転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
ローグタウンを拠点にしてから、おれたちは近海の賞金首を捕まえながら、新しい船の完成を待っていた。
仕事のない日は修行に充てている。おれはメラメラの実の能力を使い、炎の出力や形状を調整する練習を続けていた。新しい技を増やすよりも、今ある技の精度を上げる方が先だ。特に武装色と組み合わせたときの扱いには、まだ改善できる部分がいくらでもある。修行中にはうまくいった技でも、実戦で同じように使えるとは限らないので、賞金首を相手にするときも機会があれば試していた。
サボも似たようなもので、賞金首の情報が入れば鉄パイプを担いで出かけ、仕事がなければ町の外で身体を動かしていた。東の海の海賊相手では本気を出す機会も少ないが、だからといって実戦で得るものがないわけではない。戦いを終えたあとに一人で動きを確かめていることもあり、おれが付き合って手合わせをする日もあった。
一方、デュースは造船所へ通うことが多かった。
船の建造状況を確認するだけでなく、親方たちと設備や積み荷について相談しているらしい。町の書店で医療関係の本を見つけては買い込んでおり、宿へ戻ると新しい本が増えていることも珍しくなかった。
もちろん、おれとサボも船の様子は見に行っている。
最初は骨組みだけだった船に外板が張られ、甲板ができ、帆柱が立つ。特に船尾の推進装置については何度も呼ばれ、実際に炎を出しながら出力や噴射方向を調整した。船体の重さが変われば必要な火力も変わるし、長時間使った場合の熱の影響も確かめなければならない。親方たちが装置を調整し、デュースが試験の結果を記録するという作業を繰り返すうちに、ようやく使い方の目安ができてきた。
少しずつ形になっていく船を見るのは、なかなか楽しかった。
もっとも、二か月間ずっとローグタウンにいたわけでもない。
ある日、おれがバラティエの料理について話したところ、サボが興味を持ち、三人でストライカーに乗って食いに行くことになった。
サボは最初、おれが褒めすぎなんじゃないかと笑っていたが、料理を一口食べるとすぐに考えを改めたらしい。結局、おれと競うように肉料理を追加し始め、二人で随分な量を平らげることになった。
デュースはそんなおれたちを横目に自分の料理を楽しんでいたが、途中で隣の席へ運ばれていく魚料理が気になったらしく、同じものを追加していた。帰り際、三人分の勘定を見て少し驚いていたものの、料理については文句なしだったようだ。
ゼフには本当に仲間を連れてきたのかと笑われ、サンジにも呆れられたが、今回もいい飯を食わせてもらった。
そんなふうに仕事や修行を続け、ときには寄り道もしながら待つこと二か月。
ようやく、新しい船が完成した。
◇
「できたぞ」
造船所へ顔を出したおれたちに、親方はそう告げた。
「おお、ついにか!」
「ああ。最後の確認も済んだ。いつでも引き渡せるぞ」
隣にいたサボも嬉しそうに笑い、早速見せてもらおうと親方を急かした。おれも完成を楽しみにしていたので、親方の案内を待ちきれず、サボと並んで造船所の奥へ向かった。
建造中の船が並ぶ敷地を抜け、海に面した船台へ出る。
そこに、おれたちの船があった。
「おお……すげえな!」
何度も建造途中を見てきたはずなのに、完成した姿は想像以上だった。
ストライカーより遥かに大きな船体には十分な幅があり、中央には一本の帆柱が立っている。甲板には操舵輪が設けられ、船尾には炎を利用するための推進装置が取り付けられていた。
船体の形は以前から知っていたが、外板が綺麗に仕上げられ、帆まで張られた姿を見ると、まるで別の船のように感じられる。これまでは造船所の職人たちが作業している途中の船だったものが、今はもう、海へ出るための一隻になっていた。
「いいじゃねえか、親方!」
「金はきっちり貰ってるからな。半端なもんを渡したら、こっちの看板に傷がつく」
親方はそう言いながらも、満更でもなさそうだった。
サボも船首から船尾まで眺めており、特に帆柱の高さが気に入ったらしい。早く甲板へ上がりたそうにしているのは、おれも同じだった。
親方に続いて船へ上がると、まずその広さに驚かされた。
旧ストライカーでは三人が乗れば、誰かが動くたびに他の二人が場所を譲る必要があった。だが、今度の船なら甲板を歩き回っても余裕があるし、航海中に作業する場所にも困らなさそうだ。
サボは甲板の中央まで歩くと、足元の感触を確かめるように軽く踏み込んだ。
「これなら、ちょっとした修行もできそうだな」
「ああ。身体を動かすくらいなら十分だろ」
「船の上で暴れられちゃ困るぞ」
親方がすかさず口を挟むと、サボは笑って手を振った。
「分かってるって。せっかく造ってもらった船を壊したりしないさ」
「ならいいがな」
親方はまだ少し疑わしそうだったが、それ以上は何も言わず、帆柱の方へ歩いていった。
今回の船は、三人で扱えることを優先して設計してもらっている。帆を大きくすれば速度は出せるかもしれないが、その分だけ操作に人手が必要になる。炎による推進も使えるとはいえ、それだけに頼るつもりはなかったので、船体の大きさから帆の配置まで何度も相談して決めた。
実際に完成したものを見ると、親方たちがその条件をうまく形にしてくれたことが分かる。
帆柱を見上げていたデュースも満足そうだった。おれがいないと動かせない船では困ると、設計段階から何度も確認していたのを覚えている。
そのあと、親方に案内されて船内へ入った。
中には食堂を兼ねた共有スペースがあり、その奥にそれぞれの部屋が設けられていた。寝台と荷物を置く場所も十分にあるし、倉庫には水や食料をまとめて積める。これなら、これまでより長い航海にも対応できそうだ。
そして、おれが特に気になっていたのが台所だった。
「おっ、ちゃんと広いな!」
調理台や食材を保管する場所が設けられ、火を使う場所も確保されている。ストライカーでは簡単なものしか作れなかったが、ここなら料理の幅も随分広がるだろう。
「これなら船の上でも、もう少しまともな飯が食えるな」
「だな。バラティエに行ってから、余計にそう思うようになったよ」
サボも調理台を覗き込みながら笑った。
もっとも、設備が整ったからといって、いきなり腕のいい料理人になれるわけではない。デュースもそれを指摘したが、せっかく使える台所があるのだから、少しずつ覚えていけばいいだろう。
デュースは料理に使う道具や収納を確かめており、必要なものをいくつか追加で買うつもりらしい。台所一つ取っても、実際に使い始めれば足りないものが出てくるだろうが、それも含めてこれから整えていけばいい。
船内を一通り見終えると、今度は船尾の推進装置を確認した。
ここは建造中に何度も足を運んだ場所だ。
ストライカーと比べて船体が重くなった分、必要な火力も大きい。炎を長く噴射すれば熱が溜まるため、装置の内部には金属を使い、周囲の木材へ熱が伝わりにくい構造にしてある。
完成した装置を間近で見ると、試験のたびに調整していた部品がきちんと収まり、以前よりずっとすっきりした形になっていた。
「一番手間がかかったのは、やっぱりここだな」
親方が金属で覆われた部分を軽く叩いた。
「試験は何度もやったが、実際の航海じゃ違うことも起こる。炎の強さだけじゃなく、船の動きも見ながら調整してくれ」
「ああ。出航前に一度、港の外で試してみるよ」
「そうしてくれ。何かあれば、まだ直せるからな」
おれもそれがいいと思っていた。
船体が大きくなれば、ストライカーと同じように炎を噴射しても動き方は変わる。加速や旋回の感覚を確かめておけば、実際の航海でも扱いやすくなるだろう。
装置の周囲を確認してから、もう一度甲板へ戻った。
船首の向こうにはローグタウンの港が広がり、停泊している船の間を小舟が行き交っている。これまではあの港からストライカーで出入りしていたが、これからはこの船が三人の拠点になる。
船体も設備も、想像していた以上にいい。
これなら偉大なる航路へ向かうのにも十分だろう。
「そういや、名前はどうする?」
ふと思いついて尋ねると、サボがこちらを向いた。
「ああ、まだ決めてなかったな」
「船が完成してから考えようって話だったからな」
デュースも船首を見上げる。
名前については以前にも少し話したが、結局、完成した船を見てから決めようということになっていた。せっかく長く乗る船なのだから、実物を見て似合う名前を考えたいと思っていたのだ。
「どうせなら、これからの旅に合う名前がいいよな」
サボの言葉に、おれも頷いた。
これから偉大なる航路へ入り、その先まで行く。
どこまで行くかはまだ決めていないし、旅の途中で何を見つけるのかも分からない。サボは世界を見て本を書くつもりだし、デュースも自分の冒険を記録したがっている。おれだって、まだ見たことのない島や強い奴との出会いを楽しみにしている。
そんなおれたちを乗せて、これから先へ進んでいく船だ。
「ヴァンガード」
口にしてみる。
「ヴァンガード?」
サボが振り返った。
「ああ。先へ進むって感じがしていいだろ?」
サボは船を見回してから笑った。
「いいな。おれは好きだぞ」
「デュースは?」
「おれもいいと思う。響きも悪くないし、この船に合ってるんじゃないか?」
「よし、決まりだな!」
おれが笑うと、サボも頷いた。
「ヴァンガード号か。いい名前だ!」
改めて船首から甲板、帆柱、その向こうの船尾まで眺める。
ヴァンガード号。
これからおれたちが乗っていく船の名前だ。
「親方、ありがとうな! いい船を造ってくれた!」
「おう。大事に乗ってやってくれ」
「ああ!」
親方も満足そうに笑った。
これでようやく、偉大なる航路へ向かう準備が大きく進んだ。
「よし! じゃあ、早速試運転に行こうぜ!」
「その前に、積み込むものを確認しておこう」
デュースが言った。
旧ストライカーに積んでいた荷物だけでは足りない。新しい船には倉庫もあるので、水や食料も多めに用意できるし、医療品や予備の道具も揃えておきたい。
サボは港で頼んでいた荷物を受け取りに行くことになり、デュースは医療品と船内設備の確認を引き受けた。おれは親方と推進装置の最終確認を済ませるつもりだったので、それぞれの作業を終えてから試運転をすることにした。
ところが、船を降りようとしたところで、デュースが何か思い出したように足を止めた。
「そうだ。エース、もう一つ見せたいものがあるんだ」
「ん? 何だ?」
「親方、もう一つの方ももう問題ないか?」
「ああ。いつでも渡せるぞ」
親方がにやりと笑った。
何やら二人だけで話が通じているらしい。
「おいおい、何の話だよ?」
サボも不思議そうに尋ねる。
「見れば分かるさ。二人とも来てくれ」
デュースはそう言って、船を降り始めた。
◇
デュースに案内されて造船所の奥へ向かうと、資材を保管するための小屋がいくつか並んでいた。
その一つの前で足を止め、デュースが扉へ手をかける。
「エース。前にココヤシ村まで一人で行っただろ?」
「ああ」
「これからも、一人で船を出すことはあるよな?」
「そりゃあるだろ。近場ならストライカーの方が便利だしな」
「だよな」
デュースが笑う。
「実は、前から考えてたことがあるんだ」
そう言って扉を開けた。
中へ差し込んだ光の先に、小さな船が置かれていた。
「……おお?」
細長い船体に、小さな帆。そして船尾には、見覚えのある金属製の推進装置が取り付けられている。
その形を見た瞬間、何なのか分かった。
「これ、ストライカーか!?」
「ああ。新しいやつだけどな」
思わず近づいて、船体を眺める。
シクシス島で造った旧ストライカーよりも小さく、細長い形をしていた。あちらは三人で乗ることになったせいで、それなりの大きさが必要だったが、こっちは最初から一人で使うことを前提に造られているらしい。
その分、ずっと軽そうだ。
「すげえな! いつの間に造ってたんだ?」
「お前らが賞金首を追ってる間とかだよ。ヴァンガードの打ち合わせで何度もここへ来てたし、そのついでに頼んでたんだ」
「おれも知らなかったぞ」
サボが驚いてデュースを見る。
「言ってなかったからな。二人とも驚くだろうと思って」
「そりゃ驚くさ。こんなの用意してたとはな!」
サボが笑う。
デュースは新しいストライカーの船尾へ回り、推進装置を指した。
「前のストライカーで取った記録があったから、設計は思ったより進めやすかったよ。ヴァンガード用に調べたことも使えたしな」
炎が当たる部分には耐熱のための金属が使われ、熱を逃がすための工夫も施されている。船体の左右には安定させるための張り出しがあり、速度を上げても傾きにくいようにしてあるらしい。
「帆もあるのか」
「ああ。炎を使わないときは、普通の小舟としても動かせる。風があるなら、そっちを使えばいい」
「へえ……いいな、これ!」
船の周りを一周し、改めて眺める。
ヴァンガードは三人で旅をするための船だが、こっちは完全におれのために造られている。
旧ストライカーも気に入っていたが、これならさらに自由に走り回れそうだ。
「でも、何でわざわざ造ってくれたんだ?」
尋ねると、デュースは少し肩をすくめた。
「お前、ストライカーで海を走るの、随分気に入ってただろ?」
「ああ!」
「それに、ヴァンガードができても、一人で出かける機会はあると思ったんだ。だったら、最初から一人用の船があってもいいんじゃないかってな」
サボも納得したように頷いた。
「確かに、あの船は三人で使うには狭かったけど、一人で乗るには便利だったもんな」
その通りだった。
旧ストライカーも気に入っていたが、三人で乗るには手狭で、一人で使うには少し大きかった。今度の船なら、そのどちらも気にする必要がない。
それに、船尾の装置や船体の形を見れば、デュースがこれまでの航海で得た経験をもとに考えてくれたことも分かる。
「ありがとな、デュース! 最高だ!」
そう言うと、デュースは嬉しそうに笑った。
「ああ。気に入ってくれてよかったよ」
「早速、乗ってみてもいいか?」
「もちろん。ただ、最初は親方にも見てもらおう。ヴァンガードと同じで、実際に動かして確認したいところがあるんだ」
「おう、分かった!」
それなら話は早い。
ヴァンガードの試運転もあるし、新しいストライカーも走らせてみたい。どちらも完成したばかりなのだから、しっかり動きを確かめておきたいところだ。
「それにしても、二隻同時とはな」
サボが楽しそうに笑った。
「しかも、片方はエース専用か。いいなあ」
「乗ってみるか?」
「一人乗りなんだろ?」
「ああ。だから、あとで交代して乗ろうぜ」
「いいのか?」
「当たり前だろ。炎で動かさなくても帆があるんだしな」
「じゃあ、あとで借りるぞ!」
サボもすっかり気に入ったらしい。
親方はそんなおれたちを見ながら、満足そうに腕を組んでいた。
「気に入ってもらえたなら何よりだ。だが、試運転はちゃんとやってくれよ」
「もちろんだ!」
おれは新しいストライカーの船体を軽く叩いた。
ヴァンガードに、新しいストライカー。
二か月待った甲斐はあった。
これから三人で偉大なる航路へ向かうことを考えると、今すぐにでも海へ出たくなってくる。
「よし、じゃあ試運転の準備をするか!」
「おう!」
サボが元気よく応える。
デュースも笑いながら頷いた。
まずはヴァンガードを動かし、そのあとで新しいストライカーを試そう。どちらも問題がなければ、残りの荷物を積み込んで出航の準備を進められる。
そう考えながら、おれたちは造船所を出て港へ向かった。
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