転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
ローグタウンは、東の海から偉大なる航路を目指す船乗りたちが集まる港町だ。海賊王ゴール・D・ロジャーが生まれ、そして処刑された町としても知られている。
おれたちがそこへ向かうことにしたのは、偉大なる航路へ入るための準備を、そろそろ始めておきたかったからだ。
シクシス島を出てからは、東の海を回りながら賞金稼ぎを続けてきた。海賊を捕まえて賞金を受け取り、立ち寄った島では修行をしたり、町を見物したりする。面白そうな場所があれば予定を変えて寄り道することもあったし、つい先日にはバギーという妙な海賊とも知り合った。
おかげで退屈する暇もなかったが、その間にメラメラの実の扱いも随分と上達した。
炎の形状や温度を変える技は一通り形になり、武装色を組み合わせた炎刃も使えるようになった。最初は炎を真っ直ぐ撃ち出すだけでも苦労していたことを思えば、なかなかの進歩だろう。
もっとも、技を覚えたからといって、それで完成というわけじゃない。
火拳一つ取っても、威力や範囲を変えれば使い勝手が違ってくる。青い炎は出力を上げるほど消耗が大きくなるし、炎刃も実戦で使い込んでこそ安定するはずだ。覇気との組み合わせについても、まだ試したいことはいくらでもある。
できれば、もうしばらく東の海で実戦と修行を重ねたい。
だが、その間に次の航海の準備を進めておくことはできる。
何より、今のおれたちには新しい船が必要だった。
「おっ、見えてきたぜ!」
船首から港を眺めていたサボが声を上げた。
視線の先には、大きな町が広がっている。港には商船や漁船が何隻も停泊し、積み荷を運ぶ人足たちが忙しそうに行き来していた。海軍の軍艦も二隻見える。
「さすがローグタウンだな。船の数が違うぜ」
おれも船首へ出て、港の様子を眺めた。
大きな帆船が何隻も並ぶ光景は、それだけでなかなか壮観だった。これから偉大なる航路へ向かうつもりなのか、武装した船も混じっている。
「造船所も結構ありそうだな」
「ああ。ここならいい船大工が見つかるだろ」
サボが海図を畳み、港の入口へ目を向けた。
「それにしても、あの軍艦は随分でかいな。東の海の支部じゃ珍しいんじゃねえか?」
「グランドラインへ向かう海賊も集まる町だからな。海軍も力を入れてるんだろ」
「なるほどな。そういや、ここには海軍の基地もあるんだったな」
「ああ。じいちゃんの知り合いがいるかもしれねえな」
そんな話をしていると、船尾からデュースが顔を出した。
「二人とも、港に入るぞ。そろそろ帆走に切り替えよう」
「おう!」
おれは船尾へ戻り、推進装置へ送り込んでいた炎を止めた。
ストライカーは、シクシス島で難破船の残骸を利用して造った小舟だ。船尾からおれの炎を噴き出して進む仕組みになっており、風のない日でもかなりの速度で航行できる。
最初は島から脱出するために造ったものだったが、思っていた以上に使い勝手がよく、今ではすっかり愛着が湧いていた。
とはいえ、三人で長い航海を続けるには手狭だ。
偉大なる航路では、東の海よりも厳しい天候や海流に対応しなければならない。食料や水を十分に積める倉庫も欲しいし、船室や調理場だって、もう少しまともなものがあった方がいい。
それに、これから仲間が増える可能性もある。
そう考えると、ストライカーより大きく、頑丈な船が必要だった。
「なあデュース。例の図面、ちゃんと持ってきたか?」
「ああ。これまでの航海で気づいたことも書き足してある。船大工に見せるなら、今ある資料は全部持っていった方がいいだろう」
デュースは足元の鞄を持ち上げた。
中にはストライカーの構造図や寸法の記録、航行中に調べた推進装置の状態などがまとめられている。
おれたちが賞金首を追いかけたり修行したりしている間も、デュースは暇を見つけて船を調べていた。炎の出力を変えたときの速度や船体の振動まで記録しているのだから、なかなか大したものだ。
「準備がいいな。助かるぜ」
「おれだって、新しい船は楽しみだからな。それに、今の船で分かったことを無駄にはしたくない」
「だな。せっかくなら、ストライカーよりいいものを造りてえ」
「そりゃ当然だろ!」
サボが笑いながら帆を調整した。
「どうせなら、偉大なる航路でも思いきり走れる船にしようぜ!」
「そうだな!」
おれは港の向こうに広がる町を眺めた。
どんな船ができるのか、今から楽しみだった。
*
ストライカーを港へ係留すると、おれたちは造船所を探し始めた。
ローグタウンには船の修理や整備を請け負う店がいくつもあり、港の周辺では木材や帆布、金属部品を扱う商人の姿も見かけた。船乗り相手の商売が盛んなだけあって、必要なものは一通り揃いそうだ。
もっとも、今回欲しいのは普通の帆船ではない。
ストライカーと同じように、おれの炎を推進力として利用できる船だ。
何軒かの造船所を回って話を聞いたところ、港の外れにある比較的大きな造船所を紹介された。中型船を一から建造しており、特殊な注文にも相談次第で対応してくれるらしい。
「ここか。なかなかでけえな」
敷地へ入ると、建造途中の船が二隻並んでいた。
一隻はまだ骨組みだけだったが、もう一隻は船体の外板がほとんど張り終わっている。足場の上では職人たちが木材を削り、船体へ板を打ち付けていた。
金槌の音が響く中、サボが完成間近の船を見上げた。
「あれくらいの大きさがあれば、随分余裕ができそうだな」
「おう。倉庫も広そうだし、船室だって作れるだろ」
「ただ、帆が増えると操作する人数も必要になるな」
デュースの言葉に、サボが頷いた。
「そこは考えねえとな。おれとエースなら多少のことは何とかなるが、普段の操船にまで六式を使うようじゃ面倒だ」
「だな。三人でも動かせる船にしたいところだ」
今は三人しかいないし、これから何人仲間が増えるかも分からない。船を大きくするにしても、少人数で扱えることは重要だった。
それに、推進装置を取り付けるなら、普通の帆船とは船体の構造も変わってくるだろう。
「まあ、その辺りも含めて船大工に聞いてみようぜ」
「ああ。まずは話を聞いてもらわないとな」
デュースが鞄を抱え直し、事務所らしい建物へ向かった。
中にいた職人へ声をかけると、しばらくして造船所の親方が出てきた。
がっしりとした体格の中年男で、日に焼けた腕には細かな傷がいくつもある。作業の途中だったらしく、腰には工具を下げたままだった。
「新しい船を注文したいってのは、お前さんたちか?」
「ああ。中型船を一隻造ってもらいたいんだ」
おれが答えると、親方は三人の顔を見回した。
「どんな船が欲しい?」
「基本は帆船だ。三人でも扱えて、長い航海に耐えられる頑丈な船がいい。それと、普通の船にはない推進装置を付けたいんだ」
「推進装置?」
「これを見てもらえるか?」
デュースが鞄から資料を取り出し、机へ広げた。
親方は図面を手に取り、船体の構造を確かめていたが、船尾に取り付けられた筒状の装置を見ると眉をひそめた。
「……何だ、こりゃ?」
「炎を使って船を進める装置だ。今、港に停めてある船にも取り付けてある」
「炎で船を進める?」
「ああ。船尾から炎を噴き出して、その勢いを推進力にしてるんだ」
親方はしばらく図面を眺め、それから顔を上げた。
「で、その炎はどこから持ってくるんだ?」
「おれだよ」
「お前さんが?」
「おう。メラメラの実の能力者なんだ」
おれは右手を上げ、掌に小さな炎を灯した。
親方は目を見開いたが、すぐに炎と図面を交互に見比べ始めた。
「なるほど……悪魔の実か。そいつなら燃料を積む必要はねえわけだな」
「そういうことだ。今の船は小さいが、こいつをもっと大きな船でも使いたい」
「面白えこと考えるな、お前さんたち」
親方は椅子を引き寄せ、図面を机へ広げ直した。
「だが、炎を噴き出せば何でもいいってわけじゃねえ。船体にかかる力もあるし、熱の問題もある。今の船がどうなってるのか、もう少し詳しく聞かせてくれ」
「もちろんだ」
デュースが頷き、ストライカーの構造を説明し始めた。
シクシス島で難破船の残骸を利用して造ったこと、船尾へ金属製の筒を取り付けていること、炎の出力によって速度が変わること。おれも実際に炎を使う側として、出力の調整や航行中の感覚について話した。
親方は何度か質問を挟みながら聞いていたが、やがて図面を指で叩いた。
「実物を見せてもらいてえな。船がどう動くのか、こいつだけじゃ分からねえ」
「いいぜ。港に停めてあるから、今からでも見せられる」
「よし。何人か連れていくか」
親方は立ち上がり、作業場にいる職人へ声をかけた。
どうやら、興味を持ってもらえたらしい。
*
その日の午後、おれたちは親方と職人二人をストライカーへ乗せ、港の外へ出た。
まずは普段通りに帆で走り、船の動きを確かめてもらう。その後、帆を畳んで推進装置へ炎を送り込み、少しずつ速度を上げていった。
「ほう……こいつは確かに進むな」
親方は船尾の装置を眺めながら、感心したように呟いた。
「お前さん、炎の強さはどのくらい細かく変えられるんだ?」
「かなり細かく変えられるぜ。強さだけじゃなく、噴き出す勢いも調整できる」
「そうか。なら、今の半分くらいまで落としてみてくれ」
「了解」
炎を弱めると、ストライカーの速度がゆっくり落ちていった。
職人の一人が船体の振動を確かめ、もう一人が速度の変化を記録している。
「今度は少し上げてくれ。さっきより二割くらいでいい」
「ああ、分かった」
炎を強めると、船が再び加速した。
親方は手すりへ手を置き、足元の揺れを確かめながら頷いた。
「なるほどな。炎の出力を変えれば、船の速度も調整できるわけか」
「そうだな。ただ、出力を上げればその分だけ船体への負担も増える。今のストライカーでも、全力で走らせると結構揺れるんだ」
「だろうな。今の船体なら、これ以上の力をかけるのは避けた方がよさそうだ」
親方は船尾へしゃがみ込み、装置の周囲を調べ始めた。
デュースも隣へ座り、これまで気になっていた部分を説明している。
「ここの木材なんだが、長く使ってると熱が伝わってくるんだ。今のところ問題はないけど、もっと長い航海をするなら心配でさ」
「ああ、確かにこいつは考えた方がいいな。金属で覆うだけじゃ、熱そのものは防げねえ。船体との間に余裕を持たせるか、別の構造にする必要がある」
「やっぱりそうか」
二人が話し込んでいる間、サボは船の進み方を確かめていた。
「なあ親方。これ、船がでかくなったら曲がりにくくなるのか?」
「そりゃ船の形次第だな。だが、船尾から力をかけて進める以上、舵の効き方は普通の帆船と違ってくるかもしれねえ」
「なるほどな。速さも大事だが、ちゃんと曲がれねえと困るからな」
「その通りだ。ちょっと舵を切ってみてくれ」
サボが舵を操作し、おれは炎の出力を一定に保った。
船が緩やかに向きを変えると、親方はその動きを確かめ、職人へ何かを記録させた。
それからも何度か条件を変え、船の動きを調べていく。
おれとしても、こうして細かく試してみるのは面白かった。
普段は目的地へ向かうために炎を使っているが、出力を一定に保ったまま舵を切ったり、帆との組み合わせを変えたりすると、船の反応が思っていた以上に違う。炎の扱い方を工夫すれば、今より効率よく走らせることもできそうだ。
「なあ親方。新しい船じゃ、炎を噴き出す向きも変えられるようにできねえか?」
ふと思いついて尋ねると、親方は顔を上げた。
「向き?」
「ああ。今の装置は後ろへ真っ直ぐ噴き出すだけだろ。少し左右へ振れるようにすれば、曲がるときにも使えるんじゃねえか?」
親方は船尾の筒を眺め、顎を撫でた。
「……面白えな。確かに、うまく作れりゃ舵の補助にはなるかもしれねえ」
「だろ?」
「ただし、船体の横へ力がかかることになる。取り付け方は考えねえとな」
「そこは任せるぜ。できるかどうか、試してみてくれ」
「おう。検討してみよう」
親方が笑った。
その後も試験航行は続き、日が傾く頃になってようやく港へ戻った。
だが、検証はそれで終わりではなかった。
翌日も、その次の日も、親方たちはストライカーへ乗り込んできた。
炎の出力を変えたときの速度や振動だけでなく、積み荷の量や位置を変えた場合の動き、風向きと帆走の組み合わせなど、調べたいことはいくらでもあるらしい。
おれも炎を使う練習になるので付き合っていたが、三日目になると、さすがに同じ海域を何度も往復するのに飽きてきた。
「なあデュース。今日はあとどのくらいだ?」
「昼過ぎには終わると思うぞ。今は荷物の位置を変えたときの傾きを調べてるんだ」
「そっか。じゃあ、午後は町でも見て回るかな」
「いいんじゃないか? おれは親方たちと昨日の記録をまとめるつもりだ」
デュースはすっかり造船所の職人たちと打ち解けていた。
最近では朝から事務所へ顔を出し、図面を広げて親方と話し込んでいる。医者を目指している男だが、船の構造を考えるのも随分と好きらしい。
サボも最初の二日間は試験航行に付き合っていたものの、今日は朝から町へ出かけていた。
港に集まる船や店を見て回るつもりらしく、面白いものがあれば教えてやると言っていたので、後で話を聞くのが楽しみだ。
その日の午後には、予定していた検証が一通り終わった。
親方は集めた記録を確かめながら、満足そうに頷いた。
「よし。これだけ分かりゃ、設計を考えるには十分だろう」
「おっ、じゃあ船を造ってくれるのか?」
「まだ細かいところは詰めなきゃならねえが、見込みはある。明日、事務所へ来てくれ。こっちで考えた図面を見せよう」
「おう、楽しみにしてるぜ!」
親方はデュースへ向き直った。
「お前さんの資料も、もう少し詳しく見せてもらいてえ。特に船尾の補強と熱の記録だな」
「ああ、分かった。今夜まとめておくよ」
デュースが頷いた。
こうして、ストライカーの試験航行はひとまず終わった。
*
翌日、造船所の事務所へ行くと、机の上には新しい図面が何枚も広げられていた。
親方はおれたちを見つけると、椅子を勧めながら一枚の図面を引き寄せた。
「おう、来たな。昨日までの結果をもとに、ひとまず形にしてみたぜ」
「おっ、見せてくれ!」
机の上には、ストライカーよりずっと大きな帆船が描かれていた。
船体の後部には筒状の推進装置が取り付けられているが、位置も形も今のものとは違う。船尾の構造そのものが、炎を利用することを前提に考えられているらしい。
「いいな! なかなか格好いいじゃねえか!」
おれが身を乗り出すと、サボも隣から図面を覗き込んだ。
「おお、思ってたより広そうだな。これなら荷物も十分に積めるだろ」
「まだ大まかな案だがな」
親方はそう言って、船尾の図面を指さした。
「まず、船は一から造る。普通の帆船を改造する方法も考えたが、こいつを付けるなら最初から専用の構造にした方がいい」
「やっぱりそうか」
デュースが頷いた。
「今のストライカーでも、船尾の補強は結構苦労したからな」
「ああ。船がでかくなれば重さも増えるし、推進装置から受ける力も変わってくる。下手に取り付けりゃ、長く使ううちに船体が傷んじまう」
親方は別の図面を広げた。
「それと、炎を噴き出す部分は船体から少し離すつもりだ。熱が木材へ伝わりにくいようにする。お前さんが言ってた向きを変える仕組みも、まだ検討中だが入れられるかもしれねえ」
「おっ、本当か!」
「ああ。ただ、そいつは実際に造って試してみねえと分からねえな。動かす部分が増えりゃ、それだけ故障する場所も増えるからよ」
「なるほどな。無理に付けて壊れやすくなるくらいなら、普通の舵だけでも構わねえぜ」
「そう言ってもらえると助かる。まあ、せっかくの注文だ。できるだけ面白い船にしてやりてえからな」
親方は楽しそうに笑った。
それから、船室や倉庫、帆の数について話し合った。
デュースは医療品や本を置く場所が欲しいと言い、サボは少人数でも扱いやすい帆装や操舵設備について質問していた。
おれも図面を眺めながら、船内の配置について考えてみる。
「なあ親方。調理場はもう少し広くできねえか?」
「調理場か?」
「ああ。長い航海になるだろうし、飯を作る場所はちゃんとしておきたいんだ。食料を置く倉庫も近い方が使いやすいだろ?」
親方は図面へ目を落とした。
「ふむ。確かに、今の配置だと調理場と倉庫が少し離れてるな」
「それに、これから仲間が増えるかもしれねえからな。三人分だけ作れりゃいいってわけでもねえし」
「なるほどな。だったら、この辺りを少し変えてみるか」
親方は鉛筆を取り、図面の一部を書き直し始めた。
サボが横から覗き込む。
「食堂も広めにしておきたいな。せっかくなら、みんなで飯を食える場所が欲しいぜ」
「おう、それはいいな!」
「お前ら、もう仲間が増える前提で考えてるだろ」
デュースが笑った。
「増えたら楽しいだろ?」
「まあ、そりゃそうだな」
デュースも頷いた。
今は三人だが、これから先、どんな奴らと出会うか分からない。
偉大なる航路へ入れば、東の海とは比べものにならないほど広い世界が待っている。面白い奴や強い奴だって、いくらでもいるはずだ。
そう考えると、今から胸が躍った。
ひとしきり話し合いが終わると、親方は図面をまとめ、椅子へ深く腰を下ろした。
「さて、船の形はだいたい見えてきたが、問題は完成までの時間だな」
「どのくらいかかりそうなんだ?」
おれが尋ねると、親方は指を折りながら説明を始めた。
「まず、今うちで造ってる船が二隻ある。そいつらは先に注文を受けてるんだ。お前さんたちの船に取りかかるのは、その仕事がある程度片づいてからになる」
「ああ、それは仕方ねえな」
「それに、こんな船を造るのは初めてだ。設計を固めるにも時間がいるし、必要な材料も揃えなきゃならねえ。建造に入ってからも、途中で何度か調整が必要になるだろう」
親方は机を軽く叩いた。
「まあ、数か月は見てもらいたい」
「数か月か」
おれはサボとデュースを見た。
もともと、もうしばらく東の海で修行と賞金稼ぎを続けるつもりだった。船の完成まで数か月かかるとしても、特に困ることはない。
「いいんじゃねえか? その間におれたちも色々できるしな」
「ああ。おれもまだ鍛えたい技があるし、東の海には行ってねえ島が山ほどあるからな」
サボが頷いた。
「おれはしばらくローグタウンに残って、親方たちと打ち合わせを進めようと思う」
デュースもそう言って、図面へ目を向けた。
「船のことも勉強になるし、医療関係の本や道具も探したい。ここなら色々揃いそうだからな」
「そっか。じゃあ、デュースにはしばらく任せることになりそうだな」
「ああ。設計が進んだら、二人にも確認してもらうよ」
「おう、頼んだぜ!」
三人の意見がまとまったところで、親方へ向き直った。
「よし。正式に注文するぜ。いい船を造ってくれよ、親方!」
「任せとけ。こっちも腕の見せどころだからな!」
親方は大きく笑い、デュースと契約の話を始めた。
提示された金額はなかなかのものだったが、これまで賞金稼ぎを続けてきたおかげで、十分に払える。
サボが持ってきた金を確認し、デュースが契約内容を確かめる。その間、おれは机の上に広げられた図面を眺めていた。
数か月後には、こいつがおれたちの船になる。
ストライカーを造ったときも楽しかったが、今度は本職の船大工たちが腕を振るってくれるんだ。
どんな船になるのか、期待せずにはいられなかった。
*
造船所を出た頃には、昼を少し過ぎていた。
朝から話し込んでいたせいもあって、腹が減っている。おれたちは港の近くにある食堂へ入り、遅めの昼飯を取ることにした。
店内には港で働く連中が何人もいて、昼飯を食いながら仕事の話をしている。厨房からは肉を焼くいい匂いが漂ってきた。
「おっちゃん、肉料理は何があるんだ?」
「ああ、煮込みと骨付き肉、それから肉の串焼きだな」
「じゃあ、全部頼むぜ。量は多めで!」
「おう、任せとけ!」
店主は威勢よく答え、厨房へ戻っていった。
サボも自分の料理を注文し、デュースは飲み物を頼んでから椅子へ腰を下ろした。
「しかし、いい造船所が見つかってよかったな」
「ああ。親方も随分乗り気だったし、面白い船になりそうだぜ」
おれが答えると、サボも嬉しそうに笑った。
「推進装置もそうだけど、船そのものがでかくなるのが楽しみだな。今のストライカーじゃ、荷物を積むとすぐ狭くなるからよ」
「そうだな。次の船なら、食料も水も十分に積めるだろうし、長い航海も楽になるはずだ」
デュースが頷いた。
「それに、船室がちゃんとあるのもありがたい。今の船じゃ、雨の日は荷物を濡らさないようにするだけでも大変だからな」
「確かにな。今度はお前の本も濡らさずに済むだろ」
「そうしてくれると助かるよ。あれは結構大事なんだ」
デュースは笑いながら答えた。
やがて料理が運ばれてくると、おれたちはしばらく食事を楽しんだ。
肉はなかなかうまかった。特に煮込みはよく味が染みていて、思わずおかわりまで頼んでしまった。
サボはそんなおれを見て、自分の皿から串焼きを一本取った。
「おい、エース。お前、煮込みばっか食ってるな」
「うまいんだよ、これ。お前も食ってみろって」
「じゃあ、少しもらうか」
サボが煮込みを口へ運び、満足そうに頷いた。
「おっ、確かにうまいな。もう一皿頼むか?」
「おう!」
デュースも煮込みを注文し、しばらく三人で料理を楽しんだ。
腹が落ち着いたところで、今後の予定について話し始める。
「さて、船ができるまで数か月あるわけだが、どうする?」
おれが尋ねると、サボが先に口を開いた。
「おれはしばらくこの辺りを見て回ろうと思ってる。ローグタウンなら色んな船が集まるし、偉大なる航路の情報も手に入りそうだからな」
「おっ、いいな。面白そうな話があったら教えてくれよ」
「もちろんだ。お前も気になるところがあったら一緒に行こうぜ」
「おう!」
デュースは飲み物を一口飲んでから答えた。
「おれは造船所との打ち合わせがあるから、当分はこの町にいるつもりだ。医療関係の本や道具も探しておきたいしな」
「そっか。じゃあ、おれはちょっと遠出してくるかな」
二人が顔を上げた。
「遠出?」
「ああ。せっかく東の海にいるんだし、行ってみてえ場所があるんだよ」
サボが興味深そうに身を乗り出した。
「へえ。どこだ?」
おれは笑って答えた。
「ココヤシ村だ」
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