転生したらエースだった件   作:みけまる(AI執筆)

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第二十四話 海軍本部

 

「ガープ!! 貴様、どういうつもりだ!!」

 

 海軍本部に到着して早々、おれは元帥室から響いてくる怒鳴り声を聞くことになった。

 

 案内してくれたボガードさんが扉を開けると、そこには机を挟んで睨み合う二人の老人がいた。いや、正確には、一方がものすごい形相で睨みつけ、もう一方はソファに座って煎餅を食っている。

 

 当然、煎餅を食っている方がじいちゃんだ。

 

「ぶわっはっはっは! そう怒るな、センゴク! 血圧が上がるぞ!」

 

「誰のせいだと思っている!!」

 

 ……うん。

 

 知ってたけど、改めて見るとひでェな、このじいちゃん。

 

 おれは隣のボガードさんを見上げた。

 

「なあ、ボガードさん。これ、おれたち入っていいのか?」

 

「……入るように言われている」

 

「そっか。大変だな」

 

 ボガードさんは返事をしなかった。

 

 その代わり、いつもより少しだけ深く帽子をかぶり直した。

 

 元帥室の奥では、センゴク元帥が机に両手をついて身を乗り出している。前世で知っている姿とほとんど変わらないが、実物は画面越しに見るよりもずっと迫力があった。

 

 ただ、その怒りは今のところ、全部じいちゃんへ向けられている。

 

「貴様が帰還するのは聞いていた! だが、孫を連れてくるなど、一言も聞いておらんぞ!」

 

「おお、そうじゃったか?」

 

「そうじゃったか、ではない!! しかも半年以上、本部に滞在させるつもりだと!? 誰が許可した!!」

 

「わしじゃ!」

 

「貴様にそんな権限はない!!」

 

 じいちゃんが笑い、センゴク元帥が怒鳴る。

 

 このやり取りを何度繰り返したのかは知らないが、机の上には既に何枚かの書類が散らばっていた。

 

 おれはその光景を眺めながら、ようやく事情を理解した。

 

 ……ああ、なるほど。

 

 じいちゃん、何も話してなかったのか。

 

「中将」

 

 ボガードさんが静かに口を開いた。

 

「出航前に、私から本部へ連絡しておくかと確認したはずですが」

 

「おお! そうじゃったな!」

 

「その際、中将がご自身で元帥に報告すると仰いましたので、私は手続きを進めませんでした」

 

「ぶわっはっはっは! すっかり忘れとったわ!」

 

 センゴク元帥の額に、青筋が浮かんだ。

 

「ガァァァプ!!」

 

 ……ボガードさん、本当に大変だな。

 

 おれが同情の目を向けると、ボガードさんは何も言わずに視線を逸らした。

 

 センゴク元帥はしばらくじいちゃんを睨みつけていたが、やがて大きく息を吐き、椅子へ腰を下ろした。

 

「……もういい。貴様と話していると、いつまで経っても話が進まん」

 

「そうじゃろう! もっと気楽に構えんか!」

 

「黙れ!!」

 

 じいちゃんは、まるで怒鳴られたことがないかのように煎餅を食い続けている。

 

 センゴク元帥はその姿を無視しようと努めているらしく、今度はおれの方へ視線を向けた。

 

「それで、そちらが貴様の孫か」

 

 ……おっと。

 

 いつまでもじいちゃんの後ろで見物している場合じゃないな。

 

 おれは一歩前へ出て、姿勢を正した。

 

「初めまして。ポートガス・D・エースです。今回は祖父に同行して、海軍本部でしばらくお世話になることになりました。よろしくお願いします」

 

 頭を下げると、室内が少し静かになった。

 

 顔を上げた時、センゴク元帥はなぜかじいちゃんの方を見ていた。

 

「……本当に貴様の孫か?」

 

「ぶわっはっはっは! どうじゃ! よくできた孫じゃろう!」

 

「貴様と違って、随分と礼儀正しいではないか」

 

「おう! わしが鍛えたからのう!」

 

「貴様は今、何を聞いていたんだ?」

 

 思わず笑いそうになったが、ここは我慢した。

 

 さすがに初対面の相手、それも海軍の元帥を前にして、じいちゃんと一緒になってふざけるのはまずいだろう。

 

 もっとも、センゴク元帥の方は、既におれの表情から何かを察したらしい。

 

「笑いたければ笑って構わんぞ。こいつの孫なら、普段から苦労しているだろう」

 

「いえ、まあ……じいちゃんには、いつも鍛えてもらってますから」

 

「それはそれで苦労していそうだな」

 

「おい、センゴク! わしの教育に文句でもあるのか!」

 

「山へ放り投げるのを教育とは言わん!」

 

 ……何で知ってんだ?

 

 おれが驚いてじいちゃんを見ると、本人は少しも悪びれずに笑っていた。

 

「ぶわっはっはっは! おかげで丈夫に育ったわ!」

 

「結果がよければ何をしてもいいと思うな!!」

 

 センゴク元帥は再び怒鳴ったものの、今度はすぐに気を取り直し、おれへ向き直った。

 

「エース。ガープが勝手に連れてきたからといって、お前に文句を言うつもりはない。ここまでの航海で、何か困ったことはなかったか?」

 

「いえ。皆さんによくしてもらいました。仕事も少し教えてもらいましたし、ボガードさんには手合わせまでしてもらったので、楽しかったです」

 

「ほう。ボガードと?」

 

 センゴク元帥が興味を示した。

 

「どうだった?」

 

「強かったです。刀を持った相手との戦い方は、まだまだ練習が必要だと思いました」

 

「……そうか」

 

 センゴク元帥はボガードさんを見た。

 

「お前から見て、どうだった?」

 

「十分な実力を持っています。特に武装色と見聞色の扱いは、年齢を考慮せずとも高い水準にあります。ただ、剣士との戦闘経験はまだ少ないようです」

 

「なるほどな」

 

 センゴク元帥は腕を組み、少し考えるようにおれを眺めた。

 

 ……何だろうな。

 

 褒めてもらっているのは嬉しいが、この人に見られていると、何だか試験でも受けている気分になる。

 

「お前は、本部で何をしたいんだ?」

 

「修行です。じいちゃん以外にも強い人がたくさんいるでしょうし、できれば色んな人に教わりたいです。あと、六式にも興味があります」

 

「六式か。誰から聞いた?」

 

「じいちゃんです。海兵の中には、ものすごい速さで移動したり、空を蹴って飛んだりできる人がいるんですよね?」

 

「ああ。もっとも、誰でも簡単に使える技術ではないぞ」

 

「はい。簡単に覚えられるとは思ってませんけど、せっかく本部に来たんです。挑戦してみたいです」

 

 センゴク元帥はおれの返事を聞くと、今度はじいちゃんを見た。

 

「……ガープ。お前、こいつにどこまで教えるつもりだ?」

 

「そりゃあ、覚えられるもんは全部じゃ!」

 

「全部だと?」

 

「エースはやる気があるからのう! 鍛え甲斐があるわい!」

 

 じいちゃんは嬉しそうだが、センゴク元帥は頭を抱えていた。

 

「貴様は本当に、何でも思いつきで決めるな……」

 

「思いつきじゃないぞ! ちゃんと考えとる!」

 

「だったら事前に報告しろ!!」

 

 ……ああ。

 

 結局、そこに戻るのか。

 

 おれが肩を震わせていると、センゴク元帥がこちらを見た。

 

「エース。ひとまず、お前の滞在についてはこちらで手配する。ただし、海軍本部は遊び場ではない。立ち入りを許可されていない場所もあるし、訓練にも規則がある。それは守ってもらうぞ」

 

「はい。分かりました」

 

「それから、ここにはガープ以外にも大勢の海兵がいる。訓練を受けたいなら、まずは担当する者の指示に従うことだ」

 

「分かりました。お世話になります!」

 

 改めて頭を下げると、センゴク元帥は満足そうに頷いた。

 

「うむ。お前は話が早くて助かる」

 

「ぶわっはっはっは! わしに似たんじゃ!」

 

「似ておらんから助かっているんだ!!」

 

 ……もう駄目だ。

 

 おれはとうとう我慢できず、声を出して笑ってしまった。

 

     *

 

 それからしばらく、センゴク元帥とボガードさんは、おれの滞在に必要な手続きについて話し合っていた。

 

 じいちゃんは相変わらずソファに座っていたが、今度はセンゴク元帥に煎餅を取り上げられたので、少し不満そうだ。

 

 ……自業自得だと思う。

 

「ボガード。こいつが連れてきた以上、当面の責任はガープに取らせる。だが、訓練施設の利用や宿舎の手配については、担当部署と調整してくれ」

 

「承知しました」

 

「ガープ。お前も、今度こそ必要な書類を提出しろよ」

 

「分かっとる分かっとる!」

 

「その返事を何度聞いたと思っている!」

 

 センゴク元帥は引き出しから書類を取り出すと、じいちゃんの前へ叩きつけた。

 

 じいちゃんはそれを見て、心底嫌そうな顔をした。

 

「……ボガード、頼めんか?」

 

「中将。ご自身で提出すると、先ほど元帥に約束されたばかりです」

 

「なんじゃ!お前はセンゴクの味方か!」

 

 ボガードさんは黙って頭を下げた。

 

 ……うん。おれも、今度から書類の仕事には気をつけよう。

 

 そんなことを考えているうちに、センゴク元帥はようやく一息ついたらしく、椅子の背もたれへ身体を預けた。

 

「エース。今日は長旅で疲れただろう。部屋の準備ができるまで、ボガードに本部を案内してもらうといい」

 

「ありがとうございます!」

 

「何か分からんことがあれば、ガープではなくボガードに聞け。あいつの言うことなら信用できる」

 

「おい!」

 

「貴様は黙って書類を書け!」

 

 おれは笑いながら、もう一度頭を下げた。

 

「それじゃあ、失礼します。センゴク元帥」

 

「ああ。また顔を見せに来い」

 

「はい!」

 

 ボガードさんに続いて部屋を出ると、背後では早速じいちゃんの文句が聞こえてきた。

 

「センゴク! こんなに書類があるとは聞いとらんぞ!」

 

「貴様が報告を怠ったからだ!!」

 

 扉が閉まっても、二人の声は廊下まで響いていた。

 

「……なあ、ボガードさん」

 

「何だ?」

 

「あの二人、いつもあんな感じなのか?」

 

「……まあ、そうだな」

 

「そっか。仲いいんだな!」

 

 ボガードさんは一瞬だけこちらを見て、それから前へ向き直った。

 

「……そういうことにしておこう」

 

 その返事がおかしくて、おれはまた笑ってしまった。

 

 さて。

 

 ようやく海軍本部での生活が始まる。

 

 まずは、このでかい要塞の中に何があるのか、見て回らせてもらおう。

 

 訓練場はどれくらい広いんだろうか。強い海兵がいるのなら、はやく会ってみたい。

 

 おれはボガードさんの隣へ駆け寄り、さっそく本部の訓練施設について質問を始めた。

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