転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
「船長! こいつら、全然止まりません!」
「うるせえ! 数じゃこっちが勝ってんだろうが! 囲んでぶっ殺せ!」
甲板の向こうから聞こえてきた怒鳴り声に、おれは思わず笑った。
どうやら、あの船長は部下を叱りつけるのが得意らしい。さっきから威勢よく命令を飛ばしているものの、自分は船尾の方から一歩も動こうとしない。こちらとしては、そろそろ出てきてもらいたいところなんだがな。
「おい、サボ! 船長はおれがやっていいか?」
「いいぜ! その代わり、ほかの連中は任せろよ!」
「おう!」
サボは鉄パイプを肩に担ぎ直し、こちらへ向かってきた五人の海賊たちの前へ歩み出た。
先頭の男が大剣を振りかぶると同時に、サボの姿が消える。剃で一気に懐へ入り込み、振り下ろされる前に鉄パイプを叩き込んだ。男が崩れるのを見て左右から二人が飛びかかったが、サボはその間を抜けるように身体を回し、まとめて蹴り飛ばしてしまう。
残った二人は慌てて銃を構えたものの、倒れた仲間が邪魔になって狙いを定められないらしい。
「おいおい、味方がいるだろ」
サボは笑いながら再び距離を詰め、銃口が向くより早く鉄パイプを振るった。
あっという間に五人とも倒れてしまった。
相変わらず、いい動きをするじゃねえか。あれなら、おれが船長を相手にしている間も心配はいらないだろう。
もっとも、こちらにもまだ何人か残っている。
「おらァ!」
横合いから斧が振り下ろされた。
おれは半歩だけ身体をずらして刃をかわし、そのまま男の腹へ拳を入れる。背後から迫ってきた海賊は伸ばしてきた腕を掴み、隣の男へ放り投げてやった。
二人が折り重なって倒れると、残っていた連中は一斉に距離を取った。
「何なんだ、てめえら!」
「賞金稼ぎだって言ってんだろ。お前らの船長を捕まえに来たんだよ」
「ふざけんな! おれたちを誰だと思ってやがる!」
「いや、だから船長を呼んでくれって。そいつに用があるんだよ」
何度も同じ説明をするのも面倒になってきたところで、ようやく船尾の方に動きがあった。
部下を押しのけて現れたのは、派手な羽飾りのついた帽子を被った大男だった。腰には二丁の拳銃を差し、肩には大きな斧を担いでいる。
手配書で見た顔と同じだ。
「おっ、やっと出てきたな!」
「てめえか! おれ様の船で好き勝手暴れやがって!」
「おう。お前を捕まえに来たんだよ」
「ハッ! おれ様を誰だと思ってやがる! この東の海で――」
船長はそこまで言うと、斧を振りかぶって突っ込んできた。
体格に見合った腕力はあるらしく、踏み込むたびに甲板が軋む。斧もなかなかの勢いで振り下ろされたが、上体まで大きく振りかぶっているせいで、どこを狙っているのかは丸分かりだった。
おれは刃の内側へ踏み込み、柄を握っている船長の腕を掴んだ。
「なっ!」
「お前、そんな振り方してたら当たらねえぞ?」
「黙れ!」
船長は掴まれた腕を引き抜こうとしながら、空いている手で腰の拳銃を抜いた。
おっ、まだやる気はあるらしい。
おれはその腕を引き寄せ、身体がこちらへ傾いたところで腹へ拳を突き出した。
ところが、船長は踏ん張ろうとした足を甲板の継ぎ目に引っかけ、突然前のめりになった。
「うおっ!?」
狙っていた腹が拳の軌道から外れる。
慌てて腕を引こうとしたものの、既に踏み込みは終わっていた。拳は船長の頭上を通り過ぎ、そのまま足元の甲板へ叩き込まれた。
凄まじい音とともに、足場が沈んだ。
「……あ」
拳を打ち込んだ場所から甲板が陥没し、周囲の板を巻き込みながら亀裂が広がっていく。衝撃は船体の奥まで伝わったらしく、船内から太い梁が折れる音が続けざまに響いた。
まずいと思った時には、既に船の中央が大きく沈み始めていた。
「エース!! 何やってんだ!!」
反対側の甲板からサボの声が飛んできた。
「悪い! ちょっと力入れすぎた!」
「ちょっとで済むか!!」
船体が傾き、積まれていた樽や木箱が一斉に滑り始めた。海賊たちは悲鳴を上げながら船縁へしがみつき、目の前の船長も斧を手放して慌てて起き上がろうとしている。
こりゃ、船長を捕まえて終わりってわけにはいかなくなったな。
おれはそいつの襟首を掴み、近くにいた海賊とまとめて、まだ形を保っている船首側へ放り投げた。
「サボ! そっち頼む!」
「分かってる!」
サボは既に月歩で空中へ跳び上がり、傾いた甲板から滑り落ちそうになっていた海賊を引っ張り上げていた。ほかの連中も次々と船首側へ運んでいるが、船が割れ始めているせいで、全員を一度に助けるのは難しい。
おれも残っていた海賊たちを拾い上げようとしたところで、足元の甲板が完全に裂けた。
踏み出した足が空を切り、身体が船内へ落ちる。
月歩で抜け出そうとしたが、船体が大きく捻れたことで、折れた甲板の一部がこちらへ跳ね上がってきた。
鋭く割れた木材の先端が、まともに腹へぶつかる。
「おっと!」
衝撃で身体が後ろへ押され、背中が残っていた梁に当たった。ぶつかってきた木材は先端から砕け、破片になって船底へ落ちていく。
おれは空中で体勢を立て直し、月歩で崩れかけた船内から飛び出した。
腹には軽い衝撃が残っていたものの、特に痛みはない。
ただ、服には見事な穴が開いていた。
「うわっ、また服が破れちまった!」
破れた部分を引っ張ってみると、ちょうど腹の辺りに大きな穴が開いている。結構な勢いでぶつかってきたはずなんだが、腹を撫でてみても傷らしい傷はなかった。
……ん?
そこで、妙なことに気づいた。
さっきは咄嗟のことだったから、武装色を使おうとはしていない。少なくとも、木材を受け止めるために覇気を強めた覚えはなかった。
もちろん、じいちゃんに何年も鍛えられてきた身体だ。普通の人間と比べれば相当頑丈になっている自覚はある。
それにしたって、鋭く割れた木材があの勢いでぶつかって、傷一つないというのは少し気になるな。
「エース! ぼさっとしてんな!」
「おっと、そうだった!」
考えるのは後だ。
おれは船首側へ飛び移り、残っていた海賊たちを運び始めた。
◇
「……見事に真っ二つだな」
サボが腕を組み、目の前の光景を眺めている。
おれたちの船の隣では、ついさっきまで一隻だった海賊船が、船首と船尾に分かれて浮かんでいた。
船首側はまだ何とか形を保っているものの、船尾側は既に半分ほど沈んでいる。折れた帆柱や木箱が周囲に散らばり、海面には樽がいくつも浮かんでいた。
捕まえた海賊たちは、全員残った船首へ移してある。幸い、誰も海へ沈まずに済んだらしい。
「いやあ、まさかあんなに簡単に割れるとは思わなかったな!」
「お前、船を何だと思ってんだよ」
「悪かったって! 船長がいきなり転ぶからよ」
「だからって、甲板を殴り抜くことはないだろ。あんな奴、普通に殴ったって倒せたじゃねえか」
「そりゃそうなんだけどな」
おれが頭を掻くと、サボは呆れたように笑った。
まったく、今回は言い返せない。
船長の動きが思ったより大きかったもんだから、ついこちらも勢いよく踏み込んでしまった。あの程度の相手なら、もっと軽く殴っても十分だったはずだ。
相手の動きが予想と違ったからといって、船を壊していい理由にはならないしな。
「まあ、壊れちまったもんは仕方ねえ。それより、こいつらをどうやって運ぶかだな」
「近くに島があるだろ。そこまで連れていけばいいんじゃねえか?」
「海図だと、半日くらいかかるぞ」
「だったら、残った船首を引っ張っていこうぜ。おれたちの船なら何とかなるだろ」
おれがそう言うと、サボは海面に浮かぶ船首を見やった。
「……途中で沈まねえか?」
「ゆっくり進めば大丈夫だろ。あれだけ浮いてるんだし、縄をかける場所も残ってる」
「そうだな。船尾はもう無理だろうけど、そっちはまだ使えそうだ」
「よし、決まりだな!」
「ただし、引っ張る前に船底も確かめようぜ。途中で水が入ってきたら面倒だ」
「おう。おれは縄を持ってくるよ」
サボは頷き、海賊たちの方へ歩いていった。
おれも船へ戻ろうとしたところで、さっき腹に木材がぶつかったことを思い出した。
「なあ、サボ。ちょっと見てくれよ」
「ん? どうした?」
「さっき船内に落ちた時、割れた甲板が腹に当たったんだけどよ」
服を持ち上げてみせると、サボは破れた部分を見て眉を上げた。
「うわっ、結構でかい穴じゃねえか。怪我は?」
「それが、何ともないんだよ」
「へえ。武装色で防いだのか?」
「いや、使ってねえんだ。咄嗟のことだったしな」
「……そうなのか?」
サボは少し意外そうな顔をして、おれの腹へ目を向けた。
おれたちは幼い頃からじいちゃんに鍛えられてきたし、多少の怪我なら珍しくもない。だが、あの勢いで鋭く割れた木材がぶつかって、傷一つないというのは、さすがに妙だった。
「確かに、服がそれだけ破れてるのに傷がないってのは不思議だな」
「だろ? ちょっと確かめてみたくなってさ」
おれは足元に落ちていた木片を拾い、先端を指でなぞった。折れた部分は鋭く尖っていて、普通なら皮膚を裂いてもおかしくない形をしている。
それが、まともに腹へ当たったんだよな。
今の身体がどれほど頑丈になっているのか、興味が湧いてきた。
「……ちょっと試してみるか」
「何を?」
「おい、そこのお前! 銃、貸してくれ!」
近くにいた海賊へ声をかけると、男はぎょっとした顔でこちらを見た。
「な、何するつもりだ!?」
「いいから貸せって。別に撃ち殺しゃしねえよ」
「そ、そういう問題じゃ……」
男が恐る恐る差し出した拳銃を受け取り、弾が入っていることを確かめる。
さっきの木材よりも、こっちの方が結果は分かりやすいだろう。銃弾を受けて傷がつかないなら、身体の強度が思っていた以上に上がっているのは間違いない。
「おい、エース。何する気だ?」
「ちょっと確かめたいことがあるんだよ」
おれは左手を開き、掌へ銃口を向けた。
「待て、お前、まさか――」
サボが言い終わるより先に、引き金を引いた。
乾いた銃声が響き、掌へ衝撃が走る。
だが、銃弾は皮膚を貫くことなく潰れ、そのまま甲板へ落ちた。
「……おおっ!」
掌を見てみると、弾が当たった部分が少し赤くなっているだけだった。血は出ていないし、指を曲げ伸ばししてみても痛みらしい痛みはない。
なるほどな。こりゃ、思っていた以上かもしれない。
「エース!!」
すぐ隣から、サボの怒鳴り声が響いた。
顔を上げると、あいつは物凄い形相でこちらを睨んでいた。
「お前、何考えてんだ!!」
「いや、だから、ちょっと確かめたくて――」
「だからって自分の手を撃つ奴があるか! 貫通したらどうするつもりだったんだよ!」
「まあ、そうなったら治療すりゃ――」
「そういう問題じゃねえだろ!!」
サボはおれの左手を掴み、掌を覗き込んだ。
「見せろ! どこに当たった!?」
「ここだよ。ほら」
「……は?」
サボの動きが止まった。
赤くなった部分を指で押し、掌を裏返してから、もう一度表へ戻す。それから甲板に落ちていた潰れた弾丸を拾い上げ、おれの掌と見比べた。
「……お前、これ、本当に武装色使ってねえのか?」
「おう。撃つ時も、意識して覇気を強めたりはしてねえぞ」
「いや、待て。ちょっと待てよ」
サボは眉間に皺を寄せたまま、もう一度おれの手を確かめた。
やがて、何とも言えない顔でこちらを見上げる。
「……お前の身体、どうなってんだよ」
「ハハハ! おれも今、それが気になってんだ!」
「笑ってんじゃねえよ! 気になったからって普通は自分を撃たねえだろ!」
「悪かった!」
「まったく……」
サボは深いため息をつき、おれの手を放した。
それから、まだ納得できないらしく、掌と潰れた弾丸を何度か見比べている。
「じいさんでも、こんな確かめ方はしねえぞ……」
「いや、じいちゃんならやりそうじゃねえか?」
「……否定できねえのが腹立つな」
サボは嫌そうに顔をしかめたが、すぐに真剣な表情へ戻った。
「で、何か分かったのか?」
「ああ。たぶん、昔から続けてきた武装色の修行が関係してるんだと思う」
おれは掌に残った赤い跡を眺めながら、これまでの修行を思い返した。
幼い頃、武装色を覚えたばかりのおれは、意識して覇気を纏うことしかできなかった。攻撃する時や相手の攻撃を受ける時に身体を強化し、必要がなくなれば解除する。それだけでも最初は相当な集中力が必要だったし、長く使い続ければすぐに疲れてしまった。
だが、せっかく前世の知識を持って生まれたんだから、普通に鍛えるだけじゃもったいない。
そう考えて始めたのが、日常生活でも武装色を使い続ける修行だった。
参考にしたのは、前世で見た漫画の超サイヤ人だ。強化した状態を特別なものとして扱うんじゃなく、普段からその状態に慣れてしまえば、戦闘中に余計な負担をかけずに済むんじゃないか。
もちろん、最初から全力で武装色を使い続けるなんて無茶はしなかった。そんなことをすれば、あっという間に覇気を使い果たしてしまう。
最初は生活に支障が出ない程度の、ごく少ない量から始めた。
飯を食う時も、山道を歩く時も、昼寝をする時も、できるだけ武装色を身体へ巡らせておく。慣れてきたら少しずつ量を増やし、疲れを感じるようなら減らす。
そうやって何年も続けてきた結果、今では戦闘中でも長時間、武装色を使い続けられるようになっていた。
ただ、それはあくまで覇気を使う技術が上達したからだと思っていた。
まさか、普段の身体そのものまで、ここまで頑丈になっているとはな。
「……おい、サボ。お前も普段から武装色を使ってるよな?」
「ああ。お前ほど長くはねえけどな」
「お前も同じようになってるかもしれねえぞ」
「だからって、おれまで試すと思うなよ」
「分かってるって」
サボはまだ呆れた顔をしていたが、少し考え込んだあと、自分の掌を眺めた。
「まあ、確かに、昔と比べりゃ怪我は減った気がするな。じいさんとの修行で鍛えられたからだと思ってたけど」
「おれもそう思ってたんだよ。けど、今回のはそれだけじゃ説明できねえだろ?」
「そうだな。少なくとも、普通の人間が銃で掌を撃って無傷なんてことはねえよ」
サボは潰れた弾丸をおれに放り返した。
おれはそれを受け取り、指先で転がしながら考えた。
もし、長年の武装色の常用によって、意識して覇気を纏っていない時でも身体がこれほど頑丈になるのなら。
漫画で見た、あの二人もそうなのかもしれない。
カイドウとビッグ・マム。
あいつらの頑丈さは、どう考えても常識外れだった。
カイドウは高い空島から飛び降りても大した怪我をせず、ビッグ・マムに至っては、幼い頃から銃弾や刃物がまともに通らない身体をしていた。
あれほどの頑丈さを、単純に筋肉や骨格だけで説明できるとは思えない。
もちろん、この世界には生まれつき人間離れした身体を持っている奴もいるし、あの二人が特別な体質なのは間違いないだろう。
だが、もしあの頑丈さに武装色が関係しているとしたら?
おれが考えているのは、あの二人が生まれつき、大量の武装色を無意識に身体へ巡らせているんじゃないか、という仮説だった。
特にビッグ・マムは、幼い頃から異常な頑丈さを発揮していた。本人が武装色を理解していなかったとしても、無意識に使っていた可能性はある。
ただ、そう考えると別の疑問も出てくる。
覇気が強いだけで同じことができるなら、ロジャーや白ひげだって、カイドウたちと同じような身体をしていてもおかしくない。
だが、少なくともおれの知る限り、そうではなかった。
つまり、覇気の総量が多いことと、普段からどれだけの武装色を身体へ巡らせていられるかは、別の話なんじゃないか。
カイドウやビッグ・マムが本当にそういう体質なのかは、直接確かめたわけじゃないから分からない。
そもそも、あの二人は覇気を抜きにしても、とんでもなく頑丈なのかもしれないしな。
だが、おれ自身が長年の修行で似たような状態に近づけるのなら、試してみる価値は十分にあった。
生まれつきの特異体質を後から手に入れようってわけじゃない。普段から武装色を使うことに身体を慣らし、意識しなくても十分な強度を維持できるようになればいい。
今回のことで、少なくとも、その方向に成長している可能性は見えてきた。
「……おい、エース。何ニヤニヤしてんだよ」
サボの声で我に返ると、あいつはまだ呆れた顔でこちらを見ていた。
「いや、ちょっと面白いことに気づいたんだよ」
「また何か試すつもりじゃねえだろうな?」
「今度はちゃんと考えてからやるよ」
「頼むからそうしてくれ。お前が自分に銃を撃つところなんざ、二度と見たくねえよ」
サボはそう言いながら、海賊たちの方へ歩いていった。
おれも後に続こうとしたところで、ふと破れた服へ目を落とす。
身体が頑丈になるのはありがたいが、服まで丈夫になるわけじゃないんだよな。
まあ、その辺りは仕方ないか。
◇
その後、おれたちは残った船首に縄をかけ、自分たちの船で引っ張りながら近くの島へ向かった。
幸い、海も穏やかだったので、思っていたより順調に進むことができた。途中で船首が大きく傾いた時には少し焦ったが、サボと二人で何とか持ち直し、夕方には無事に港へ到着した。
もっとも、半分になった海賊船を引っ張って入港したものだから、港にいた連中には随分と驚かれた。
海軍支部の兵士に至っては、最初、おれたちが何を連れてきたのか理解できなかったらしい。
事情を説明すると、今度は呆れた顔をされた。
まあ、そりゃそうだよな。
賞金首を捕まえてくるだけならともかく、海賊船を真っ二つにして運んでくる賞金稼ぎなんて、そうそういないだろう。
結局、捕まえた海賊たちは全員海軍に引き渡し、賞金もきっちり受け取ることができた。
船長の懸賞金は九十万ベリー。
前回の百二十万ベリーには及ばなかったものの、ほかの賞金首も何人かいたおかげで、今回もなかなかの稼ぎになった。
その晩、おれたちは港町の酒場で飯を食いながら、次にどこへ向かうかを話し合った。
「なあ、サボ。次はもうちょっと強い奴を探さねえか?」
「おれもそうしたいけどな。東の海じゃ、そう簡単には見つからねえだろ」
「だったら、そろそろ偉大なる航路に行ってみるか?」
「ハハッ! いいな、それ!」
サボは楽しそうに笑い、テーブルに広げていた海図を指で叩いた。
「でも、その前にもう少し船を動かすのに慣れときたいな。今日みたいなこともあるし」
「だから、あれは事故だって言ってんだろ!」
「分かってるよ。お前がわざと壊したとは思ってねえさ」
そう言いながらも、サボは笑いを堪えきれていなかった。
「……何だよ」
「いや、ダダンが聞いたら何て言うかなって思ってさ」
「あー……」
出航前に、あれだけ船を壊すなと言われていたんだよな。
しかも、今回は自分たちの船じゃなかったとはいえ、見事に真っ二つにしてしまった。
「じいちゃんだったら笑うだろうな」
「間違いねえな!」
「ルフィも喜びそうだな。おれもやってみてえとか言い出しそうだ」
「あいつなら絶対言うな!」
二人で笑いながら、運ばれてきた料理へ手を伸ばした。
海へ出てから、まだそれほど長い時間が経ったわけじゃない。
それでも、こうして毎日違う場所へ行き、知らない連中と出会い、時には海賊を捕まえて金を稼ぐ生活は、想像していた以上に楽しかった。
この先、もっと強い奴にも出会うだろうし、まだ見たことのない島だって山ほどあるはずだ。
偉大なる航路へ入れば、今とは比べものにならないような冒険が待っているだろう。
そう考えると、今から楽しみで仕方がない。
「そういや、エース。お前、明日は新しい服買っとけよ」
「ん? ああ、そうだな」
「そんなどでかい穴空いた服着て横を歩いてほしくないからな」
「もう上裸でもいいかと思ってるんだが」
「やめろよ恥ずかしい!」
サボは呆れたように笑いながら、海図を畳んだ。
おれたちの旅は、まだ始まったばかりだ。
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