転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
翌朝、目を覚ますと、焚き火の向こうで仮面の青年が何かを書いていた。
昨夜は三人とも随分と遅くまで話していたのだが、どうやらおれたちより早く起きていたらしい。膝の上に紙を広げ、時折手を止めては考え込んでいる。何を書いているのか気になって近づいてみると、紙には細かい文字がびっしりと並んでいた。
「おっ、何書いてんだ?」
「うわっ!?」
青年は慌てて紙を抱え込み、勢いよくこちらを振り返った。
「いきなり覗くなよ!」
「悪い悪い! 昨日言ってた冒険記か?」
「……まあな」
「見せてくれよ」
「嫌だ!」
「何だよ、減るもんじゃねえだろ!」
「おれのやる気が減るんだよ!」
そりゃ困るな、と笑っていると、青年は紙を丁寧に折り畳み、懐へしまい込んだ。随分と大事にしているらしい。
昨日は立ち上がるのもやっとだったが、今朝は顔色も少しよくなっている。もっとも、紙をしまって立ち上がる際には岩に手をついていたし、まだ完全には回復していないんだろう。
「もう平気なのか?」
「ああ。昨日はよく眠れたからな。腹も減ってきたし、昨日よりは随分ましだ」
「そりゃよかった。肉ならまだあるぞ!」
「……朝から、あれを食うのか?」
「他に何かあんのか?」
青年は砂浜に積まれた怪鳥の肉を眺め、それから苦笑した。
「いや、文句はないさ。昨日までのことを考えりゃ、贅沢な朝飯だよ」
「だろ? まだまだあるから、遠慮せず食えよ!」
おれは焚き火の跡へ近づき、残っていた炭を軽く崩した。昨日のうちに焼いておいた肉もあるし、火を起こせばすぐに朝飯にできるだろう。
それにしても、昨夜は随分と色々な話をしたな。
特に、おれがロジャーの息子だと明かしてからは大変だった。サボには何度も質問されたし、青年も最初こそ驚いていたものの、途中からは妙に真剣な顔になって話を聞いていた。
結局、三人とも眠くなってしまい、詳しい話はまた今度ということになったんだが、サボのことだから、そのうち続きを聞いてくるだろう。
「そういや、お前さ」
「何だ?」
「名前、どうすんだ?」
青年は怪訝そうにこちらを見た。
「……どうするって?」
「いつまでも『お前』じゃ不便だろ。昨日、名前は捨てたって言ってたじゃねえか」
「別に、お前でいいだろ」
「よくねえよ。サボと話す時も、お前って呼ばなきゃなんねえんだぞ」
「……まあ、確かに」
青年は少し考え込んだものの、すぐに肩をすくめた。
「そのうち、何か考えるさ」
「おれがつけてやろうか?」
「……は?」
「おれの名前がエースだろ? だったら、お前はデュースでどうだ!」
青年はしばらく黙った。
「……何で、お前の名前から取るんだよ」
「いいじゃねえか! 呼びやすいしよ!」
「いや、そういう問題じゃ……」
「なかなかいい名前じゃねえか」
いつの間にか起きていたサボが、背後から口を挟んできた。
「エースにデュースか。覚えやすくていいな!」
「お前まで……」
青年は呆れたように言ったが、サボは楽しそうに笑っている。
「嫌なら別の名前を考えりゃいいだろ。何か候補あんのか?」
「……いや、それは……」
「だったら、決まりだな!」
「勝手に決めるな!」
おれが笑うと、青年は深いため息をついた。
それでも、すぐに否定する気にはならなかったらしい。少しの間考えてから、ぽつりと呟いた。
「……まあ、悪くはないか」
「おう! よろしくな、デュース!」
「……ああ。よろしく」
デュースは少し照れくさそうに笑った。
名前なんて、本人が気に入っているなら何だっていいと思う。だが、こうして呼べる名前ができたのは、おれとしても嬉しかった。
もっとも、改めて顔を眺めてみると、名前以外にも気になるものがある。
「そういや、その仮面は何なんだ?」
「……これか?」
「おう。ずっとつけてるだろ。寝る時も外さねえのか?」
「いや、寝る時は外してるけどな。別に、深い意味はないさ」
「へえ。じゃあ、マスクド・デュースだな!」
「何でそうなる!?」
「ハハ! 格好いいじゃねえか!」
サボもとうとう腹を抱えて笑い出した。
「どうだ! いいだろ! マスクド・デュース!」
「お前ら、絶対面白がってるだろ!」
「そりゃ面白えからな!」
「否定しろよ!」
デュースは頭を抱えたが、その口元には笑みが浮かんでいた。
昨日まで遭難していた奴とは思えないほど、随分と賑やかな朝になったもんだ。
◇
朝飯を食い終えると、サボは島の様子を調べに行くと言い出した。
昨日はデュースの世話や怪鳥の解体で、まともに島を見て回る暇がなかったからな。おれたちが今いるのは、海岸沿いに森が広がる小さな島だ。人の住んでいる気配はないが、森の奥がどうなっているのかは、まだ分からない。
「おれも行くぞ」
デュースが立ち上がろうとすると、サボは少し考えてから首を振った。
「いや、今日は休んでろ。まだふらついてる」
「もう大丈夫だって。昨日よりは随分ましになったんだぞ」
「だったら、明日から手伝ってくれよ。今日はおれたちだけで十分だ」
デュースは少し不満そうだったが、自分でも体力が戻りきっていないことは分かっているらしい。
「……分かったよ。じゃあ、せめて食料になりそうなものがあったら持ってきてくれ。肉ばっかりじゃ、身体にもよくないからな」
「ああ、任せときな」
サボは笑いながら、鉄パイプを肩へ担いだ。
「エース、お前はどうする?」
「おれはここに残る。ちょっと試してえことがあるんだ」
「……メラメラの実か?」
「おう!」
おれが右手に炎を灯すと、サボは納得したように頷いた。
「分かった。じゃあ、昼までには戻るよ。あんまり派手に燃やすなよ!」
「最初からそんなに飛ばさねえよ!」
「……本当かよ」
デュースが呟いた。
おれが笑って手を振ると、サボはそのまま森へ入っていった。
さて、何から試すか。
昨日は火を出すこと自体が面白くて、焚き火をつけたり肉を炙ったりしていたが、メラメラの実の能力はそんなものじゃない。おれが知っている限りでも、身体を炎へ変える自然系特有の性質に加えて、炎を自在に生み出し、操ることができるはずだ。
まずは、身体を炎へ変える感覚を掴むところから始めよう。
「デュース、お前はそこで見てろよ!」
「……何するつもりなんだ?」
「ちょっと、身体を燃やしてみる!」
「……は?」
デュースが聞き返すのを横目に、おれは右腕へ意識を向けた。
指先から炎を出すのは、昨日のうちに何度か試している。今度は炎を纏わせるのではなく、腕そのものを炎へ変えるつもりで力を働かせてみた。
すると、肘から先が炎に包まれ、あっという間に右手の形が崩れた。
「おおっ!」
思わず声が出た。
炎になった腕を動かしてみると、普通に腕を振る時とはまったく違う感覚があった。手首も指も形を失っているのに、動かそうと思えば炎はその方向へ伸びていくし、身体の一部としての感覚も失われていない。
試しに掌を開くつもりで意識すると、炎の先端が五本に分かれ、指のような形を作った。
「……すげえな」
デュースが呟いた。
「だろ? おれも驚いたぜ」
おれは笑いながら、今度は腕を元に戻してみた。
炎が収まり、何事もなかったように右手が現れる。指を握ったり開いたりしてみたが、動きに問題はないし、痛みもなかった。
「……お前、本当に身体が炎になってるのか?」
「おう。見てただろ?」
「いや、見てたけどな。……熱くねえのか?」
「全然だな」
もう一度腕を炎へ変え、今度は肩の辺りまで広げてみる。
身体の一部が炎になっているのに、違和感らしい違和感がない。むしろ、これまで当たり前だと思っていた肉体の形から、自由になったような感覚さえある。
ただ、自由に動かせることと、思い通りの形にできることは別らしい。
炎を大きく広げるのは簡単だが、細かい形を保とうとすると途端に難しくなる。腕全体を炎へ変えた状態で指先だけを動かそうとしても、炎がまとまらず、すぐに形が崩れてしまった。
「……なるほどな」
「何がだ?」
「いや、結構難しいんだよ。炎を出すだけなら簡単なんだけどな」
「……そういうもんなのか」
「まあ、慣れりゃ何とかなるだろ!」
今度は左腕でも同じことを試してみた。
右腕より少し時間がかかったものの、炎へ変えること自体はすぐに成功した。左右で大きな違いがないなら、全身を炎へ変えるのも、そう難しくはないのかもしれない。
もっとも、今は一つずつ確かめていくつもりだ。
せっかく手に入れた能力なんだから、ただ使えるようになるだけじゃもったいない。どういう意識で動き、どこまで細かく操れるのかを知っておけば、戦い方の幅も随分と広がるはずだ。
「なあ、それ、身体の一部だけじゃなくて、全身も炎にできるのか?」
デュースが興味深そうに身を乗り出した。
「できるはずだぜ。自然系だからな!」
「……じゃあ、剣で斬られても平気なのか?」
「普通の剣ならな。覇気を使われたら、そうもいかねえだろうけどよ」
「……覇気?」
「おう。まあ、そのうち教えてやるよ!」
デュースは何か言いたそうだったが、おれが再び炎を出し始めると、そちらへ視線を戻した。
それからは腕を炎に変えるたびに質問が飛んできた。炎になった部分をどこまで伸ばせるのか、元に戻す時はどうするのか、身体の感覚は残っているのか。
おれ自身、まだ答えの分からないことも多い。だが、質問されて初めて気づくこともあって、思っていた以上に面白かった。
結局、サボが戻ってくるまで、二人であれこれ試すことになった。
◇
サボが戻ってきたのは、昼を少し過ぎた頃だった。
片手には見慣れない果物をいくつか抱え、もう片方には小さな獣をぶら下げている。
「エース!戻ったぞ!」
「おっ! 何か見つかったか?」
「ああ。森の奥に、結構でかい川があった。魚もいるし、果物も何種類か見つけたぜ」
サボはそう言って、持ってきた果物を砂浜へ並べた。
デュースはさっそくその一つを手に取り、しげしげと眺め始めた。
「……これ、食えるのか?」
「多分な。似たようなのを、昔食ったことがあるんだよ」
「多分って……」
「まあ、食ってみりゃ分かるだろ!」
おれが手を伸ばすと、デュースは慌てて果物を引っ込めた。
「待て! せめて、もう少し調べてからにしろ!」
「何だよ、腹減ってんのか?」
「そういう問題じゃない!」
サボは笑いながら、別の果物を一つ手に取った。
「こっちは大丈夫だぜ。森の中で、鳥が食ってるのを見たからな」
「……鳥が食ってるからって、人間も平気とは限らないだろ」
「へえ、そうなのか?」
「ああ。動物には平気でも、人間には毒になるものだってあるんだよ」
デュースはそう言ってから、果物の表面を指でなぞった。
「……まあ、これなら大丈夫そうだけどな」
「おっ、食えるのか!」
「多分な」
「お前も多分じゃねえか!」
「おれだって、見たことのない果物を全部知ってるわけじゃねぇよ!」
おれたちが笑うと、デュースもつられて笑った。
結局、持ってきた果物のうち、食べられそうなものを選んで昼飯にすることになった。
怪鳥の肉もまだ大量に残っているが、さすがに肉ばかりじゃ味が単調になる。果物の甘酸っぱさは思っていた以上にありがたく、おれは気に入ったものをいくつか続けて食べた。
「そういや、エース。能力の方はどうだったんだ?」
サボが尋ねてきた。
「おう! 結構いい感じだぜ!」
おれは右腕を炎へ変えてみせた。
サボは目を輝かせ、すぐに近づいてきた。
「おおっ! すげえな! もうそんなことできんのか!」
「ハハハ! まだまだこれからだけどな!」
「なあ、ちょっと殴ってみてもいいか?」
「いいぞ。覇気は使うなよ」
サボは拳を握り、おれの右腕へ軽く打ち込んだ。
拳は炎を突き抜け、何の抵抗もなく向こう側へ抜けた。
「……おおっ!」
「どうだ?」
「こりゃすげえな! 普通に殴っても当たらねえのか!」
サボは面白がって、今度は反対側から腕を振ってみた。だが、結果は同じだった。
おれの腕は炎として揺れるだけで、拳が通り抜けた後には元の形へ戻っている。
「……なるほどな」
サボは少し考え込み、それからにやりと笑った。
「じゃあ、武装色ならどうだ?」
「試してみたいな!」
おれも笑いながら、右腕を炎へ変えたまま構えた。
サボは拳へ武装色を纏わせ、今度はさっきより少し強めに打ち込んできた。
すると、炎を突き抜けるはずだった拳がおれの腕を捉え、確かな衝撃が伝わってきた。
「おっ!」
思わず声を上げた。
やっぱり、武装色なら実体を捉えられるらしい。知識としては分かっていたことだが、自分の身体で確かめると、なかなか面白い。
「おお、やっぱり当たるな!」
「おう! こりゃ、ちゃんと鍛えねえとな!」
炎になれば普通の攻撃は通らなくなる。だが、覇気を使う相手には今まで通りの攻防が必要だし、能力を手に入れたからといって、これまで鍛えてきたものが無駄になるわけじゃない。
むしろ、組み合わせ方を考えるのが楽しみになってきた。
おれたちが笑っていると、デュースが呆れたように口を開いた。
「……お前ら、何でそんな楽しそうなんだよ」
「そりゃ、面白えだろ!」
「いや、そうじゃなくて……」
デュースは何か言いかけたが、結局、諦めたように首を振った。
「……もういい。お前らのことは、少しずつ理解することにするよ」
「はは、そりゃいいな!」
サボも笑いながら拳の武装色を解いた。
これからは、こうして二人に付き合ってもらいながら能力を確かめるのもよさそうだ。サボなら覇気を使った攻防もできるし、デュースが横から質問してくるのも、案外いい刺激になる。
◇
それから数日、おれたちは島で過ごすことになった。
デュースの体力が戻るまでは無理に移動する必要もないし、おれとしても、メラメラの実を手に入れたばかりで試したいことが山ほどあった。
朝は三人で飯を食い、昼間はおれが能力の練習をする。サボは島の探索を続け、時々デュースを連れて森へ入っていた。
デュースも少しずつ元気を取り戻し、二日目には自分から食料を探しに行きたいと言い出した。もっとも、最初のうちは少し歩いただけで息が上がっていたので、サボと一緒に戻ってきた時には、随分と悔しそうな顔をしていたが。
「……お前ら、体力どうなってんだよ」
「鍛えてるからな」
「鍛えてるってレベルじゃないだろ……」
そんなことを言いながらも、デュースは毎日少しずつ歩く距離を伸ばしていった。
おれの方も、能力の扱いには徐々に慣れてきた。
最初は腕や脚を炎へ変えるだけだったが、繰り返し試しているうちに、身体の一部を炎にしたまま動くこともできるようになった。全身を炎へ変えるのも、思っていたより早く成功した。
ただし、炎になった状態で思い通りに動くのは、まだ難しい。
特に炎を使って移動しようとすると、勢いの加減が分からず、何度か砂浜へ突っ込む羽目になった。普通に走ったり跳んだりするのとは勝手が違うし、炎の広がり方まで意識しなければならない。
最初に失敗した時はサボが大笑いしていたが、二度目にはどうやって動こうとしたのか聞かれた。おれが説明すると、今度は別のやり方を試してみようという話になり、結局、二人でしばらく砂浜を走り回ることになった。
デュースはそんなおれたちを眺めながら、呆れたり、時には面白そうに笑ったりしていた。
まあ、これも修行だ。
新しい能力を手に入れたんだから、使いこなせるようになるまで、いくらでも試してやるさ。
そんなある日の夕方、おれはサボへ声をかけた。
「なあ、サボ。ちょっと相談があるんだけどよ」
「ん? 何だ?」
サボは焚き火の前へ腰を下ろし、持っていた果物を一つおれへ放ってきた。
おれはそれを受け取り、一口かじる。
「偉大なる航路へ行くの、もうちょっと後にしねえか?」
サボは少し意外そうな顔をした。
「へえ。お前がそんなこと言うとはな。どうしたんだ?」
「いや、メラメラの実を手に入れただろ? せっかくだから、もう少し東の海で賞金稼ぎを続けながら、能力を鍛えてえんだよ」
「……なるほどな」
サボは納得したように頷いた。
「確かに、今のまま偉大なる航路へ入るより、ある程度使いこなせるようになってからの方がいいかもな」
「おう。炎を出すだけなら簡単なんだけどよ。細かい加減とか、戦いながら使うのは、まだまだこれからだからな」
今の段階でも、メラメラの実の能力は十分に強力だ。
だが、おれが目指しているのは、ただ炎を出して敵を倒すことじゃない。これまで鍛えてきた体術や覇気と組み合わせ、どんな相手にも対応できるようにしたいし、炎そのものにもまだ色々と試せそうなことがある。
東の海で賞金稼ぎを続けるなら、実戦で能力を使う機会も作れるだろう。
「ハハハ! お前にしちゃ、随分慎重じゃねえか!」
「何だよ。おれだって、考える時は考えるんだぞ!」
「悪かったよ、分かってるさ!」
サボは笑いながら、果物をもう一口かじった。
「おれは構わねえよ。東の海だって、まだ行ってねえ島が山ほどあるしな。どうせなら、面白そうな場所を探しながら賞金稼ぎを続けよう!」
「おう! そうこなくっちゃな!」
おれたちは拳を軽くぶつけ合った。
サボがそう言ってくれるなら、話は早い。あいつにとっても、知らない島を巡ること自体が冒険なんだろうし、偉大なる航路へ入るのが少し遅くなったところで、楽しみが減るわけじゃない。
デュースは少し離れたところで、何やら紙へ書き込んでいたが、会話は聞こえていたらしい。
「……お前ら、偉大なる航路へ行くのを延期するのか?」
「おう。もうちょっと東の海で遊んでからな!」
「……遊びって。賞金稼ぎなんだろ?」
「ハハハ! まあ、そうとも言うな!」
デュースは呆れたように笑った。
だが、その目は少しだけ嬉しそうにも見えた。
◇
デュースが完全に回復したのは、それからさらに数日後のことだった。
朝から自分で森へ入り、昼前には魚を何匹か抱えて戻ってきた。歩き方にも、もうふらつきはない。
「おっ、随分元気になったじゃねえか!」
「おかげさまでな。もう、普通に動けると思う」
デュースはそう言って笑い、魚を砂浜へ並べた。
おれはその様子を眺めながら、そろそろ頃合いだなと思った。
こいつと一緒に過ごしてみて、最初に感じた印象は間違っていなかったらしい。
真面目で、少し心配性で、文章のことになると妙に熱くなる。サボとは冒険記の話で盛り上がるし、おれの能力の練習にも、何だかんだ言いながら付き合ってくれた。
医学の知識もあるし、何より、こいつ自身が冒険をしたがっている。
だったら、誘わない理由はねえだろ。
「なあ、デュース」
「何だ?」
「お前、おれたちと一緒に来ねえか?」
デュースの動きが止まった。
「……は?」
「だから、仲間にならねえかって言ってんだよ!」
おれが笑いながら言うと、デュースはしばらく何も言わなかった。
それから、ゆっくりとサボへ顔を向ける。
「……おい、こいつ、本気で言ってんのか?」
「本気だと思うぜ。こいつ、そういうことは冗談で言わねえからな」
サボは笑いながら頷いた。
「おれも賛成だよ。お前と一緒に旅するの、結構楽しそうだしな!」
「……お前まで」
デュースは困ったように頭をかいた。
「いや、ありがたい話だけどよ。おれは、そんなに役に立つ人間じゃないぞ。医者としては半端者だし、戦いだって、お前らみたいにはできねえし……」
「そんなこと、どうでもいいだろ!」
おれは笑いながら、デュースの肩を叩いた。
「おれたちは、お前と一緒に旅したら面白そうだと思ったんだよ。医者ができるなら助かるけど、別にそれだけで誘ってるわけじゃねえぞ!」
実際、船医がいれば助かるのは間違いないが、それだけが理由なら、どこかの町で腕のいい医者を探せばいい。
デュースを誘いたいと思ったのは、何日か一緒に過ごして、こいつとなら楽しく旅ができそうだと感じたからだ。
サボも頷いた。
「おれも、お前の冒険記を読んでみてえしな。どうせなら、一緒に旅しながら書こうぜ!」
「……まだ、見せるとは言ってねえだろ」
「ハハハ! じゃあ、完成するまで待ってやるよ!」
デュースは苦笑した。
それから、しばらく考え込んだ。
おれたちは急かさず、返事を待った。
やがて、デュースは顔を上げた。
「……一つ、聞いてもいいか?」
「おう。何だ?」
「お前ら、本当に海賊にはならないんだな?」
「今のところはな。おれたちは賞金稼ぎだ」
「……そうか」
デュースは少し安心したようだった。
だが、まだ何か気になることがあるらしく、しばらく黙っていた。
「……ロジャーのことは、どうなんだ?」
おれは少し首を傾げた。
「何がだよ?」
「いや、お前、海賊王の息子なんだろ? その……何か、特別な目的があるんじゃないのか?」
「そんな高尚なもん持ち合わせてねぇな!」
おれは笑いながら答えた。
「おれは、おれの好きなように生きるだけだ。親父が海賊王だったからって、おれまで同じことをする必要はねえだろ?」
ロジャーがどんな人間だったのか、興味がないわけじゃない。だが、あいつの息子だからといって、おれの生き方まで決められるつもりはなかった。
海へ出たのも、強くなりたいのも、世界中を見て回りたいのも、全部おれ自身が望んだことだ。
「……なるほどな」
デュースは少し考え込み、それから小さく笑った。
「……分かった。だったら、おれも一緒に行くよ」
「おっ!」
おれは思わず笑みを浮かべた。
「ハハハ! 決まりだな!」
サボも嬉しそうに笑い、デュースの肩を叩いた。
「よろしくな、デュース!」
「ああ。よろしく頼む」
デュースはそう言ってから、少し照れくさそうに笑った。
おれは焚き火の向こうに広がる海へ目を向けた。
舟はなくなっちまったが、金はあるし、次の島で新しいのを買えばいい。
それに、今度は三人だ。
メラメラの実も手に入れたし、これから先、どんな連中と出会うのか、ますます楽しみになってきたぜ。
「よし! じゃあ、まずはこの島を出る方法を考えるか!」
「……お前、今まで考えてなかったのか?」
デュースが呆れたように言う。
サボは腹を抱えて笑い出した。
「……何とかなるだろ!」
「お前ら、またそれかよ!」
デュースの声が砂浜に響き、おれたちは三人で笑い合った。
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