アルファるふぁ短編小説   作:アルファるふぁ/保利滝良

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お試し執筆 ウルトラマン編

 

光が辺りを照らす。その瞬間、一つのシルエットが浮かび上がった。

それは、銀と赤の二色に染められた、巨人。胸に輝く宝玉が、蒼い光を放つ。

「シュワッ!」

ウルトラマン。その巨人はウルトラマンだ。強く逞しく佇む、銀色の巨人。

その目前には、おぞましい形相の怪物がいた。ウルトラマンを越える体長の、爬虫類に似た怪生物だ。

宇宙怪獣ベムラー。数多の星々を荒らす凶悪な宇宙生物である。ウルトラマンは、かつて目の前の者とは別個体のベムラーと戦ったことがある。

以前の個体と、目の前のベムラー。同種であるから、外見は殆ど同じだ。そして、悪事を働いたのも同じ。

辺り一面岩だらけのこの惑星は、ベムラーによって住民を大虐殺された。ウルトラマンとベムラーが立つこの土地は、この星の者の住処があった場所なのだ。だが、ベムラーによる破壊行為に、瓦礫の山と化した。

これ以上この星の者に犠牲を出すわけにはいかない。ウルトラマンは、腰を深く落とし、前のめりのファイテイングポーズをとった。

「ヘアッ!」

「ギシャアアア!」

戦闘が始まった。先手はベムラーが取る。光の巨人へ、一直線に突進してきた。

一度倒したことがあるとはいえ、敵は狂暴な生物である。そのパワーはけして侮れるものではない。

頭からぶつかってくるベムラー。その側面を掴み取り、巨人は脚を踏ん張った。

巨大な力と力がぶつかり合い、拮抗の瞬間が訪れる。

だが、静寂はすぐに破られた。

「ジェエアッ!」

ベムラーを掴む腕を捻り、横へ投げ飛ばすウルトラマン。

「ギャオオオ!」

地面へ叩きつけられた怪獣は、唸り声をあげて倒れた。距離をとるように転がり、すぐ起き上がる。

だが、目前にはウルトラマンがにじり寄っていた。

起き上がったところへ、強烈な手刀が飛び込む。それも一度ではない。

「デアッ!デアッ!デアッ!」

顔面へ三度、強烈なチョップを浴びせられ、ベムラーは思わず身をよじった。ウルトラマンの攻撃に、たまらず仰け反る。

「キシャアア!キシャアア!」

「シュアッ!」

怯んだところへ蹴りを打つ。腰の入った、渾身の一撃だ。

「ギジャア!」

よろけるベムラー。ラッシュが止んだ一瞬をとり、数歩の後退りをする。

ウルトラマンがもう一度近付こうとすると、ベムラーの口内にスパークが輝いた。

ぶわっと広がる瞬き。怪獣の口から、超高温のビームが吐き出された。

「デュワァア!」

熱線を撃ち込まれ、一撃で吹っ飛ばされる光の巨人。背中から地面に倒れ込み、土埃が広がる。

直ぐ様体勢を建て直そうとするウルトラマンだったが、それを見逃さず怪獣が襲いかかる。

「ギシャアアア!」

肩に噛み付こうとするベムラー。しかしウルトラマンは、鋭い牙を剥くベムラーの口を無視した。その下、強固な皮膚に覆われた首元を狙う。

「ヘェエエアッ!」

両手の力を全力にして、宇宙怪獣の首を握る。あまりの力の強さに、ベムラーは一瞬だけ動きを止めた。

「シェアッ!」

マウントポジションをとったはずのベムラーは、ウルトラマンの反撃により引き倒された。そこへウルトラマンが馬乗りになり、二つの巨大な影は、先程の状況とは上下逆になった。

ウルトラマンが殴りかかる。

「ヘアッ!テアッ!」

「ギャオオオ!」

一発一発が強烈なラッシュ。悲鳴をあげるベムラー。

だが、ベムラーには、通常ではウルトラマンのマウントから抜け出すことはできない。

「デァ!」

そう、普通では。

ベムラーは長い尻尾を振り回し、自分に乗っかっている巨人の背を打ち据えた。

よろけたウルトラマンは、ベムラーが起き上がろうとするのを止められなかった。馬乗りの姿勢から転がり落ちて、しかしすぐ起き上がる。ベムラーも立ち上がっていた。

宇宙怪獣は尻尾を振り、ウルトラマンへ叩き付けた。強烈な衝撃を、腕でガードする。

ベムラーは尻尾を巧みに動かし、光の巨人の脇腹を、脚を、肩を次々と痛め付けていく。だが、巨人は防御姿勢のまま、小揺るぎもしない。

隙の少ない振り方では大きなダメージを与えられないと判断した宇宙怪獣は、巨人の息の根を止めるべく尻尾を大きくしならせた。大振りの一撃で、確実に仕留めるつもりだ。

尾に力を込めようと、体の右側へ引き寄せた。その瞬間であった。

「ンッ!シァアッ!」

光の戦士の右腕に、光が集まった。鮮やかなブルーの閃光は、ウルトラマンの右腕に集結し、一つの形をとっていく。

それは中心に穴の空いた、丸ノコギリの刃のような形状であった。

右手に出現した一枚の刃を、渾身の力でもって投げ付ける。

「デヤァッ!」

八つ裂き光輪は、大振りの構えをとっていたベムラーの尻尾を切断した。光の刃は皮膚と肉と骨を一瞬で通過し、飛んでいった。

「ギャオオオ!」

大きなダメージを受けたベムラーは、苦痛の雄叫びをあげる。その姿に、ウルトラマンはしっかりと狙いを付けた。

両手に集まる輝く光。腕にチャージされる力強い煌めき。

「ヘアッ!」

右手を立てて、左手を横に。手首で両手を交差する。

そして、放たれるのは必殺技。一撃必殺の最強技。

スペシウム光線。

溢れるエネルギーの奔流は、宇宙怪獣の胸部へ飛び込んだ。光の流れが、一層強くなる。

「ギィイイイジャアアアアアアアア!!」

ベムラーの断末魔と共に、着弾点から巨大な爆発が起こる。おぞましい宇宙怪獣は、スペシウム光線の前に倒れた。

ウルトラマンは、両手を十字の形から解く。激しい戦いは終わりを告げたのだ。

胸部に光るカラータイマーが、活動限界が近いことを知らせた。甲高い音、赤色の点滅。

銀色の巨人は辺りを見回した。瓦礫の向こうから、小さな影がポツポツと見えた。この惑星の住民であろう。

彼らは、恐ろしい怪獣に脅かされる心配をせずにすむようになった。星を救ってくれたヒーローを、輝く瞳で見つめている。

彼らの姿を認めると、ウルトラマンは空へ跳んだ。

「シュワッチ!!」

そして、そのまま空を飛行し、星雲輝く宇宙へと飛び去っていった。

ウルトラマンは勝利したのだ。

 

 





設定としては、初代ウルトラマンがいろんな技を使ってベムラーを倒す、というものです
時系列的にはゴーストリバース以前辺りかな?悪事を働く野良ベムラーをどっかの惑星で倒したのだと思います
ウルトラマンは良いぞ

これで巨大ヒーローの描写を勉強できました、いつか活かせるといいなぁ

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