転生したらエースだった件   作:みけまる(AI執筆)

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第二十一話 軍艦

 翌朝、ダダンの家はいつも以上に騒がしかった。

 

「だから、何で今日なんだよ!」

 

「昨日決めたからに決まっとるじゃろうが!」

 

「それを急だって言ってんだろ!」

 

 朝飯を食べながら文句を言っているおれの向かいで、じいちゃんは山盛りの肉を片っ端から平らげていた。昨日のうちに出発の準備を済ませておけと言われたものの、荷物をまとめてサボたちと話をしていたら、結局寝るのが随分と遅くなってしまった。

 

 当のじいちゃんは、昨日も普段と変わらない時間に寝ていたくせに、朝からこの食欲である。

 

「エース! おれも行く!」

 

 ルフィが隣から身を乗り出してきた。

 

「ルフィ、昨日断られてただろ?」

 

「じいちゃん! おれも船に乗せてくれ!」

 

「海兵になるなら考えてやるぞ!」

 

「じゃあ、やめた」

 

「この馬鹿孫がァ!」

 

 拳骨を食らったルフィが頭を押さえている間に、おれは皿に残っていた肉を口へ放り込んだ。

 

「で、じいちゃん。港まではどうすんだ?」

 

「わしの船が待っとる。お前が飯を食い終われば、すぐに出発じゃ!」

 

「だったら、人の肉まで食ってんじゃねェよ!」

 

「何じゃ、まだ足りんのか?」

 

「ほとんどじいちゃんが食ったんだろうが!」

 

 ダダンが空になった大皿を見て、こめかみを引きつらせた。

 

「ガープさん、あんたが帰ってくるたびに食料がなくなるんですよ! 次からは自分の分くらい持ってきてください!」

 

「ぶわっはっはっは! 今度は海軍の食堂から何か持ってきてやろう!」

 

「そういう問題じゃないんですよ!」

 

 おれはダダンの怒鳴り声を聞きながら、最後のパンを食べ終えた。

 

 荷物は着替えと身の回りの物、それに本を数冊。向こうで何が手に入るか分からないので、金も少し持っていくことにした。残りの貯金はサボに預けてある。

 

 海軍本部へ行くのは楽しみだが、半年から一年となると、随分と長い留守になる。

 

 じいちゃんは簡単に言うけど、あいつが帰ってくる頻度を考えれば、おれにとってはほとんど初めての長旅だ。

 

「エース、そろそろ行けるか?」

 

 荷物を肩に掛けて振り返ると、サボが玄関のところに立っていた。

 

「おう。待たせたな」

 

「別に。お前がいなくなったら、しばらく静かになると思ってさ」

 

「ルフィがいるのに?」

 

「……そうだった」

 

 サボは一瞬真顔になり、それから二人で笑った。

 

     *

 

 コルボ山を下り、フーシャ村へ向かう道では、ルフィが先頭を走ったり、戻ってきておれの荷物を引っ張ったりと、ひとときも大人しくしていなかった。

 

 マキノさんの店へ顔を出すと、出発の話は既に伝わっていたらしい。

 

「エース君、ガープさんから聞いたわ。海軍本部へ行くんですって?」

 

「おう。昨日、急に決まったんだ」

 

「そうなの。じゃあ、しばらく会えなくなるのね」

 

「帰ってきたら、また店に寄るよ」

 

「ええ。気をつけてね。ガープさん、あまり無茶な修行はさせないでくださいよ?」

 

「心配いらん! 立派な海兵にして帰してやるわい!」

 

「いや、まだ海兵になるとは言ってねェからな!」

 

 マキノさんが笑いながら、おれたちに水を出してくれた。

 

 その間にもルフィはカウンターの向こうを覗き込み、何か食い物はないかと尋ねている。ついさっき朝飯を食ったばかりなのに、こいつの腹はどうなってんだ。

 

 店を出る頃には、マキノさんから包みを一つ持たされていた。

 

「船の上で食べてね」

 

「ありがとう、マキノさん!」

 

「ルフィの分も入ってるから、出発前に一緒に食べてもいいわよ」

 

「やったァ!」

 

「いや、おれの船の上で食う分まで持っていくなよ!」

 

 慌てて包みを取り返そうとしたところで、じいちゃんが大笑いした。

 

「ぶわっはっは! 足りんかったら船で食えばよかろう!」

 

 そういや、軍艦の食堂ってどんなもんなんだろうな。

 

 じいちゃんの食欲を賄っているくらいだから、相当な量を作っているんだろうけど。

 

 そんなことを考えながら港へ向かい、海が見える坂を下りたところで、おれは思わず足を止めた。

 

「……でっけェな」

 

 沖合に、海軍の軍艦が停泊していた。

 

 白い船体に青い模様。何本もの砲身が舷側から突き出し、高い帆柱には海軍の旗が翻っている。

 

 フーシャ村で見かける漁船とは、何もかもが違った。

 

 前世で漫画を読んでいた時には、軍艦が出てきてもそれほど気に留めていなかったが、実物を目の前にすると、やっぱり迫力がある。

 

 これに乗って、偉大なる航路まで行くのか。

 

「おい、じいちゃん。あれに乗るんだよな?」

 

「そうじゃ! どうじゃ、立派な船じゃろう!」

 

「おう。思ってたよりずっとでけェよ」

 

「ぶわっはっは! 海軍本部へ行けば、もっと大きな船も見られるぞ!」

 

 そりゃ楽しみだ。

 

 おれが軍艦を眺めていると、サボも隣へ並んできた。

 

「いいなァ。あれだけ大きけりゃ、遠くまで行けそうだ」

 

「おれたちの船も、いつかあれくらい大きくするか?」

 

「維持費だけで貯金がなくなるぞ」

 

「じゃあ、まずはもっと稼がねェとな」

 

 サボは笑いながら頷いた。

 

 そうして話している間に、小舟が桟橋へ近づいてきた。どうやら軍艦から迎えを寄越してくれたらしい。

 

 じいちゃんが先に桟橋へ向かい、おれたちも後を追った。

 

     *

 

 桟橋では、海兵が二人待っていた。

 

 二人ともじいちゃんを見るなり姿勢を正し、敬礼する。

 

「ガープ中将! お迎えに上がりました!」

 

「おう! ご苦労!」

 

 じいちゃんは気軽に片手を上げ、そのまま小舟へ乗り込もうとした。

 

「中将! そちらのお子さんは?」

 

「わしの孫じゃ! しばらく本部で鍛えることにした!」

 

「はっ! ……お孫さんですか?」

 

 海兵は一瞬、おれの顔を見た。

 

 まあ、そりゃ驚くよな。

 

 じいちゃんは詳しい説明をする気がないらしく、さっさと小舟に乗ってしまったので、おれは自分から頭を下げた。

 

「おれの名前はポートガス・D・エース。面倒をかけるかもしれねぇが、よろしく頼む!」

 

「えっ? あ、ああ! こちらこそ、よろしく!」

 

 海兵は少し慌てて敬礼を解き、握手のために手を差し出してくれた。

 

 おれがその手を握ると、もう一人の海兵が笑った。

 

「中将のお孫さんにしちゃ、随分と礼儀正しいな」

 

「じいちゃんを基準にしないでくれよ」

 

「ぶわっはっはっは! 何じゃ、エース! わしが礼儀知らずだと言うのか!」

 

「違うってのか?」

 

「このクソガキがァ!」

 

 じいちゃんの拳が飛んできたので、慌てて小舟へ飛び乗る。

 

 海兵たちは顔を見合わせ、声を出して笑った。

 

 ……まあ、これで少しは話しやすくなったかな。

 

 小舟が桟橋を離れると、ルフィが岸から大きく手を振った。

 

「エース! 帰ってきたら勝負だからなァ!」

 

「おう! ちゃんと修行しとけよ!」

 

「土産も忘れんなよ!」

 

「分かってるって!」

 

 サボも手を振っていた。

 

「エース! 向こうで覚えた技、帰ってきたら教えろよ!」

 

「おう! お前も腕鈍らせんなよ!」

 

「誰に言ってんだ!」

 

 おれは二人の姿が小さくなるまで手を振り続けた。

 

 ルフィは最後まで飛び跳ねていたが、サボは途中から両手を口元へ当て、何か叫んでいた。

 

 風と波の音で、言葉までは聞き取れなかった。

 

 まあ、帰ってから聞けばいいか。

 

 おれは桟橋から視線を戻し、近づいてくる軍艦を見上げた。

 

 さあ、いよいよ乗船だ。

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