転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
掌に灯した青い炎を消すと、思っていた以上の疲労感が残った。
さっきまではもう一発くらい蒼火拳を撃ってやろうかと考えていたのだが、肩から背中にかけて妙な気怠さがある。息が切れるほどではないものの、長時間走ったあとに似た疲れが、身体の奥からじわじわと湧いてくる感覚だった。
「……なるほどな」
試しに指先へ橙色の炎を灯してみる。こちらは普段通り軽々と生み出せたが、青い炎へ変えた途端、身体の内側で何かを消耗している感覚が生じた。
どうやら、温度を上げるほど負担も大きくなるらしい。
橙色の炎なら、よほど無茶な使い方でもしない限り、体力を消耗している実感はない。だが、青い炎を長時間維持したり、大技へ使ったりすれば話は別だ。
威力が高いからといって、何でも青い炎で済ませるわけにはいかないな。
おれは炎を消し、浜辺へ腰を下ろした。
少し休んだら、次を試そう。
以前から考えていた、メラメラの実の使い方がもう一つある。
炎に実体を持たせることだ。
ロギアの能力者は、覇気や相性のいい能力でもなければ、普通の攻撃で身体を捉えられない。おれ自身、腕を炎へ変えれば物理的な攻撃を受け流せるし、身体から離した炎も、物へぶつかれば表面を包み込むように広がってしまう。
だが、普段のおれは普通に物を持てるし、飯だって食える。肉体と炎を自由に切り替えられるなら、その性質を利用して、炎そのものに物を押したり斬ったりする力を持たせられないだろうか。
おれは右手の指先を炎へ変え、足元に転がっていた小石へ触れてみた。
炎は石の表面を包み込むばかりで、押しても動かない。元の指へ戻せば簡単に拾い上げられるのだが、それでは意味がなかった。
「ま、そう簡単にはいかねえか」
それでも、炎を自在に動かせることは確かだ。
それに、原作のエースが使っていた技にも参考になりそうなものがある。
「神火、不知火……」
両手から炎の槍を放つ技だ。あれはティーチの身体を貫いていたように見えた。実際に物理的な貫通力があったのか、炎の熱によるものだったのかは分からないが、試す価値はあるだろう。
おれは立ち上がり、浜辺に落ちていた流木を拾った。
「よし、やってみるか!」
*
最初に試したのは、炎を細く圧縮することだった。
掌から伸ばした炎を棒状に整え、外側へ広がろうとする流れを内側へ押し込めていく。火銃の鍛錬で似たような操作は経験しているが、今回は撃ち出すのではなく、手元から伸ばした状態を維持する必要があった。
長さはおれの腕ほど。表面こそ揺らめいているものの、炎の輪郭は随分とはっきりしてきた。
「これならどうだ?」
砂浜へ突き立てた流木に、炎の先端を押し当てる。
木の表面が音を立てて焦げ、煙が立ち上った。圧縮したおかげで熱が集中しているらしく、先端が触れた部分には深い焦げ目が刻まれている。
だが、そこから力を込めると、炎は木を避けるように左右へ広がってしまった。
「……熱は十分なんだけどな」
さらに炎を細く絞っても結果は変わらなかった。焼き切ることはできても、棒で押すような手応えがない。
今のままでも武器として使えなくはないだろう。細く圧縮した炎を相手へ浴びせれば、それだけで十分な威力があるはずだ。
だが、おれが欲しいのは、相手の武器と打ち合える炎だった。
前世で見た映画に出てきた光の剣のように、手元から伸びた炎で相手の剣を受け止めたり、斬りつけたりできれば、戦い方の幅が大きく広がる。
もっとも、炎をいくら圧縮しても、物へ触れた瞬間に広がってしまう。
何か別の方法が必要そうだな。
おれは炎を消し、右手を握り直した。
そこで、ふと思いつく。
「……覇気か」
武装色なら、普段は触れられないロギアの身体も捉えられる。
相手の炎へ攻撃を届かせられるなら、自分の炎に組み合わせることだってできるんじゃないか。
もちろん、ロギアを殴れることと、炎そのものへ実体を持たせることは別の話だ。それでも、試さずに諦める理由はない。
「なんだ、最初から持ってたじゃねえか」
おれは右手へ武装色を纏わせた。
*
まずは、武装色を纏った掌から炎を伸ばしてみた。
しかし、炎は普段通り燃え続けるばかりで、覇気は手を覆ったままだった。
それなら、炎を腕の延長として扱ってみよう。
おれは右腕を炎へ変え、肘から先を大きく伸ばした。五本の指まで形作ったところで、普段と同じように武装色を巡らせてみる。
「……おっ?」
いつもとは違う手応えがあった。
肉体へ覇気を巡らせる感覚をそのまま炎へ広げていくと、手首に当たる部分までは確かに武装色が届いた。
だが、そこから先へ進めようとした途端、炎の指が崩れてしまう。
「おっと!」
慌てて形を整え直すと、今度は覇気が途切れた。
なるほど。炎を維持することと、覇気を巡らせることを同時にやるのは、思った以上に難しいらしい。
それでも、手応えはあった。
「もう一回だ」
今度は最初から腕全体を覆おうとせず、手首まで届いた覇気を維持することに集中した。炎が膨らまないよう流れを整えながら、少しずつ覇気を先端へ進めていく。
何度か失敗したものの、やがて指先まで武装色を行き渡らせることができた。
「よっしゃ!」
嬉しくなって炎の拳を握った途端、腕の形が崩れて覇気も途切れてしまった。
「あっ」
おれは思わず笑った。
「ハハッ!まだ動かすのは難しいか!」
それからは、炎の形を保ちながら覇気を巡らせる練習を繰り返した。
腕全体を炎へ変えなくても、掌から伸ばした炎へ武装色を届かせられるようになるまで、それほど時間はかからなかった。だが、そこから棒状に圧縮しようとすると、途端に勝手が違ってくる。
炎の根元へ覇気を集めれば先端が崩れ、先端へ意識を向ければ今度は根元が膨らむ。棒全体へ均等に巡らせようとすると、炎を圧縮する力が弱まってしまった。
「……こりゃ面倒だな」
おれは一度炎を消し、手近な岩へ腰を下ろした。
炎を作ってから覇気を纏わせるから難しいのかもしれない。
だったら、最初から混ぜてみたらどうだ?
おれは掌の上に小さな火球を作り、圧縮しながら中心へ武装色を送り込んでみた。
炎の表面を覆うのではなく、内部の流れへ覇気を混ぜ合わせるように意識を集中させる。
すると、火球の色が変わり始めた。
「……ん?」
橙色だった炎が赤黒く染まり、その奥に黒い揺らめきが混じっている。
おれは思わず顔を近づけた。
「なんだ、これ……」
炎を少し動かそうとした途端、内部で保っていた力の均衡が崩れた。
「うおっ!」
赤黒い火球が一気に膨れ上がり、おれは咄嗟に腕を振って沖へ放り投げた。
海上へ飛んだ炎は途中で形を失い、空中で燃え散った。
おれはしばらくその様子を眺め、それから掌へ目を戻した。
「……今の、何だったんだ?」
もう一度試してみたが、今度は覇気が火球の表面へ集まるばかりで、さっきの色にはならなかった。
炎の中へ覇気を混ぜること自体は、どうやらできるらしい。ただ、何が起きたのかも分からないし、今のところ再現する方法も掴めていない。
気になるな。
だが、これを追いかけ始めたら、今日中に炎の武器を作るどころじゃなくなりそうだ。
「ま、こいつは後回しだな」
おれは改めて掌から炎を伸ばし、最初に目指していた形へ意識を戻した。
*
炎を棒状に圧縮し、武装色を巡らせる。
それから何度も試しているうちに、少しずつ安定して維持できるようになってきた。
難航した理由は、炎を普通の武器と同じように扱おうとしていたからだった。
剣なら一度握れば刀身の形は変わらないが、炎は常に揺らめき、流れ続けている。その動きを無理に止めようとすると、かえって制御が難しくなる。
だったら、炎が動くことを前提に覇気を巡らせればいい。
おれは掌から伸ばした炎をその場で維持し、内部の流れに合わせて武装色を調整してみた。炎の形が崩れそうになれば流れを整え、覇気が偏れば少しずつ行き渡らせる。
何度か繰り返すうちに、ようやく根元から先端まで安定した手応えが生まれた。
おれは足元の小石へ炎の先を押し当ててみた。
すると、いつもなら石の表面を包み込むはずの炎が、そのまま石を押した。
「おっ!」
少し力を込めると、小石が砂の上を転がっていく。
今度は先端を石の下へ差し込み、持ち上げようとしてみた。途中で炎の形が崩れ、石はすぐに落ちてしまったが、確かに手応えがあった。
「ハハッ! できたぜ!」
これなら、武器として使えるかもしれない。
おれは先ほどの流木を砂浜へ突き立て、炎の棒を構えた。
まずは軽く横から当ててみる。
乾いた音が響き、流木が傾いた。炎の触れた部分から煙が上がっているが、今のは単に熱で焼いたわけじゃない。武装色を纏った炎が、確かに木を叩いたのだ。
続けて少し強く振るってみると、途中で炎の先端が崩れた。
「……もう少しだな」
おれは流木を立て直し、炎を整えた。
今度は振るう前に根元から先端まで覇気を行き渡らせ、その状態を維持したまま腕を動かす。
炎が流木へ食い込み、表面を焼きながら深い溝を刻んだ。
さらに力を込めて振り抜くと、流木の上半分が砂浜へ落ちた。
「おおっ!」
おれは炎を消し、切断面を確かめた。
表面は黒く炭化しているが、炎を振るった軌道に沿って木が切断されている。
焼くだけじゃなく、斬ることもできたわけだ。
おれは満足して笑った。
「よし! 次はあれだな!」
浜辺の奥にある、大きな岩へ目を向けた。
*
流木を斬ったあとも、しばらく炎の棒を振るう練習を続けた。
横薙ぎや振り下ろしから始め、突きや切り返しも試してみる。速度を上げるほど炎の形が崩れやすくなったが、動きに合わせて覇気を巡らせる感覚は、少しずつ掴めてきた。
もっとも、実戦で自在に扱えるほどではない。
それでも、今なら岩を相手に試せるだろう。
おれは掌から橙色の炎を伸ばし、棒状に圧縮した。
長さは腕より少し長い程度。表面では炎が絶えず揺らめいているものの、内部へ巡らせた武装色のおかげで、確かな手応えがある。
「……いくぞ!」
岩へ向かって右腕を振り下ろした。
炎が岩へ触れた瞬間、鋭い音とともに火花が散った。先端が表面へ食い込み、周囲を焼きながら奥へ進んでいく。
だが、途中で岩の抵抗に押され、炎の形が崩れかけた。
「っ……!」
おれは咄嗟に覇気を強め、炎の流れを整え直した。
そのまま腕を振り抜く。
岩の表面に深い溝が刻まれ、焼けた破片が足元へ散らばった。炎の通った場所は赤く熱せられ、亀裂の奥から煙が立ち上っている。
「……ははっ」
思わず笑みが浮かんだ。
今の一撃は、ただ岩を焼いたわけじゃない。武装色によって形を保った炎が岩へ食い込み、その内部を焼きながら削り取ったのだ。
おれはもう一度炎を構え、今度は先ほど刻んだ溝へ向けて横薙ぎに振るった。
炎が亀裂へ入り込み、岩の内部で熱が広がる。そこへさらに力を込めると亀裂が一気に広がり、大きな破片が地面へ崩れ落ちた。
「よっしゃ!」
おれは崩れた岩を見下ろし、掌から伸びる炎へ目を向けた。
まだ長さを変えるだけでも覇気の流れが乱れるし、激しく振り回せば形を維持するのが難しくなる。相手の武器と打ち合うなら、もっと安定させる必要があるだろう。
だが、武器として使えるところまでは来た。
「……
名前を口にしてみると、なかなか悪くない。
見た目は刀とは程遠いが、炎でできた刃なんだから、これで十分だろう。
おれは改めて炎を構え、岩の残った部分へ向けて斜めに振り下ろした。
「炎刃!」
橙色の炎が岩へ食い込み、焼けた亀裂が斜めに走る。
腕を振り抜くと、岩の一部がゆっくりと傾き、砂の上へ崩れ落ちた。
「ハハッ! 上出来だ!」
*
気づけば、空はすっかり夕焼けに染まっていた。
青い炎の実験から続けていたせいもあって、さすがに腹が減った。何度も覇気を使った右腕には、長時間稽古をしたあとに似た疲労が残っている。
おれは水筒を手に取り、残っていた水を飲み干した。
今日は随分と収穫があったな。
青い炎は橙色よりも消耗が大きいことが分かったし、炎刃もひとまず形にできた。途中で生まれた赤黒い炎については気になるものの、あれは今後の課題だろう。
それより、そろそろ実際に使ってみたい。
強い相手と戦えば、今の技術がどこまで通用するのかも分かるはずだ。炎刃だって、動かない岩を斬るのと、武装色を使う相手と打ち合うのでは勝手が違うだろう。
「……まずはサボだな」
あいつなら遠慮なく相手をしてくれるだろうし、新しい技を見せるたびに喜んでくれそうだ。
そう考えると、早く帰って見せてやりたくなった。
おれは荷物を拾い上げ、海へ目を向けた。
東の海でやっておきたかったメラメラの実の鍛錬も、これでひとまず一段落だ。まだまだ伸ばせるところはあるが、技を磨くなら実戦も必要になる。
「よし、帰るか!」
おれは砂浜を蹴り、ストライカーを停めてある入り江へ向かった。
次は、こいつを使って戦う番だ。
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