転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
この頃すぐに返信ができなくて申し訳ない。ちょっと疲れ気味なので、落ち着いたらちょくちょく返信しますね。
ベルナ島へ戻った翌朝、おれたちは久しぶりに一日休みを取ることにした。
昨日は海賊艦隊との戦闘があったし、その後も捕まえた海賊の引き渡しや商船の護衛で随分と時間を使った。しばらくは急いで海へ出る必要もないので、今日は船の補給を済ませたら、あとは好きに過ごすつもりだ。
「じゃあ、おれは薬屋を見てくるよ」
宿を出たところで、デュースがそう言った。
「昨日は結局行けなかったからな。使った薬も補充しておきたいし、少し時間をもらうぞ」
「おう。昼頃に港で落ち合おうぜ」
「ああ。それまでには戻るよ」
「いいものが見つかるといいな」
サボが声をかけると、デュースは片手を上げて通りの向こうへ歩いていった。
あいつは以前から、この島の薬屋を調べていたらしい。珍しい薬草も扱っているそうで、昨日の出航前から楽しみにしていたのだが、まさか海賊艦隊と戦うことになるとは思っていなかっただろう。
おれとサボはブルーを連れて、町へ買い物に出かけた。
ベルナ島は偉大なる航路の中でも大きな港町らしく、船乗り向けの店が充実している。修理用の道具や保存食を買い足すには都合がいいし、何より見たことのない品物が多くて、店を覗いて回るだけでも面白かった。
もっとも、ブルーを連れていると、どこへ行っても目立つ。
最初に町へ来た時ほどの騒ぎにはならなくなったが、それでも恐竜が大通りを歩いていれば、道行く人々が振り返る。子供たちに指をさされてもブルーは特に気にしていなかったが、知らない人間が近づいてくると、おれたちの側へ寄って距離を取っていた。
「お、エース。あそこの肉、うまそうじゃねえか?」
サボが指した先では、露店の男が大きな肉の塊を炙っていた。
脂が炭へ落ちるたびに香ばしい匂いが漂い、通りを歩く客も何人か足を止めている。
「おお、いいな。帰りに買っていこうぜ」
「クルル……」
ブルーも匂いに気づいたらしく、露店へ顔を向けていた。
「お前も食いたいか?」
「クルッ」
「ハハハ! 分かった分かった。お前の分も買ってやるよ」
ブルーの首筋を撫でて歩き出すと、名残惜しそうに露店を振り返りながらもついてきた。
その後、船の修理に使う道具や食料を買い足し、大きな荷物は港へ届けてもらうことにした。ブルーが増えた分、肉の消費量は随分増えたが、最近は賞金首を捕まえて稼いでいるので、今のところ金に困ることはない。
昨日の海賊艦隊の賞金も入ったし、しばらくは余裕を持って航海できるだろう。
そんなことを話しながら大通りを歩いていると、前方から見覚えのある女がやってきた。
「……火拳?」
イスカだった。
今日は海軍の制服ではなく、動きやすそうなシャツとズボンを身につけている。腰にはいつもの剣があったが、片手には買い物袋を提げており、どうやら仕事中ではないらしい。
「お、イスカじゃねえか。今日は休みなのか?」
「ああ。お前たちもか?」
「おう。昨日まで忙しかったからな」
「昨日の件なら、基地でも随分話題になっていたぞ。何隻も海賊船を連れて戻ってきたんだからな」
「結構な数だったからな。引き渡すのも大変だったぜ」
「まったくだ。あれだけの人数を収容するとなると、基地の方も大仕事だったよ」
イスカはそう言いながらも、どこか機嫌がよさそうだった。
商船を襲っていた海賊を捕まえたことで、海軍としても助かったらしい。昨日は遅くまで対応に追われていたそうだが、今日は無事に休みを取れたという。
「それにしても、火拳か……」
おれが呟くと、イスカが首を傾げた。
「どうした?」
「いや、その呼び方だよ。おれのことだろ?」
「……知らなかったのか?」
「ああ。初めて聞いたぜ」
イスカは少し驚いたようだったが、すぐに納得したように頷いた。
「最近、海軍の間でそう呼ばれるようになっているんだ。炎を使う賞金稼ぎとして知られているからな」
「へえ、そうだったのか」
火拳。
原作のエースと同じ異名だ。海賊ではなく賞金稼ぎとして活動していても、結局この呼び名に落ち着いたらしい。
誰が最初に呼び始めたのかは知らないが、なかなか気に入った。
「いい異名じゃねえか。気に入ったぜ」
「そうか。それならよかった」
イスカは少し笑ってから、おれたちの持っている買い物袋へ目を向けた。
「これから港へ戻るところか?」
「いや、もう少し町を見て回るつもりだ。昼頃にデュースと落ち合うことになってるんだよ」
「そうなのか。なら、よかったら一緒に昼飯でもどうだ? 私が奢るぞ」
「お、いいのか?」
「ああ。昨日は随分助かったからな。それに、せっかく休みが重なったんだ。仕事以外の話もしてみたいしな」
イスカとは何度か顔を合わせているが、これまでは賞金首の引き渡しや手配書の確認が中心だった。こうして町で偶然出会ったのも初めてだし、おれとしても話してみたいことはある。
「そりゃありがたいな。デュースも一緒でいいか?」
「もちろん。近くにいい店があるんだ」
「じゃあ、まずは港へ行こうぜ」
こうして、おれたちはイスカと一緒に昼飯を食べることになった。
◇
港へ戻ると、デュースは既に薬屋から帰ってきていた。
足元には薬や包帯の入った袋がいくつも置かれており、目当ての店では随分いい買い物ができたらしい。おれたちを見ると、早速珍しい薬草が手に入ったと話し始めた。
「へえ、そいつはよかったな。ところでデュース、昼飯はもう食ったか?」
「いや、まだだけど……イスカ少尉?」
「ああ。町で会ってな。一緒に昼飯を食おうって話になったんだ」
「そういうことか。なら、荷物を片づけてから行こう」
デュースが買ってきた薬を船へ運び込み、おれたちも買い物を済ませた荷物を整理する。
イスカはその間、ヴァンガード号を興味深そうに眺めていた。
「それにしても、随分立派な船だな。前に見た時も思ったが、三人で動かしているとは思えないくらいだ」
「ローグタウンの造船所で造ってもらったんだ。三人でも扱えるようにしてあるからな」
「ほお、ローグタウン。なかなか腕のいい職人がいるんだな」
「ああ。いい親方だったぜ。デュースも随分世話になってたよな」
「ああ、何度も打ち合わせに行った。特に推進装置は普通の船と違うから、調整が大変だったんだ」
デュースがそう言うと、イスカは船尾へ目を向けた。
「炎で船を動かせるんだったな」
「おう。風がなくても進めるし、急ぎたい時には便利だぜ」
「なるほどな。悪魔の実の能力にそんな使い方があるとは思わなかったよ」
イスカは感心したように頷いた。
ヴァンガード号を造ってもらう時には、炎の出力を何度も調整させられたものだ。親方からは無茶な使い方をするなと散々念を押されたが、その甲斐もあって、偉大なる航路へ入ってからも問題なく走ってくれている。
イスカはしばらく船を眺めていたが、やがてデュースが荷物を片づけ終えると、こちらへ向き直った。
「さて、そろそろ行くか。腹も減ってきただろ?」
「おう。朝から歩き回ってたからな」
「いい店だから、期待してくれていいぞ」
イスカに案内され、再び町へ向かう。
連れてこられたのは、大通りから一本外れたところにある食堂だった。
昼時ということもあって店内は賑わっており、船乗りらしい男たちが大皿を囲んでいる。厨房からは肉を焼く香ばしい匂いが漂い、店の前に立っただけで腹が減ってきた。
「おお、いい匂いだな」
「だろ? ここの肉料理は評判がいいんだ」
イスカが先に店へ入ろうとしたところで、店主がブルーに気づいた。
「……イスカさん、その恐竜も一緒なのか?」
「ああ。彼らの仲間なんだが、入っても大丈夫か?」
「ううむ……」
店主は困ったようにブルーを見た。
さすがに、これだけ客がいる店へ恐竜を入れるのは難しいかもしれない。
「外の席ならどうだ? ブルーもそっちの方が落ち着けると思うんだ」
おれが入口の脇を指すと、店主は少し考えてから頷いた。
「あそこならいいか。ほかの客の邪魔にならないようにしてくれよ」
「ああ、ありがとな」
案内された席は通りから少し奥まった場所にあり、屋根のおかげで日差しも避けられる。ブルーはおれの隣に伏せると、早速厨房の方へ鼻先を向けた。
「ハハハ! お前も腹減ったか?」
「クルル」
「すぐ肉が来るから待ってろよ」
イスカはその様子を眺めながら椅子へ腰を下ろした。
「本当に大人しいんだな。初めて会った時は、どうなることかと思ったぞ」
「まあ、町に恐竜を連れてきたら驚くよな」
「ああ。しかも首輪までつけているんだからな」
イスカがブルーの首輪へ目を向ける。
「そういえば、その首輪はお前が作ったのか?」
「おう。船にあった革で作ったんだ。町で連れ歩くなら、何かあった方がいいと思ってな」
「なるほど。確かに、それなら野生の恐竜とは思われにくいな」
ブルーは話題になっていることに気づいたのか、おれたちを見上げていたが、すぐに厨房の方へ視線を戻した。
肉の匂いがよほど気になるらしい。
店員が注文を取りに来たので、おれは肉料理を中心に何品か頼み、ブルーにも大きな骨付き肉を注文した。サボとデュースもそれぞれ好きな料理を選び、イスカの勧めで野菜の煮込みも追加する。
「ここの料理は結構量が多いんだ。食べきれなかったら持ち帰ることもできるぞ」
「そりゃいいな。でも、おれたちなら大丈夫だと思うぜ」
「そうなのか?」
「エースは結構食うからな。おれも腹減ってるし」
サボが言うと、イスカは納得したように頷いた。
「それなら遠慮せず食べてくれ。今日は私の奢りだからな」
「おう! ありがとう!」
料理が運ばれてくるまでの間、おれたちはベルナ島の話をしていた。
イスカによれば、この店は海兵にも人気があるらしい。基地から少し離れているので普段はなかなか来られないが、休みの日には時々利用しているという。
「へえ。イスカも結構この町に詳しいんだな」
「まあ、しばらく勤務しているからな。最初は基地と港くらいしか分からなかったが、休みの日に歩いているうちに覚えたんだ」
「ああ、異動があるんだって?」
サボが言った。
「ああ。特に尉官は数年ごとに異動することも珍しくない。私もいつまでベルナ島にいるかは分からないな」
「そうなのか。せっかく町に慣れてきたのに、また別の場所へ行くかもしれねえんだな」
「そういうものさ。もっとも、いろんな海を見られるのは悪くないと思っているよ」
イスカはそう言って水を一口飲んだ。
「それに、どこへ行っても海軍の仕事は変わらない。海賊を捕まえて、人々を守る。それが私のやるべきことだからな」
真面目な奴だ。
だが、そういうところは嫌いじゃない。
海軍の中にも色々な人間がいるし、全員が同じ考えで動いているわけではない。イスカは自分なりの正義を持って仕事をしているようだし、今のところ、その姿勢には好感が持てる。
「でも、任地が変わるとなると大変そうだな。せっかく仲良くなった奴とも離れることになるだろ?」
「まあ、そうだな。だからこそ、今いる場所での付き合いは大事にしたいと思っているよ」
「そりゃいい考えだ」
おれが頷くと、イスカは少し笑った。
「お前たちも、いずれベルナ島を離れるんだろ?」
「ああ。まだ行きたい島は山ほどあるからな」
「そうか。なら、ここにいる間くらいは仲良くしようじゃないか」
「もちろんだぜ。今日みたいに飯を食うのも楽しいしな」
「ふふっ、それならよかった」
イスカはそう言って、運ばれてきた料理へ目を向けた。
大皿に盛られた肉からは香辛料のいい匂いが漂い、表面にはこんがりと焼き目がついている。早速一切れ口へ運ぶと、肉汁と一緒に辛味が広がり、思わず頬が緩んだ。
「おお、うめえな!」
「だろ? ここの肉料理はおすすめなんだ」
「これなら何皿でも食えそうだぜ」
「まだまだあるから、好きなだけ食ってくれ」
サボも肉を口へ運び、満足そうに頷いている。
「確かにうまいな。香辛料が結構効いてるけど、肉によく合ってる」
「ああ。船で食う飯とはまた違った味だな」
デュースも気に入ったらしく、魚料理を取り分けながら言った。
おれたちは料理を分け合いながら、しばらく食事を楽しんだ。
船の上でもそれなりにうまいものは食っているが、こうして知らない土地の料理を味わえるのは旅の楽しみの一つだ。特にベルナ島は商船が多く集まるだけあって、料理にも色々な土地の食材や香辛料が使われているらしい。
イスカはおれたちが気に入った様子を見て、ほかにもおすすめの料理を教えてくれた。
「それなら、次はこっちも食べてみるといい。少し甘めの味付けなんだが、肉によく合うんだ」
「へえ。じゃあ、それも頼もうかな」
「エース、まだ食うのか?」
サボがこちらを見る。
「お前も食うだろ?」
「まあ、食うけどな」
「ハハハ! じゃあ決まりだな!」
追加の料理を頼むと、イスカも一緒に食べると言ってくれた。
ブルーにも骨付き肉が運ばれてきたので、皿を近くへ置いてやる。ブルーは嬉しそうに喉を鳴らし、早速肉へかぶりついた。
その様子を見ていたイスカが、少し興味を持ったらしい。
「ブルーは、いつもこれくらい食べるのか?」
「いや、もっと食うこともあるぜ。身体がでかいからな」
「そうか。船の食糧も大変そうだな」
「まあな。でも、最近は結構稼げてるし、今のところ問題ねえよ」
前の獲物も船長の懸賞金と合わせて一億近い金がもらえた。この調子なら食費に困ることはまずないだろう。
「そういえばよ。イスカはここの基地の中将さんとは仲はいいのか?」
サボが話題を変えた。中将ともなると、ここの基地のトップだ。話に聞いた程度だが、海運の重要地なだけあって中将が常駐しているらしい。
「ああ、ドロウ中将のことか。そうだな、昔から世話になっているんだ」
「中将ってことは、相当偉い人なんだろ?」
「もちろんだ。私にとっては恩人でもあるし、尊敬する海兵なんだ」
イスカの声には、先ほどまでとは少し違う熱があった。
ドロウ中将。
名前は聞いたことがあるが、おれ自身はまだ会ったことがない。
イスカによれば、幼い頃に助けてもらったことがあり、それが海軍を志すきっかけになったのだという。
「へえ。じゃあ、イスカが海軍に入ったのも、その人の影響なのか」
「ああ。中将のような海兵になりたいと思ったんだ」
「そりゃ、随分世話になったんだな」
「そうだな。今でも感謝しているし、目標にしているよ」
イスカはそう言って、少し照れくさそうに笑った。
「中将の話になると、つい熱が入ってしまうな」
「いいじゃねえか。おれにも世話になった先生がいるし、気持ちは分かるぜ」
ゼファー先生やボガードさん、それにじいちゃん。あの人たちから教わったことは、今でもおれの力になっている。
イスカにとって、ドロウ中将もそういう存在なのだろう。
「なあ、やっぱり中将ともなると、ドロウ中将も強いのか?」
おれが尋ねると、イスカはすぐに頷いた。
「ああ、強いぞ。私も何度か訓練をつけてもらったが、まだまだ敵わない」
「へえ。そいつは一度会ってみたいな」
「会うだけなら、機会はあるかもしれないな。任務で各地を回っている人だから、いつになるかは分からないが」
「そっか。じゃあ、そのうち会えるのを楽しみにしておくぜ」
イスカは頷き、また料理へ手を伸ばした。
それからは、特に決まった話題もなく食事を楽しんだ。
イスカがベルナ島で気に入っている店の話をしたかと思えば、サボが港で見かけた珍しい船の話を始め、デュースは今日の薬屋で見つけた薬草について話していた。おれも気になったことを尋ねたり、思い出したことを話したりしているうちに、時間が経つのを忘れていた。
最初は海軍の少尉ということで少し堅い印象もあったが、こうして話してみると、イスカは随分気さくな奴だった。
真面目なところは変わらないが、冗談も通じるし、面白い話には素直に笑う。何より、自分の考えをはっきり口にするところが、おれには好ましかった。
気づけば、ブルーも肉を食べ終えておれの隣で伏せていた。
イスカはそんなブルーを眺めながら、少し椅子を寄せた。
「なあ、エース。私もブルーに触ってみていいか?」
「いいぞ。ブルーが嫌がらなければな」
イスカはゆっくりと手を伸ばした。
だが、ブルーはその手をじっと見たあと、頭を引いて距離を取った。
「……駄目か」
「まだ警戒してるみたいだな」
「ああ。いきなり触ろうとしたのはよくなかったか」
イスカは少し残念そうに手を引いた。
「まあ、そのうち慣れるだろ。ブルーもイスカのことは覚えてると思うぜ」
「そうだといいな」
イスカはそう言って、ブルーへ軽く手を振った。
ブルーは首を傾げていたが、特に嫌がる様子もなかった。
おれはそんな二人を眺めながら、皿に残っていた肉を一切れ取った。
少し冷めている。
何気なく指先へ小さな炎を灯し、軽く温めようとした。
その時だった。
向かいに座っていたイスカの手が止まった。
フォークを持つ手がわずかに強張り、視線が炎へ向いている。
驚いたというより、何かを警戒するような反応だった。
おれはすぐに炎を消した。
「……悪い。火が苦手だったか?」
イスカが顔を上げた。
「あ……いや」
少し言葉を探してから、頷いた。
「……少しな」
「そうか。急に出して悪かったな」
「いや、お前が悪いわけじゃない」
イスカはそう答えたが、それ以上は何も言わなかった。
火に対して何か嫌な記憶があるのかもしれない。だが、本人が話したくないなら、今ここで無理に聞くことでもないだろう。
おれが肉をそのまま食べようとすると、イスカが口を開いた。
「冷めた料理なら、店員に頼めば温め直してくれるぞ」
「そうなのか? じゃあ頼もうかな」
「ああ。ここの店主はそういうのも快く引き受けてくれるんだ」
「そいつは助かる」
店員を呼んで皿を預けると、イスカも少しずつ普段の調子を取り戻した。
その後はサボが追加の料理を頼み、デュースもそれに付き合うことになった。イスカもまた自然に会話へ加わり、食事を終える頃には、先ほどの様子はほとんど見られなくなっていた。
◇
店を出た頃には、昼を少し過ぎていた。
大通りには朝よりも多くの人が行き交い、港へ向かう荷車が次々と通りを横切っている。
「それにしても、随分話し込んでしまったな」
イスカが満足そうに言った。
「ああ。飯もうまかったし、楽しかったぜ。ごちそうさま」
「気に入ってもらえたならよかった」
サボとデュースも礼を言うと、イスカは少し照れくさそうに笑った。
「私も楽しかったよ。普段は仕事でしか会わないからな。こうしてゆっくり話せてよかった」
「おれもだぜ。また飯でも食おうな」
「ああ。今度は私も何か面白い話を用意しておこう」
「ハハハ! 別にそんなのなくてもいいって。普通に飯食って話すだけでも楽しいだろ?」
「……それもそうだな」
イスカは少し笑って頷いた。
彼女はこのあと別の用事があるらしく、おれたちとはここで別れることになった。
「それじゃあ、またな、火拳。二人も」
「ああ。またな、イスカ」
イスカは最後にブルーへ目を向けた。
「ブルーも、またな」
「クル?」
ブルーは首を傾げたが、イスカはそれを見て笑った。
「次はもう少し仲良くなれるといいな」
そう言い残して、イスカは大通りの向こうへ歩いていった。
おれたちも港へ向かって歩き出す。
海軍の少尉と賞金稼ぎという立場は違うが、イスカとは案外気が合うのかもしれない。
基地で会う時には仕事の話が中心だったし、互いのことを詳しく知る機会もなかった。だが、今日一緒に過ごしてみて、少なくとも話していて退屈する相手ではないと分かった。
ふと、食事中のことを思い出した。
炎を出した時、イスカが見せた反応。
あれは単に火が熱いから驚いたという様子ではなかった。何か事情があるのかもしれないが、本人が話さなかった以上、今のおれには分からない。
まあ、また会うこともあるだろう。今はそれで十分だ。
「エース、そういや朝の露店に寄るんだろ?」
サボの声に顔を上げた。
「ああ、そうだったな。ブルーも食いたがってたし、帰りに買っていこうぜ」
「おれも一本買おうかな。あれ、結構うまそうだったんだよな」
「デュースもどうだ?」
「そうだな。船に持って帰るならいいかもしれない」
「じゃあ、何本か買って帰るか」
ブルーが話を聞きつけたのか、隣から顔を上げた。
「ブルー、肉を買いに行くぞ」
「クッ!」
ブルーが嬉しそうに喉を鳴らし、少し足を速めた。
おれたちもその後を追いながら、大通りへ向かった。
今日はもう海へ出る予定もない。
買ったものを船へ運んだら、あとはゆっくり過ごそう。
せっかくの休暇なんだからな。
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