転生したらエースだった件   作:みけまる(AI執筆)

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第十三話 海賊ポルシェーミ

 ルフィがダダンの家に来てからというもの、おれとサボの修行には、毎日のように新しい参加者が現れるようになった。

 

 もっとも、最初から最後まで同じことをやっているわけではない。おれたちが組手を始めれば自分も混ぜろと言い、岩を殴れば自分にもやらせろと騒ぎ、走り込みでは道も分からないくせに先頭を走ろうとする。おかげでサボは、以前よりずっと大きな声を出すようになった。

 

「ルフィ! そっちじゃねェって言ってんだろ!」

 

「分かってる!」

 

「分かってねェから呼んでんだよ!」

 

 少し先で、ルフィが倒木の上から手を振っていた。今朝も山道で競争を始めた途端、勝手に近道を探し始めたのである。

 

「おい、ルフィ! そこから飛び降りるなら、下をちゃんと見ろよ!」

 

「おう!」

 

 返事だけはいい。

 

 ルフィは倒木から飛び降りると、着地した勢いのまま走り出した。今度はちゃんとこちらへ向かってきたので、おれもサボも追いかけることにする。

 

 あいつが来てから、退屈する暇がない。

 

 修行の進み具合だけを考えれば、二人でやっていた頃の方が効率はよかっただろう。それでも、ルフィに教えるために自分の動きを確かめ直すことは案外役に立つし、何より、あいつが昨日できなかったことを今日できるようになって大喜びするのを見るのは悪くなかった。

 

 ただし、飯を食う時だけは話が別だ。

 

 昨日もおれの肉を狙ってきたので、箸で手の甲を叩いてやったら、今度はサボの皿から取っていた。あいつはそのうちダダンに本気でぶん殴られると思う。

 

 そんなルフィが、その日の昼過ぎになっても姿を見せなかった。

 

     *

 

「なあ、エース。ルフィの奴、遅くねェか?」

 

 サボがそう言ったのは、おれたちがいつもの鍛錬を終え、昼飯を食いに戻ろうとしていた時だった。

 

 今朝はルフィが寝坊したので、先に二人で山へ出ていた。起きたら追いかけてくると言っていたが、結局、昼になっても現れなかったのである。

 

「また寝てんじゃねェの?」

 

「あいつが昼飯まで寝てると思うか?」

 

「……思わねェな」

 

 おれたちは顔を見合わせた。

 

 ダダンの家へ戻ってみると、ルフィはやはりいなかった。台所ではダダンが昼飯の支度をしており、鍋の中をかき回しながら、何やらぶつぶつ文句を言っている。

 

「ダダン、ルフィは?」

 

「ああ? あのガキなら、とっくに出てったぞ」

 

「どこに行くって?」

 

「知るかい。朝飯を食ったら、どっか行きやがったんだよ。まったく、あのクソガキ……」

 

 ダダンはそこで鍋をかき回す手を止め、おれたちを見た。

 

「何だ、まだ帰ってねェのか?」

 

「おう。山にも来なかったぞ」

 

「ふん。どうせ腹が減りゃ戻ってくんだろ」

 

 そう言って再び鍋へ向き直ったものの、ダダンは少ししてから、面倒くさそうに付け加えた。

 

「……探しに行くんなら、飯までには帰ってこいよ。何度も温め直すのは御免だからな」

 

「分かった!」

 

 おれは手を振り、サボと一緒に家を出た。

 

 さて、どこへ行ったのか。

 

 ルフィが興味を持ちそうな場所なら、山の中にいくらでもある。川へ魚を獲りに行った可能性もあるし、以前見つけた蜂の巣をまた覗きに行ったのかもしれない。

 

 だが、サボには別の心当たりがあるらしかった。

 

「なあ、エース。昨日、あいつにグレイ・ターミナルの話しただろ?」

 

「ああ……」

 

 そういえば、昨日の夕飯の時に、ルフィが例の貯金についてしつこく聞いてきたのだった。

 

 おれとサボは、いずれ海へ出るための金を貯めている。もともとはサボが始めたことで、おれも手伝うようになってからは、狩りで得た獲物を売った金や、グレイ・ターミナルで海賊から奪った金をそこへ加えていた。

 

 ルフィにも、その話はしてある。

 

 昨日はとうとう、どんな場所に隠してあるのか見たいと言い出したので、勝手に触るなよと釘を刺したところだった。

 

「……あいつ、まさか一人で行ったんじゃねェだろうな」

 

「あり得るぞ。昨日も、すげェところなんだろって騒いでたし」

 

「すげェところっていうか、ゴミ捨て場なんだけどな」

 

 サボは苦笑したが、おれは少し嫌な予感がしていた。

 

 グレイ・ターミナルには、海賊やゴロツキも大勢出入りしている。ルフィもそこらの子供よりはずっと丈夫だが、まだ一人でうろつかせていい場所ではない。

 

「とりあえず行ってみるか」

 

「おう!」

 

 おれたちはグレイ・ターミナルへ向かって走り出した。

 

     *

 

 グレイ・ターミナルは、今日も相変わらずの有様だった。

 

 山のように積まれたゴミの間には、拾った鉄くずや壊れた家具を運ぶ連中が行き交い、あちこちから煙が上がっている。少し離れたところでは男たちが何やら言い争っており、その横を荷車が通ろうとして怒鳴られていた。

 

 おれとサボは、普段使っている道を進みながら、ルフィの姿を探した。

 

「おい、エース。あっちの連中に聞いてみるか?」

 

「そうだな」

 

 サボが近くの男に声をかけようとしたところで、別の方向から怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「だから、どこに隠したか言えってんだよ!」

 

 続いて、何かを殴りつけるような鈍い音が響いた。

 

 おれは足を止めた。

 

 声の聞こえた方へ意識を向ける。見聞色を広げると、少し離れた建物の中に数人の気配があり、その中に、よく知った気配が混じっていた。

 

「サボ。ルフィがいたぞ」

 

「どこだ!?」

 

「あっちだ。けど、誰かと一緒にいる」

 

 おれが指さすと、サボはすぐに駆け出した。

 

 おれも後を追い、建物の裏手へ回る。途中、壁の向こうから聞こえてきた声に、サボが顔をしかめた。

 

「おい、今の……」

 

「ああ。ポルシェーミだな」

 

 ブルージャム海賊団のポルシェーミ。

 

 この辺りで海賊から金を奪っていれば、いずれ関わることになるとは思っていた。原作の出来事も覚えているし、あいつがルフィを捕まえて金の隠し場所を聞き出そうとすること自体は、意外でも何でもない。

 

 ただ、原作と違って、今のおれたちはルフィを追い払っていない。

 

 あいつは自分からグレイ・ターミナルへ来て、運悪くポルシェーミに捕まったらしい。

 

「どうする、エース?」

 

「裏から入る。お前はルフィの方へ回ってくれ。おれがあいつらを引きつける」

 

「分かった」

 

 サボはすぐに頷いた。

 

 建物の裏には、板を打ちつけただけの窓があった。中を覗くと、ポルシェーミとその手下が二人。その向こうで、ルフィが柱に縛りつけられていた。

 

 服はあちこち破れ、腕や肩には血のにじんだ傷がいくつもできている。

 

 ポルシェーミがルフィの前にしゃがみ込み、何かを問い詰めていた。

 

「お前、あいつらの仲間なんだろ? だったら、金の隠し場所くらい知ってんじゃねェのか?」

 

「知らねェ!」

 

「さっきは知ってるって言ってたじゃねェか!」

 

「うるせェ! お前になんか教えねェ!」

 

 ポルシェーミの顔が引きつった。

 

 苛立ったポルシェーミがルフィの腹を殴りつけると、拳がゴムの身体にめり込み、そのまま押し返された。ルフィは痛がるどころか、ポルシェーミを睨みつけている。

 

「チッ……! 忌々しい身体しやがって!」

 

 ポルシェーミは傍らに置いてあった、棘のついたグローブを手にはめた。

 

 それを見たルフィの顔が強張る。

 

「だったら、こいつはどうだ!」

 

 棘のついた拳がルフィの肩へ叩き込まれた。今度はゴムの身体でも防ぎきれず、ルフィが悲鳴を上げる。ポルシェーミが拳を引くと、破れた服の下から新たな血が流れた。

 

「……あいつ」

 

 隣でサボが低く呟いた。

 

 おれも思わず歯を食いしばったが、今ここで窓を破れば、ルフィのすぐそばにいるポルシェーミがどう動くか分からない。

 

 裏口は少し離れたところにある。そこからなら、サボがルフィの背後へ回れるはずだ。

 

「サボ、行けるか?」

 

「おう。お前も早く来いよ」

 

「ああ」

 

 サボは腰を落とし、壁伝いに裏口へ向かった。

 

 おれはもう一度、中の様子を確かめる。

 

「最後に聞くぞ。金はどこだ?」

 

「知らねェって言ってんだろ!」

 

「このガキ……!」

 

 ポルシェーミが立ち上がり、傍らに置いてあった刀へ手を伸ばした。

 

 その時、サボが裏口の陰から顔を出した。

 

 目が合う。

 

 おれが頷くと、サボは扉を蹴り開けた。

 

「ルフィ!」

 

「サボ!?」

 

 中にいた海賊たちが一斉に振り返った。

 

 おれは窓を蹴り破り、ポルシェーミへ飛びかかった。

 

     *

 

「てめェら、どこから……!」

 

 ポルシェーミが刀を抜こうとした時には、もう懐へ入り込んでいた。

 

 相手の右手を押さえ、踏み込んだ足を軸に身体を回す。振りほどこうとしたポルシェーミの力を利用して体勢を崩すと、そのまま腹へ拳を叩き込んだ。

 

「ぐおっ……!」

 

 ポルシェーミの身体が浮き、背後の壁へ叩きつけられた。

 

 手下の一人が慌ててこちらへ向かってきたが、そいつが振り上げた棒を避けるより先に、サボが横から飛び込んできた。

 

「邪魔だ!」

 

 サボの蹴りを脇腹に受けた男が、もう一人を巻き込んで床を転がる。

 

 おれがポルシェーミへ向き直ると、奴は壁に手をつきながら、どうにか立ち上がろうとしていた。

 

「クソッ……ガキのくせに……!」

 

「おれたちから金を取り返したかったんだろ?」

 

「てめェ……!」

 

 ポルシェーミが刀を抜いた。

 

 さっきの一撃で動きは鈍っていたが、それでも海賊としての経験はあるらしい。刀を構え直すと、無闇に突っ込まず、こちらの出方をうかがっている。

 

 おれは拳を握った。

 

「悪いけど、もう帰るからな」

 

「ふざけるんじゃねェ゙!」

 

 ポルシェーミが踏み込んだ。

 

 上段から振り下ろされた刀を半身になってかわし、手首をつかむ。武装色をまとわせた拳で刀の腹を横から打つと、刃が折れ、ポルシェーミの手から柄が弾け飛んだ。

 

「なっ……!」

 

 驚いて動きが止まったところへ、今度は顎を打ち抜いた。

 

 ポルシェーミは後ろへ倒れ、そのまま動かなくなった。

 

「エース! こっちは終わったぞ!」

 

 振り返ると、サボが手下二人を床へ転がし、ルフィの縄を解いているところだった。

 

 ルフィは自由になった途端、勢いよく立ち上がろうとしたが、傷ついた肩を動かして顔をしかめた。

 

「いってェ……!」

 

「おい、無理すんなって!」

 

 サボが慌てて肩を貸す。

 

 おれも二人のところへ向かった。

 

「ルフィ、大丈夫か?」

 

「おう! 全然平気だ!」

 

「どこがだよ。血が出てんじゃねェか」

 

「これくらい平気だ!」

 

 そう言って胸を張ったルフィは、傷ついた肩まで勢いよく動かしてしまい、また顔をしかめた。

 

 おれが無事な方の肩を支えてやると、ルフィは悔しそうに口を尖らせた。

 

「……あのトゲトゲ、すっげェ痛ェんだぞ」

 

「見りゃ分かるよ」

 

 サボが縄を放り捨て、ルフィの肩の傷を覗き込んだ。

 

「ったく。何で一人でこんなところまで来たんだよ!」

 

「だって、お前らがいつも来てるって言ってたから、見てみたかったんだ!」

 

「それで捕まってりゃ世話ねェだろ!」

 

「うるせぇな! おれだって、捕まるつもりはなかったんだ!」

 

「捕まるつもりで捕まるバカはいねぇ!」

 

 いつもの調子で言い合っている二人を見て、少し安心した。

 

 もっとも、ルフィの怪我は放っておけない。腕や肩には棘で傷つけられた跡がいくつもあり、今も血がにじんでいる。ダダンのところへ戻って、手当てしてもらう必要がある。

 

 おれは床に倒れたポルシェーミを一瞥した。

 

「とりあえず帰るぞ。こいつらが起きる前に、ここを離れようぜ」

 

「おう!」

 

 ルフィが元気よく返事をしたところで、サボが呆れたように笑った。

 

「お前、ほんと返事だけはいいよな」

 

     *

 

 グレイ・ターミナルを出て、山へ続く道を歩き始めた頃には、ルフィも少し落ち着いていた。

 

 おれが背負ってやろうかと聞くと、自分で歩けると言い張ったので、今はサボと二人で挟むようにして歩いている。歩くこと自体は問題なさそうだが、傷ついた肩を動かすたびに顔をしかめている。

 

「なあ、ルフィ」

 

「何だ?」

 

「お前、金の隠し場所は知ってただろ?」

 

「おう!」

 

 ルフィはあっさり頷いた。

 

「だったら、何で教えなかったんだ?」

 

「何でって……」

 

 ルフィは不思議そうにおれを見上げた。

 

「お前らの金だろ?」

 

「そりゃそうだけどよ」

 

「あいつ、エースとサボから金を取り返すって言ってたぞ。だから、教えねェ!」

 

 それだけ言うと、ルフィはまた前を向いた。

 

 おれとサボは顔を見合わせた。

 

 原作で知っていたこととはいえ、実際に自分たちのためにあれだけ傷つけられて、それでも隠し場所を教えなかったのだと思うと、さすがに何も感じずにはいられない。

 

「……お前、馬鹿だなあ」

 

「何だと!」

 

「別に、教えたってよかったんだぞ。金なんか、また集めりゃいいんだから」

 

「嫌だ!」

 

 ルフィは即答した。

 

「だって、あれ、お前らが海へ出るために貯めてんだろ? あんな奴に取られたら嫌だ!」

 

 サボが吹き出した。

 

「ははっ! お前、そんなこと考えてたのかよ!」

 

「何だよ! 笑うな!」

 

「いや、悪い悪い。ありがとな、ルフィ」

 

 サボがルフィの頭をわしゃわしゃとかき回すと、ルフィは嫌がって手を振り払った。

 

「やめろ! 帽子が落ちるだろ!」

 

「おっと、悪ィ!」

 

 おれも笑いながら、ルフィの無事な方の肩を叩いた。

 

「ありがとな。けど、次に同じようなことがあったら、金なんかより自分のことを考えろよ」

 

「何でだ?」

 

「お前があいつに殺されたら、金が残ってても意味ねェだろ」

 

 ルフィはしばらく考えていたが、やがて、にっと笑った。

 

「じゃあ、もっと強くなればいいんだな!」

 

「……まあ、そうだな」

 

 間違ってはいない。

 

 ただ、今の話をどう聞いたらそういう結論になるのかは、ちょっと聞いてみたいところだった。

 

「よし! 帰ったら修行しようぜ!」

 

「その怪我でか?」

 

「平気だ!」

 

「今日は休め!」

 

 サボが即座に突っ込むと、ルフィは不満そうに頬を膨らませた。

 

「えーっ!」

 

「えーっ、じゃねェよ! ダダンに手当てしてもらうんだよ!」

 

「じゃあ、明日は?」

 

「お前の身体次第だ」

 

 サボがそう言うと、ルフィは今度はおれの方を見た。

 

「なあ、エース! 明日は修行できるよな!?」

 

「怪我が治ってたらな」

 

「よし!」

 

 何がよしなのかは分からないが、ルフィは満足したらしい。

 

 おれたちはそんな話をしながら、ダダンの家へ向かって歩き続けた。

 

 今日の一件で、ルフィがどんな奴なのか、前よりずっとよく分かった気がする。

 

 何も考えていないようで、あいつなりに大事にしているものがある。自分が痛い思いをしても、それを簡単には手放さない。

 

 まったく、面倒な奴だ。

 

 けど、そういう奴は嫌いじゃない。

 

「なあ、サボ」

 

「何だ?」

 

「今日の飯、ルフィに肉を一枚やろうぜ」

 

「おっ、いいな!」

 

「えっ!? 肉くれんのか!?」

 

 さっきまで傷を気にしていたルフィが、勢いよく顔を上げた。

 

「一枚だけだぞ」

 

「二枚!」

 

「調子に乗んな!」

 

「じゃあ三枚!」

 

「増えてんじゃねェか!」

 

 サボが笑い出し、おれもつられて笑った。

 

 その声を聞いて、ルフィも嬉しそうに笑う。

 

 家に着いたら、まずはダダンに怒られるだろう。ルフィを一人で出歩かせたことについては、おれとサボも小言を食らうかもしれない。

 

 それでも、三人で帰れるなら上等だ。

 

 おれは少し歩く速度を落とし、傷ついた肩をかばっているルフィに合わせて、山道を登っていった。

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