転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
「ガープ!! 貴様、どういうつもりだ!!」
海軍本部に到着して早々、おれは元帥室から響いてくる怒鳴り声を聞くことになった。
案内してくれたボガードさんが扉を開けると、そこには机を挟んで睨み合う二人の老人がいた。いや、正確には、一方がものすごい形相で睨みつけ、もう一方はソファに座って煎餅を食っている。
当然、煎餅を食っている方がじいちゃんだ。
「ぶわっはっはっは! そう怒るな、センゴク! 血圧が上がるぞ!」
「誰のせいだと思っている!!」
……うん。
知ってたけど、改めて見るとひでェな、このじいちゃん。
おれは隣のボガードさんを見上げた。
「なあ、ボガードさん。これ、おれたち入っていいのか?」
「……入るように言われている」
「そっか。大変だな」
ボガードさんは返事をしなかった。
その代わり、いつもより少しだけ深く帽子をかぶり直した。
元帥室の奥では、センゴク元帥が机に両手をついて身を乗り出している。前世で知っている姿とほとんど変わらないが、実物は画面越しに見るよりもずっと迫力があった。
ただ、その怒りは今のところ、全部じいちゃんへ向けられている。
「貴様が帰還するのは聞いていた! だが、孫を連れてくるなど、一言も聞いておらんぞ!」
「おお、そうじゃったか?」
「そうじゃったか、ではない!! しかも半年以上、本部に滞在させるつもりだと!? 誰が許可した!!」
「わしじゃ!」
「貴様にそんな権限はない!!」
じいちゃんが笑い、センゴク元帥が怒鳴る。
このやり取りを何度繰り返したのかは知らないが、机の上には既に何枚かの書類が散らばっていた。
おれはその光景を眺めながら、ようやく事情を理解した。
……ああ、なるほど。
じいちゃん、何も話してなかったのか。
「中将」
ボガードさんが静かに口を開いた。
「出航前に、私から本部へ連絡しておくかと確認したはずですが」
「おお! そうじゃったな!」
「その際、中将がご自身で元帥に報告すると仰いましたので、私は手続きを進めませんでした」
「ぶわっはっはっは! すっかり忘れとったわ!」
センゴク元帥の額に、青筋が浮かんだ。
「ガァァァプ!!」
……ボガードさん、本当に大変だな。
おれが同情の目を向けると、ボガードさんは何も言わずに視線を逸らした。
センゴク元帥はしばらくじいちゃんを睨みつけていたが、やがて大きく息を吐き、椅子へ腰を下ろした。
「……もういい。貴様と話していると、いつまで経っても話が進まん」
「そうじゃろう! もっと気楽に構えんか!」
「黙れ!!」
じいちゃんは、まるで怒鳴られたことがないかのように煎餅を食い続けている。
センゴク元帥はその姿を無視しようと努めているらしく、今度はおれの方へ視線を向けた。
「それで、そちらが貴様の孫か」
……おっと。
いつまでもじいちゃんの後ろで見物している場合じゃないな。
おれは一歩前へ出て、姿勢を正した。
「初めまして。ポートガス・D・エースです。今回は祖父に同行して、海軍本部でしばらくお世話になることになりました。よろしくお願いします」
頭を下げると、室内が少し静かになった。
顔を上げた時、センゴク元帥はなぜかじいちゃんの方を見ていた。
「……本当に貴様の孫か?」
「ぶわっはっはっは! どうじゃ! よくできた孫じゃろう!」
「貴様と違って、随分と礼儀正しいではないか」
「おう! わしが鍛えたからのう!」
「貴様は今、何を聞いていたんだ?」
思わず笑いそうになったが、ここは我慢した。
さすがに初対面の相手、それも海軍の元帥を前にして、じいちゃんと一緒になってふざけるのはまずいだろう。
もっとも、センゴク元帥の方は、既におれの表情から何かを察したらしい。
「笑いたければ笑って構わんぞ。こいつの孫なら、普段から苦労しているだろう」
「いえ、まあ……じいちゃんには、いつも鍛えてもらってますから」
「それはそれで苦労していそうだな」
「おい、センゴク! わしの教育に文句でもあるのか!」
「山へ放り投げるのを教育とは言わん!」
……何で知ってんだ?
おれが驚いてじいちゃんを見ると、本人は少しも悪びれずに笑っていた。
「ぶわっはっはっは! おかげで丈夫に育ったわ!」
「結果がよければ何をしてもいいと思うな!!」
センゴク元帥は再び怒鳴ったものの、今度はすぐに気を取り直し、おれへ向き直った。
「エース。ガープが勝手に連れてきたからといって、お前に文句を言うつもりはない。ここまでの航海で、何か困ったことはなかったか?」
「いえ。皆さんによくしてもらいました。仕事も少し教えてもらいましたし、ボガードさんには手合わせまでしてもらったので、楽しかったです」
「ほう。ボガードと?」
センゴク元帥が興味を示した。
「どうだった?」
「強かったです。刀を持った相手との戦い方は、まだまだ練習が必要だと思いました」
「……そうか」
センゴク元帥はボガードさんを見た。
「お前から見て、どうだった?」
「十分な実力を持っています。特に武装色と見聞色の扱いは、年齢を考慮せずとも高い水準にあります。ただ、剣士との戦闘経験はまだ少ないようです」
「なるほどな」
センゴク元帥は腕を組み、少し考えるようにおれを眺めた。
……何だろうな。
褒めてもらっているのは嬉しいが、この人に見られていると、何だか試験でも受けている気分になる。
「お前は、本部で何をしたいんだ?」
「修行です。じいちゃん以外にも強い人がたくさんいるでしょうし、できれば色んな人に教わりたいです。あと、六式にも興味があります」
「六式か。誰から聞いた?」
「じいちゃんです。海兵の中には、ものすごい速さで移動したり、空を蹴って飛んだりできる人がいるんですよね?」
「ああ。もっとも、誰でも簡単に使える技術ではないぞ」
「はい。簡単に覚えられるとは思ってませんけど、せっかく本部に来たんです。挑戦してみたいです」
センゴク元帥はおれの返事を聞くと、今度はじいちゃんを見た。
「……ガープ。お前、こいつにどこまで教えるつもりだ?」
「そりゃあ、覚えられるもんは全部じゃ!」
「全部だと?」
「エースはやる気があるからのう! 鍛え甲斐があるわい!」
じいちゃんは嬉しそうだが、センゴク元帥は頭を抱えていた。
「貴様は本当に、何でも思いつきで決めるな……」
「思いつきじゃないぞ! ちゃんと考えとる!」
「だったら事前に報告しろ!!」
……ああ。
結局、そこに戻るのか。
おれが肩を震わせていると、センゴク元帥がこちらを見た。
「エース。ひとまず、お前の滞在についてはこちらで手配する。ただし、海軍本部は遊び場ではない。立ち入りを許可されていない場所もあるし、訓練にも規則がある。それは守ってもらうぞ」
「はい。分かりました」
「それから、ここにはガープ以外にも大勢の海兵がいる。訓練を受けたいなら、まずは担当する者の指示に従うことだ」
「分かりました。お世話になります!」
改めて頭を下げると、センゴク元帥は満足そうに頷いた。
「うむ。お前は話が早くて助かる」
「ぶわっはっはっは! わしに似たんじゃ!」
「似ておらんから助かっているんだ!!」
……もう駄目だ。
おれはとうとう我慢できず、声を出して笑ってしまった。
*
それからしばらく、センゴク元帥とボガードさんは、おれの滞在に必要な手続きについて話し合っていた。
じいちゃんは相変わらずソファに座っていたが、今度はセンゴク元帥に煎餅を取り上げられたので、少し不満そうだ。
……自業自得だと思う。
「ボガード。こいつが連れてきた以上、当面の責任はガープに取らせる。だが、訓練施設の利用や宿舎の手配については、担当部署と調整してくれ」
「承知しました」
「ガープ。お前も、今度こそ必要な書類を提出しろよ」
「分かっとる分かっとる!」
「その返事を何度聞いたと思っている!」
センゴク元帥は引き出しから書類を取り出すと、じいちゃんの前へ叩きつけた。
じいちゃんはそれを見て、心底嫌そうな顔をした。
「……ボガード、頼めんか?」
「中将。ご自身で提出すると、先ほど元帥に約束されたばかりです」
「なんじゃ!お前はセンゴクの味方か!」
ボガードさんは黙って頭を下げた。
……うん。おれも、今度から書類の仕事には気をつけよう。
そんなことを考えているうちに、センゴク元帥はようやく一息ついたらしく、椅子の背もたれへ身体を預けた。
「エース。今日は長旅で疲れただろう。部屋の準備ができるまで、ボガードに本部を案内してもらうといい」
「ありがとうございます!」
「何か分からんことがあれば、ガープではなくボガードに聞け。あいつの言うことなら信用できる」
「おい!」
「貴様は黙って書類を書け!」
おれは笑いながら、もう一度頭を下げた。
「それじゃあ、失礼します。センゴク元帥」
「ああ。また顔を見せに来い」
「はい!」
ボガードさんに続いて部屋を出ると、背後では早速じいちゃんの文句が聞こえてきた。
「センゴク! こんなに書類があるとは聞いとらんぞ!」
「貴様が報告を怠ったからだ!!」
扉が閉まっても、二人の声は廊下まで響いていた。
「……なあ、ボガードさん」
「何だ?」
「あの二人、いつもあんな感じなのか?」
「……まあ、そうだな」
「そっか。仲いいんだな!」
ボガードさんは一瞬だけこちらを見て、それから前へ向き直った。
「……そういうことにしておこう」
その返事がおかしくて、おれはまた笑ってしまった。
さて。
ようやく海軍本部での生活が始まる。
まずは、このでかい要塞の中に何があるのか、見て回らせてもらおう。
訓練場はどれくらい広いんだろうか。強い海兵がいるのなら、はやく会ってみたい。
おれはボガードさんの隣へ駆け寄り、さっそく本部の訓練施設について質問を始めた。