転生したらエースだった件   作:みけまる(AI執筆)

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第四十三話 その先の熱

 

 掌の上に浮かべた火球を回転させながら、おれはその中心へ意識を向けた。

 

 さっき青みが差したときは、外側の炎を回転させ、中心の炎をできるだけ動かさないようにしていた。結果として空気が入り込んだのか、それとも炎の流れそのものが変わったのかは分からないが、まずは同じ操作を再現してみよう。

 

 おれは火球の大きさを維持したまま、外側の炎を少しずつ速く回転させていった。

 

 橙色の炎が渦を巻き、その中心で小さな火が揺らめく。先ほどはここからさらに勢いを強めたところで色が変わったはずだが、今度は同じように操作しても変化が現れなかった。

 

 もう少し回転を速めると、火球の輪郭が乱れ、外側の炎が細長く伸び始めた。慌てて出力を抑えたものの、今度は中心の炎まで小さくなってしまう。

 

「……違うな」

 

 おれは炎を元の大きさへ戻し、改めて考えた。

 

 さっきから空気を取り込むことばかり意識しているが、そもそもおれは空気を操れるわけじゃない。炎の流れを作れば周囲の空気も動くだろうが、それによってどれだけ酸素が供給されているのか、確かめる手段もなかった。

 

 それなら、炎そのものへ意識を向けた方がよさそうだ。

 

 普通の火なら、燃料と酸素が十分に混ざることで燃焼の状態が変わる。前世の知識を頼りにするなら、今までより効率よく、勢いよく燃える状態を目指せばいい。

 

 問題は、メラメラの実でそれをどう実現するかだった。

 

 おれは火球を一度大きくし、炎が膨らんでいく感覚を確かめた。

 

 炎を生み出すことも、出力を上げることも、今では当たり前のようにできる。火拳なら大量の炎を一気に噴き出させ、火銃なら指先へ集めた炎を弾丸のように撃ち出す。

 

 どちらも最初は苦労したが、何度も練習するうちに、炎の量や形を細かく考えなくても使えるようになった。

 

 ならば、温度についても同じことができるんじゃないだろうか。

 

 おれは火球を元の大きさへ戻し、今度は炎の勢いではなく、その内側で燃えている火そのものを意識してみた。

 

 同じ大きさのまま、もっと激しく燃やす。

 

 思い浮かべたのは、ガスコンロの青い炎だった。燃料と空気が十分に混ざり、余計な煙を出さずに燃えている状態を想像しながら、掌の火球へ意識を集中させる。

 

 すると、火球の中心がわずかに細くなった。

 

 外側は相変わらず橙色のままだが、中心へ向かって渦を巻く炎の一部が、先ほどよりも明るく見える。

 

 おれはその変化を逃さないよう、外側の炎の流れを少しずつ調整した。

 

 やがて、火球の中心に小さな青い部分が現れた。

 

「おっ!」

 

 思わず声が出たが、今度は炎を乱さずに済んだ。

 

 青い部分はほんのわずかだったものの、先ほどのように一瞬で消えることはなく、火球の中心で揺らめき続けている。

 

 おれはその状態を維持しながら、炎の流れを少しずつ変えてみた。

 

 外側の回転を落とすと青い部分が小さくなり、反対に回転を速めながら中心の炎を維持すると、わずかに広がる。ただし、勢いを強めすぎれば火球全体が膨らみ、橙色の炎が青い部分を覆い隠してしまった。

 

 どうやら、単純に出力を上げればいいわけじゃないらしい。

 

 何度も調整を繰り返すうちに、青い炎は指先ほどの大きさまで広がった。

 

「ハハッ、いいじゃねえか!」

 

 ここまで来れば、あとは周囲の橙色の炎を減らしていけばいい。

 

 そう考えて操作を変えた途端、青い部分が小さくなり、火球の形が崩れてしまった。

 

「あー、そうなるか」

 

 どうやら、今のところ外側の炎が作る流れによって青い部分が維持されているらしい。そこを急に変えれば、せっかく整えた状態が崩れるのも当然だった。

 

 おれはもう一度火球を作り直し、今度は青い部分が安定してから、周囲の炎を少しずつ減らしていった。

 

 すると、中心の青い炎が消えることなく、徐々に火球の表面へ現れ始めた。

 

 炎の大きさはほとんど変わっていない。それなのに、青い部分が広がるにつれて周囲の空気が激しく揺らぎ、足元の砂からも熱気が立ち上ってくる。

 

 おれ自身が焼けることはないが、先ほどまでより強い熱が放たれているのは明らかだった。

 

 青い部分が火球の半分ほどを占めたところで、外側の炎を減らす操作が難しくなってきた。

 

 だったら、今度は青い部分そのものを広げてみるか。

 

 おれは火球の中心へ意識を向け、そこで起きている燃え方を周囲へ広げるつもりで操作してみた。

 

 最初はほとんど変化がなかったが、少しずつ感覚を確かめていくうちに、青い炎がゆっくりと膨らみ始めた。残っていた橙色の炎が内側から押し広げられ、やがて火球のほとんどが青く染まっていく。

 

「……おお!」

 

 思わず見入ってしまった。

 

 中心は明るく、外側へ向かうにつれて濃い青へ変わっている。炎の輪郭も今までよりはっきりして見え、同じ火球だというのに、まるで別のものを生み出したようだった。

 

 おれは掌を軽く動かし、火球を指先へ移してみた。

 

 青い炎は形を崩さず、そのまま燃え続けている。

 

「よし、できたぜ!」

 

 もっとも、ここで満足して終わるつもりはない。

 

 せっかく成功したんだから、今度は同じ炎をもう一度生み出せるか試してみよう。

 

 おれは指先の炎を消し、改めて小さな火を灯した。

 

 今度は最初から青い炎を生み出すつもりで、先ほどの感覚を思い出す。

 

 すると、指先に灯った炎は最初こそ橙色だったものの、すぐに中心から青く染まり始めた。さっきのように何度も流れを調整する必要はなく、数秒も経たないうちに炎全体が青く変わっていく。

 

「……なるほどな」

 

 もう一度炎を消し、再び灯してみる。

 

 今度は、最初から青い炎が生まれた。

 

「ハハッ、こいつはいい!」

 

 どうやら、一度成功したことで感覚を掴めたらしい。

 

 火銃を覚えたときも似たようなことがあった。最初は炎を弾丸の形にまとめるだけでも苦労していたのに、一度狙い通りに撃ててからは、同じ操作を再現するのが随分と楽になった。

 

 おれは指先の炎を掌へ移し、少しずつ大きくしていった。

 

 青い火球が膨らんでいく。

 

 出力を変えても橙色へ戻ることはなく、形を整えるのも普段の炎と大して変わらない。

 

 試しに海へ向かって撃ち出すと、青い炎は途中で形を崩すことなく飛んでいき、海面へ着弾した。

 

 激しい水蒸気が立ち上り、周囲の海水が大きく波立つ。

 

「おお、すげえな!」

 

 普段の炎でも水蒸気は発生するが、今の火球はそれよりずっと激しい反応を見せた。炎の大きさも、撃ち出した勢いも、それほど変えていないつもりだっただけに、違いは分かりやすい。

 

 正確な温度までは分からないが、少なくとも狙っていた高温化には成功したと考えてよさそうだった。

 

     *

 

 青い炎を生み出せるようになったことで、炎の温度に対する感覚が明らかに変わっていた。

 

 おれは右腕を炎へ変え、まずは普段通りの橙色の炎を燃え上がらせた。

 

 そこから青い炎へ変えてみる。

 

 腕を包む炎の色が変わるとともに、周囲の空気が激しく揺らいだ。足元の砂が熱せられ、先ほどまでとは違う強い熱気が立ち上ってくる。

 

 その状態で腕を動かしてみても、青い炎は自然に揺らめき、元の身体へ戻せば痛みも違和感もなかった。

 

 炎の色が変わったところで、おれ自身が炎であることに違いはない。

 

 さて、ここからだ。

 

 おれはもう一度腕を青い炎へ変え、今度は炎の大きさを維持したまま、さらに温度を上げるつもりで意識を集中させた。

 

 すると、腕を包む炎の中心が、先ほどよりも明るくなり始めた。

 

「……おっ?」

 

 思わず目を見開いた。

 

 青い炎を生み出すまであれほど苦労したというのに、今度はそれより高い温度を目指した途端、炎が反応したのだ。

 

 もちろん、中心が明るくなっただけで温度が上がったと断言はできない。それでも、先ほどまでとは違う感覚があった。

 

 橙色の炎を青く変えたときの操作を、そのまま先へ進めているような感覚だ。

 

 もっと熱く。

 

 そう意識すると、青い炎の中心が少しずつ明るさを増していく。

 

 おれはしばらくその感覚を確かめてから、腕の炎を消した。

 

「……こりゃ、すげえな」

 

 青い炎を生み出すまでの苦労が、まるで嘘のようだった。

 

 もっとも、今の段階で温度を際限なく上げられるわけじゃない。何度か試しているうちに、ある程度のところから先は、いくら意識を集中させても炎の変化が鈍くなってきた。

 

 無理に出力を上げれば炎は大きくなるが、それでは今までと同じだ。

 

 まだ自在に温度を変えられるというほどではないらしい。

 

 だが、それで十分だった。

 

 今朝のおれは、青い炎をどうやって生み出すのかさえ分からなかった。それが今では、青い炎を好きなときに出せるようになり、さらに高い温度を目指して試すことまでできている。

 

 あとは鍛えていけばいい。

 

 身体を鍛えれば筋力も持久力も伸びる。覇気だって、長年使い続けてきたおかげで、昔とは比べものにならないほど強くなった。

 

 炎も同じだろう。

 

 今日できるようになったことを繰り返し、もっと高い温度を目指して鍛え続ければいい。今は難しい操作も、そのうち火拳や火銃と同じように、当たり前に使えるようになるはずだ。

 

 そう考えると、早速試してみたいことがあった。

 

 おれは掌の炎を消し、沖合へ目を向けた。

 

 青い火球を撃ち出すことはできた。腕を青い炎へ変えることもできた。

 

 だったら、火拳はどうだ?

 

 これまで何度も使ってきた技なら、炎の色を変えたときにどれくらい違いが出るのかも分かりやすい。

 

「よし、いくか!」

 

 おれは右腕を青い炎へ変え、海へ向かって突き出した。

 

「蒼火拳(そうかけん)!!!」

 

 腕から噴き出した青い炎が巨大な拳となり、海上を突き進んでいく。

 

 これまでの火拳と同じくらいの大きさだったが、その周囲では空気が激しく揺らぎ、炎が通過した海面から大量の水蒸気が立ち上った。

 

 青い拳が沖合へ伸びていくにつれ、その下の海面が白く煙る。やがて炎が消えたあとも、発生した水蒸気はすぐには晴れず、しばらく海上を覆い続けていた。

 

「ハハハハッ! こいつはすげえ!」

 

 おれは思わず声を上げて笑った。

 

 原作で見た火拳を初めて再現したときも、随分と嬉しかった。だが、今の一撃はそれ以上だった。

 

 原作のエースが使っていた技を、自分なりに発展させることができたのだ。

 

 しかも、まだ始まったばかりだ。

 

 今の青い炎ですら、もっと温度を上げられる余地がある。鍛錬を続ければ、さらに高い温度へ到達できるかもしれない。

 

 どこまで上げられるのかは、まだ分からない。

 

 だが、マグマよりも熱い炎だって、いずれは自在に扱えるようにしてやる。

 

 おれは右腕を見下ろし、もう一度、青い炎を燃え上がらせた。

 

 今度は炎の大きさを変えず、温度だけを上げるつもりで意識を集中させる。

 

 青い炎の中心が明るさを増し、周囲の空気が揺らぎ始めた。

 

 おれはその変化を確かめながら、さらに意識を集中させていった。

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