転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
数日をかけて船が完成した。
島の砂浜に置かれたそいつは、三人が乗ればそれなりに窮屈そうな小型船だったが、船尾には金属製の筒が突き出し、炎を噴き出すための装置が取り付けられている。船体は難破船から回収した木材を中心に組み立てたもので、近くで見れば板の色も揃っていない。それでも、何日もかけて造っただけあって、おれにはなかなか立派な船に見えた。
「よっしゃ! 完成だな!」
「まだ試運転が残ってるぞ。ちゃんと浮くかどうかも確認してないんだからな」
デュースはそう言いながら、船尾の金属部品を最後にもう一度確かめていた。
「浮くくらいは大丈夫だろ。昨日も水に浮かべてたじゃねェか」
「あれは船体だけだ。今日は荷物も積むし、お前らも乗るんだぞ」
「おれ達の体重くらいで沈むなら、そもそも三人乗りの船になってないだろ!」
おれが笑うと、デュースは言い返そうとして、結局自分でも笑い出した。
「それもそうだな。よし、そろそろ出すか」
サボは一足先に船へ乗り込み、積み込んだ荷物を片側へ寄せている。残っていた食料と水、デュースの原稿、サボの鞄、それから島で拾った使えそうな道具が少々。おれ達が島へ来たときに比べればずいぶん荷物が増えたが、それでも三人で旅を続けるには心許ない量だ。
「おーい、エース! こっちは準備できたぞ!」
「おう!」
デュースと一緒に船を押すと、船底が砂を擦りながらゆっくり海へ滑り込んだ。膝の辺りまで水に浸かったところで船体が浮き上がり、サボが船縁を掴んで姿勢を保つ。
「どうだ、デュース!」
「今のところは問題ないな。エースも乗ってみてくれ」
デュースが船へ上がり、続いておれも乗り込む。船体が一度大きく揺れたものの、すぐに落ち着いた。三人で左右へ体重を移してみても、ひっくり返りそうな気配はない。
「おっ、いいじゃねェか!」
「ハハハ! おれ達が造ったにしちゃ上出来だな!」
サボが船縁を叩くと、デュースがそちらへ顔を向けた。
「おい、造った本人がそれを言うなよ」
文句を言いながらも、デュースは船底に水が溜まっていないことを確認すると、満足そうに頷いた。
あとは動力だ。
おれは船尾へ移動し、金属製の筒の入口へ右手を向けた。筒は船体から少し離した枠に固定してあり、周囲の木材にも熱が伝わりにくいよう工夫してある。もっとも、実際に走らせてみなければ、どれくらい効果があるのかは分からない。
「じゃあ、いくぞ!」
「最初は弱めだからな!」
デュースが船尾から声をかけてきたので、片手を上げて応じた。
「分かってるって!」
掌から炎を噴き出し、筒の中へ送り込む。島で何度も練習したおかげで、狙った太さを保ちながら炎を出すのはずいぶん楽になった。
船尾から炎が噴き出すと、船がわずかに前へ動いた。
「おっ、進んだぞ、エース!」
サボが船首から身を乗り出している。
「まだまだいけるぜ!」
炎の出力を少しずつ上げていくと、船は水を押し分けながら速度を増し、砂浜がゆっくり遠ざかり始めた。サボが舵を握り、デュースは船尾の装置を何度も振り返っている。
「どうだ、デュース! ちゃんと走ってるぞ!」
「ああ! 今のところ問題なさそうだ! もう少し速度を上げてみてくれ!」
「よっしゃ!」
おれはさらに炎を強めた。
船がぐんと加速し、足元から伝わってくる振動が大きくなる。船首で水が勢いよく左右へ割れ、海面を滑るように進み始めた。
「ハハハ! 思ったより速いな、こいつ!」
サボが歓声を上げる。おれも思わず笑いながら、炎の出力を維持した。
自分の身体を炎に変えて飛ぶのも楽しいが、船を走らせるとなると、また違った感覚がある。おれが少し炎を強めるだけで、船全体がそれに応えて加速する。しかも、船体の揺れや水の抵抗があるせいで、同じ出力を保っていても速度は一定ではない。
炎を操ることと、船を思い通りに動かすことは、やはり別の技術らしい。
「エース! ちょっと右に曲がるぞ!」
「おう!」
サボが舵を切ると、船首がゆっくり右へ向いた。だが、速度を上げたままだと想像以上に大きく膨らんでしまい、サボが慌てて舵を戻す。
「おっと! こりゃ慣れるまで時間がかかりそうだな!」
「一回、速度を落とすぞ!」
おれが炎を弱めると、船はしばらく惰性で進んでから徐々に速度を落とした。デュースが船尾の装置を確かめ、サボは何度か舵を左右へ動かして感触を確かめている。
「思ったよりよく曲がるな。速度さえ間違えなきゃ、十分使えそうだ」
サボの言葉に、デュースも頷いた。
「装置の方も大丈夫そうだ。ただ、長時間走らせたときにどうなるかは、まだ分からないな」
「だったら、そのまま近くの島まで行ってみるか!」
おれが言うと、サボは海図を広げて頷いた。
「おれもそのつもりだったよ。昨日、月歩で上から確認した島があるだろ。あそこなら、今の速度で半日もかからないと思う」
「おっ、そんなに近かったのか!」
「お前、場所も聞かずに走らせてたのかよ」
デュースが呆れたように言う。
「サボが分かってりゃ十分だろ!」
「ま、今回はな。次からはお前も海図くらい見てくれよ」
サボは笑いながら海図を畳み、進行方向を指差した。
「よし、あっちだ! このまま行こうぜ!」
おれは再び炎を噴き出し、船を加速させた。
シクシス島が少しずつ遠ざかっていく。
振り返れば、何日も過ごした砂浜と森が、青い海の向こうへ小さくなっていた。最初は怪鳥を追いかけて偶然辿り着いた島だったが、思い返せば、なかなか悪くない寄り道だった。
メラメラの実を食い、デュースと出会い、こうして三人で船まで造ったのだから。
「なあ、デュース!」
「何だ?」
「船に名前でも付けるか!」
「今からか?」
「せっかく造ったんだしな!」
サボも乗り気になったらしく、舵を握りながら口を挟んできた。
「いいな! 炎で走る船なんだし、何かそれっぽい名前にしようぜ」
「炎か……。だったら、ストライカーなんてどうだ?」
デュースが何気なく言った名前に、おれは思わず顔を向けた。
「ストライカー?」
「ああ。炎を噴き出して海を走るんだ。勢いがあっていいだろ」
「おっ、いいじゃねェか!」
「決まりだな。言い出しっぺのデュースが付けた名前だし、文句はないだろ?」
サボも気に入ったらしい。デュースは少し照れくさそうに笑いながら、船尾の装置へ目を向けた。
「ま、長く乗るにはちょっと狭いけどな」
「そんときゃ、もっとでかい船を買えばいいさ!」
おれがそう答えると、サボも頷いた。
「そうだな。どうせなら、ちゃんとした造船所で造ってもらおうぜ。帆も付けて、エースの炎でも走れる船にすれば、どこへ行くにも困らないだろ」
「そいつはいいな!」
デュースもその案には興味を惹かれたらしく、早速どんな構造にすればいいか考え始めた。帆を畳んだ状態で炎の動力を使えるようにするなら、今の装置をそのまま大きくするだけでは駄目らしい。
もっとも、そんな船を注文するには、それなりの金が必要になるだろう。
「まずは賞金稼ぎだな!」
「だな。東の海にも、まだ賞金首は残ってるだろうし」
サボが笑い、おれもそれに頷いた。
船は順調に海を走り続け、昼過ぎには、目指していた島の姿が水平線の向こうにはっきり見えるようになった。
*
港へ着いた頃には、ちょうど腹が減っていた。
船を岸壁へ繋ぎ、三人で町へ入る。久しぶりに見る人通りの多い通りには、魚を売る店や雑貨屋が並び、あちこちから客を呼び込む声が聞こえてきた。
「おおっ! やっぱり町はいいな!」
「お前、まず飯のことしか考えてないだろ」
デュースが呆れたように言う。
「当たり前だろ! 何日も島で焼いた肉ばっかり食ってたんだからな!」
おれがそう言うと、サボも腹を押さえて笑った。
「おれも腹減ったよ。さっさと飯屋を探そうぜ!」
デュースも異論はないらしく、三人で通りを歩きながら店を探した。
しばらくして見つけたのは、港から少し離れた場所にある、そこそこ大きな飯屋だった。店先には焼いた魚の匂いが漂い、開け放たれた窓からは客達の賑やかな声が聞こえてくる。
「ここにしようぜ!」
おれが先に入ると、店員が元気よく声をかけてきた。
「いらっしゃい! 三名様かい?」
「おう! 腹減ってんだ! とりあえず、肉と魚、たっぷり頼むぜ!」
「じゃあ、おれも同じので頼むよ」
サボが続けて注文すると、デュースは呆れたようにメニューを持ち上げた。
「お前ら、メニューくらい見ろよ……」
そう言いながらも、結局デュースもおれ達と同じものを注文した。
しばらくすると、大皿に盛られた肉料理と魚料理が運ばれてきた。焼きたての肉から立ち上る香りに、思わず腹が鳴る。
「いただきます!」
早速肉へ齧りつくと、口いっぱいに広がる脂の旨味に、思わず笑みがこぼれた。
「うめェ!」
「ハハハ! やっぱりちゃんとした飯は最高だな!」
サボも勢いよく食い始め、デュースも最初こそ呆れたように見ていたが、すぐに料理へ手を伸ばした。
しばらくは三人とも食うことに夢中になっていたが、腹が少し落ち着いたところで、サボが飲み物を一口飲んでから口を開いた。
「さて、これからどうするかだな」
「おう。おれは前に話した通り、しばらく東の海でメラメラの実を鍛えるつもりだ」
おれがそう言うと、サボは頷いた。
「分かってるよ。おれもそれでいいと思う。まだ東の海で行ってない島も多いし、賞金稼ぎをしながら回れば、金も貯まるだろ」
「そうだな。まずは、この島で海賊の情報を集めるか」
デュースがそう言いながら、テーブルの上に置いた海図を広げた。
「近くに海軍基地があれば、賞金首の情報も手に入りやすいんじゃないか?」
「おっ、いいな! ついでに捕まえた海賊も引き渡せるしな!」
おれが身を乗り出すと、サボは海図の端を押さえた。
「ただ、エースの修行が中心になるなら、しばらく同じ場所に留まるのもありだと思うぜ。毎回島を移動してたら、落ち着いて鍛錬する時間も取れないだろ」
「おれもそう考えてた。しばらく拠点を決めて、そこで鍛えるのも悪くないな」
「だったら、おれはその間に近くの島でも見て回ろうかな」
サボが楽しそうに笑う。
「月歩で行ける範囲なら、わざわざ船を出す必要もないしな。面白そうな島があったら、お前らにも教えてやるよ!」
「おっ、いいじゃねェか! ただし、面白そうなもん見つけたら、おれも呼べよ!」
「ハハハ! お前、修行はどうしたんだよ!」
「そんときゃ一緒に行けばいいだろ!」
おれ達が笑っていると、デュースが海図から顔を上げた。
「おれも、しばらくはやることがありそうだな」
「何だ? 冒険記か?」
おれが尋ねると、デュースは首を振った。
「それもあるが、医学の勉強を再開しようと思ってる」
デュースは少し考えながら言葉を続けた。
「お前らに船医として誘われた以上、航海中に何かあったとき、ちゃんと対応できるようになりたいんだよ。今の知識だけじゃ、できることも限られてるしな」
「いいじゃないか。町にいる間に本でも探すか?」
サボの提案に、デュースは頷いた。
「ああ。医学書を買ったり、薬や道具を揃えたりしておきたい。できれば、医者のいるところで少し勉強させてもらえればいいんだが……」
「だったら、探してみようぜ! この町にも医者くらいいるだろ!」
おれがそう言うと、デュースは頷いた。
「ああ。明日にでも聞いて回ってみるよ」
おれは残っていた肉を口へ放り込みながら、デュースの方へ目を向けた。
「それと、デュース。お前、少しは戦えるようになっといた方がいいぜ」
「……やっぱり、そう思うか?」
「おう。おれ達がずっと一緒にいられるとは限らねェし、船医が真っ先にやられちまったら困るだろ」
デュースはしばらく考え込んでから、苦笑した。
「確かにな。お前らと一緒に旅をするなら、多少は自分の身を守れないと話にならないか」
「ま、いきなり六式を覚えろとは言わないよ。まずは基礎からだな」
サボもそう言いながら、デュースの肩を軽く叩いた。
「おれ達が鍛えてやるぜ。覚悟しとけよ!」
「……ほどほどに頼むぞ」
「ハハハ! 心配すんなって!」
おれとサボが笑うと、デュースは何とも言えない顔をした。
だが、少ししてから、真面目な表情で口を開いた。
「せっかくだし、おれもできるだけ強くなりたいとは思ってるよ。冒険してれば、危険な目に遭うこともあるだろうしな」
「おう! その意気だ!」
おれは笑いながら頷いた。
デュースがどこまで強くなれるかは分からないが、少なくとも自分から鍛えようという気があるなら、いくらでも付き合ってやれる。
「そういや、エース。お前、メラメラの実はどこまで鍛えるつもりなんだ?」
サボが尋ねてきた。
「ん? そりゃ、できるところまでだろ」
「いや、そうじゃなくてよ。どのくらいになったら、偉大なる航路へ行くつもりなんだ?」
「ああ、そっちか」
おれは少し考えてから、答えた。
「とりあえず、炎の操作が思い通りにできるようになるまでは、自己鍛錬だな。今はまだ、やればやるほど上手くなる感じがあるしよ」
「なるほどな。じゃあ、伸びが悪くなってきたら?」
「そんときゃ、実戦だろうな。自分一人で練習してるだけじゃ分からないこともあるだろうし、実際に相手と戦ってみりゃ、何が足りないのかも見えてくるだろ」
「ハハハ! やっぱり、最後は実戦か!」
「当たり前だろ。けど、今はまだそこまで急ぐ必要もないよ。せっかく手に入れた能力なんだから、まずは自分でできることを全部試してみたいんだ」
サボは納得したように頷いた。
「ま、お前らしいな。だったら、おれもその間に色々見て回るとするか。東の海だって、まだ知らないことは山ほどあるんだろうしな!」
「おう! 面白そうな場所があったら、絶対教えろよ!」
「分かってるって!」
そんな話をしているうちに、テーブルの上の料理はすっかりなくなっていた。
おれは空になった皿を見つめ、店員へ声をかけた。
「すいませーん! 肉、もう一皿頼むぜ!」
「おい、まだ食うのかよ!」
デュースが呆れたように言う。
「当たり前だろ! これから修行するんだから、しっかり食っとかないとな!」
「だったら、おれも追加で頼もうかな。すいませーん!」
サボも店員を呼び止める。
「お前ら、本当によく食うな……」
そう言いながらも、デュースはメニューを手に取った。
しばらく東の海を回りながら、メラメラの実を鍛える。サボは近隣の島を探索し、デュースは医学の勉強と戦闘訓練を始める。賞金稼ぎも続けなければならないし、新しい船を造るための金も貯めたい。
やることは山ほどあるが、どれも楽しみなことばかりだ。
おれは運ばれてきた肉料理へ手を伸ばしながら、これからの旅に思いを巡らせた。
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