転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
翌朝、ダダンの家はいつも以上に騒がしかった。
「だから、何で今日なんだよ!」
「昨日決めたからに決まっとるじゃろうが!」
「それを急だって言ってんだろ!」
朝飯を食べながら文句を言っているおれの向かいで、じいちゃんは山盛りの肉を片っ端から平らげていた。昨日のうちに出発の準備を済ませておけと言われたものの、荷物をまとめてサボたちと話をしていたら、結局寝るのが随分と遅くなってしまった。
当のじいちゃんは、昨日も普段と変わらない時間に寝ていたくせに、朝からこの食欲である。
「エース! おれも行く!」
ルフィが隣から身を乗り出してきた。
「ルフィ、昨日断られてただろ?」
「じいちゃん! おれも船に乗せてくれ!」
「海兵になるなら考えてやるぞ!」
「じゃあ、やめた」
「この馬鹿孫がァ!」
拳骨を食らったルフィが頭を押さえている間に、おれは皿に残っていた肉を口へ放り込んだ。
「で、じいちゃん。港まではどうすんだ?」
「わしの船が待っとる。お前が飯を食い終われば、すぐに出発じゃ!」
「だったら、人の肉まで食ってんじゃねェよ!」
「何じゃ、まだ足りんのか?」
「ほとんどじいちゃんが食ったんだろうが!」
ダダンが空になった大皿を見て、こめかみを引きつらせた。
「ガープさん、あんたが帰ってくるたびに食料がなくなるんですよ! 次からは自分の分くらい持ってきてください!」
「ぶわっはっはっは! 今度は海軍の食堂から何か持ってきてやろう!」
「そういう問題じゃないんですよ!」
おれはダダンの怒鳴り声を聞きながら、最後のパンを食べ終えた。
荷物は着替えと身の回りの物、それに本を数冊。向こうで何が手に入るか分からないので、金も少し持っていくことにした。残りの貯金はサボに預けてある。
海軍本部へ行くのは楽しみだが、半年から一年となると、随分と長い留守になる。
じいちゃんは簡単に言うけど、あいつが帰ってくる頻度を考えれば、おれにとってはほとんど初めての長旅だ。
「エース、そろそろ行けるか?」
荷物を肩に掛けて振り返ると、サボが玄関のところに立っていた。
「おう。待たせたな」
「別に。お前がいなくなったら、しばらく静かになると思ってさ」
「ルフィがいるのに?」
「……そうだった」
サボは一瞬真顔になり、それから二人で笑った。
*
コルボ山を下り、フーシャ村へ向かう道では、ルフィが先頭を走ったり、戻ってきておれの荷物を引っ張ったりと、ひとときも大人しくしていなかった。
マキノさんの店へ顔を出すと、出発の話は既に伝わっていたらしい。
「エース君、ガープさんから聞いたわ。海軍本部へ行くんですって?」
「おう。昨日、急に決まったんだ」
「そうなの。じゃあ、しばらく会えなくなるのね」
「帰ってきたら、また店に寄るよ」
「ええ。気をつけてね。ガープさん、あまり無茶な修行はさせないでくださいよ?」
「心配いらん! 立派な海兵にして帰してやるわい!」
「いや、まだ海兵になるとは言ってねェからな!」
マキノさんが笑いながら、おれたちに水を出してくれた。
その間にもルフィはカウンターの向こうを覗き込み、何か食い物はないかと尋ねている。ついさっき朝飯を食ったばかりなのに、こいつの腹はどうなってんだ。
店を出る頃には、マキノさんから包みを一つ持たされていた。
「船の上で食べてね」
「ありがとう、マキノさん!」
「ルフィの分も入ってるから、出発前に一緒に食べてもいいわよ」
「やったァ!」
「いや、おれの船の上で食う分まで持っていくなよ!」
慌てて包みを取り返そうとしたところで、じいちゃんが大笑いした。
「ぶわっはっは! 足りんかったら船で食えばよかろう!」
そういや、軍艦の食堂ってどんなもんなんだろうな。
じいちゃんの食欲を賄っているくらいだから、相当な量を作っているんだろうけど。
そんなことを考えながら港へ向かい、海が見える坂を下りたところで、おれは思わず足を止めた。
「……でっけェな」
沖合に、海軍の軍艦が停泊していた。
白い船体に青い模様。何本もの砲身が舷側から突き出し、高い帆柱には海軍の旗が翻っている。
フーシャ村で見かける漁船とは、何もかもが違った。
前世で漫画を読んでいた時には、軍艦が出てきてもそれほど気に留めていなかったが、実物を目の前にすると、やっぱり迫力がある。
これに乗って、偉大なる航路まで行くのか。
「おい、じいちゃん。あれに乗るんだよな?」
「そうじゃ! どうじゃ、立派な船じゃろう!」
「おう。思ってたよりずっとでけェよ」
「ぶわっはっは! 海軍本部へ行けば、もっと大きな船も見られるぞ!」
そりゃ楽しみだ。
おれが軍艦を眺めていると、サボも隣へ並んできた。
「いいなァ。あれだけ大きけりゃ、遠くまで行けそうだ」
「おれたちの船も、いつかあれくらい大きくするか?」
「維持費だけで貯金がなくなるぞ」
「じゃあ、まずはもっと稼がねェとな」
サボは笑いながら頷いた。
そうして話している間に、小舟が桟橋へ近づいてきた。どうやら軍艦から迎えを寄越してくれたらしい。
じいちゃんが先に桟橋へ向かい、おれたちも後を追った。
*
桟橋では、海兵が二人待っていた。
二人ともじいちゃんを見るなり姿勢を正し、敬礼する。
「ガープ中将! お迎えに上がりました!」
「おう! ご苦労!」
じいちゃんは気軽に片手を上げ、そのまま小舟へ乗り込もうとした。
「中将! そちらのお子さんは?」
「わしの孫じゃ! しばらく本部で鍛えることにした!」
「はっ! ……お孫さんですか?」
海兵は一瞬、おれの顔を見た。
まあ、そりゃ驚くよな。
じいちゃんは詳しい説明をする気がないらしく、さっさと小舟に乗ってしまったので、おれは自分から頭を下げた。
「おれの名前はポートガス・D・エース。面倒をかけるかもしれねぇが、よろしく頼む!」
「えっ? あ、ああ! こちらこそ、よろしく!」
海兵は少し慌てて敬礼を解き、握手のために手を差し出してくれた。
おれがその手を握ると、もう一人の海兵が笑った。
「中将のお孫さんにしちゃ、随分と礼儀正しいな」
「じいちゃんを基準にしないでくれよ」
「ぶわっはっはっは! 何じゃ、エース! わしが礼儀知らずだと言うのか!」
「違うってのか?」
「このクソガキがァ!」
じいちゃんの拳が飛んできたので、慌てて小舟へ飛び乗る。
海兵たちは顔を見合わせ、声を出して笑った。
……まあ、これで少しは話しやすくなったかな。
小舟が桟橋を離れると、ルフィが岸から大きく手を振った。
「エース! 帰ってきたら勝負だからなァ!」
「おう! ちゃんと修行しとけよ!」
「土産も忘れんなよ!」
「分かってるって!」
サボも手を振っていた。
「エース! 向こうで覚えた技、帰ってきたら教えろよ!」
「おう! お前も腕鈍らせんなよ!」
「誰に言ってんだ!」
おれは二人の姿が小さくなるまで手を振り続けた。
ルフィは最後まで飛び跳ねていたが、サボは途中から両手を口元へ当て、何か叫んでいた。
風と波の音で、言葉までは聞き取れなかった。
まあ、帰ってから聞けばいいか。
おれは桟橋から視線を戻し、近づいてくる軍艦を見上げた。
さあ、いよいよ乗船だ。