転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
海軍本部を離れてからも、じいちゃんとの修行は続いていた。
航海中くらい休ませてくれてもいいだろうと思っていたのだが、いざ手合わせを始めると、結局おれの方から毎日のように頼むようになっていた。ゼファー先生に教わった六式も、覇気との組み合わせも、じいちゃん相手なら遠慮なく試せる。
もっとも、成果を確かめるには少々相手が悪かった。
剃で間合いを詰めれば先回りされ、武装色を込めた拳を繰り出せば、受け止めるどころか軽くいなされる。こちらが工夫するほどじいちゃんも攻め方を変えてくるので、船の上でも退屈する暇はなかった。
そんな日々を過ごしているうちに、軍艦は東の海へ入り、とうとうゴア王国が見えるところまで来ていた。
「エース! 島が見えてきたぞ!」
昼飯を終えて甲板で休んでいたおれは、じいちゃんの声に顔を上げた。
船首へ向かうと、水平線の向こうに見覚えのある島影が浮かんでいる。一年以上離れていた故郷だと思うと、自然と頬が緩んだ。
「おっ、ようやくか!」
「何じゃ、急に元気になりおって。さっきまでへばっとったくせに」
「そりゃあな。サボとルフィに会えるんだぜ?」
海軍本部での一年は楽しかったが、二人と離れているのはやっぱり寂しかった。
手紙のやり取りはしていたものの、ルフィから届くのは勝負の催促と肉の話ばかりだったし、サボも修行の成果を試したくて仕方がないらしい。おれがいない間に、二人がどれだけ強くなったのか楽しみだ。
「そういや、ルフィに肉を買ってこいって頼まれてたんだ。港に着いたら市場へ寄っていいか?」
「ぶわっはっは! あいつは相変わらずじゃのう! よし、わしの分も買っていくか!」
「じいちゃんの分まで買ったら、土産がなくなっちまうだろ」
「何を言っとる! お前も食うくせに!」
それは否定できない。
実際、本部で買っておいた土産の菓子は、航海中にかなり減ってしまっていた。じいちゃんと二人で食べていたら、思った以上になくなるのが早かったのだ。
港に着いたら、少し多めに買っておこう。
◇
ゴア王国の港で買い物を済ませると、じいちゃんと一緒にコルボ山へ向かった。
久しぶりの山道は懐かしかったが、道そのものはほとんど変わっていない。木々の間を抜ける獣道も、以前ルフィが足を滑らせて転がり落ちた坂も、よく覚えている。
途中で大きな猪を見かけ、晩飯にちょうどよさそうだと思ったものの、今日は早く帰る方を優先した。
やがて見慣れた建物が現れたところで、おれはじいちゃんより先に駆け出した。
「ダダン! 帰ったぞ!」
扉の向こうで慌ただしい物音がしたかと思うと、聞き慣れた怒鳴り声が返ってきた。
「何だい、騒々しい! 今度は何をやらかしたんだ!」
「おれだ!ダダン!」
勢いよく扉が開き、顔を出したダダンがおれを見て固まった。
「……エース?」
「おう、久しぶり!」
「帰ってくるなら連絡くらい寄越しな!」
そう言いながらも、ダダンはおれの肩をつかんで上から下まで眺め、最後に頭を乱暴に撫でてきた。
「ったく……元気そうじゃないか」
「ダダンもな。相変わらず声がでかいな」
「相変わらず失礼なところは変わってねえな!?」
懐かしいやり取りに笑っていると、後ろから来たじいちゃんを見つけたダダンの顔色が変わった。
「ガープさん! あんたまで突然来ないでくれよ!」
「ぶわっはっは! 元気そうじゃのう、ダダン!」
「こっちの話を聞いてください!」
じいちゃんを相手にするダダンは、やっぱり大変そうだ。
家の中からはドグラとマグラも出てきて、久しぶりだと声をかけてくれた。おれが土産を渡すと、二人は早速中身を覗き込み、ダダンも文句を言いながら食料を片づけ始める。
しばらく本部での話をしてから、サボとルフィの姿がないことに気づいた。
「あいつらは?」
「朝から山へ行ってるよ。どうせ、また二人で修行してるんだろ」
ダダンによれば、二人は最近ますます修行に熱を入れているらしい。おれが帰ってくると知ってからは、特にそうなのだという。
「ルフィなんか、毎朝まだ帰らないのかって聞いてきてね。あんたが帰ってくる日を教えろって、こっちが知るわけないだろうに」
「ハハハ! 悪かったな。じゃあ、ちょっと迎えに行ってくるよ」
じいちゃんが自分も行くと言い出したが、二人の居場所には心当たりがある。おれ一人で十分だと伝え、土産を置いて家を出た。
背後では、早くも飯を要求するじいちゃんとダダンが言い争っている。
あの様子なら、帰ってくる頃には賑やかな夕飯になっていそうだ。
◇
二人がいたのは、昔から三人でよく修行していた開けた場所だった。
近づくにつれて、木を打つ音と聞き慣れた声が聞こえてくる。
「もう一回だ、サボ!」
「いいけど、お前、少しは考えて攻めろよ!」
木々の間から覗くと、ルフィが腕を伸ばしてサボへ殴りかかっていた。
サボは鉄パイプで拳の軌道を逸らすと、ルフィが腕を引き戻す隙を狙って踏み込む。ルフィも簡単には転ばず、身体を捻って攻撃をかわしたが、続く足払いには対応できず、尻餅をついていた。
へえ、二人とも上手くなってるじゃねえか。
サボは背も伸び、鉄パイプの扱いが随分と様になっている。ルフィも以前ほど無闇に突っ込まなくなったようだ。少なくとも、一年前よりは考えて戦っている。
もっとも、転がったルフィがすぐさま立ち上がり、もう一度勝負を挑んでいるあたりは変わっていない。
「おーい! 随分楽しそうだな!」
声をかけると、二人が同時に振り返った。
先に反応したのはサボだった。
「……エース!?」
「おう、ただいま!」
ルフィは一瞬ぽかんとしていたが、次の瞬間には勢いよく駆け出してきた。
「エース!!」
「うおっ!」
飛びついてきたルフィを受け止める。思った以上に勢いがあり、思わず一歩後ろへ下がった。
「帰ってきたのか! いつ帰ってきたんだ!?」
「ついさっきだよ。お前、少し重くなったな!」
「おれ、強くなったんだぞ!」
「そりゃ楽しみだ!」
ルフィは嬉しそうに笑い、ようやくおれから離れた。
そこへサボも駆け寄ってくる。
「帰ってくるなら知らせろよ! 迎えに行ったのに!」
「じいちゃんの船だからな。予定どおりに着くかも分からなかったんだよ」
「ああ、そっか。あのじいさんなら仕方ねえな」
サボは納得したように笑い、おれの肩を軽く叩いた。
一年以上ぶりだというのに、こうして顔を合わせると、昨日まで一緒にいたような気がする。
もっとも、積もる話を始めるより早く、ルフィが拳を握っていた。
「なあ、エース! 勝負しよう!」
「ハハハ! やっぱりそう来るか!」
「おれ、すっげえ強くなったんだ!」
「おれもだぜ。サボもやるだろ?」
「当たり前だ! 帰ってきたら勝負するって約束したからな!」
サボが鉄パイプを構え直す。
おれも荷物を木の根元へ置き、二人と向かい合った。
久しぶりの再会を喜ぶのもいいが、こいつらとはこうして身体を動かす方が性に合っている。
「よし、二人まとめて来いよ!」
◇
手合わせを始めてすぐに分かったのは、二人が想像以上に成長していたことだった。
ルフィは相変わらず勢いのある攻撃を好むが、以前のように拳を伸ばした後で無防備になることは減っている。サボも鉄パイプの間合いを上手く使い、ルフィが攻める隙に合わせてこちらの動きを制限してきた。
二人で何度も戦ってきたのだろう。互いの癖をよく理解している。
ただ、今のおれには十分な余裕があった。
ルフィの拳をかわしながらサボの攻撃を受け流し、二人の連携が途切れたところで反撃する。サボは何とか対応していたが、武装色を使わずとも力と速度には大きな差がある。
「くそっ、全然当たらねえ!」
「エース、お前どんな修行してきたんだよ!」
「色々とな。ちょっと面白い技も覚えたぜ」
おれは二人から少し距離を取り、地面を蹴った。
剃を使って一気にサボの背後へ回り込み、振り向こうとしたところで肩に手を置く。
「一本!」
「うわっ!? 何だ、今の!」
「エースが消えた!」
目を丸くする二人を見て、思わず笑ってしまった。
「消えてねえよ。六式っていう、海軍の体術だ」
「六式……?」
サボが興味深そうに聞き返す。
そこで、おれは剃のほかにも、木の幹を蹴って高く跳び、月歩で空中を移動してみせた。
ルフィは大喜びで自分も空中を蹴ろうとし、サボは着地したおれの足運びをしきりに気にしていた。二人とも反応は違うが、興味を持つところはよく似ている。
「エース、それっておれたちにも覚えられるのか?」
サボに尋ねられ、おれは頷いた。
「ああ。ただ、相当鍛えないと難しいぜ。おれもゼファー先生に散々しごかれたからな」
「へえ……。だったら、今度教えてくれよ!」
「もちろん。帰ってきたら、お前らにも教えるつもりだったんだ」
「よーし! おれも空飛ぶぞ!」
ルフィが張り切って跳び上がるが、当然ながら足をばたつかせただけでは月歩にならない。
おれとサボは顔を見合わせて笑った。
それからも三人で手合わせを続けたが、結局二人が一本取ることはできなかった。最後にはルフィが地面へ大の字に倒れ、サボも鉄パイプを脇に置いて座り込んでしまった。
「くっそー! 次は絶対勝つ!」
「その前に、まず剃を覚えたいな。あれが使えたら戦い方も随分変わりそうだ」
「おう。明日から一緒にやろうぜ」
おれがそう言うと、二人とも嬉しそうに顔を上げた。
しばらく休んでいるうちに日が傾き始めたので、そろそろ帰ろうと声をかける。
「そうだ。ルフィ、お前に土産があるぞ」
「何だ!?」
「肉だ」
「肉!!」
さっきまで動けないと騒いでいたルフィが、勢いよく跳ね起きた。
そのまま真っ先に山道を駆け下りていく背中を見て、サボが笑った。
「本当に変わらねえな、あいつ」
「ハハハ! そうだな」
おれも荷物を担ぎ直し、サボと並んで歩き出した。
離れていた一年の間に、二人とも随分と強くなった。これからまた一緒に修行できると思うと、楽しみで仕方がない。
◇
ダダンの家へ戻ると、既に夕飯の準備が進んでいた。
じいちゃんは食卓の前に陣取り、ドグラたちと何やら話している。おれたちが帰ってきたのを見るなり、ルフィを呼びつけた。
「ルフィ! わしが帰ってきたというのに、挨拶もなしか!」
「じいちゃん! いつ帰ってきたんだ!?」
「ぶわっはっは! 今さらか!」
じいちゃんがルフィの頭をわしわしと撫で回す。ルフィは文句を言いながら逃げようとしていたが、結局捕まっていた。
その様子を眺めていると、ダダンから皿を運ぶよう頼まれたので、おれも手伝うことにした。
夕飯はいつもより豪華だった。
買ってきた肉に加え、ドグラたちが用意した料理が食卓へ並ぶ。久しぶりに三人で食べる飯は賑やかで、海軍本部の話を聞きたがるサボとルフィに、おれは訓練や航海で経験したことを色々と話して聞かせた。
ルフィは六式の話になるたびに目を輝かせ、サボは航海術や修行方法にも興味を示した。じいちゃんは時折横から口を挟み、おれが手合わせで負けた話を面白おかしく語るので、こちらも言い返すのに忙しい。
そんな中でも、肉の取り合いだけは昔と変わらなかった。
「ルフィ! それ、おれのだろ!」
「早い者勝ちだ!」
「だったら遠慮しねえぞ!」
「こら! 皿ごと持っていくんじゃないよ!」
ダダンに怒鳴られながらも、三人で笑って飯を食った。
食後、ルフィが早速明日の修行について騒ぎ始めたところで、サボがふと尋ねてきた。
「そういやエース、今度はどれくらいこっちにいるんだ?」
「しばらくはいるぜ。もう本部に戻る予定もないしな」
「そっか。じゃあ、これからはまた三人で修行できるな!」
「おう。六式も教えるし、じいちゃんとの手合わせにも付き合ってもらうぞ」
「げっ、じいちゃんともやるのか!?」
ルフィが嫌そうな顔をしたので、おれとサボは笑ってしまった。
海軍本部で過ごした一年は、おれにとって大きな経験になった。ゼファー先生から教わった技術も、センゴクさんや海兵たちとの交流も、これから先ずっと役に立つだろう。
だが、サボとルフィと過ごす時間も、おれにとっては同じくらい大切だ。
まだまだ強くなりたいし、試したいことも山ほどある。二人と一緒なら、その毎日はきっと楽しいものになる。
久しぶりに戻ってきたダダンの家で、弟たちの騒ぐ声を聞きながら、おれはそんなことを考えていた。