転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
じいちゃんが帰ってきた。
その知らせを聞いたのは、サボとルフィを連れて山から戻ったところだった。
玄関先には見覚えのある海兵の荷物が積まれていて、家の中からはダダンの怒鳴り声が聞こえてくる。
「だから、勝手に食うんじゃないよ! それは今晩の分だって言ってんだろ!」
「ぶわっはっはっは! 細かいことを気にするな、ダダン!」
「誰のせいで飯が足りなくなると思ってんだ!」
相変わらずだな。
おれが戸を開けると、食卓の前に座っていたじいちゃんが、肉のついた骨を片手に振り返った。
「おお! 帰ったか、お前ら!」
「じいちゃん! おれの肉は!?」
ルフィが真っ先に駆け寄った。
「お前の肉なんぞ知らん!」
「それ、おれたちが昨日獲ってきたやつだろ!」
「そうなのか? うまいぞ!」
「返せェ!」
ルフィがじいちゃんの背中へ飛びついたところで、ダダンが食卓を叩いた。
「ガープさん! 孫と遊ぶなら外でやってくれませんかね! ただでさえ食い扶持が増えて大変なんですよ!」
「何じゃ、サボもすっかり元気そうじゃのう!」
「話を聞けェ!」
じいちゃんはダダンの怒鳴り声など気にも留めず、サボへ目を向けた。
「もう腕は治ったのか?」
「ああ。先生にも、もう普通に動かしていいって言われたよ」
サボは左腕を軽く回してみせた。
退院してからしばらく経ち、先日ようやく医者から運動の許可が下りた。まだ以前とまったく同じ調子とはいかないものの、今朝の組手ではルフィを三回ほど転がしている。
「そうかそうか! なら、あとで修行じゃな!」
「帰ってきて早々にそれかよ!」
「何を言っとる! わしがせっかく帰ってきたんじゃぞ!」
「だったら、土産くらい持ってこいよ」
おれが口を挟むと、じいちゃんは大口を開けて笑った。
「ぶわっはっは! 土産ならあるぞ!」
「おっ、何だ?」
「愛の拳じゃ!」
「いらねェ!」
そう言い終わるより早く、じいちゃんの拳が飛んできた。
おれは身をひねってかわし、そのまま玄関の外へ跳び出す。じいちゃんも笑いながら追ってきたが、背後からダダンの怒鳴り声が飛んできた。
「庭を壊したら承知しないよ!」
「大丈夫じゃ! 山へ行く!」
「最初からそうしてくれ!」
まったく、帰ってきて五分も経ってねェぞ。
まあ、こっちもじいちゃんに見せたいものがあるんだけどな。
*
山へ向かう途中、じいちゃんから最近の修行について聞かれた。
おれたちが普段どおり身体を鍛え、覇気の練習を続けていると話すと、じいちゃんは満足そうに頷いた。サボが左腕の怪我でしばらく組手を休んでいたことには文句を言わなかったが、ルフィが見聞色の練習中に寝ていたと聞いた途端、でかい拳骨を落とした。
「いってェ! 何すんだよ、じいちゃん!」
「修行中に寝る奴がおるか!」
「隠れてるやつを探すだけでつまんなかったんだよ!」
「見つける修行だっつってんだろ!」
「わっはっは! なら、今日はわしが隠れてやろう!」
じいちゃんがそう言った途端、ルフィが嬉しそうに飛び跳ねた。
「本当か!?」
「見つけられたら肉追加じゃ!」
「絶対見つける!」
……こいつ、食い物が懸かると急にやる気を出すよな。
サボは隣で笑っていたが、じいちゃんに自分も参加すると言い出したので、おれは慌てて止めた。
「お前、まだ無茶すんなよ」
「もう治ったって言ってんだろ!」
「じいちゃん相手に山中を走り回るのは、普通の運動じゃねェんだよ!」
「何じゃ、エース。随分と過保護になったのう」
「誰のせいだと思ってんだ!」
じいちゃんは笑っていたが、おれがサボを指さすと、少しだけ表情を変えた。
「そういや、詳しい話を聞いとらんかったのう。天竜人の船に撃たれたんじゃったか」
「ああ。おれが勝手に海へ出ちまってさ」
サボが答える。
じいちゃんはしばらく黙っていたが、やがて大きな手でサボの頭をわしわしと撫でた。
「生きとってよかったのう!」
「お、おう! ちょっと、髪がぐちゃぐちゃになるって!」
「わっはっは! 元気なら何よりじゃ!」
じいちゃんはサボの頭から手を離すと、今度はおれを見た。
「エース、お前もよく助けた!」
「おう。まあな」
「じゃが、海へ飛び込む前に少しは考えんか!」
「考えてる暇なんかあるかよ!」
「それもそうじゃな! ぶわっはっはっは!」
……どっちなんだよ。
おれは呆れながらも、じいちゃんの横へ並んだ。
「そうだ。今日、見せたいものがあるんだよ」
「ほう? 何じゃ?」
「着いてからのお楽しみだ」
「何をもったいぶっとる!」
「じいちゃんが驚く顔を見たいんだよ」
「わしを驚かせるつもりか! 十年早いわ!」
その言葉を聞いて、サボが吹き出した。
「エース、これは絶対に見せなきゃな!」
「おう。楽しみにしてろよ」
「何じゃ、お前まで」
じいちゃんは不満そうだったが、足取りは少し速くなっていた。
*
山奥の修行場へ着くと、まずはいつもどおり組手をすることになった。
じいちゃんは上着を脱ぎ、近くの枝へ引っかけると、首を左右へ鳴らした。
「さあ、かかってこい!」
「三人まとめてか?」
「当たり前じゃ!」
「よし、ルフィ。お前は右から行け!」
「おう!」
「サボは無理すんなよ!」
「しつこいぞエース、もう大丈夫だ!」
おれたちはそれぞれ距離を取り、じいちゃんを囲んだ。
見聞色を広げると、じいちゃんの気配がはっきりと感じられる。
相変わらず、とんでもねェな。
普段から気配を捉える練習をしているおかげで、相手の動きを読む精度は随分と上がった。だが、じいちゃんの場合は、見えていても身体が追いつかないことがある。
おれが先に踏み込み、正面から拳を放つ。
じいちゃんは笑いながらそれを受け流したが、そこへルフィが横から飛びかかった。
「ゴムゴムのォ!」
「遅いわ!」
「ぐえっ!」
ルフィが頭を掴まれ、そのまま地面へ転がされる。
その隙にサボが背後へ回り込んだが、じいちゃんは振り返りもせず、伸ばしてきた足を軽くかわした。
「おお、サボ! 怪我する前より動きがよくなっとるのう!」
「そりゃどうも!」
サボはそのまま距離を取り、おれと入れ替わった。
おれは武装色を拳へ集め、じいちゃんの懐へ踏み込む。
今度は、ただの組手じゃない。
じいちゃん相手なら、遠慮なく全力を出せる。
「おりゃあっ!」
拳がぶつかった。
鈍い衝撃が腕を伝わり、足元の土が大きくえぐれる。
じいちゃんは一歩も動かなかったが、おれはその場に踏みとどまった。
「ほう!」
じいちゃんの目が楽しそうに細まった。
「また腕を上げたのう!」
「まだまだ!」
おれは間合いを詰め、続けて拳と蹴りを繰り出した。
じいちゃんはそれらを軽々と捌きながら、時折反撃を混ぜてくる。まともに食らえば一発で終わりかねないので、おれも見聞色を使い、できる限り先を読んで対応した。
何度か攻防を繰り返したところで、じいちゃんの拳が腹へ飛んできた。
おれは咄嗟に武装色を集め、両腕で受け止める。
衝撃で身体が後ろへ吹き飛び、地面を滑った。
「いってェ……!」
「ぶわっはっは! まだまだじゃな!」
「分かってるよ!」
おれは立ち上がり、腕を軽く振った。
やっぱり、じいちゃんは強ェ。
今のところ、まともに勝てる気がしない。
だが、それでこそ修行のしがいがあるってもんだ。
おれは口元を緩め、もう一度構えた。
「じいちゃん、ちょっと試したいことがあるんだけどよ」
「何じゃ?」
「今から、おれの新しい覇気を見せてやる」
じいちゃんは首を傾げた。
「新しい覇気?」
「おう。まあ、見てろって」
おれは一度距離を取り、呼吸を整えた。
このところ毎日、山奥で覇王色の練習を続けていた。
最初は小鳥を一羽気絶させるのが精いっぱいだったが、何度も繰り返すうちに、少しずつ発動の感覚がつかめてきた。
まだ安定して使えるわけではない。
だが、今日はじいちゃんという、これ以上ない相手がいる。
おれは見聞色で周囲を確かめ、サボとルフィが十分に離れていることを確認した。
「おい、二人とも! もうちょっと下がってろ!」
「おう!」
「エース、やっちまえ!」
サボが笑いながら手を振った。
じいちゃんは不思議そうにこちらを見ていたが、おれが構え直すと、楽しそうに拳を握った。
「何をするつもりか知らんが、遠慮はいらんぞ!」
「言われなくても!」
おれはじいちゃんをまっすぐに見据えた。
身体の奥へ意識を向ける。
武装色とも見聞色とも違う、あの感覚。
初めて発動した時のように怒りへ任せるのではなく、自分の意思で引き出す。
何度も失敗してきたが、今日は妙にうまくいく気がした。
おれは息を吐き、じいちゃんへ意識を集中させた。
次の瞬間、身体の奥から強い覇気が溢れ出した。
周囲の空気が震え、近くの木々から鳥が一斉に飛び立つ。
離れた場所で見ていたルフィが、驚いたように声を上げた。
「うおっ!?」
サボも目を見開いていた。
だが、おれの視線はじいちゃんから外れなかった。
じいちゃんは、最初こそ笑っていた。
しかし、覇王色を正面から受けた瞬間、その笑みが消えた。
目を見開き、こちらを見つめる。
「……ロジャー」
じいちゃんが、ぽつりと呟いた。
おれは思わず眉を上げた。
「……何だって?」
じいちゃんは答えなかった。
ただ、しばらくおれの顔を見つめていた。
やがて、大きく息を吐く。
「……エース。お前、いつからこれを使えるようになった?」
「この前だよ。サボを助けた時、初めて使ったんだ」
「……その時か」
「おう。海の中でな。最近、やっと自分の意思でも少し出せるようになってきたんだよ」
じいちゃんは腕を組み、何かを考え込んでいた。
おれは少し拍子抜けした。
てっきり、いつものように大笑いするか、いきなり殴りかかってくると思っていたんだけどな。
「……じいちゃん?」
「……」
「おーい?」
「うるさいわい!」
「何だよ! 急に怒るなって!」
じいちゃんは頭を掻き、もう一度おれを見た。
その目は、さっきまでとは少し違っていた。
*
ガープは、目の前に立つ少年を見つめていた。
ポートガス・D・エース。
ゴール・D・ロジャーの息子。
その事実を知っているからこそ、今までにも何度か、父親の面影を感じたことはあった。
だが、今日ほどはっきりと、それを意識したことはない。
覇王色を放った瞬間の眼差し。
自分をまっすぐに見据え、少しも怯むことなく立っていた姿。
あれは、かつて何度も拳を交えた男を思い出させた。
もちろん、まだ十歳の子供だ。
顔立ちも、今すぐ誰かが見てロジャーの息子だと気づくほど似ているわけではない。
しかし、これから成長していけば、どうなるか。
ガープは腕を組んだまま、深く息を吐いた。
……まずいのう。
ロジャーの息子であることが知られれば、世界政府が黙っているはずがない。
これまでは、自分の目の届く範囲で鍛え、ダダンに預けておけば何とかなると思っていた。
だが、覇王色まで覚醒したとなれば、話は別だ。
このまま山の中で育てておけば、いずれは父親と同じように海へ出ていくかもしれない。
いや、こやつは既に、海へ出るつもりで金を貯めている。
それも、サボという同い年の少年と一緒にだ。
ガープは頭を抱えたくなった。
……何としてでも、海兵にせねば。
そのためには、今のうちに海軍という組織を知り、海兵たちと関わらせる必要がある。
ついでに、本部で鍛えてしまえばいい。
あそこには、自分以外にも腕の立つ連中が大勢いる。六式を使える者もいるし、覇気を鍛える相手にも困らん。
何より、エースが海軍に馴染んでくれれば、将来の選択肢も変わってくるだろう。
ガープは、ようやく考えをまとめた。
「……よし!」
突然声を上げたじいちゃんに、エースが眉をひそめた。
「何だよ、急に」
「決めたぞ、エース!」
「何を?」
「お前、わしと一緒に海軍本部へ来い!」
「……は?」
*
いや、待て待て待て。
海軍本部?
何で急にそんな話になるんだよ。
「じいちゃん、ちょっと待て。おれ、まだ何も言ってねェぞ?」
「ぶわっはっは! 決まりじゃ!」
「勝手に決めんな!」
「本部には強い奴が大勢おるぞ! お前ももっと鍛えられる!」
……。
いや、まあ。
それは確かに魅力的なんだけどさ。
「どれくらい行くんだ?」
「そうじゃのう。半年か、一年くらいかの!」
「長ェよ!」
「何を言っとる! 修行なんぞ、長いほどいいんじゃ!」
「いや、そういう問題じゃねェって!」
おれは思わず頭を抱えた。
海軍本部へ行くこと自体は、別に嫌じゃない。
むしろ、以前から一度は行ってみたいと思っていた。
海軍には、じいちゃん以外にも強い連中が大勢いる。
六式を使う海兵もいるし、覇気の扱いが上手い奴だっているはずだ。
ただ、いきなり半年から一年と言われても困る。
サボとルフィを置いていくことになるし、何より、まだ何の準備もしていない。
「なあ、じいちゃん。せめて、もう少し考える時間くれよ」
「何じゃ、嫌なのか?」
「嫌じゃねェけど、急すぎるんだよ!」
じいちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「強くなりたいんじゃろ?」
「そりゃそうだけどよ!」
「なら、何を迷うことがある!」
「おれにも都合があるんだって!」
そこへ、サボとルフィが駆け寄ってきた。
「おい、エース! 海軍本部って何だよ!」
「じいちゃんの仕事場だよ」
「すっげェ! おれも行く!」
ルフィが目を輝かせた。
「お前はまだ早いわ!」
「何でだよ!」
「まずは海兵になると言わんか!」
「やだ! おれは海賊王になるんだ!」
「この馬鹿孫がァ!」
じいちゃんの拳骨がルフィの頭へ落ちた。
「いってェ!」
サボはその様子を見て笑っていたが、すぐにおれへ向き直った。
「で、エース。お前、本当に行くのか?」
「……まだ決めてねェよ」
「半年か一年だろ? 結構長いよな」
「ああ。お前らと離れることになるしな」
サボは少し考え込んだ。
「でも、強くなれるんだろ?」
「まあな」
「だったら、行ってこいよ!」
おれは思わずサボを見た。
「……いいのか?」
「何がだよ。お前が強くなるなら、いいことじゃねェか!」
「いや、でも……」
「おれだって、その間にもっと鍛えるさ。帰ってきたら、今度こそお前に勝ってやる!」
サボは楽しそうに笑った。
……こいつ、そういうこと言うよな。
おれは思わず笑い返した。
「おう。だったら、帰ってきた時が楽しみだな!」
「負けても泣くなよ!」
「誰が泣くか!」
ルフィもすぐに割り込んできた。
「おれも強くなる! 帰ってきたエースをぶっ飛ばせるくらいに!」
「お前はまず、サボに勝てるようになれよ!」
「うるせェ! 絶対勝つ!」
じいちゃんは、そんなおれたちを見ながら満足そうに頷いていた。
「ぶわっはっは! いい心がけじゃ!」
「じいちゃん、アンタが一番勝手なんだからな!」
「何を言っとる! わしはお前の将来を考えてやっとるんじゃ!」
「だったら、おれの話も聞けよ!」
じいちゃんは大笑いした。
……まったく。
まあ、でも。
海軍本部か。
考えてみれば、悪い話じゃない。
むしろ、今の自分には必要な経験かもしれない。
じいちゃん以外の強い奴らと戦い、六式を覚え、覇気をもっと鍛える。
それに、海軍という組織の中で生活すれば、今まで知らなかったことも色々と見えてくるだろう。
おれはしばらく考えた末、じいちゃんへ向き直った。
「……分かった。行ってやるよ」
「おお! そうかそうか!」
「ただし、条件がある」
「何じゃ?」
「ちゃんと修行させてくれよ。海軍本部まで行って、雑用ばっかりやらされるのは御免だからな」
「ぶわっはっは! 任せとけ!」
じいちゃんは豪快に笑い、おれの肩を叩いた。
「本部の連中に、たっぷり鍛えてもらうとしよう!」
……何か、嫌な予感がするな。
まあ、いいか。
おれはサボとルフィを見た。
「お前ら、留守番頼んだぞ!」
「おう! 帰ってきたら勝負だからな!」
「エース! 土産、肉な!」
「また肉か!ルフィ!」
三人で笑い合っていると、じいちゃんが突然、手を叩いた。
「よし! そうと決まれば、明日出発じゃ!」
「「「いや早ェよ!!」」」
おれとサボとルフィの声が、山の中に響いた。