グレンラガン×艦隊これくしょん <紅蓮の男が世界を変える>   作:ざつざっつ

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以前から、艦これの吹雪がシモンポジみたいな感じで本編を進めたらどうなるのかを妄想してて頑張って書いてみました。

別作品が煮詰まったので息抜きの意味もあります。
ちなみにグレンラガンは大好きですが、艦これの知識はアニメ、2次創作等で、最近は原作をプレイ中です。
よって、なんかこのキャラの性格変じゃね?ってなったり、設定が違うってのもあると思いますが、勢いとノリとグレンラガンで味付けしました。

両作品のファンには悪いけど、書いてみたかったんで勘弁してください。


グレンラガン×艦隊これくしょん <紅蓮の男が世界を変える>

 

 

海。どこまでも続く青い海。雷雨を伴う激しい海を一隻の巨大な戦艦が海面を切り裂きながら進んでいる。辺り一面から響き渡る落雷や砲声が戦艦を包む。

前方からの砲撃を浴びながらも巨大な戦艦は突き進んでいく。

 

 

「敵の深海棲艦、補足しました!接敵まで30秒です!」

「数は?」

「約200です!敵艦隊からの艦載機の発艦を確認!」

 

1人の女性が慌てた様子で複数のモニターを見ながら、艦長と思しき長身の女性に状況を報告する。

 

「第385ブロックに被弾!」

「隔壁を下ろせ!」

「遮蔽フィールド、等級8!」

「鏡面装甲剥離!」

 

「損傷は?」

「軽微!しかし噴射炎が丸見えです!」

 

ブリッジ内には警告音のアラートが艦の状況を物語る。

報告を受けながら、次の一手を考える長身の女性の背後からまだ幼さが残る女性がコートを靡かせながら歩いてきた。 

 

「狼狽えないで。むしろ教えてあげる。誰を相手にしているのか」

「ならばやる事は一つという事だな」

「相手にとって不足はないよ。真っ向勝負でカタを付ける」

 

長身の女性がいつもと同じだな、と言うようにコートの女性に笑いかけ次の指示を出す。

 

「全艦、出撃用意!目標、弩級深海棲艦!」

 

そしてコートの女性は腕を組み、高らかに叫ぶ。

 

 

「行くよ皆!私達を誰だと思っていやがるッ!」

 

 

 

 

 

 

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世界は、深海棲艦と呼ばれる異形の存在との戦争の最中。

人類の抵抗虚しく、通常兵器は無力。制海権も徐々に奪われつつあった。

 

そんな超常の存在に唯一対抗する事が出来る存在。

 

かつての大戦で沈んだ艦船が人の想いと魂を形に変えた「艦娘」と呼ばれる者達だった。

 

艦娘の登場により、制海権を奪取される寸前だった軍は再びこの海を取り戻そうと戦ってはいるが、深海棲艦との戦いは激しさを増す一方。

 

戦況は悪化の一途をたどっていた。

 

だが、そんな世界に一人の熱すぎる男がいた。

 

 

これはまだ自分の運命に気付かない1人の男と1人の少女がこの世界に風穴を開ける話。 

 

 

 

    

 

 

 天元突破グレンラガン×艦隊これくしょん

    

 

 

 

 

 

騒々しい目覚ましの音が部屋中に響く。

 

喧しさに少女は顔を顰めながら音の方向に手を伸ばすも、誤ってベッドから落ちてしまう。

 

「うわっ⁉︎」

 

想定外の出来事により、思わず間抜けな声を出してしまう。

まだ寝惚けながらも体を伸ばしスリッパを履いて、顔を洗う為に部屋を後にした。

 

「おはよう、みんなー」

「おはよ!吹雪ちゃん!」

「おはよー、吹雪姉ちゃん」 

「また1番遅かったねー」

 

欠伸をしながら、少女は食卓に座っている子供達に向かって挨拶をした。

 

「行ってきまーす!」

「じゃあねー!吹雪ー!」

 

少女が食べ始めるのと同時に既に食べ終わって学生服を着た子供達が慌ただしく出て行った。

 

 

「(最近起きれない原因って多分、毎晩見る夢の所為なんだよね… 私も中学生なんだから変な夢見ないようにしなきゃ)」

 

溜め息を吐きながら、箸を進めていると台所の奥から妙齢の女性が吹雪に声を掛けてきた。

 

「あら吹雪ちゃん、また最後かい?大丈夫?ちゃんと寝れてる?」

「あ、おはようございます院長。大丈夫ですよ!ちょっと夜更かししちゃってて寝るのが遅くなってるだけです」

「それならいいんだけどね。アンタもここの家族の一員なんだから、何かあればちゃんと相談してちょうだいな」

 

 

本人が大丈夫と言うならそれ以上は聞かない、と納得した様子で院長は音が鳴り止んだ洗濯機の方に向かっていった。

 

ふと、吹雪はテレビから流れてるニュースが目に入る。

 

『続きまして、次のニュースです。深海棲艦がこの地域の海にも出没したようです。幸い駆けつけた艦娘達の活躍により被害は無かったそうですが

近隣の皆様、充分にお気をつけください』

 

「(今でこそ、私達は被害もないけど、この海のどこか向こうで、艦娘は戦ってるんだよね。何でかな? 不思議と他人事と思えないよ)」

 

     (てんどう)

少女の名前は天道 吹雪。

彼女はここ示威波町にある10人程の小さな孤児院に住んでいる。そして彼女には親がいない。吹雪だけではない、ここにいる子供達は皆、戦争孤児だ。

 

だが、成人して離れていった者やここにいる吹雪を含めた全員は、自分が不幸だと思った事は無い。

肉親はいないが、血の繋がりは無くても家族が側にいるからだ。

 

「あ、ヤバい!」

 

ふと、ボーっと考え事をしていたら家を出る時間が迫っていた。

吹雪は急いで朝食の残りを口に運ぶ。

 

身支度を整え、玄関を飛び出す。

 

「行ってきまーす!」

 

院長に聞こえるよう大きい声で叫ぶ。

奥の方から行ってらっしゃーいの返事を聞いた吹雪は学校目掛けて駆け出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

放課後、学校を後にした吹雪は授業中も夢の事が気になり完全に上の空だった為、教師によく注意されてしまった。

 

それを見たクラスメイトの反応は「鈍臭い」「暗い」等だ。

それを思い出していた吹雪はため息を吐きながら下を向いて歩いていた。

その所為で停めてあった誰かのバイクとぶつかってしまう。

 

「わ、ごめんなさい!ちゃんと前を見てなくて…」

 

吹雪は慌ててぶつかった相手に謝る。ぶつかった相手の顔を見ようと上を見上げる。

 

「上を向いて歩け、吹雪!」

「あ、カミナさん」

 

ぶつかった相手は吹雪と同じ孤児院の男、上野カミナだった。

本来なら高校に通っている年齢なのだが、これ以上孤児院の経済負担になりたくないと言い切り、周囲が止める間もなく孤児院を出て行ってしまったのだ。

 

そんな相手との再会が出来たので、吹雪は思わず安心してしまう。

 

「馬ァ鹿、アニキって呼べって言ったろ」

「で、でもなんか恥ずかしいというか…」

「何言ってんだ!魂の兄妹、ソウルのブラザーって事じゃねぇか!」

「うん…」

 

この男は昔からこうだった。

暑苦しいのだが、カミナの言葉は思わず納得してまいそうになる程、胸の内に入り込んでくるのだ。

 

「学校でまたなんか言われたのか?」

「…」

 

カミナの言葉に思わず吹雪は黙り込んでしまう。

 

「へっ!ブスな女共が何言ようが気にすんな!なら、またいっちょ走りに行くか?」

「え、でもカミナさん仕事は?」

「馬鹿野郎!妹分が困ってるのに放っておけるか!ンなモンまた明日からでも出来らァ!今のお前が大事なんだよ!」

「カミナさん…ありがとう…」

「よせよ気にすんな。ほら、乗れ!」

 

有無を言わさず、カミナは吹雪にヘルメットを渡す。

 

そしてカミナはエンジンをかけ、バイクに跨る。

吹雪がバイクに乗った事を確認し、アクセルを回す。

 

「うし!行くぜ吹雪!掴まってろよ!」

 

低音を響かせながら2人を乗せたバイクは街を疾走していった。

夕陽が海に沈んで行く光景を吹雪はじっと目に焼き付けている。

 

「(この感じだ…こうしながら潮風を浴びてると海の上を走ってるみたい。ありがとうカミナさん…いや、アニキ…)」

 

肌で風を感じながら、吹雪はそう思っていた。 

 

「ねぇ、ア二…」

「カミナぁ!またお前か!毎晩毎晩騒ぎを起こしおって!」 

 

吹雪がそう言いかけた言葉を塞ぐように、野太い怒鳴り声が響く。

 

「ヤベっ!駐在の野郎だ!うるせぇ!何もねぇド田舎町を賑やかにしてやってんだろうが!逆に感謝して欲しいくらいだぜ!」

「喧しい!喧嘩に暴走行為、今度はノーヘルか!一回捕まえてやらんとダメなようだな!」

「精々、頑張れよオッサン!」

 

 

呆れ顔を浮かべるカミナとは対象的に、駐在は大きい顔に日焼けした顔を真っ赤にしてパトカーのサイレンを鳴らしながら後ろを追う。

 

 

 

 

 

 

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「全く、お前という男はどうしてこう騒ぎを起こす⁉︎不良同士の喧嘩や暴走行為だけで一般人には被害が出てないから、厳重注意で済ませているがこれ以上行動がエスカレートすると本格的に逮捕するぞ!」

「へー、そりゃ大変だ」

 

駐在所に放り込まれ、太々しい態度でドカッと椅子に座るカミナの様子は完全にどこ吹く風だ。

 

あれからずっと駐在から逃げ続けていたカミナだが、車道に飛び出した子供がいた為、急停車。その隙に遂に捕まってしまったのだった。

 

「待ってください!カミナさんは…」

「待て、コイツは悪くねぇ。悪いのは全部俺だ」

「お前が悪いのは全部知ってるんだよ!」

 

そんな2人の様子を見ていた吹雪は自分の所為だと主張するが、すぐさまカミナに遮られてしまう。

 

何を当たり前の事をと言わんばかりに駐在はずいっとカミナに顔を近付け、怒りを露わにする。

 

「とにかく、お前は2、3日はココにブチ込む。暫く反省してもらうからな。もう、遅い時間だ。君は早く帰りなさい」

「で、でも…」

「気にすんな吹雪、いいから行け」

 

吹雪はこれ以上出来る事は何も無かったので、カミナの早く行けと言わんばかりの圧を感じ、重い足取りで駐在所を後にした。

 

 

その夜、吹雪達の孤児院に届いた一通の手紙が、吹雪とカミナ、そしてこの世界の運命を変えてしまう出来事になるとは、その時彼女は夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

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「(カミナさん大丈夫かな…私の所為であんな事に…)」

 

 

駐在所を後にした吹雪は今、まさに自分の運命が変わろうとしている事など知らないまま、夜道を歩いていた。

 

今、気がかりな事はただ一つ。無論、カミナの事だ。

当の本人は気にするなと言っていたが、当事者でもある吹雪は心配せずにはいられなかった。

 

「(ごめんねカミナさん…)」

 

心のモヤモヤは晴れないまま、やがて見慣れた街灯の下を潜り抜け、鞄から鍵を取り出しドアノブを捻り家の中に入った。

 

「ただいま…」

「あ、お帰り!吹雪ちゃん!」

 

居間に繋がるドアを開けると、子供達は既に夕食を食べ終えリビングで寛いでいた。1人の子供が吹雪が気付き駆け寄ってくる。

 

「おっそーい!何々、もしかして男とかー?」

「案外、スミに置けないなぁ」

「吹雪姉ちゃん悪い子なのー?」

 

その様子を見ていた子供達は口々に捲し立てる。

 

「ち、違うよ。ちょっと遅くなっただけだから!」

「ふーん、まぁ何でもいいけどさ。ちゃんと院長には伝えときなよ、心配してたし。お風呂入ってこよーっと」

「あ!ちょっと待って、アンタ風呂長いから後にしてよ!」

「早い者勝ちでーす!」

 

 

吹雪を揶揄っていた1人の女の子が、そう言い残し立ち上がって風呂場目掛けて駆け出していった。

慌ててその後をもう1人の少女が追いかけていく。

 

先程までの様子とは打って変わって、リビングを去って行った2人を見て吹雪はあの2人も変わらないなとそう思った。

 

そして、いつの間にか吹雪にべったりとしがみ付いていた少女も贔屓のテレビ番組が始まっていたのか元いたソファに座り、齧り付くようにテレビに釘付けになっていた。

 

吹雪はこの家の雰囲気の心地良さを噛み締めながら、2階に上がっていった。

 

階段を上り、角の部屋の前に来た吹雪は心配をかけた申し訳なさで少し不安になるも部屋のドアをノックした。

 

「はーい、入っていいよー」

「ただいま帰りました」

「吹雪ちゃんか、おかえり。心配してたよ」

 

部屋から出てきた人物は和かな笑顔で吹雪を迎え入れた。

 

「心配したじゃん吹雪ちゃん!もう、遅くなるなら連絡してよ!」

「ごめんなさい!」

 

部屋の奥で書類を書いていた院長は、椅子から立ち上がり吹雪を抱きしめた。

 

吹雪がこの孤児院が好きな理由の一つだ。

ここを運営している小西夫婦は誰だろうと、惜しみない愛情を注いでくれる。この2人の作る雰囲気が吹雪は大好きだった。

 

「おいおい、そんなにキツく抱き締めたら吹雪ちゃん折れちゃうよ。あ、そうだ君宛てに封筒が来てるよ」

 

吹雪は抱き締められながら、封筒に手を伸ばし受け取った。

 

「……私宛て、ですか?」

 

吹雪は院長の夫から差し出された封筒を受け取ると、不思議そうに表と裏を交互に眺めた。

 

白い封筒には差出人の住所も名前も書かれておらず、ただ中央に『天道 吹雪 様』とだけ記されている。

「そうなんだよ。今日の夕方、郵便屋さんが届けてくれたんだけどね。随分と立派な封筒だから、何か大切な知らせかもしれないよ」

「吹雪ちゃん、何か心当たりはあるの?」

 

院長に尋ねられ、吹雪は首を横に振った。

 

「いえ……全然。私、手紙なんて貰ったことありませんし……」

「そうかい。まぁ、あんた宛ての手紙なんだから、ゆっくり読んでおいで。何か困ったことがあったら、すぐに相談するんだよ」

「はい。ありがとうございます」

 

吹雪は2人に頭を下げ、封筒を胸に抱えるようにして部屋を後にした。

 

廊下に出ると、階下から子供達の賑やかな声が聞こえてきた。

テレビの音に混じって誰かが笑い、それを注意する声が続く。

いつもと何も変わらない、吹雪にとって当たり前の夜だった。

 

しかし、手に持った一通の封筒だけが、どうにもその日常から浮いているように感じられた。

 

「……何だろう、これ」

 

吹雪はもう一度封筒に目を落とす。

厚手の紙には見慣れない紋章が刻まれていた。

 

錨を模したような意匠を中心に、左右へ翼のような模様が広がっている。

どこかで見たことがある、そんな気がした。

 

だが、いくら考えても思い出せない。

吹雪は小さく首を傾げながら、自分の部屋へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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部屋に戻った吹雪は制服の上着を脱ぎ、椅子の背もたれに掛けた。

窓の外では、すっかり日が暮れた示威波町の街並みが静まり返っている。遠くから波の音が聞こえ、時折、港の方から船の汽笛が響いてきた。

吹雪は机の前に腰を下ろし、改めて封筒を手に取った。

 

「……軍から、なのかな?」

 

封筒に刻まれた紋章を見て、ようやく思い当たるものがあった。

学校の授業やテレビのニュースで何度も見たことのある、海軍の紋章だ。

 

だが、どうしてそんなところから自分に手紙が届くのだろうか。

吹雪には軍に所属する知り合いなど一人もいない。

ましてや、海軍から直接連絡を受けるような心当たりもなかった。

 

「……もしかして、間違い?」

 

そう呟きながらも、封筒には間違いなく自分の名前が書かれている。

意を決した吹雪は封を開け、中に入っていた数枚の書類を取り出した。

1枚目には、いかにも役所の書類らしい堅苦しい文章が並んでいた。

 

『志門 吹雪殿。貴殿に対し、艦娘適性検査の実施に伴う出頭要請を通知する』

「……え?」

 

思わず声が漏れた。

吹雪は目を瞬かせ、もう一度最初から読み直した。

 

『先般実施された全国艦娘適性調査において、貴殿に通常の基準とは異なる反応が確認された。ついては、海軍司令本部の指示に基づき、正式な適性検査及び事情説明を実施するものとする。なお、本件は通常の艦娘候補者選抜とは異なる特別調査案件として取り扱われる』

 

「艦娘……適性検査……?」

 

吹雪は書類を机に置いた。

頭の中が追いつかなかった。

艦娘。

 

それは、この世界で誰もが知っている存在だった。

 

深海棲艦と呼ばれる異形の敵に対抗できる、人類にとって唯一の希望。

学校でも教えられ、テレビでも毎日のように報道されている。

その艦娘に、自分がなれるかもしれない。

 

「……私が?」

 

思わず自分の両手を見つめた。

どこにでもいる普通の中学生だ。運動が特別得意なわけでもなく、勉強だって自慢できるほどではない。

 

むしろ、学校では鈍臭いと言われることの方が多い。

そんな自分に、艦娘の素質があるというのだろうか。

 

「……何かの間違いだよね」

 

吹雪は苦笑いを浮かべた。

しかし、書類には海軍司令本部の公印が押されている。

悪戯にしては随分と手が込んでいた。

2枚目の書類には、今後の予定について記載されていた。

 

『明日、担当の者を貴殿の居住地へ派遣する。担当者より詳細な説明を行った後、本人及び保護者の意思を確認する。なお、現時点において正式な艦娘としての採用を決定するものではない』

 

「……明日?」

 

吹雪は慌てて壁の時計を見た。

既に夜の19時を回っている。

つまり、明日には本物の艦娘がこの孤児院にやって来るということだ。

 

「えええっ⁉︎」

 

思わず椅子から立ち上がった。

その拍子に膝が机にぶつかり、置いてあった筆箱が床に落ちた。

 

「いたた……!」

 

慌てて拾い上げながら、吹雪はもう一度書類に目を通す。

何度読んでも内容は変わらない。

 

明日、艦娘がやって来る。

しかも、その目的は自分を迎えに来る事。

 

「ど、どうしよう……院長達にも話さないと……」

 

そこまで口にして、吹雪はふと動きを止めた。

 

艦娘になる。

 

それはつまり、この町を離れるということなのだろうか。

ここを離れ、見知らぬ場所で戦争に参加する。

そう考えた途端、胸の奥に冷たいものが広がった。

 

「……みんなと、お別れするの?」

 

階下から子供達の笑い声が聞こえた。

吹雪はその声に耳を傾けた。

血の繋がりはなくても、自分にとっては大切な家族。

院長先生達も、ここにいる子供達も。

そして。

 

「……カミナさん」

 

真っ先に浮かんだのは、あの男の顔だった。

いつも馬鹿みたいに大きな声で笑い、無茶苦茶なことを言っては周囲を困らせる。それでも、自分が落ち込んでいる時には必ず気付いてくれた。

今日だってそうだった。

 

学校で嫌なことがあった自分を元気づけようとして、結局は補導されてしまった。

 

「……あの人なら、何て言うんだろう」

 

吹雪は小さく呟いた。

きっと、いつものように笑い飛ばすのだろう。

そんなもの気にするな、と。

自分のやりたいようにやればいい、と。

 

だが、吹雪にはまだ分からなかった。

自分がどうしたいのか。

本当に艦娘になりたいのか。

 

それとも、今まで通りこの町で暮らしていたいのか。

窓の外へ目を向ける。

 

月明かりに照らされた海が、遠くで静かに揺れていた。

その光景を見た瞬間、吹雪の胸が不思議な感覚に包まれた。

 

懐かしい。

何故だか、そう感じた。

 

「……また、だ」

 

最近、何度も見る夢。

暗い海の中、激しい波。遠くから響く砲声。

そして、誰かが自分を呼ぶ声。

顔も名前も分からない。

 

それなのに、その声を聞く度に胸が締め付けられるような気持ちになる。

吹雪は無意識に胸元を押さえた。

 

「……私、どうしちゃったんだろう」

 

答える者はいなかった。

机の上には、海軍から届いた一通の手紙。

そして窓の向こうには、どこまでも続く夜の海。

吹雪はしばらくその海を見つめていたが、やがて書類を丁寧に封筒へ戻した。

 

明日になれば、何か分かるかもしれない。

そう自分に言い聞かせて、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

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同時刻。

 

示威波町からほど近い海域に位置する、とある鎮守府。

既に夜も更け、執務棟の廊下には静けさが戻りつつあった。

 

日中は艦娘達の行き交う足音や、任務に関する報告で賑わうこの場所も、今では時折見回りの艦娘が通る程度だった。

 

そんな中、執務室の明かりだけは消えることなく灯り続けていた。

 

「……それで、司令本部は何と?」

「はい。先程、詳細な資料が届きました」

 

大淀は手にした書類を机の上に並べた。

長門はその一枚を手に取り、眉間に皺を寄せる。

 

「……何だ、これは」

「私も最初は何かの間違いかと思いました」

「通常の適性値ではないのか?」

「はい。正確には、測定結果そのものが既存の分類に当てはまらないそうです」

 

大淀の説明を聞き、長門は書類へ視線を戻した。

そこには、艦娘適性調査に関する数値やそれに関する情報が細かく記載されていた。

しかし、肝心の適性判定欄には、ただ一言。

 

『判定不能』

 

そう記されていた。

 

「……判定不能?」

陸奥が長門の横から書類を覗き込む。

 

「適性がないという事?」

「いいえ。むしろ逆です」

 

大淀は首を横に振った。

 

「通常、艦娘の素質を持つ者には、艦船の記憶や魂に由来する特有の反応が確認されます。ですが、この少女の場合、その反応が既存の艦娘と一致しなかったそうです」

「……どういうことだ?」

「分かりません」

 

大淀は困惑した表情を浮かべた。

 

「司令本部の研究部門でも、詳しい原因は特定できていないとのことです。ただ……」

「ただ?」

「反応そのものは、極めて強いそうです」

 

執務室に沈黙が流れた。

長門は腕を組み、考え込むように目を閉じる。

 

「……艦娘としての素質がある。しかし、既存の艦娘とは異なる反応を示している、か」

「それで、わざわざ司令本部が直接動いたというわけね」

 

陸奥は小さく息を吐いた。

 

「でも、そんな子をいきなり鎮守府に連れてきて大丈夫なのかしら?」

「それについても問題があります」

 

大淀は別の書類を取り出した。

 

「対象の少女は現在、中学生です。しかも、戦争孤児として示威波町の孤児院で生活しています」

「……まだ子供ではないか」

 

長門の声が低くなった。

 

「司令本部は、その少女をどうするつもりだ?」

「現時点では保護と精密検査が目的だそうです。正式な艦娘としての採用については、本人と保護者の意思を確認した上で判断するとのことです」

「そうか」

 

長門は短く答えた。

しかし、その表情は晴れなかった。

戦況が悪化していることは、長門も十分に理解している。

 

1人でも多くの艦娘が必要とされていることも。

だが、それとこれとは話が別だった。

 

まだ自分の進む道すら決めていない少女を、軍の都合だけで戦場へ引きずり込むような真似はしたくなかった。

 

「……大淀」

「はい」

「司令本部には、本人の意思を最優先するよう伝えておけ。たとえどれほど優れた素質があろうと、無理に連れてくるつもりはない」

「分かりました」

「それと、明日の派遣についてだが……」

 

長門は机の上に置かれた所属する艦娘達の名簿へ手を伸ばした。

今回の任務は戦闘ではない。

 

相手は、まだ何も知らない一人の少女。

威圧的な態度を取る者ではなく、事情を丁寧に説明できる艦娘が望ましい。

 

そう考えた長門は、名簿の中から2名を選んだ。

 

「……足柄と叢雲を呼んでくれ」

「足柄さんと叢雲さん、ですか?」

「あぁ。足柄は対人交渉にも慣れているし、叢雲は同じ駆逐艦の艦娘として少女に近い立場で話が出来るだろう」

 

陸奥はその名前を聞いて、少しだけ笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、随分と賑やかな組み合わせね」

「……何か問題でもあるのか?」

「いいえ。ただ、あの2人なら退屈はしないでしょうね」

 

長門は陸奥の言葉に少しばかり不安を覚えたが、既に決めたことだった。

 

「大淀、2人に招集を掛けてくれ」

「了解しました」

 

 

大淀は敬礼すると、執務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……はぁ?」

 

叢雲は思わず間の抜けた声を上げた。

 

「だから、明日の朝、示威波町へ向かってもらいたい」

 

長門は先程と変わらぬ口調で説明する。

執務室には、長門、大淀、陸奥に加え、新たに呼び出された足柄と叢雲の姿があった。

 

突然の招集に、2人は何事かと駆けつけたのだが、告げられた内容は予想とは随分違っていた。

 

「ちょっと待ってよ。つまり、私達にその子を迎えに行けって事?」

「あぁ」

「何で私達なのよ?」

「今回の任務は戦闘ではない。対象者に事情を説明し、本人の意思を確認した上で鎮守府へ同行してもらう。それが任務だ」

「……ふぅん」

 

叢雲は腕を組み、不満そうに鼻を鳴らした。

 

「随分と面倒な仕事ね」

「まぁまぁ、いいじゃないの」

 

隣に立つ足柄が、叢雲の肩を軽く叩いた。

 

「たまにはこういう任務も悪くないわよ。戦闘ばかりじゃ息が詰まっちゃうもの」

「アンタは気楽でいいわね……」

「何よ、その言い方」

 

足柄は少しだけ頬を膨らませたが、すぐに長門へ向き直った。

 

「それで長門さん、その子は一体どんな子なの?」

「名前は志門 吹雪。示威波町にある孤児院で生活している中学生だ」

「吹雪……?」

 

叢雲が小さく呟いた。

 

「どうした?」

「……別に。何でもないわ」

 

叢雲は視線を逸らした。

ただ、どこか引っ掛かるものがあった。

 

吹雪。

 

それは、かつて自分と同じ駆逐艦として海を駆けた艦の名前でもある。

もちろん、名前が同じだからといって特別な意味があるとは限らない。

しかし、何故だか妙に気になった。

 

「その子、本当に艦娘の素質があるの?」

 

叢雲の問いに、大淀が答えた。

 

「はい。ただし、通常の艦娘とは異なる反応が確認されています」

「異なる?」

「詳しいことは、まだ分かっていません。司令本部でも調査中です」

「何よそれ。随分と曖昧じゃない」

「だからこそ、今回の任務が必要なのだ」

 

長門は2人を見据えた。

 

「いいか。相手は何も知らない少女だ。軍人としての立場を押し付けるような真似はするな。本人が拒否するなら、それ以上の強制は認めない」

「了解!」

 

足柄は元気よく敬礼した。

一方の叢雲は、少し面倒そうに肩を竦めた。

 

「分かったわよ。要するに、その子を怖がらせずに話を聞けばいいんでしょ?」

「そういう事だ」

 

長門は頷いた。

 

「明朝7時に出発。現地への移動手段はこちらで手配する。詳しい資料は大淀から受け取ってくれ」

「了解しました!」

「はいはい、了解」

 

2人はそれぞれ返事をすると、執務室を後にした。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

廊下へ出た足柄は、大きく伸びをした。

 

「んー、それにしても、久しぶりの陸上任務ねぇ」

「……ただの迎えじゃない」

「そうだけど、たまには外の空気を吸うのもいいじゃない」

 

足柄は上機嫌だった。

最近は出撃任務が続き、鎮守府と海を往復する毎日だった。

こうして町へ出る機会など、滅多にない。

 

「そういえば、示威波町ってどんなところなのかしら?」

「さぁ?田舎町らしいけど」

「へぇ、いいじゃない。のんびりしてそうで」

「……遊びに行くんじゃないのよ」

「分かってるわよ!」

 

足柄は笑いながら答えた。

しかし、叢雲はどこか納得していない様子だった。

 

「……それにしても、判定不能の艦娘候補ね」

「気になる?」

「当たり前でしょ。普通、そんなことある?」

「さぁねぇ。私も聞いたことないわ」

 

足柄は少しだけ真面目な表情になった。

 

「でも、だからって私達があれこれ考えても仕方ないでしょう?まずは本人に会ってみないと」

「……それはそうだけど」

「それに、その子だって不安でしょうしね」

 

足柄は廊下の窓から夜空を見上げた。

 

「いきなり軍から呼び出されたら、誰だって驚くわよ」

「……そうね」

 

叢雲は小さく頷いた。

自分達にとって艦娘である事は当たり前でも、普通の人間にとってはそうではない。

 

ましてや、相手はまだ中学生だ。

突然、自分には艦娘の素質があると言われても、簡単に受け入れられる筈がなかった。

 

「……まぁ、せいぜい優しくしてあげるわよ」

「ふふっ、叢雲って案外面倒見がいいわよね」

「なっ⁉︎ 別にそういうんじゃないわよ!」

「はいはい」

「その言い方やめなさいよ!」

 

足柄は笑いながら歩き出した。

叢雲も文句を言いながら、その後を追う。

 

彼女達はまだ知らなかった。

 

明日、示威波町で出会う一人の男と、少女が自分達の運命を大きく変える事になるとは。

 

 

 

 

つづく

 





いつものBGM
突如現れた足柄と叢雲。そして告げられた運命に、吹雪は迷う。

「こんな時、あの人ならなんていうかな…」

「お前の運命は、お前が決めろッ!!」

だが、その時!示威波町に深海棲艦が襲来!
絶体絶命の危機に、カミナ達はどう立ち向かうのか⁉︎

次回!天元突破グレンラガン

第2話「お前の運命は、お前が決めろッ!!」


完全に勢いとノリです。後、次は可能な限り文字数削ります。
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