アルファるふぁ短編小説   作:アルファるふぁ/保利滝良

4 / 9
新作連載モノとして作っていたけど終わってないもの多すぎて断念した作品
シカタナイネ



近未来SFバトル的なナニカ

闇夜が生まれるべき深い夜のなか その街は燃えるように光に包まれていた

コンクリートジャングルの、ビルと言う名の木々の天辺 厚手のロングコートを着た若い男が一人

刺々しく整えられた銀髪が、猛禽を彷彿とさせる瞳が、そして唇の左側の裂け具合が、その男にただならぬ雰囲気を与えている

その眼下には無数の車 あまりの交通量は、その道路が『カー・リバー通り』のあだ名を戴く由来だ

そしてその中から、一台の黒塗り高級車が、男の登っているビルの真下に止まった

それを確認すると

 

男は、跳んだ

 

真下に向かって重力に従い真っ逆さまに落ちていく

風を受けてロングコートが激しく靡く

パラシュートでも付けていれば、アクロバットとしてワライモノにできただろうに、男にはそれはない

ただ落ちていくだけ

高級車から降りようとしたハゲ頭の不細工が目を見開く 落ちてくる男を発見したからだ

別の車から降りた護衛の人間がハゲ頭の周りに集まった

その直後、男が地面に接触した

落下の衝撃は凄まじかった かなり頑丈なハズの道路に穴を開け、さらに大量のヒビを入れたのだから

だがそれは問題ではない 護衛の人間とハゲ頭の不細工は驚くべきものを見た

全く無傷の、落下した男の面を

刹那、男は右手を振った

虎が獲物を爪で引き裂くように、抜き身の刀でその場にいた何人かの喉を引き裂いたのだ

鮮血が飛び散り、倒れる護衛達

生き残りはピストルを取り出し構えようとした

だが、動きのトロい護衛対象が恐るべき襲撃者に頭蓋を叩き割られるのが早かった

突き刺さった刀を引き抜いて、男は跳躍した

返り血に染まったその顔には、冷たい無表情が座っていた

ビルからビルへと跳んで移動していく下手人を、普通の人間の能力しかない護衛達は見ていることしかできなかった

護衛達は後に知った ソイツこそがこの近未来都市『ニルヴァーナ』における『殺戮の魔人』だと言うことに

この都市で最も強い男であるということに

 

 

 

 

 

 

 

 

「キサマが『魔人』か」

青いジャケットを羽織ったオールバックの男がいた

その男は口裂け男の目の前に立っている

「そんな名前の人間は聞いたことがない」

ロングコートの男は皮手袋を外した 指の動きを阻害するからだ

オールバックの男がジャケットを投げ捨てる その下のシャツに、人間のそれとは明らかに違う肉体が透けて見えていた

「俺は『パワーサイボーグ・ジーノ』様だ!テメェをぶっ殺して『最強』の称号を手に入れる男だ!」

ジーノと名乗った男はシャツを破り捨てて機械の体を晒した 銀色に鈍く光るボディの端々に黄色いコードが見え隠れしている

「食らえェ!」

ジーノの指先から銃弾が飛び出した 迸るマズルフラッシュに引っ張られるようにそれぞれの指から一発ずつの弾丸が『魔人』を狙って突き進んでくる

垂直跳びで逃げ、『魔人』はビルの壁に向かって飛んだ

地面に向かってほぼ垂直に建っているビルの壁を足場に、蹴る 三角飛びと呼ばれるその技を軽々と行い、瞬間口裂け男は懐から一本の何かを取り出した

それを見逃すジーノではなかった 近くのオイル満タンドラム缶を掴み、馬力に任せて軽々と投げた

時速数百キロのスピードで飛来してくるドラム缶を、『魔人』は何事も無いようにキャッチする 三角飛びの勢いは殺されるものの、自由落下の勢いは殺されない

そのまま落下する

「チクショウ、取って置きだ!」

ジーノの胸部が左右に開き、中から一本の筒が現れた ロケットランチャーである

着地の瞬間は無防備で、百パーセント動くことすらできないはず

そこにこの火力をブチ込めば、

「食らえ!」

筒が火を吹く 同時にジーノの背中から砂が射出された バックブラストだ

真っ直ぐ飛んでいく危険な爆発物 並大抵の物なら吹っ飛ばす一撃

地に降り立った『魔人』の体に、確かにランチャーは直撃した 例え彼がサイボーグで無かったとしても直撃の瞬間くらいは見えていたであろう

「は、ハハハ・・・やった、殺ったぞ!勝ったぞーッ!」

爆風の前でジーノは笑う 勝利に、今から手にはいるであろう『最強の男』の称号に、自らの力に酔っている

が、あっさりと『魔人』は煙から無事な姿を現した

一体どんな構造なのか、衣服にも傷一つない

「な、何だと!そんな、そんな、そんなバカなああああ!」

『魔人』の握っている剣が一瞬だけ輝いた

「・・・今宵はツルギ(この世界を叩き斬れ)・・・」

その瞬間全長二キロメートルの巨大な刃がその剣の柄から飛び出した

否、刃が飛び出したのではなく、剣が伸びたのだ 例えるならば新世紀の如意棒

しかも厚さも太さも巨大化している つまり質量も

「・・・世界で一番大きなツルギ(オンリイワン・ナンバアワン・グレエトワン)・・・」

なんの躊躇いもなく『魔人』はその剣を降り下ろした 大上段からの兜割りである この剣なら袈裟斬りだろうが突き上げだろうが強烈なはずだが、今の『魔人』が選択したのは偶然兜割りだった

なす術なく、哀れなジーノは一刀両断

どころか、剣の切っ先にある街の全てが真っ二つだ

土煙も、巻き込まれた人間も、建物も、全てが全て差別なく真っ二つである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣はもとの大きさに戻り、『魔人』は街の切り傷に背中を向けて歩き出す

西暦からはるか未来の堕落した世界 人種も言語も関係なくなってしまったこの世界において、『魔人』という不確かな呼び名を与えられた男

彼は一本の剣を携えてさ迷う

ただ、理由もなく生きている

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。