転生したらエースだった件   作:みけまる(AI執筆)

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第二十七話 三大将

 

 海軍本部に来てからというもの、俺の一日は随分と忙しくなった。

 

 朝から訓練生たちと一緒に身体を動かし、午後には体術や武器を使った訓練を受ける。最近では、それが終わってからも第三訓練場へ通い、ゼファー先生に教わった六式を練習していた。

 

 特に剃と月歩は、ようやく正しい動きが分かってきたところだ。身体の使い方を少し変えるだけで消耗が随分と減るので、試したいことが次々に出てくる。

 

 そんなわけで、ここ数日は訓練場と食堂と宿舎を往復する生活が続いていたのだが、今日は少し事情が違った。

 

「エース。お前、午後の訓練が終わったら元帥室へ行け」

 

 昼休みに顔を出したじいちゃんが、飯を食いながらそんなことを言い出したのだ。

 

「元帥室? 何かあったのか?」

 

「センゴクがお前を呼んどる」

 

「何でだ?」

 

「さあのう」

 

「じいちゃんが何かやらかしたんじゃねェだろうな」

 

「わしが何をしたと言うんじゃ!」

 

「胸に手を当てて聞いてみやがれ!」

 

 向かいに座っていたロイドが、危うく飲みかけの水を噴き出しかけた。

 

 もっとも、俺としては笑い事じゃない。前に元帥室へ行った時も、じいちゃんが俺の滞在について何も報告していなかったせいで、センゴク元帥に散々怒鳴られていたのだ。

 

 あの時は見ている分には面白かったが、今回は俺一人で呼び出されている。

 

「まあ、行けば分かるじゃろ。わしは午後から出るから、お前一人で行ってこい」

 

「分かったよ。……あ、じいちゃん。それ、おれの飯だぞ!」

 

「ん? そうじゃったか?」

 

「そうじゃったか、じゃねェ!」

 

 俺が取り返すより早く、じいちゃんは肉を口へ放り込んだ。

 

 隣でマルコムが呆れた顔をしていたが、こっちはそれどころじゃない。仕方なく追加を取りに立ち上がると、じいちゃんは何事もなかったように俺の皿へ手を伸ばしていた。

 

「ロイド! それ見張っといてくれ!」

 

「おれにガープ中将を止めろってのか!?」

 

 薄情な奴だ。

 

     ◇

 

 午後の訓練を終えた俺は、一度宿舎へ戻って汗を流してから元帥室へ向かった。

 

 別に訓練着のままでもよかったのかもしれないが、さすがに海軍の元帥へ会いに行くのだから、多少は身なりを整えた方がいいだろう。

 

 廊下を歩いていると、何人もの海兵とすれ違った。

 

 最初の頃は、じいちゃんの孫というだけで随分と珍しがられたものだが、三ヶ月も過ごせば顔を覚えてくれる人間も増える。外洋訓練で一緒になった海兵から声をかけられることもあるし、食堂のおばちゃんとは、今ではすっかり顔馴染みだった。

 

 ただし、元帥室のある区画は、相変わらず少し雰囲気が違う。

 

 すれ違う海兵たちの階級も高くなるし、廊下には書類を抱えて忙しそうに歩く将校が目立つ。俺も何度か来ているとはいえ、勝手に歩き回っていい場所ではないだろう。

 

 そんなことを考えながら角を曲がったところで、前方から三人の男が歩いてくるのが見えた。

 

 そして、俺は思わず足を止めた。

 

 見覚えがある、なんてものじゃない。

 

 先頭を歩く角刈りの大男に、黄色い縞模様のスーツを着た男。そして、少し気だるそうな様子で後ろを歩いている長身の男。

 

 サカズキ、ボルサリーノ、クザン。

 

 海軍本部の最高戦力、三大将だった。

 

 そりゃあ、海軍本部にいるんだから、いつかは会うだろうと思っていた。だが、こうして三人揃って目の前に現れると、さすがに驚く。

 

 何より、全員でかい。

 

 俺だって同年代の子供と比べれば背が高い方だが、三人を見上げていると、まるで自分が小人になったような気分だった。

 

「ん?」

 

 最初にこちらへ気づいたのは、クザンだった。

 

 俺の顔を見ると、何か思い出したように首を傾げる。

 

「あれ? お前、ガープさんとこの……」

 

「はい。ポートガス・D・エースです」

 

「ああ、やっぱり。最近、本部で訓練受けてるって聞いてたわ」

 

 クザンは立ち止まると、面白そうに俺を眺めた。

 

「へえ。あの人の孫っていうから、もっと暴れん坊かと思ってたけど、ちゃんと挨拶できんのね」

 

「じいちゃんと一緒にしないでくださいよ」

 

「あらら。本人が聞いたら怒りそうだな」

 

「拳骨が飛んでくるでしょうね」

 

「……確かに」

 

 クザンが笑ったところで、先頭を歩いていたサカズキも足を止めた。

 

「何をしちょる、クザン」

 

「ああ、ガープさんの孫だってさ。最近、本部で訓練してる子」

 

「ガープ中将の孫か」

 

 サカズキの視線が俺へ向いた。

 

 正面から見上げると、やっぱり迫力がある。

 

 前世で知っているサカズキは、徹底的な正義を掲げる海軍大将だ。俺が原作でどうなったのかまで覚えている以上、さすがに何も考えずに親しみを感じられる相手ではない。

 

 だが、今の俺は海賊じゃないし、目の前のサカズキにとっても、俺はただの子供だ。

 

「初めまして。ポートガス・D・エースです」

 

「……ほう。おどれがそうか」

 

 サカズキは俺を見下ろしたまま、少しだけ眉を動かした。

 

「ガープ中将が孫を本部へ連れてきたとは聞いちょったが、随分と若いのう」

 

「十一歳です」

 

「十一か。その歳で本部の訓練についていけるんか」

 

「はい。じいちゃんに鍛えられてきたので、体力には自信があります」

 

「ふん。あの人の鍛え方なら、さぞ骨が折れたじゃろう」

 

「まあ、結構ひどい目には遭いましたね」

 

 思わず苦笑すると、サカズキは口元をわずかに動かした。

 

「じゃが、訓練と実戦は違う。いくら腕が立とうが、遊び半分で海へ出るもんじゃないけえのう」

 

「はい。それは外洋訓練でも教わりました」

 

「ならええ」

 

 サカズキはそれ以上追及することもなく、再び歩き出そうとした。

 

 どうやら、俺に特別な興味があるわけではないらしい。

 

 まあ、当然か。海軍大将が、ガープの孫というだけで十一歳の子供に構っている暇なんてないだろう。

 

「おやおやァ、随分と礼儀正しい子だねェ」

 

 今度はボルサリーノが声をかけてきた。

 

 サングラス越しに俺を見下ろし、ゆっくりと口元を緩める。

 

「ガープさんの孫とは思えないねェ。お名前は何と言ったかな?」

 

「ポートガス・D・エースです」

 

「エース君ねェ。わっしはボルサリーノ。よろしく頼むよォ」

 

「はい。よろしくお願いします、ボルサリーノ大将」

 

「おォ、いいねェ。うちの若いのにも見習わせたいくらいだよォ」

 

 その言い方が妙に大げさだったので、俺は少し笑ってしまった。

 

 ボルサリーノは相変わらず飄々とした様子で、こちらを眺めている。

 

「ところで、君はこんな所で何をしてるんだい?」

 

「センゴク元帥に呼ばれて、元帥室へ行くところです」

 

「へェ、センゴクさんに? そりゃあ、何かやらかしたんじゃないのかねェ」

 

「いや、まだ何もしてませんよ!」

 

「まだ、ねェ……」

 

 ボルサリーノが楽しそうに笑った。

 

 ……この人、絶対に分かってて言ってるだろ。

 

「おいおい、あんまりからかうなよ。あの人の孫なんだから、何をするか分かんねェぞ」

 

 クザンまで余計なことを言い出した。

 

「だから、じいちゃんと一緒にしないでくださいって!」

 

「ははっ。悪い悪い」

 

 まったく、どいつもこいつも。

 

 じいちゃんが普段からどんなことをしているのか、改めて聞いてみたくなってきた。

 

「おい、いつまで立ち話をしちょる」

 

 先へ進んでいたサカズキが振り返った。

 

「わしらには仕事があるんじゃ。用が済んだんなら、さっさと行くぞ」

 

「あらら、怒られちまった」

 

「おォ、怖いねェ」

 

「おどれら……」

 

 二人が揃って肩をすくめると、サカズキは呆れたように鼻を鳴らした。

 

 ……この三人、普段からこんな感じなのか?

 

 原作ではそれぞれの性格は知っていたが、こうして並んで話しているところを見ると、想像していた以上に違いがはっきりしている。

 

 特にクザンとボルサリーノは、サカズキの反応を楽しんでいるようにすら見えた。

 

「じゃあな、エース。訓練、頑張れよ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「まァ、怪我しないように気をつけなよォ」

 

「はい!」

 

 最後にサカズキが一度だけこちらを振り返った。

 

「ガープ中将の孫なら、半端な鍛え方はしちょらんじゃろう。じゃが、強さを何に使うかは自分で考えにゃいけんぞ」

 

「……はい。覚えておきます」

 

「ああ」

 

 それだけ言い残し、三人は廊下の向こうへ歩いていった。

 

 俺はその背中をしばらく眺めてから、再び元帥室へ向かった。

 

 三大将か。

 

 いつか、あの人たちとも手合わせしてみたい。

 

 ……いや、今やったら間違いなくボコボコにされるだろうけど。

 

 それでも、どれくらい強いのか、実際に戦って確かめてみたい気持ちはあった。

 

 特に、ボルサリーノの光の速度での攻撃なんて、見聞色でどこまで対応できるのか興味がある。

 

 まあ、そんなこと言ってたら、今できることをやれとゼファー先生に怒られそうだな。

 

     ◇

 

 元帥室の前へ到着し、扉を叩いた。

 

「入れ」

 

「失礼します!」

 

 返事をして中へ入ると、センゴク元帥は机に向かって書類を読んでいた。

 

 相変わらず机の上には大量の書類が積まれている。じいちゃんの執務室とは大違いだ。もっとも、じいちゃんの部屋にはそもそも仕事をしている形跡がほとんどないので、比べる方が間違っているのかもしれない。

 

「来たか、エース。そこへ座れ」

 

「はい!」

 

 言われた通り、応接用のソファへ腰を下ろした。

 

 センゴク元帥は書類へ目を通し終えると、眼鏡を外してこちらへ向き直った。

 

「訓練の方はどうだ?」

 

「順調です。最近はゼファー先生に六式を教わってます」

 

「ほう。ゼファーが直接か」

 

「はい。外洋訓練で見たのを真似してたら、動きが雑すぎるって怒られまして」

 

「……お前、まさか六式を見よう見まねで覚えたのか?」

 

「一応、六つとも使えるようにはなったんですけど、まだ無駄が多いみたいです。今は基礎から教え直してもらってます」

 

 センゴク元帥はしばらく俺を見つめていたが、やがて深いため息をついた。

 

「まったく……。ガープの孫というのは、どこまで無茶をするんだ」

 

「いや、別に無茶はしてませんよ。ちゃんと練習してますし」

 

「そういう問題ではない!」

 

 ……何だか、じいちゃんと話している時みたいな反応だな。

 

 もっとも、センゴク元帥の言い分も分からなくはない。

 

 俺が普通の十一歳なら、六式を独学で覚えようとするなんて、無茶にもほどがあるだろう。

 

「まあ、ゼファーが見ているなら心配はいらんか。あいつは教官としても優秀だからな」

 

「はい。教え方もすごく分かりやすいです。じいちゃんとは大違いですね」

 

「ハッハッハ! それはそうだろう!」

 

 センゴク元帥が豪快に笑った。

 

「ガープの奴は昔からそうだ。自分ができることは、他人もできると思っておる」

 

「やっぱり昔からなんですね」

 

「お前、あいつに何を教わった?」

 

「基本的には、殴られて覚えろって感じでしたね。質問すれば教えてくれるんですけど、最後は大体、実際に食らえば分かるって言われるんですよ」

 

「ハッハッハ! 目に浮かぶわ!」

 

 センゴク元帥は腹を抱えて笑い出した。

 

 その様子を見ていると、俺もつられて笑ってしまう。

 

 こうして話していると、目の前にいるのが海軍本部の元帥だということを、少し忘れそうになる。

 

「それで、今日は何の用だったんですか?」

 

「ああ、そうだったな」

 

 センゴク元帥はようやく笑いを収め、机の上から一枚の書類を取り出した。

 

「お前の外洋訓練への参加についてだ。これまで何度か特例で認めてきたが、今後も継続するつもりなら、改めて確認しておく必要がある」

 

「何か問題があったんですか?」

 

「いや、そうではない。だが、お前は正式な海兵ではないからな。訓練への参加と、実際の任務に同行することは別だ」

 

 センゴク元帥は書類を俺の前へ置いた。

 

「これまでの報告では、お前は指示に従い、勝手な行動もしていないそうだ。将校たちからの評価も悪くない」

 

「それはよかったです」

 

「ああ。だが、海へ出れば何が起こるか分からん。お前に十分な実力があることは承知しているが、だからといって好き勝手に戦っていいわけではないぞ」

 

「分かってます。将校の指示には従いますよ」

 

「ならばよし」

 

 センゴク元帥は頷き、書類を机へ戻した。

 

「今後も外洋訓練への参加を認める。ただし、同行する艦の指揮官が許可した場合に限る。いいな?」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 思わず身を乗り出して礼を言うと、センゴク元帥は満足そうに頷いた。

 

「それにしても、お前は随分と訓練が好きなようだな」

 

「そりゃあ、強くなるのは楽しいですから」

 

「ほう。ガープに鍛えられて、まだ足りんのか?」

 

「全然足りませんよ。じいちゃんはめちゃくちゃ強いですし、ゼファー先生だって、今の俺じゃ全然歯が立ちませんから」

 

 センゴク元帥は腕を組み、少し感心したように俺を眺めた。

 

「なるほどな。お前は、あいつらに追いつきたいのか」

 

「追いつくだけじゃなくて、いつかは超えたいですね」

 

「ハッハッハ! 大きく出たな!」

 

「せっかく強くなるなら、そのくらい目指したいじゃないですか」

 

「そうか。ならば、せいぜい励むことだ」

 

 センゴク元帥は笑いながら、机の上に置かれた煎餅の袋を手に取った。

 

「食うか?」

 

「いいんですか?」

 

「構わん。どうせガープの奴が来れば、勝手に食い尽くされるからな」

 

「じゃあ、遠慮なく!」

 

 俺は差し出された袋から一枚取り出し、早速口へ運んだ。

 

 ……うまい。

 

 何だか、じいちゃんがいつも食っているやつより高そうな気がする。

 

「おいしいですね、これ」

 

「そうだろう。わざわざ取り寄せたものだからな」

 

「へえ。じいちゃんが食ってるのも、これですか?」

 

「……何?」

 

 センゴク元帥の手が止まった。

 

「いや、じいちゃんがよく食ってる煎餅と、味が似てるなと思って」

 

「……ガープの奴、まさか……」

 

 何やら嫌な予感がしたらしい。

 

 センゴク元帥は机の引き出しを開け、中を確認した。

 

 そして、しばらく固まった後、額へ青筋を浮かべた。

 

「ガァァァプ!! あの野郎、また勝手に持っていきおったな!!」

 

 ……ああ、やっぱり。

 

 俺は煎餅を齧りながら、何となく天井を見上げた。

 

 じいちゃん、今頃くしゃみでもしてるんじゃないだろうか。

 

     ◇

 

 その後、センゴク元帥がじいちゃんへの文句を一通り言い終えるまで、俺はしばらく付き合うことになった。

 

 話を聞いている限り、じいちゃんは昔から相当好き勝手にやっていたらしい。センゴク元帥が呆れるのも無理はないが、あの人が何十年もじいちゃんと付き合っていることを考えると、何だかんだ仲はいいんだろう。

 

「……まったく。お前はあいつのようになるんじゃないぞ」

 

「いや、おれもあそこまでは無理ですよ」

 

「そういう意味ではない!」

 

「分かってますって!」

 

 俺が笑うと、センゴク元帥は呆れたように息を吐いた。

 

 それから、ふと思い出したようにこちらへ視線を向ける。

 

「そういえば、先ほど廊下で大将たちと会わなかったか?」

 

「ああ、会いました! 三人揃って歩いてましたね」

 

「そうか。何か言われたか?」

 

「クザン大将とボルサリーノ大将には、じいちゃんの孫にしては礼儀正しいって言われました」

 

「ハッハッハ! 違いない!」

 

「サカズキ大将には、強さを何に使うか考えろって言われましたね」

 

「……ほう」

 

 センゴク元帥は少しだけ表情を改めた。

 

「それで、お前は何と答えた?」

 

「覚えておきます、って」

 

「そうか」

 

 センゴク元帥は頷き、少し考えるように腕を組んだ。

 

「サカズキらしい言葉だな。あいつは自分の信じる正義に厳しい男だ。お前も、いずれ強くなれば、そういうことを考える機会が増えるだろう」

 

「そうですね」

 

 俺は煎餅をもう一枚取りながら、少し考えた。

 

 強さを何に使うか。

 

 そんなもの、俺の中ではある程度決まっている。

 

 自由に生きるためだ。

 

 行きたい場所へ行き、やりたいことをやる。そのために邪魔なものがあれば、できる限り自分の力でどうにかしたい。

 

 もちろん、それだけで済むほど、この世界が単純じゃないことも分かっている。

 

 それでも、今の俺が強くなりたいと思う一番の理由は、結局そこにあるのだろう。

 

「……エース?」

 

「あ、すみません。ちょっと考え事してました」

 

「何を考えていた?」

 

「いや、俺が何のために強くなりたいのかって話です」

 

「ほう。答えは出たか?」

 

「まあ、ある程度は。でも、まだ十一歳ですからね。これから変わるかもしれませんし」

 

 そう答えると、センゴク元帥は少し驚いたように俺を見た。

 

 そして、やがて口元を緩める。

 

「……そうだな。今からすべてを決める必要はない。お前には、まだ時間がある」

 

「はい」

 

 俺は笑って頷いた。

 

 それから、ふと思いついて尋ねてみる。

 

「あの、センゴクさん」

 

「……ん?」

 

 センゴク元帥が顔を上げた。

 

「何だ?」

 

「今度、時間がある時に、また話を聞きに来てもいいですか?」

 

「……何?」

 

「いや、じいちゃんの昔話とか、海軍のこととか。せっかく本部にいるんですし、いろいろ聞いてみたいなと思って」

 

 センゴク元帥はしばらく俺を眺めていた。

 

「……お前、今、何と呼んだ?」

 

「え? センゴクさん、ですけど……。駄目でしたか?」

 

「いや……」

 

 センゴク元帥は一瞬だけ妙な顔をしたが、すぐに小さく笑った。

 

「まあ、構わん。お前は正式な海兵でもないしな。ただし、人前では元帥と呼べよ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「それと、来るなら仕事の邪魔にならん時にしろ。わしはガープと違って暇ではないんだ」

 

「分かってます!」

 

「本当か? どうも、お前を見ていると、あいつの顔がちらついてな……」

 

「だから、じいちゃんと一緒にしないでくださいよ!」

 

 センゴクさんは声を上げて笑った。

 

 その顔を見ながら、俺もつられて笑ってしまう。

 

 海軍本部に来てから、もう三ヶ月。

 

 ゼファー先生に六式を教わり、訓練生たちとも仲良くなった。今日なんて三大将と顔を合わせたし、センゴクさんとも、こうして普通に話せるようになった。

 

 最初は修行のために来たつもりだったが、思っていた以上に楽しい生活を送っている。

 

 まあ、じいちゃんがいつまで本部にいるつもりなのかは分からないけど。

 

 せっかくだから、ここにいる間に、もっといろんな人と話してみたい。

 

 そんなことを考えながら、俺はセンゴクさんに勧められるまま、もう一枚煎餅を取った。

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