転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
「火拳!!!」
突き出した右腕から膨大な炎が噴き出し、巨大な拳となって海上を突き進んだ。
勢いよく広がった炎は沖合の岩礁を呑み込み、さらにその向こうへと伸びていく。熱せられた海面から大量の水蒸気が立ち上り、炎が消えたあとも、しばらくは向こう側の海が見えないほどだった。
やがて風に流されて水蒸気が薄くなると、さっきまであった岩礁は大きく形を変え、砕けた岩の一部が波間に顔を出していた。
「おおっ! すげえな、エース!」
少し離れた岩場からサボの声が聞こえてきた。おれは突き出していた右腕を下ろし、沖に残る水蒸気を眺めながら、思わず笑みを浮かべる。
「ハハハ! こりゃすげえや!」
「お前、自分でやっといて何を驚いてるんだよ!」
「いや、思った以上に出たもんだからよ!」
岩場から飛び降りてきたサボが、おれの隣に並んだ。
改めて海を眺めても、今の一撃はなかなかのものだった。前世で見た火拳と比べても、規模だけなら遜色ないんじゃないだろうか。もちろん、映像で見たものと実際に放った炎を正確に比べることはできないが、少なくとも記憶にある原作のエースに近い火力は出せているように思う。
メラメラの実を食ってから、まだそれほど時間は経っていない。それでも、炎を大量に生み出して一気に放つだけなら、ここまでのことができるらしい。
「どうだ? まだ余裕はありそうか?」
サボに尋ねられ、おれは右手を開いたり閉じたりしてみた。
「そうだな。今ので限界って感じはしなかったぜ。もう少し出力を上げることもできそうだ」
「へえ。だったら、もっとでかいのも撃てるわけか」
「多分な。ただ、これ以上でかくするなら、撃つ場所を考えねえとな」
おれが沖合を指差すと、サボも納得したように頷いた。
今の火拳ですら、かなり離れた岩礁まで届いている。これを港の近くで使えば、狙った海賊だけでなく周囲の船まで巻き込んでしまいかねない。威力を上げられるのは嬉しいが、使いどころを選ぶ技でもあるわけだ。
だからこそ、わざわざあの無人島、シクシス島まで戻ってきた。
昨日、三人で今後の予定を話し合ったあと、おれは改めて修行場所について考えた。町の近くにも人目につかない海岸はあったが、メラメラの実を本格的に試すとなれば、周囲への被害を気にしながら出力を抑えることになる。
その点、シクシス島なら遠慮はいらない。無人島だから人家もなく、周囲には広い海がある。おれたちは島を一通り探索しているので、地形もある程度分かっているし、修行に使えそうな場所にも心当たりがあった。
以前ならデュースを抱えて月歩で海を渡るところだったが、今はストライカーがある。昨日も試運転を兼ねて近くの島まで走らせたばかりだし、こうして修行のために戻ってくるのも簡単だった。
もっとも、今日はデュースを連れてきていない。
あいつは町で見つけた診療所に頼み込み、しばらく勉強させてもらえることになったらしい。サボも最初は町を見て回るつもりだったが、おれが大技を試すと聞いて予定を変更し、一緒についてきたというわけだ。
「それにしても、いきなりあんな技を撃てるとはな。メラメラの実って、やっぱりとんでもない能力だな」
「そうだな。けど、実の力だけじゃないと思うぜ」
「ん?」
サボがこちらを向いたので、おれは軽く拳を握ってみせた。
「今まで散々鍛えてきただろ、おれたち。あれが無駄になってないってことだよ」
「そりゃそうだろ。何年、爺さんにしごかれたと思ってるんだ?」
「ハハハ! 違いねえ!」
笑いながらも、おれは改めて自分の右腕へ目を向けた。
前世の記憶では、原作のサボもメラメラの実を食った直後に火拳を使っていた。あいつは能力者になる前から革命軍で鍛え上げられた実力者だったし、悪魔の実を食ったばかりだからといって、戦い方まで一から覚える必要はなかったはずだ。
そして、今のおれにも、それまで積み重ねてきた鍛錬がある。
ガープのじいちゃんに鍛えられ、サボやルフィと競い合い、海軍本部ではゼファー先生に散々しごかれた。覇気の修行にも長い時間を費やしてきたし、覚えてからも毎日のように身体を動かしている。
メラメラの実は新しく手に入れた力だが、それを扱うおれ自身は、昨日今日鍛え始めたわけじゃない。
だからこそ、こうして最初から大きな火力を引き出せるのかもしれないな。
もっとも、原作のエースが火拳をどれほどの余裕で使っていたのか、どこまで細かく炎を制御できていたのかまでは分からない。今の一撃だけで、能力の扱いまで同じ水準に達したと考えるのは早いだろう。
それでも、これまで積み重ねてきたものが新しい能力にも活かせるというのは嬉しかった。
「よし! 次は火銃だな!」
「火銃? 何だ、それ」
「指先から炎の弾を撃つ技だよ。今の火拳よりずっと小さいやつだな」
おれが人差し指を立てると、サボは興味深そうに覗き込んできた。
「へえ。そんなこともできるのか?」
「これから試すんだよ!」
「なんだ、まだできないのか」
「できるようにするんだって!」
「ハハハ! じゃあ、見せてもらおうかな!」
サボが笑いながら距離を取ったので、おれは海へ向き直り、人差し指の先に炎を灯した。
*
前世で見た原作のエースには、火拳以外にも様々な技があった。
指先から炎の弾丸を撃つ火銃。小さな火の玉を飛ばす蛍火と、それらを一斉に燃え上がらせる火達磨。二本の指を使って十字型の炎を放つ十字火。周囲へ炎を展開する炎戒や、そこから巨大な火柱を生み出す火柱なんて技もある。
どれもメラメラの実の能力を使ったものだが、必要になる技術は随分と違うはずだ。
大量の炎を放つ火拳に対して、火銃では小さな炎を弾丸のようにまとめなければならない。蛍火なら身体から離れた炎の操作が必要になるだろうし、炎戒のような技では広い範囲へ炎を展開し、それを維持する技術も求められる。
もちろん、完成形を知っているからといって、すぐに再現できるとは限らない。
だが、原作のエースが実際に使っていた以上、メラメラの実で実現できる技なのは確かだ。おれには見た目や使い方の記憶もあるし、まずはそれらを再現しながら能力の扱いを覚えていくのがよさそうだった。
何も知らない状態から手探りで技を考えるより、目指す形がはっきりしている方が練習もしやすいからな。
「よし、いくぞ!」
人差し指に集めた炎を、沖合へ向けて撃ち出す。
指先から勢いよく飛び出した炎は、弾丸というより細長い火の筋になってしまった。しかも途中で膨らみ始め、海面へ届く前に形を崩してしまう。
「……思ってたのと違うな」
「さっきの火拳とは随分違うじゃないか」
サボが隣から覗き込んでくる。
「そうなんだよ。炎を出すだけなら簡単なんだけどな」
もう一度、人差し指へ炎を集める。
今度は量を少なくしてみたが、勢いよく放とうとすると、やはり途中で広がってしまった。火拳のときは気にもならなかった形の乱れが、小さな炎を扱おうとすると途端に目立ってくる。
考えてみれば、火拳は多少形が崩れても、大量の炎を目標へ叩きつければ技として成立する。一方、火銃は炎の量が少ないぶん、狙った場所まで形を保って飛ばせなければ意味がない。
ストライカーを造っていたときにも、似たような難しさを感じたことがあった。
船尾の筒へ炎を送り込むため、太さと出力を一定に保つ練習を何度も繰り返したが、あれは炎を出し続けるだけでよかった。今度は指先に集めた炎を一瞬で撃ち出し、しかも弾丸のようにまとめようとしている。
同じ炎の操作でも、要求される技術は随分違うらしい。
「エース、指先に炎を集めるところまではできてるんだろ?」
「ああ。問題は撃ったあとだな。どうしても広がっちまう」
「だったら、まずは近いところを狙ってみたらどうだ? 遠くへ飛ばすのは、そのあとでもいいだろ」
「なるほどな。そいつはいいかもしれねえ」
確かに、最初から沖合まで飛ばす必要はない。近い距離で形を保てるようになれば、そこから少しずつ伸ばしていけばいい。
おれは砂浜に転がっていた小石を拾い、少し離れた場所へ放り投げた。
「よし。まずはあれを狙ってみるか」
「お前、それじゃ当たったかどうか分からないだろ」
「……確かにな」
炎が当たったところで、小石がどうなったかは分かりにくい。おれが別の目標を探していると、サボは近くに落ちていた流木を拾い、砂浜へ突き立てた。
「これなら分かるだろ。ほら、やってみろよ」
「おう!」
今度は流木へ向けて人差し指を構え、炎を撃ち出した。
距離が短いおかげで、炎が大きく広がる前に流木へ届いた。だが、命中した炎はそのまま木の表面を包み込んでしまい、狙った一点だけを撃ち抜くような攻撃にはならなかった。
「おっ、当たったな!」
「当たったけど、あれじゃ普通に火をつけたのと変わらないぞ」
「分かってるって!」
おれは笑いながら、燃え始めた流木を見つめた。
炎を当てること自体はできている。威力も不足していない。問題は、撃ち出した炎を弾丸としてまとめ、狙った一点へ届けるための制御だ。
それができるようになれば、火拳のような大技を使わなくても遠くの相手を攻撃できる。周囲に仲間がいる状況でも使いやすいだろうし、炎の量や威力を調整できれば、賞金首を捕まえるときにも役立つかもしれない。
火拳に比べればずっと小さな技だが、使い道は多そうだった。
「よし、もう一回だ!」
「だったら、流木をもう何本か集めてくるよ。一本ずつ立て直すのも面倒だろ?」
「おっ、助かるぜ!」
サボが近くの流木を集めている間、おれは指先に炎を灯し、撃ち出す直前まで形を保つ練習を繰り返した。
それからは流木を的にして、炎の量や勢いを少しずつ変えながら試していった。炎を絞りすぎると狙ったところまで届かず、逆に勢いを強めすぎると途中で広がってしまう。何度か試しているうちに、指先から放つ瞬間の炎のまとめ方にも違いがあることが分かってきた。
サボはときどき的の位置を変えたり、離れた場所から炎の飛び方を教えてくれたりした。
「今のは途中まで真っ直ぐだったぜ!」
「おっ、そうか!」
「ああ。ただ、最後の方で右に逸れてたな」
「なるほどな。じゃあ、次はそこを意識してみるか」
自分では狙ったつもりでも、外から見れば違う動きをしていることがある。サボが見ていてくれるおかげで、何が上手くいって何が駄目だったのかも分かりやすかった。
何度も撃っているうちに、少しずつ炎が弾丸らしい形を保つようになっていった。
*
昼を過ぎた頃には、砂浜に立てた流木のほとんどが黒焦げになっていた。
おれは最後に残った一本へ人差し指を向け、炎を撃ち出す。
指先から飛び出した小さな炎は、途中で大きく広がることもなく、狙った流木の中央へ命中した。木の表面が焦げ、そこから小さな炎が上がる。
「おっ、今のはいいんじゃないか?」
岩場に座っていたサボが立ち上がり、流木を見に行った。
「ちゃんと狙ったところに当たってるな。最初よりずっと弾丸らしくなったじゃないか」
「だろ? ただ、まだ距離を伸ばすと駄目なんだよな」
近い距離なら、それなりに狙った形で撃てるようになってきた。だが、少し離れた的を狙うと、途中で炎が広がったり、狙いから逸れたりすることがある。
火銃として実戦で使うには、まだまだ練習が必要そうだった。
「ま、朝からやってここまでできたんだから、上出来だろ」
「そうだな。最初は弾丸にすらなってなかったしな」
「それより、そろそろ飯にしようぜ。おれは腹が減ったよ」
「おっ、もうそんな時間か!」
サボが持ってきた鞄から食料を取り出したので、おれも岩場へ戻って腰を下ろした。
昨日、町で買っておいたパンと干し肉を分け合いながら、午前中の成果を振り返る。
火拳は最初から十分な威力が出たのに、火銃では随分と苦労することになった。大量の炎を生み出すことと、小さな炎を思い通りに扱うことでは、要求される技術がまるで違うらしい。
もっとも、こうして何度も試しながら感覚を掴んでいく作業は嫌いじゃない。
六式を覚えたときもそうだった。ゼファー先生から技の原理を教わっても、実際に身体を動かしてみなければ分からないことはいくらでもあった。最初は上手くいかなかった技も、繰り返し練習するうちに感覚が掴めるようになり、今では戦闘中に一つ一つの動作を意識する必要もほとんどない。
メラメラの実も、いずれはそれくらい自然に扱えるようになりたいものだ。
「そういや、午後はどうするんだ?」
サボがパンを齧りながら尋ねてきた。
「次も小技を試すつもりだ。火銃とはまた違った練習になりそうだからな」
「小技だと? 今度はどんな技なんだ?」
「小さな火の玉をいくつも飛ばして、好きなところで燃え上がらせるんだよ」
「へえ、そいつは面白そうだな。火銃みたいに撃ち出すわけじゃないのか?」
「ああ。今度は炎をゆっくり動かして、離れたところで操れるか試してみたいんだ」
「なるほどな。だったら、おれは午後から少し島を見て回ってくるよ」
サボは残っていたパンを食べ終え、鞄を閉じた。
「前に来たときは船を造るための材料ばっかり探してたからな。せっかくだし、もう少し奥まで行ってみたいんだ」
「おっ、いいじゃねえか! 何か面白いもんがあったら教えてくれよ?」
「分かってるって。お前も、あんまり派手に島を燃やすなよ」
「ハハハ! そりゃ保証できねえな!」
「だったら、せめてストライカーの方には飛ばすなよ。帰れなくなったら困るからな」
「そいつは大丈夫だって! 船のある方には撃たねえよ」
「よし。じゃあ、夕方にストライカーのところで落ち合おうぜ。デュースも町で待ってるだろうしな」
「おう! 気をつけてな!」
サボが森の方へ歩いていくのを見送り、おれは残っていたパンを口へ放り込んだ。
さて、午後は蛍火だ。
火銃では、指先から撃ち出した炎を弾丸の形にまとめることに苦労した。だが、蛍火ではまた別の難しさがあるはずだ。
原作のエースが使っていた蛍火は、小さな火の玉を複数生み出し、それらを相手の周囲へ飛ばす技だった。そして、散らばった火の玉を一斉に燃え上がらせるのが火達磨だ。
火銃のように勢いよく撃ち出すのではなく、身体から離れた炎を狙った場所まで運び、任意のタイミングで燃え上がらせる必要がある。
まずは火の玉を一つ作り、そいつを動かせるか試してみるのがいいだろう。上手くいったら数を増やし、最終的には原作と同じように複数の炎を操れるようにしたい。
おれは立ち上がると、砂を払って海へ向き直った。
右手を伸ばし、掌の上に小さな火の玉を生み出す。
火拳のような大きな炎を放つのも楽しいが、こういう細かい操作を覚えれば、もっと色々なことができるようになるはずだ。
「よし、やってみるか!」
おれは掌の上で揺れる火の玉へ意識を向け、まずはそいつをゆっくり前方へ飛ばしてみることにした。
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