「断る」
「どういう……意味だキャロル……?」
僕はキャロルに日本へ向かい幼馴染や姉を助けに行きたい事を伝えた結果の返答がコレだった。
「勇が幼馴染を助けに行きたいのは理解している。何故ならオレは勇の記憶……というよりはその断片を見た」
「キャロル……それは!」
「勇の記憶ならばオレは想いを拗らせて暴走し、パパとの記憶さえも焚べたようだが……オレはそれが如何に愚かな行為だと理解した。故に自身の気持ちを偽る事が愚かな行為だと気付いたまでの事。そして勇を送り出すという事はオレは想い人を奪われる危険を許容するという事だ」
「想い……人……? どういう意味だキャロル?」
「ならば想いを語ろうではないか」
キャロルは机に紅茶とクッキーを置いて椅子に腰をかける。そして視線で僕にも座るように促している。
「大前提だがオレは勇を好きだ。いや……既に愛していると言っても差し支えは無いだろう」
「キャロル……?」
僕は今にも混乱しそうだった。眼の前でキャロルは何を言っている?
「勇はオレに誓いの口付けをしてくれたではないか。オレはその温もりを知ってしまった。その温もりを他者に譲る? 冗談じゃない……」
「えっと……誓いの口付け……あっ……」
「違うのか……?」
途端にキャロルの瞳には涙が浮かんでいた。僕は理解してしまった……僕がキャロルを救う為に行ったこの戦いはキャロルの心を溶かした代償が発生する事を理解していなかった。
「あの瞬間よりオレは悟ったよ……お前という存在こそがオレに生きる理由を与えてくれると。その為ならば全てが欲しい。そして全てを捧げ合おうだが……やはり勇には重荷……だったか……?」
キャロルのカップを持つ手が震えている。恐れているんだ……
「いや……僕の覚悟が足りなかったって意味だよ。キャロルがそこまで僕を想ってくれたのに不誠実な態度は取れないって思えたのさ」
「勇……ならば……」
「僕からも言わせてくれキャロル……愛してる」
僕はキャロルの口元へ自分の唇を重ねる。キャロルも僕の首に手を回して僕の事を求めてくれる。
「男女が愛し合うならば……やるべき事があるだろう?」
「わかっているよ僕の愛しいお姫様?」
僕達は同じベッドでお互いの愛を求めた。
◆◆◆
情熱的な夜が明けた。僕達はお互いに一糸まとわぬ姿で同じ布団にいる。
「ん……朝か。よく眠れたか?」
「少し気怠いけど大丈夫だよ。キャロルこそ大丈夫?」
「平気さ。それと勇……お前には伝えねばならない事がある。まずは服を整えて着いてきて欲しい」
「わかった」
僕達は服を整えてキャロルと共にシャトーを歩く。するととある部屋の前にエルフナインが立っていた。
「キャロル……おめでとうございます。良かったですね勇さんが想いに応えてくれて」
「あぁ……心がとても満たされている。世界の色がコレほど美しかったとすら思える程の光景だ。コレこそがパパの教えてくれた愛なのだろうな」
「はい! 良かったです……勇さんのおかげでキャロルがこんなにも嬉しそうな笑顔を見せてくれます!」
「僕は大した事はしていないよ。キャロルがイザークさんの言葉を正しく思い出した結果なんだから僕の手柄じゃないよ」
「だが切欠を与えてくれたのは勇だろう? さて……扉を開けてくれ」
「はい! 準備は出来ています! それと勇さん……ボクの事はエルって呼んでください。勇さんがボクを想ってくれると思うと……胸がポカポカするんです」
エルフナイン……いや、エルは眩しい笑顔をしながら扉の中に入っていく。中にあるのは……コレは!
「そうだよ勇……お前の識る通りここにいるのは
「コアと疑似人格……?」
「あぁ。勇に救われる前のオレならばオレの人格の断片を元に人格を作り、想い出を燃料とする術式を組み込めば完成としただろう。だがそんな事をすればオレは勇に救われた事を忘却してしまう。それは耐えられない。だから……」
キャロルは大きな4つのクリスタルをエルに準備させて来た。
「コレは……?」
「今から勇には4つの天使の力を注いで欲しい。対応する属性は【火】【水】【風】【土】の4属性だが勇は土の錬金術や天使は所持していない。まずは【
「わかったよ。それじゃあ……」
僕はキャロルに頼まれるままクリスタルに力を注ぎそれぞれが特徴を宿した緑・赤・青・黒のクリスタルが完成しそれぞれの自動人形に組み込まれる。起動術式の中にこの術式は……
「ねぇキャロル……この術式は……」
「あぁ。霊力をオレ経由でコイツらに注ぐには些か効率が悪い。できれば勇に注いで欲しいが頼めるか?」
「一応頻度は?」
「勇の霊力はとてつもない程に膨大だ。その気になって注ぐなら3カ月は稼働できるだろうし、そもそもコイツ等には大気のマナを取り込む機能もつけている。余程大きな戦闘の前に補給が出来てるいれば戦闘には支障が無いと思ってくれ」
「ん……了解」
僕は説明を受けながら起動の瞬間を待った。そしてその機会はすぐに訪れた。
「おはようございます我等がマスター……そして
「よろしくお願いしますねマスター……そして
「我らはお2人の未来の為に……なんなりとご命令を
「向かう敵は吹き飛ばして見せるぞ……
挨拶してきたのは順番にファラさん・ガリィちゃん・レイアさん・ミカちゃんって事だけど最初に気になったのは……
「僕は……どうして旦那様って?」
「我等の主の伴侶ならば貴方様は我々にとっての旦那様です。なんなりとお申し付けください」
なるほど……コレが僕の為に用意したって言うキャロルの…………専属メイドとでも言うつもりか?
「以降雌共から勇へ接触する時はコイツ等を原則付けろ」
「言い方は悪いけど要人警護だね……僕の方が強いけど」
「勇は優しいからな。それを付け狙う輩は排除せねばならん」
こうして僕は
「そう言えば勇……介入するのはどの辺りになるのか覚えているのか?」
「見立てだと響が覚醒するぐらい……だと思う」
「ふふっ……勇の愛を占有している事を知らしめる日が楽しみだ」
キャロルの最後の言葉は聞こえ無かった事にしたい。
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