠ざかりつつ本の虫になるTS転生者   作:暁刀魚

19 / 19
十八 関係者各位が泡を吹いて倒れた!

 いやまぁ、こういう世界だから幽霊がいることは私も知ってるよ。

 でもこの世界の幽霊ってもっと儚いんだよ、私みたいな儚さがあるんだ。

 なのにアレはほとんど生きてるじゃん、半透明で足がない以外は完全に生者だったよ。

 えーと、どうしたもんかなぁ。

 と思いつつ安延様と阿華様に渡した分書を起動させて――もう一つの非常事態に私は気付いた。

 

 安延様と阿華様が二人で荷物を探そうとしているのだ。

 

 やっべぇ────

 完全に伝達ミスったぁ。

 そりゃ阿華様も本気かって問いかけてくるわけだよ。

 というか、部下に取りに行かせるのが普通じゃん?

 いくら安延様と阿華様が伴もつけずに宮中を歩いているからって、まさか荷運びまで二人がやるとは思わないじゃん?

 ちなみに秋葉様はちゃんと伴をつけてたよ、どうやら秋葉様の侍女も外で待機していたらしい。

 三人で来たのかと思ったけど、それなら確かに問題はないね。

 じゃあどうしてその後二人はナチュラルに残るんですかどうして──

 

 というか、人海戦術で色々集めてもらう予定だったから、荷物の数が結構多い。

 二人で集めてたらめちゃくちゃ時間がかかるよー!

 

『──さて、ではどこから参りましょうか、幽蘭』

 

 んひぃ!

 なんか阿華様の圧がすごい!

 とにかくめちゃくちゃ楽しそうだということは、分書越しにも伝わってくる。

 私はとりあえず、後宮内で用意できるものを二人に話した。

 で、それから──

 

「昭華様を探しましょう。取りに行く必要のある荷物が多いですから、あの方にも協力を仰ぎませんと」

『そうですね、昭華ならたちどころに準備してくださるでしょう! ただ……』

「た、ただ……?」

 

 とりあえず私は昭華様を探すことにした。

 後は何とかあの人がしてくれないかな、という考え。

 しかし安延様が私の言葉にうなずきながらも、ぽつりとこぼす。

 

『ち……私はこういったお使いというものが初めてですので、少しでも自分の力で達成できたらと思うのですが……』

『安延、あまりワガママをいうものではないですよ』

『はい、は……阿華様』

 

 うおおお……!

 そう言われると、全部を昭華様に任せにくい!

 何故かとても任せにくい気分になってしまう!

 とはいえ、安延様も昭華様の必要性は理解しているわけだから、まずはあの人を探そう。

 

「……解析」

 

 ひとまず、昭華様を解析で探す。

 どうやら都合の良いことに、下苑の厨房にいるようだ。

 そこで、今回の儀式に使う荷物も回収することができる。

 というわけで、二人に下苑へと向かってもらい、厨房で昭華様に話しかけてもらうと──

 

 

 昭華様がその場で泡を吹いて倒れた────

 

 

「しょ、昭華様────!」

『行儀が悪いですよ、昭華』

 

 なんで見ただけで倒れるんだ!

 まだ何も言ってないだろ!

 だから頼むから、私の言い訳を聞いてくれ!

 昭華様は、すぐに意識を取り戻すと一緒に作業をしていた厨師達に一言言ってから、厨房の外に出る。

 ちなみに、何をしていたかと言うとお菓子の試作らしい。

 例の粋蜜芋だ。

 それから周囲を確認すると、ニッコニコ阿華様から分書を受け取る。

 

『何をしておるのじゃ、何を──!』

「ひぃ! ちょっとした行き違いなんです!」

 

 脳内に直接、昭華様の言葉が響く。

 安延様と阿華様には聞こえていない。

 慣れているとこういう使い方もできるのだ。

 私は急いで、事情を説明する。

 

『つまりなんじゃ? このお二方を使いっ走りにしておると!?』

「き、貴妃様を使いっ走りにしてしまったことは申し訳ないと思いますが、別にそういう意図があったわけではなく、何故かお二人が部下を使わなかっただけで……」

『そういう話ではなくじゃな…………いや、まぁ……よいか……幽蘭じゃしの……』

 

 あ、諦められた――――!

 くっ……諦められると反論できない……!

 

『……とにかく、じゃ。荷物集めは吾に任せよ。宮廷の物は陳徳に集めさせよう。後宮に関しては吾が……用意するものが多いのう』

「雰囲気は、細部にこだわらないと作れませんから」

『……致し方あるまい』

 

 それから、昭華様は安延様と阿華様を説得した。

 結果、荷物集めは二手に分かれることに。

 二手に!?

 

『吾が安延様と共に後宮の西側を、阿華様が東側を担当するのじゃ』

「あ、阿華様をおひとりに!?」

『この方は、まぁ一人でもなんとかなるでの』

『うふふ』

 

 それはそれでどうなんだ!?

 ああいや、きっと道術かなにかを使うんだろう。

 というか、二人が伴をつけてない理由がやっとわかった。

 阿華様が何とかしてしまうから、伴が必要なかったんだ。

 

『ふふ、昭華とこうして探索をするのはいつ以来でしょう。ささ、行きましょう昭華』

『ま、待ってほしいのじゃ、あまり袖をひっぱらんでくれるかのう』

 

 そうして安延様と昭華様は、必要な物を求めて旅立つのだった。

 と、とりあえずこれで安延様は昭華様に任せておけばいいだろう。

 何しろ昭華様は後宮の管理者。

 私が探さなくても目的の物が置いてある場所を把握しているはずだ。

 そうでなくとも、分からない時だけこっちに聞いてくるだろうから負担は少ない。

 問題は単独行動となった阿華様だ。

 ひ、ひとりで集めるのか?

 明らかに一人で持ち運べない量の荷物を持ち運ぶことになるけど。

 阿華様が代車をゴロゴロする……?

 いや、うぅーん。

 あ、そうだ、思いついた。

 と思っていたら、そこは阿華様も考えていたようだ。

 私が解決策を思いつくとほぼ同時に、阿華様はある人物を見つけた。

 

「梨里、少し良いですか」

 

 そう、梨里だ。

 何やらバブみが溢れてやばい女史こと梨里は、阿華様の勧めで宮廷の方でも働いているらしい。

 ここにいい感じの繋がりがあるじゃないか、というわけで阿華様もそれを利用しようというのだろう。

 春杏と二人で歩いているところを見つけて阿華様は声をかけ──

 

 梨里は泡を吹いてその場に倒れた。

 

 梨、梨里──────!

 どうやら梨里が倒れたのは、阿華様が原因らしい。

 いや何をしたんだよこの人。

 まあ何しててもおかしくないよね、阿華様だもんね。

 

『──というわけでして、お二人のお力をお借りできればと思うのですが』

『はい! 幽蘭のためだもんね、やる! あ、じゃなくてえと、やる……ます!』

『幽蘭様!?』

 

 うわあノーモーションで梨里が起き上がった!

 倒れている人形が、紐で引っ張り上げられるみたいな起き上がり方したぞ!?

 ともかく、こうして春杏と梨里という手足が阿華様に加わったのだった。

 しかし、二人とも阿華様が私の名前を出した途端積極的になったなあ。

 なんというか、阿華様は飴と鞭の使い方が本当に上手い。

 一体何者なのだろう、解析を使えば分かりそうだけど、阿華様は私の解析を把握しているので、もし使おうものなら不敬ってことで即刻首を飛ばされても文句は言えないぞ。

 まあそれはさておき。

 

 それから、安延様パーティと昭華様パーティは順調に必要なものを集めていく。

 途中、昭華様の呼びだしでやってきた陳徳殿が泡を吹いて倒れたけど。

 いやなんだってみんなして勢いよく泡吹いて倒れるんだよ。

 全員全く同じモーションでビターンと倒れるから、なんか面白い光景になっちゃってるぞ!

 

 なお、他には例の本見せびらかし妃が阿華様を見かけて泡を拭いて倒れたりもした。

 いやまあ、気持ちはわかりますけどね。

 いろいろあって、中苑追い出されて下苑の妃になったりしたし。

 それにしたって、どんだけ阿華様怖いんだよ。

 

 なお、聞いたところによると、凌雲もビターンしたらしい。

 いやなんやねん。

 どうも陳徳殿が、凌雲にも協力を要請したらしい。

 そこって繋がりあったんだ……いやまあ、凌雲はいくらでもビターンさせておけばいいと思うんだけどねえ。

 

「何にしても、これで大体の準備はできました。どうしてか関係者各位が泡を吹いて倒れる事態が頻発してしまいましたが」

「誰のせいじゃ、誰の」

「半数くらいは私ではなく阿華様のせいだと思うのですが……」

 

 特に梨里と積み妃。

 何にしても、後は昭華様に儀式のセッティングをお願いしつつ、私は秋葉様の元へ向かうことにした。

 儀式をする前に少しでも秋葉様の心の整理がつくように、お話を聞いてあげないと。

 いや、本命は素蓮の方なんだけど。

 んで秋葉様のお部屋に入ったら――なんか。

 

 

 「未亡人をたらし込むのはまずいわよ!」とか「この人また女を籠絡しようとしてるわ!」みたいなこと言いながら身悶えしてる素蓮が部屋の隅に転がっていた。

 

 

 失礼ですよ、秋葉様は傷心中なんですからね!?

 後私は女を何度も籠絡していたりしない!




お読みいただきありがとうございます。
もし本作を面白いと思っていただけましたら、応援いただけますと幸いです。
特に高評価は非常にお手軽で効果的な方法です。
↓の評価から、何卒よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

理想のラスボス系うすほそになったので、完璧を求めて暗躍していたら悪が蹂躙されていた(作者:ほそラス)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ラスボス系ヒロインが好きなオタクが、ある時理想のラスボス系うすほそになった。▼ただ見た目は理想でも、中身はまだまだ完璧じゃないし、本人はアホだ。▼結果、ラスボスっぽい力を求めて彼女は暗躍することとなった。▼しかしその過程で、助けた少女に心酔されたり、裏側に潜む闇を無自覚に暴くから世界はさぁ大変。▼そして等の本人は、周囲を気にせず仲間にはポンコツを晒しながら、…


総合評価:3207/評価:8.79/連載:4話/更新日時:2026年10月10日(土) 00:05 小説情報

いぬのTS貧乳合法ロリアラサーおまわりさん(作者:被告人5)(オリジナル:現代/日常)

▼現代日本と似ているようで、少しだけ違う世界。▼そこでは、人間よりも遥かに高い身体能力を持つ「獣人」が、警察官や消防士などとして人々の暮らしを支えていた。▼そんな世界で、犬獣人として生まれた犬井ハル、28歳。▼警察官となった姉に憧れ、そして獣人の身体能力で人間相手にマウントを取るために警察官となった彼女は、特に出世を目指すこともなく、地方の小さな交番でのんび…


総合評価:3280/評価:8.28/連載:28話/更新日時:2026年10月28日(水) 17:43 小説情報

ドブカス悪役令嬢を演じてたつもりだけど、周囲の解釈が何か大きな事情を抱えている高潔な精神を持った貴族令嬢なんだけど(作者:つむつむ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

 魔術世界には禁忌が存在する。その代表例が人格や性格を変貌させたり、人の身体を乗っ取る魔術だ。▼ あたしはシャルロッテ・ヴァニリウスという貴族令嬢に転生した。この令嬢、性格はドブカスそのもので実家の権力を振りかざし、嫌味と罵倒で人の心を砕き、人を虐げることが趣味みたいな女だ。▼ しかし、そんな令嬢が急に心変わりをして行動を変えたら、禁忌に手を染めたと勘違いさ…


総合評価:3015/評価:8.27/連載:26話/更新日時:2026年10月30日(金) 18:00 小説情報

おせいそうすほそ系TSヒーラーは、生きているだけで偉いと思う(作者:うすひら)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

TS転生者のクリスはおせいそうすほそヒーラーだ。▼冒険者としての実力は確かで、他にも色々と特技を持っている。▼しかし本人は冒険者らしいことをほとんどせず、ギルドでだらけたり教師をしたり、運び込まれた急患を治癒したりして過ごしていた。▼全ては彼女の信条が「生きているだけで偉い」の一言に尽きるがために。▼そんな彼女に性癖を破壊されたり、実力に惹かれるものは数しれ…


総合評価:11018/評価:8.78/連載:11話/更新日時:2026年09月26日(土) 18:15 小説情報

転生したら余命僅かな美少女だったので、悪のカリスマの振りして遊んでる。(作者:悪のカリスマをこよなく愛するオタク)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

 悪のカリスマとは、悪を尊ぶ大罪人でありながら、人を惹きつける魅力を有する存在である。▼ ▼ 余命僅かな超絶美少女に転生した主人公は、魔法少女が存在する異世界で「悪のカリスマのごっこ遊び」を開始する。▼ あくまで、悪のカリスマの振りをして遊ぶだけ。▼ 迷える子羊の脳を焼き、チヤホヤされたいだけだったのに。▼ …‥いつの間にか、主人公の周囲には「本物の悪い子」…


総合評価:4592/評価:8.67/連載:2話/更新日時:2026年10月08日(木) 17:22 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>