転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
ベルナ島へ来てから、二ヶ月ほどが経った。
その間、おれたちはベルナを拠点に近海を回り、賞金首を捕まえたり、近隣の島へ遊びに行ったりしながら過ごしていた。
ベルナ周辺は商船の往来が盛んなだけあって、海賊の出入りも多い。海軍基地へ行けば新しい手配書や目撃情報が手に入るし、何度も賞金首を引き渡しているうちに、基地の海兵たちともすっかり顔馴染みになった。
もっとも、毎回都合よく賞金首が見つかるわけじゃない。情報を頼りに海へ出ても空振りに終わることはあったし、追っていた海賊が別の島へ逃げてしまうこともある。
そんな時は、近くの島へ寄り道することもあった。
ある島では港で開かれていた祭りに参加し、サボと二人で屋台の料理を食い歩いた。別の島では、デュースが珍しい薬草を探している間、地元の人間に教えてもらった山へ登り、頂上から海を眺めて過ごした。
島が違えば、町並みも食い物も人々の暮らしも違う。
偉大なる航路へ入ってから随分といろんな場所へ行ったが、まだまだ知らないものばかりだ。賞金稼ぎで金を稼ぎながら、好きな場所へ行って好きなことをする。今の生活は、なかなか気に入っていた。
イスカとも何度か顔を合わせた。
任務で不在のことも多かったが、基地にいれば話をしたし、時間が合えば一緒に飯を食うこともあった。以前、海軍へ誘われた一件については、あれ以来特に何も言われていない。
おれたちが賞金稼ぎを続けていることについても、今のところは普通に接してくれている。
そんな生活を続けていたある日、サボが一つのエターナルポースを持って帰ってきた。
「エース、面白そうな島を見つけたぞ」
「お、どんな島だ?」
ヴァンガード号の食堂で昼飯を食っていたおれは、サボの声に顔を上げた。
サボはテーブルへエターナルポースを置くと、一緒に持ってきた紙を広げた。
「カスケード島っていうんだ。ベルナから二日くらいで行けるらしい」
「へえ。何があるんだ?」
「大瀑布だよ。島の上から海へ直接落ちてる、でっかい滝があるんだと」
「滝か!」
紙を覗き込むと、そこには巨大な台地がそびえる島が描かれていた。
台地の縁から何本もの滝が流れ落ちており、中でも正面の一本はほかとは比べものにならないほど大きい。滝壺から立ち上る水煙まで描かれていて、なかなか迫力のある絵だった。
「おお、すげえな! これ、全部滝なのか?」
「ああ。しかも、全部真水らしいぜ」
「全部?」
「そうなんだよ。これだけの水が流れ続けてるのに、どこから湧いてるのか分かってないんだと」
「へえ……そりゃ面白いな」
改めて絵を見る。
島の上から海へ向かって、何本もの川が落ち続けている。これだけの水量なら、相当な量の水がどこかから供給されているはずだ。
地下に巨大な水脈でもあるのか。それとも、偉大なる航路らしい妙な仕組みがあるのか。
いずれにせよ、実際に見てみたかった。
「よし、行こうぜ!」
「そう言うと思った」
サボが楽しそうに笑った。
「お前も行きたいから買ってきたんだろ?」
「もちろんだ。こんな滝、見られる機会はそうそうないからな」
「だよな!」
おれたちが話していると、向かいに座っていたデュースも案内を覗き込んだ。
「カスケード島か。名前は聞いたことがあるな。水が豊富だから、珍しい植物も育ってるらしい」
「へえ。じゃあ、デュースも楽しめそうだな」
「ああ。せっかくだし、薬草を扱ってる店も見てみたい」
「なら決まりだな。しばらく賞金稼ぎも続いたし、何日か遊んでこようぜ」
「いいんじゃないか。食料もまだ余裕があるし、二日程度の航海なら問題ないよ」
デュースが頷く。
足元では、伏せていたブルーが顔を上げていた。おれたちの声が気になったのか、テーブルへ鼻先を寄せてくる。
「ブルー、お前も一緒に行くぞ」
「クルル?」
「でっかい滝がある島なんだ。面白そうだろ?」
案内を見せてやると、ブルーは紙の匂いを嗅いだあと、首を傾けた。
「ハハハ! まあ、絵じゃ分からねえよな。着いたら一緒に見に行こうぜ!」
「クルッ」
ブルーは短く鳴いて、おれの隣へ腰を下ろした。
「じゃあ、明日にでも出航するか?」
サボが尋ねた。
「ああ。今日は必要なものを買い足しておこうぜ」
「それなら、午後から港へ行こう。おれも薬を少し補充しておきたい」
「おう。飯を食ったら行くか」
次の行き先も決まったことだし、出航までにやることを済ませておこう。
カスケード島がどんな場所なのか、今から楽しみだった。
◇
カスケード島が見えてきたのは、出航して二日目の昼前だった。
最初に目に入ったのは、水平線の向こうに浮かぶ何本もの白い筋だった。
船が近づくにつれて島の輪郭がはっきりし、その白い筋が巨大な台地から海へ流れ落ちる滝だと分かってきた。
「おお……!」
船首から島を眺め、思わず声が出た。
島の中央には、周囲の山々よりも遥かに高い台地がそびえている。その縁から何本もの滝が流れ落ちており、海面へ叩きつけられた水が白い煙のように舞い上がっていた。
中でも正面の一本は、ほかの滝とは規模がまるで違う。
幅の広い川が断崖へ達し、そこから大量の水がまとめて海へ落ちている。まだかなり離れているというのに、低い轟音がここまで届いていた。
「エース、あれを見ろ!」
サボが隣へやってきた。
「見えてるぜ! すげえな!」
「ああ! 案内の絵よりずっとでかいじゃねえか!」
「こりゃ来て正解だったな!」
思っていた以上の景色だった。
これまでにも大きな滝は見たことがあるが、島の上から直接海へ落ちているものは初めてだ。それも一本だけではなく、台地を囲むように何本も流れている。
あれだけの水が絶えず流れ続けているのだから、島の上がどうなっているのかも気になる。
「なあ、サボ。上まで行けるんだよな?」
「ああ。展望所があるらしいぜ。登山道も整備されてるんだと」
「よし、あとで行ってみようぜ!」
「おう!」
ブルーも船縁から首を伸ばし、大瀑布を眺めていた。
滝の音が気になるのか、時々首を傾けながら、流れ落ちる水をじっと見つめている。
「ブルー、すげえだろ!」
「クルル……」
ブルーは滝から目を離さず、小さく鳴いた。
その様子を眺めていると、後ろからデュースの声がした。
「エース、サボ。そろそろ港へ入るぞ」
「おう、分かった!」
おれたちはそれぞれ持ち場へ戻り、帆を調整しながら港へ向かった。
島へ近づくにつれて、町の様子も見えてきた。
港には大小様々な船が停泊している。商船もあるが、目立つのは客を大勢乗せた船や、島の周囲を回るらしい小さな遊覧船だ。
港の奥には色とりどりの屋根が並び、建物の間を細い水路が走っている。船着き場には旅行者らしい人々が集まり、荷物を抱えた者や土産物を売る者たちで賑わっていた。
「へえ、観光客が多いんだな」
サボが港を眺めながら言った。
「ああ。あの滝なら見に来る奴も多いだろうな」
おれもそう答え、改めて島の中央にそびえる台地を見上げた。
港からでも大瀑布の姿はよく見える。
あんなものが毎日見られるなんて、この島の連中は随分と贅沢な景色の中で暮らしているもんだ。
◇
ヴァンガード号を港へ繋ぎ、町へ入った。
カスケード島は、歩き始めてすぐに水の豊富な島だと分かった。
道の両脇には細い水路が走り、澄んだ水が絶えず流れている。ところどころに小さな橋が架かり、店先では水車が回っていた。
広場まで行くと、台地から引いた水を使っているらしい大きな噴水もあった。
観光客がその周りで写真を撮ったり、ベンチに座って休んだりしている。水路沿いには飲食店が並び、どこからか魚を焼く香ばしい匂いが漂ってきた。
「町の中まで水だらけだな」
サボが水路を覗き込んだ。
「ああ。これも全部、あの上から流れてきてるのか?」
「そうみたいだな」
デュースが近くの案内板へ目を向けた。
「町の水路は台地の川から引いてるらしい。飲める場所もあるって書いてあるぞ」
「へえ。じゃあ、ちょっと飲んでみるか」
案内板の先には、石造りの水飲み場があった。
水盤へ絶えず水が流れ込み、余った分はそのまま下の水路へ流れていく仕組みらしい。
手を洗ってから水を掬うと、思った以上に冷たかった。
「冷てえ」
一口飲んでみる。
特に変わった味はしないが、歩いて少し暑くなっていた身体にはちょうどいい。
「美味いな」
「どれどれ」
サボも隣で水を飲み、満足そうに頷いた。
「確かに美味い。こんな水がいくらでも使えるなら、暮らしやすそうだな」
「そうだな。農業にも使えるだろうし、船の補給にも便利そうだ」
デュースが言った。
その横では、ブルーも水盤へ鼻先を寄せていた。
「ブルー、お前も飲むか?」
「クルル」
ブルーは水の匂いを確かめると、そのまま舌を伸ばして飲み始めた。
近くを通りかかった子供が、その姿を見て足を止める。
「お母さん、あれ恐竜?」
「えっ……本当だわ。あんまり近づいちゃ駄目よ」
母親は驚いた様子で子供の手を引いた。
ブルーはそんなことには気づいていないのか、しばらく水を飲んでから顔を上げた。
「よし、そろそろ行くか」
おれが声をかけると、ブルーは素直についてきた。
町を歩いているうちに、腹も減ってきた。
「なあ、先に飯にしねえか?」
「ああ。おれも腹が減った」
サボが頷く。
「せっかくだし、この島の名物を食ってみたいな」
「それなら、あそこはどうだ?」
デュースが通りの先を指さした。
店先には大きな魚の絵が描かれた看板が出ている。
「淡水魚の料理が名物らしい。肉料理もあるみたいだぞ」
「いいじゃねえか。行こうぜ!」
店主にブルーも一緒だと伝えると、最初は驚かれたものの、外の席なら構わないと言ってくれた。
水路に面したテーブルへ腰を下ろし、焼き魚や肉料理を注文する。
料理を待っている間、おれは店主へ声をかけた。
「なあ、おっちゃん。あの滝の水って、結局どこから出てるんだ?」
「さあな。おれにも分からんよ」
「ずっとこの島に住んでるんだろ?」
「生まれた時からな。だが、昔から学者が何人も調べに来てるってのに、いまだにはっきりしてねえんだ」
店主は水の入った杯を並べながら答えた。
「地下に巨大な水脈があるとか、島の中で海水が真水に変わってるとか、いろんな説はあるらしいがな」
「へえ。そんなに調べても分からねえのか」
「まあ、こっちは昔から流れてる水を使ってるだけだからな。枯れたこともねえし、飲める。ありがたい話だよ」
「ハハハ! 確かにな!」
住んでいる側からすれば、そういうものなのかもしれない。
前世でも、蛇口を捻るたびに水道の仕組みを考えていたわけじゃない。使えるものが当たり前にあるなら、普段はそこまで気にしないだろう。
もっとも、おれとしては一度くらい水源を見てみたい気もする。
そんなことを考えていると、店主が大きな皿を運んできた。
「ほら、まずは魚だ。うちの名物だから、食ってみてくれ」
「おお、美味そうだ!」
皿には大きな淡水魚が丸ごと焼かれていた。
皮はこんがりと色づき、香草のいい匂いがする。早速身をほぐして口へ運ぶと、柔らかい白身に塩と香草の味がよく合っていた。
「うまい!」
「だろ? この島の川で獲れる魚なんだよ」
店主が嬉しそうに答えた。
「海の魚とはまた違うだろ?」
「ああ。こういうのもいいな」
サボも魚を食べ、満足そうに頷いた。
「確かに美味い。ほかの料理も楽しみだな」
「おう。肉も頼んで正解だったな」
そのうち、ブルーの分の魚も運ばれてきた。
店主が大皿を置くと、ブルーはすぐに顔を寄せたが、おれが骨を外してやる間は横で待っていた。
「ほら、いいぞ」
「クルル」
ブルーは魚を咥え、満足そうに食べ始めた。
店主はその様子を興味深そうに眺めている。
「へえ、ちゃんと待ってるんだな。恐竜ってのはもっと凶暴なもんだと思ってたよ」
「こいつは頭がいいからな。知らない奴には警戒するけど、いきなり襲いかかったりはしねえよ」
「そうなのか。いやあ、長いこと店をやってるが、恐竜のお客さんは初めてだ」
「ははっ! そりゃそうだ!」
店主も笑いながら厨房へ戻っていった。
その後も料理が次々と運ばれ、おれたちはこの島の名物を十分に楽しんだ。
◇
昼飯のあとは、四人で町を見て回った。
観光地だけあって、店の種類は多い。
大瀑布を模した菓子や置物、島の水を瓶詰めにした土産まである。広場では大道芸人が客を集め、通りのあちこちから楽しそうな声が聞こえてきた。
サボは見たことのない品を見つけるたびに足を止め、デュースは薬草や薬を扱っている店があると中を覗いていた。
おれも気になった店へ立ち寄り、肉の串焼きを一本買った。
昼飯を食ったばかりだが、香ばしい匂いにつられてしまった。
「サボ、お前も食うか?」
「お、いいな。一本頼む」
「おう」
追加で一本買って渡すと、サボは早速齧った。
「美味いな、これ」
「だろ? さっきからいい匂いがしてたんだよ」
串焼きを食べながら歩いていると、少し先でデュースが足を止めた。
「おれ、あの薬屋を見てくるよ」
「さっきも薬草を見てたな。何か探してるのか?」
「この島で採れる薬草があるらしいんだ。せっかくだから、実物を見ておきたくてね」
「なるほどな。じゃあ、ゆっくり見てこいよ」
「ああ。あとで合流しよう」
デュースが店へ入っていくと、サボも市場の方へ目を向けた。
「おれも、さっきの市場をもう少し見てくるかな」
「何か気になるものでもあったのか?」
「ああ。船で使えそうな道具がいくつかあったんだ。値段も見ておきたい」
「へえ。いいものがあったら教えてくれよ」
「おう。エースはどうするんだ?」
聞かれて、町の向こうにそびえる台地を見上げた。
ここからでも大瀑布の上端が見える。
「おれは滝の上へ行ってくるぜ」
「やっぱりな。朝から行きたがってたもんな」
「せっかく来たんだ。上からの景色も見ておきたいしな。サボも来るか?」
「おれは明日にするよ。今日は市場を見て回りたいんだ」
「分かった。じゃあ、夕方に港でな」
「ああ。またあとで」
サボたちと別れ、ブルーへ目を向けた。
「ブルー、お前はどうする?」
「クルル?」
「おれは滝の上へ行くぞ。一緒に来るか?」
「クルッ」
ブルーはおれの横へ並んだ。
「よし、じゃあ行こうぜ!」
おれはブルーを連れて、台地へ続く道を歩き始めた。
◇
登山道の入口は、町の奥にあった。
観光客向けに整備されているらしく、入口には案内所があり、展望所までの道順や所要時間が書かれている。
ブルーを連れて入れるか少し気になったが、受付で事情を話すと、意外にも通してもらえた。
「その恐竜だが、人に襲いかかったりしないんだな?」
「ああ。ただ、知らねえ奴にいきなり触られるのは嫌がるから、そっちは気をつけてくれ」
「分かった。ほかの客にも伝えておくよ」
「ありがとな」
受付の男に礼を言い、登山道へ入った。
道は思っていた以上に歩きやすかった。
急な斜面には階段が設けられ、途中には何か所も休憩所や展望台がある。登るにつれて町と港が小さくなり、その向こうへ青い海が広がっていった。
ブルーは階段よりも岩場の方が歩きやすいらしく、時々道の脇にある大きな岩へ飛び乗っている。
「おい、ブルー。あんまり離れるなよ」
「クルル」
ブルーは振り返り、少し先で足を止めた。
おれが追いつくまで待っているらしい。
「そっちの方が歩きやすいのか?」
「クルッ」
「そうか。まあ、気をつけて登れよ」
ブルーは短く鳴き、また先へ進んでいった。
リトルガーデンで初めて会った頃なら、こんなふうに一緒に歩くこともなかっただろう。
あの頃はおれたちを警戒していたブルーも、今ではすっかり船の生活に馴染んでいる。
何だかんだで、もう三ヶ月ほど一緒にいることになるのか。
「お前も船暮らしが長くなったな」
「クルル?」
「最初は勝手に船へ乗ってきただけだったのにな。今じゃすっかり仲間だぜ」
ブルーが鼻先をおれの肩へ押しつけてきた。
「おっと」
軽く押し返してやると、ブルーは喉の奥で鳴いた。
「ハハハ! そうか、お前も気に入ってるか!」
「グック!」
言葉がどこまで通じているかは分からない。
それでも、ブルーが楽しそうにしているなら何よりだ。
さらに登っていくと、滝の音が少しずつ変わってきた。
下から聞いていた時は、大量の水が海へ叩きつけられる低い轟音だった。それが上へ近づくにつれて、今度は川そのものが流れる音に変わっていく。
やがて坂を登り切り、台地の上へ出た。
「おお……!」
思わず足を止めた。
崖の上に少し平らな土地があるくらいだと思っていたが、目の前には森と草原が遥か奥まで広がっている。その間を何本もの川が流れ、全てが島の外側へ向かっていた。
中でも大瀑布へ続く川は、川というより湖に近い。
大量の水が幅広く流れ、断崖へ近づくにつれて速度を増し、そのまま視界の向こうへ消えていく。
「絶景だ……!」
展望所まで歩き、柵から下を覗き込む。
足元から海まで、巨大な滝が続いていた。
水煙の向こうには遥か下の海が見え、港に停めてあるヴァンガード号は玩具みたいに小さい。
風に乗った細かな水飛沫が顔へかかり、滝の轟音が腹の底まで響いてくる。
町から見上げた時も凄かったが、上から眺めるとまた違った迫力があった。
「ブルー! こっちからも見てみろよ!」
「クルル」
振り返ると、ブルーは少し離れたところから滝を眺めていた。
近づく気はないらしい。
「そこからでも見えるか」
無理に呼ぶ必要もない。
おれは柵へ腕を乗せ、もう一度景色を眺めた。
前世でも、こんなものは見たことがなかった。
写真や映像なら似た景色を見たことはあったかもしれない。だが、実際に目の前へ立つと、そんなものとはまるで違う。
腹の底まで響く水音も、顔へかかる細かな水飛沫も、ここまで登ってきたあとの風も、画面越しじゃ分からない。
海へ出てから、こういう経験が随分と増えた。
リトルガーデンの巨大な生き物も、島ごとに違う町並みや料理も、実際に行ってみなければ分からないものばかりだ。
もちろん、強い奴と戦うのも好きだ。
美味いものを食うのも好きだ。
でも、知らない場所へ行って、見たこともないものを見るのも同じくらい面白い。
「やっぱ海に出て正解だったな!」
「クルル?」
ブルーがこちらを見た。
「お前もそう思うだろ?」
「クルル」
「ハハハ! そうか!」
多分、分かっていない。
それでも返事があったので、勝手にそういうことにした。
しばらく大瀑布を眺めてから、展望所を離れた。
台地の上にも観光客向けの店が何軒か並んでいる。
さっき昼飯を食ったばかりだが、登ってきたらまた腹が減った。
肉を焼いている店へ寄る。
「おっちゃん、串焼きを二本くれ!」
「はいよ。……そっちの恐竜も食うのか?」
「ああ。こいつの分も頼む。やっぱり四本だ!」
「分かった。ちょっと待ってな」
店主はブルーを興味深そうに眺めながら、肉を焼き始めた。
ブルーも匂いが気になるらしく、店先へ鼻先を寄せている。
「ブルー、もう少し待ってろよ」
「クルッ」
やがて焼き上がった串焼きを受け取り、ブルーの分は串から外して渡した。
ブルーはあっという間に食べ終え、満足そうに喉を鳴らしている。
おれも肉を齧りながら、近くの案内板へ目を向けた。
少し先にも別の展望所があるらしい。
まだ夕方までは時間がある。
「もうちょっと行ってみるか」
「クルル」
ブルーと並んで歩き出した。
その途中だった。
前から何人かの男たちが歩いてくる。
観光客だろう。
何か話しながら歩いていて、特にこちらを気にしている様子もない。
おれも最初は気にせず通り過ぎるつもりだった。
けれど、その中の一人を見た時、妙に引っかかった。
背の高い男だった。
短い髪に、口元を覆う髭。腰には刀を差している。
どこかで見たことがある。
「……ん?」
足を止める。
ブルーも少し先で止まり、こちらを振り返った。
「ちょっと待て」
男を見る。
ベルナで会った奴じゃない。
海軍でもない。
でも最近、どこかで何度か見ている。
どこだったかと考えて、すぐに思い出した。
「ああ」
手配書だ。
ベルナの基地で賞金首を探すたび、何度か目にしている。
名前も出てきた。
フォッサ。
白ひげ海賊団十五番隊隊長。
「……マジかよ!」
思わず笑みが浮かんだ。
前世の記憶があるおれには、白ひげ海賊団がどんな連中なのかよく分かっている。
その白ひげの船で、一つの隊を任されている男。
弱いわけがない。
ブルーが、おれの視線を追って男たちを見る。
「ブルー」
「クルル?」
「あそこにいる男、白ひげ海賊団の隊長だ」
ブルーに言っても分からないだろう。
けれど、口に出さずにはいられなかった。
大瀑布を見に来ただけの島で、こんな奴に会えるとは思っていなかった。
強い奴と戦いたい。
さっき自分で考えていたばかりだ。
まさか向こうから現れるとは。
「ハッ!」
笑いながら、フォッサを見る。
「こりゃ、観光以上に楽しくなりそうだ!」
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