転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
最近返信ができていなくて申し訳ない。目は通させていただいていて、励みになっています!
カスケード島からベルナ島へ戻った翌日、おれたちはヴァンガード号の食堂で、これからの航路について話し合っていた。
ベルナへ来た当初は、しばらく賞金稼ぎをして旅の資金を蓄えたら、次の島へ向かうつもりだった。ところが、この辺りは思っていた以上に海賊の往来が多く、賞金首を追いかけているうちに、いつの間にか二ヶ月ほど経ってしまっている。
その間に近隣の島々も巡ったし、カスケード島では白ひげ海賊団の隊長と戦うことまでできた。なかなか充実した二ヶ月だったが、そろそろ別の海域へ進んでもいい頃だろう。
「当分、金には困らねえな」
サボが帳面をめくりながら言った。
ベルナで稼いだ金は、もう二億ベリー近くになっている。賞金だけでなく、捕まえた海賊の船を売った金も入っているので、ヴァンガード号を建造した時に使った分を差し引いても、手元には相当な額が残っていた。
「当分どころか、普通に旅するだけなら何十年も困らないんじゃないか?」
向かいに座っていたデュースが言うと、サボは帳面から顔を上げた。
「何十年は言いすぎだろ」
「エースの食費を考えなければ、案外いけるかもしれないぞ」
「じゃあ無理だな!」
「お前が真っ先に諦めるのかよ」
サボが笑った。
「食う量を減らしてまで金を残してもしょうがねえだろ。それに、足りなくなったらまた稼げばいい」
「まあ、それができるのは確かだな」
サボも異論はないらしい。
足元ではブルーが身体を伸ばして伏せている。さっき食事を済ませたばかりなので、今はのんびり休むつもりのようだった。
おれは椅子の背へ身体を預け、二人を見る。
「じゃあ、そろそろベルナを出るか」
「ああ、おれもいいと思う」
サボが帳面を閉じた。
「近くの島も結構回ったしな。エターナルポースもいくつかあるから、次に向かう場所を決めれば出航できる」
「薬や食料も補充したばかりだし、船の方も問題ない。長い航海になっても大丈夫だと思うぞ」
デュースも頷いた。
ベルナへ来てからの生活は、思い返せば随分と賑やかだった。
賞金首の情報が入れば船を出し、捕まえた海賊を海軍基地へ引き渡す。何もない日には町で飯を食ったり、修行をしたり、近くの島へ足を延ばしたりもした。イスカとも何度か顔を合わせたし、海兵たちにもすっかり顔を覚えられている。
カスケード島の大瀑布も見応えがあった。あの景色は、きっとしばらく忘れないだろう。
それに、フォッサとの勝負も楽しかった。
「何だよ、エース。随分楽しそうだな」
サボに声をかけられ、顔を上げる。
「いや、ベルナでの滞在はいい選択だったなってよ」
「急だな」
「そうか? お前も結構楽しんでただろ?」
「そりゃそうだ。賞金稼ぎも面白かったし、行ったことのない島も見られたからな」
「次はもっと遠くまで行ってみたいな」
「ああ。せっかくグランドラインにいるんだしな」
サボと次の航路について話していると、ふと一つ気になることを思い出した。
「そういやさ、まだ一人、でかいのが残ってなかったか?」
「でかいの?」
サボが少し考え、それから思い当たったように顔を上げた。
「ああ、二億超えの賞金首か!」
「それだ!」
ベルナの海軍基地で賞金首の情報を調べていた時、何度か見かけた手配書がある。
この海域を根城にしているわけではないが、周辺の島々へ度々姿を現しているという大物だ。
“血煙”のガルド・ベイン。
懸賞金二億五千万ベリー。
手配書に写っていた厳つい顔も、よく覚えている。
「最後にそいつを狙おうぜ!」
「ガルド・ベインか。確かに、まだ捕まったって話は聞いてないな」
サボが興味を示す一方、デュースは少し考え込んでいた。
「そいつを捕まえてから出航するのか?」
「ああ。ベルナでずっと賞金稼ぎをしてたんだしよ。最後に一番でかい奴を捕まえて終わりにしようぜ」
「資金はもう十分あるんだろ?」
「金はあるに越したことはないだろ。それに二億五千万だぞ?」
もちろん、懸賞金だけで強さが決まるわけではない。
これまで捕まえてきた海賊の中にも、本人の腕前より船団の規模や被害の大きさによって高額の賞金がついていた奴はいた。海軍が危険視する理由は、必ずしも個人の戦闘能力だけではないのだ。
それでも、二億五千万という額は気になる。
グランドライン前半の海でそれだけの賞金がついているなら、相応の実力を持っている可能性は高い。
フォッサと戦ったばかりということもあって、余計に興味が湧いていた。
「腕試しにもなるだろ?」
「おれは賛成だ」
サボがすぐに頷いた。
「どうせ出航するなら、最後に一仕事してからでもいいだろ。おれもそいつの実力は気になるしな」
「二人とも乗り気なら、おれも反対はしねえよ」
デュースはそう言ってから、テーブルの海図へ目を向けた。
「ただ、居場所が分からなければ探しようがない。最後に目撃された場所は覚えているのか?」
「いや、そこまでは知らねえな」
「なら、まず海軍基地で情報を聞こう。あそこなら最近の目撃情報も集まっているはずだ」
「そうだな。早速行ってみるか!」
方針が決まったところで席を立つと、足元のブルーも顔を上げた。
「クルル?」
「出かけるぞ、ブルー」
「クルルル」
ブルーはすぐに立ち上がり、食堂の出口へ向かった。
サボは帳面を片づけ、デュースは海図を畳んでいる。二人の支度を待ってから、おれたちは船を降りた。
◇
ガルド・ベインの情報は、思っていたより簡単に手に入った。
海軍基地で話を聞くと、数日前からベルナの南西海域で目撃情報が相次いでおり、海軍も動向を追っているらしい。
ただ、いつもなら顔を見せるイスカの姿がなかった。
「イスカ少尉なら今朝出ましたよ」
以前から何度か話したことのある海兵が教えてくれた。
「ガルド・ベインを追ってるのか?」
「ええ。奴の海賊団と思われる船が見つかりまして、少尉たちも捜索に向かわれました」
「へえ、もう動いてたのか」
おれが感心していると、サボが隣から口を挟んだ。
「先を越されたな、エース」
「まだ捕まったわけじゃねえだろ?」
「それはそうだけどな。海軍も本気で追ってるみたいだぞ」
「二億超えのの賞金首だ。そりゃ放っておかねえだろ」
海兵も頷いた。
「ベイン海賊団は以前から周辺海域で略奪を繰り返しています。今回も何か企んでいる可能性があるので、こちらも警戒を強めているんです」
「なるほどな。それで、最後に見つかったのはどの辺りなんだ?」
おれが尋ねると、海兵は海図を広げ、ベルナ島から南西へ進んだ場所を指した。
目撃地点までは、ヴァンガード号なら一日もかからない距離だ。
その先には小さな島が一つある。
「この島は?」
「世界政府には加盟していない小さな島国です。ベイン海賊団が向かっているかどうかは、まだ分かっていません」
非加盟国か。
世界政府に加盟していない分海賊の被害に会いやすい。奴がいる可能性としては低くないだろう。
イスカたちが既に動いているなら、あまりのんびりしている場合でもなさそうだ。
「行ってみるか」
「ああ。今から出れば今日中には着けるな」
サボが海図を確かめる。
デュースも必要な情報を聞き終えたらしく、海兵へ礼を言った。
「情報、助かったよ」
「いえ。皆さんもお気をつけて。相手は相当な大物ですから」
「おう、ありがとな!」
基地を出ると、そのまま港へ戻った。
出航の準備はほとんど済んでいる。食料も水も十分に積んであるし、燃料代わりに使うおれの炎なら補給の心配もない。
港を離れたヴァンガード号は、風を受けて南西へ進み始めた。
天気はよく、海も穏やかだった。
帆だけでも十分な速さが出ていたが、目的地まではそれなりに距離がある。おれは船尾の推進装置へ炎を送り込み、速度を上げた。
船体が前へ押し出され、甲板を吹き抜ける風が強くなる。
「エース、少し速いぞ!」
舵を取っていたサボが声を上げた。
「まだ余裕あるだろ?」
「船はな。こっちは舵を取ってるんだぞ!」
サボは風向きを見ながら舵を調整していた。
確かに、速く進めばいいというものでもない。目的の島へ近づく前に航路を外れては意味がなかった。
「分かった。少し落とすぞ!」
「ああ、そのくらいで頼む!」
炎の出力を調整すると、船の揺れも落ち着いた。
デュースは船内で医療道具を確かめている。賞金首を追うだけなら出番がないことも多いが、怪我人が出る可能性を考えて準備を怠らないのはいつものことだ。
ブルーは甲板の中央で伏せ、流れていく海を眺めていた。
そのまま順調に航海を続け、やがて水平線の向こうに目的の島が見え始めた。
だが、最初に目についたのは陸地ではなかった。
「……何だ、あれ」
サボの声が変わった。
おれも船首へ目を向ける。
島の上空へ、黒い煙が何本も立ち上っていた。
雲とは明らかに違う。風に流されながらも、煙は途切れることなく上がり続けている。
「火事か?」
「それにしちゃ、煙が多すぎるな……」
サボが険しい顔で島を見つめた。
近づくにつれて、煙の下に町並みが見えてきた。
海に面した港があり、その奥には家々が並んでいる。町の規模はそれほど大きくなさそうだが、港から続く通りの何ヶ所かで炎が上がっていた。
さらに距離が縮まると、港に停泊している船も見えてきた。
何隻もの海賊船だ。
その帆柱には、見覚えのある海賊旗が掲げられていた。
「ベイン海賊団だな」
サボが言った。
「ああ。間違いねえ」
手配書と一緒に確認した旗だ。
どうやら目的の相手は、この島へ来ていたらしい。
だが、町の様子を見る限り、ただ寄港しているわけではなさそうだった。
遠くから銃声が響いた。
一発ではない。何度も断続的に聞こえ、その合間には人の叫び声まで混じっている。
デュースも異変に気づき、船内から甲板へ出てきた。
「何があったんだ?」
「海賊が町を襲ってる」
おれが答えると、デュースも島へ目を向けた。
「……酷いな」
港の一角では、建物から上がった炎が隣の屋根へ燃え移ろうとしている。海岸沿いの通りを走る人影も見えた。
ガルドを捕まえに来たのは確かだが、まずは町の人間を助ける方が先だ。
「サボ、港につけてくれ!」
「分かった!」
「デュース、救急道具を頼む!」
「もう準備してある!」
デュースはすぐに船内へ戻った。
おれは船首へ進み、燃えている町を見据えた。
これ以上、海賊たちを好き勝手にさせるつもりはない。
「ブルー、行くぞ!」
「クルル!」
ヴァンガード号が港へ入る。
岸壁へ近づいたところで、おれは船縁を蹴って陸へ飛び移った。
◇
町へ入ってすぐに、襲撃の酷さが分かった。
通りには壊された荷車や樽が散乱し、商店の扉もいくつも破られていた。店から奪った品物を抱えて港へ戻ろうとしている海賊がいる一方で、逃げる住民を追い回している連中までいる。
「ぐへへ、待ちやがれぇ!」
目の前の通りで、女を追っていた海賊が剣を振り上げた。
おれは二人の間へ飛び込み、男の腹へ拳を叩き込む。
「ぐはっ!」
海賊が吹き飛び、後ろにいた仲間を巻き込んで地面へ転がった。
「なっ、てめえ――」
残った男が武器を構えようとしたので、そのまま蹴り飛ばした。
女は逃げる途中で転んだのか、地面へ座り込んでいた。
「立てるか?」
「は、はい……!」
「ここから離れろ。港の方にも海賊がいるから、なるべく人の多いところへ行くんだ」
女は何度も頷き、ふらつきながらも走り出した。
その背中を見送る間にも、通りの奥から悲鳴が聞こえてくる。
見れば、二階建ての家が燃えていた。
窓から噴き出す炎が屋根を舐め、隣の建物へ燃え移ろうとしている。
「中に人がいるんだ!」
入口の前で、男が二人、必死に扉を開けようとしていた。
おれが駆け寄ると、一人が振り返った。
「どうした? 誰か取り残されてるのか?」
「娘がまだ中にいるんだ! 火が回って、入れなくて……!」
「どこにいる?」
「二階の奥の部屋だ! 頼む、助けてくれ!」
「分かった。ここで待ってろ!」
おれは炎の上がる入口へ飛び込んだ。
メラメラの能力者であるおれにとって、火そのものは障害にならない。ただ、煙で視界が悪くなっているので、息を止めながら階段を駆け上がった。
途中で焼けた梁が崩れ落ちてきたが、武装色を纏わせた腕で弾き飛ばす。
二階へ上がると、奥の部屋から咳き込む声が聞こえた。
「おい、いるか!」
「……っ、ここ……!」
声のする扉を蹴破る。
部屋の隅には、小さな女の子が蹲っていた。煙を吸ったらしく、苦しそうに咳き込んでいる。
「迎えに来たぞ。もう大丈夫だ」
女の子を抱き上げ、窓へ向かう。
階段は崩れかけているし、わざわざ戻る必要もない。
窓を蹴り破って外へ飛び出し、月歩で空中を蹴りながら地面へ降りた。
「ミナ!」
入口で待っていた男が駆け寄ってくる。
娘を渡すと、男は泣きそうな顔で何度も頭を下げた。
「ありがとう! 本当に、何と礼を言えば……!」
「礼はいい。それより早く離れろ。まだ火が広がるぞ!」
男は娘を抱きしめたまま頷き、もう一人の男と一緒に通りを離れていった。
おれは改めて燃えている家を見上げた。
火はかなり回っている。家そのものを残すのは難しそうだが、隣へ燃え移るのは防ぎたい。
自分の炎なら自由に操れるが、他の火を何でも思いどおりに動かせるわけではない。
なら、燃え広がる道を断つ方が早い。
隣の建物へ伸びていた庇へ向けて脚を振るう。
「嵐脚!」
飛ぶ斬撃が燃え始めた庇を切り落とし、木材が地面へ落ちた。おれはそれを蹴って建物から離し、延焼しそうな場所を確かめる。
その時、屋根の上から声がした。
「そっちは任せろ!」
見上げると、サボが隣の建物の屋根へ降り立ったところだった。
腕には子供を一人抱えている。
「そっちにも人がいたのか?」
「ああ。奥の家に取り残されてたんだ。こっちはもう大丈夫だ!」
「分かった!次の通りを見てくる!」
「ああ!おれもすぐ行く!」
サボは子供を安全な場所へ降ろし、再び月歩で飛び上がった。
おれも別の通りへ向かう。
町のあちこちで海賊が暴れているが、全員をその場で捕まえている時間はない。住民を襲っている奴や、避難の邪魔になる奴を優先して倒し、逃げ遅れた人間を探して回った。
途中、通りの先でブルーが海賊の一人へ飛びかかるのが見えた。
「うわあああっ!」
銃を構えていた男が悲鳴を上げ、武器を取り落とす。
ブルーはそのまま男の肩へ食いつくように頭を寄せたが、噛みつく代わりに身体を振って地面へ叩きつけた。
「グルルル……!」
倒れた男は、もう起き上がれそうになかった。
「ブルー、そいつはもういいぞ!」
「クルル!」
ブルーは男から離れ、おれの方へ駆け寄ってきた。
海賊を倒すだけなら、ブルーにも十分できる。だが、燃えている家の中へ入ったり、瓦礫の下敷きになった人間を助けたりするには、おれの方が向いているだろう。
「まだ逃げ遅れてる奴がいるかもしれねえ。一緒に探そう」
「クルルル!」
ブルーを連れて次の角を曲がったところで、聞き覚えのある声がした。
「あちらへ向かえ! 港じゃない、北の広場だ! 負傷者は海兵に預けろ!」
イスカだ。
広い通りで十人ほどの海兵を指揮し、住民を避難させていた。
軍服の袖には血がついているが、本人が怪我をしている様子はない。近くには海賊が二人倒れており、海兵が縄をかけているところだった。
その向こうから、別の海賊が斧を振り上げて突っ込んできた。
「イスカ!」
おれが声をかけるより早く、イスカのレイピアが動いた。
斧を正面から受けず、細い刀身で軌道を逸らす。そのまま身体を入れ替えるように踏み込み、すれ違いざまに海賊の肩を斬り裂いた。
「ぐあっ!」
斧が地面へ落ちる。
イスカは返す刃で男の脚を突き、倒れたところを海兵へ任せた。
それから、ようやくこちらに気づいた。
「火拳か!?」
「よう、イスカ!」
「何でお前がここにいるんだ!」
「ガルドを追ってきたんだよ!」
「お前もか!」
イスカは驚いたようだったが、すぐに表情を引き締めた。
「なら話は後だ! 西側にまだ住民が残ってる。火が回って避難が遅れているんだ!」
「分かった!」
「サボとデュースはどうした?」
「サボは町の方で救助してる。デュースは怪我人を診てるはずだ!」
「そうか。なら、医者がいると海兵にも伝えてくれ。負傷者を集める!」
「おう、任せろ!」
それだけ話すと、おれたちはそれぞれの持ち場へ向かった。
ガルドがどこにいるのかは、まだ聞いていない。
イスカも今は伝える余裕がないようだった。
海賊を捕まえるのは、町の人間を安全な場所へ避難させてからでも遅くない。
◇
それからしばらく、おれたちは町中を走り回った。
火に囲まれた家から人を運び出し、道を塞いでいた瓦礫を取り除き、住民を襲っている海賊を倒す。
サボも月歩と剃を使い、建物の屋根を飛び移りながら救助を続けていた。
崩れかけた家や高い場所に取り残された人間を運ぶなら、おれたちの方が普通の海兵よりずっと速い。海兵たちは避難経路の確保や住民の誘導を引き受け、自然と役割が分かれていった。
デュースは途中から北の広場へ移り、海兵と協力して負傷者の治療を始めていた。
様子を見に行くと、広場には大勢の住民が集まっていた。
怪我をして座り込んでいる者もいれば、家族の無事を確かめて抱き合っている者もいる。海兵たちは水や布を運び、デュースの指示に従って負傷者を順番に診せていた。
「次の人を頼む!」
「先生、この人も見てください!」
「おれは医者じゃない! ……いや、今はそれより、そっちの火傷の人を先に運んでくれ!」
デュースは手を休めずに答えている。
海兵の一人が担架を持ってくると、すぐに別の負傷者へ向き直った。
「デュース!」
声をかけると、こちらを振り返った。
「エースか。何かあったのか?」
「こっちで手伝えることはあるか?」
「今は大丈夫だよ。負傷者を運ぶ海兵もいるし、手当てに必要な物も足りてる。それより、まだ町に残ってる人がいないか見てきてくれ!」
「分かった。何かあったら呼んでくれよ!」
「ああ、頼む!」
デュースはすぐに治療へ戻った。
その少し離れたところには、ブルーが伏せていた。
最初は恐竜の姿を見て怖がっていた住民たちも、ブルーが海賊を倒すところを見たせいか、今では近くを通っても大きく騒ぐ者はいない。
むしろ、数人の子供がブルーの陰へ隠れるように座っていた。
ブルーも嫌がる様子はなく、時折周囲へ目を向けながら大人しくしている。
「ブルー、ここにいたのか」
「クルル」
「デュースの近くにいてやってくれ。おれはもう少し町を見てくるからさ」
「クルルル」
ブルーは一度こちらを見上げると、また広場の方へ顔を向けた。
おれはそのまま町へ戻った。
時間が経つにつれて、海兵の数も増えてきた。
港には軍艦が入っており、海軍の本隊も到着したらしい。通りでは海兵たちが捕らえた海賊を連行し、住民の避難を手伝っている。
まだ火が残っている建物もあったが、最初に見た時のような混乱は収まりつつあった。
おれも何度か町を回り、逃げ遅れた住民がいないか確かめた。
倒れた建物の下から人を助け出したり、海賊に追われていた住民を広場へ送ったりしているうちに、避難はほとんど終わったようだった。
北の広場へ戻ると、イスカも来ていた。
額には汗が浮かび、軍服も煤で汚れている。海兵たちへ指示を出しながら、運び込まれる負傷者の数を確認していた。
「イスカ!」
「火拳。西側はどうだった?」
「一通り見てきた。動ける奴はこっちへ向かわせたぞ。家の中も確認したけど、もう取り残されてる奴はいなさそうだ」
「そうか。助かった」
イスカは短く息を吐き、周囲へ目を向けた。
「こっちも避難はほぼ終わった。海兵を残して消火と負傷者の搬送を続けるつもりだ」
「よし、そろそろ本命を追えるな」
「ああ」
今度はイスカも頷いた。
「島の中央へ向かったという報告がある。海賊団の主力もそちらに集まっているらしい」
「やっとお目見えか」
「気を抜くなよ。相手は二億五千万の賞金首だ」
「分かってるさ。だからこそ追ってきたんだ」
イスカが何か言おうとした、その時だった。
遠くから、大きな衝撃音が響いた。
砲撃とは少し違う。
地面を通して伝わってきた振動に、広場の人間たちも一斉に顔を上げた。
音がしたのは、町の中央の方角だ。
「今のは……」
イスカが呟く。
「行くぞ!」
「ああ!」
ちょうどそこへ、サボも戻ってきた。
「エース、今の音は何だ?」
「分からねえ。町の中央から聞こえたんだ」
「ガルドかもしれないな。おれも行くぞ!」
「おう、デュースは?」
「まだ動かせない怪我人がいるから、ここに残るってさ」
「じゃあ、ブルーもここで待っててもらおう」
広場の端へ目を向ける。
ブルーは子供たちの近くで座っていたが、おれたちが動き始めたのを見て立ち上がった。
「ブルー! おれたちはちょっと行ってくる。デュースと一緒に待っててくれ!」
「クルル?」
「すぐ戻るからさ!」
ブルーは少しこちらを見ていたが、やがて再び腰を下ろした。
デュースにも一声かけてから、おれとサボ、イスカは町の中央へ向かって走り出した。
通りを進むにつれて、周囲の様子が変わっていった。
こちらには逃げる住民の姿がない。
代わりに、倒れた海賊たちが目につくようになった。
路地の入口にも、壊れた荷車のそばにも、海賊が倒れている。斬り傷を負った者もいれば、壁へ叩きつけられたような者もいた。
中には武器を握ったまま気絶している奴もいる。
「海兵が先に入ったのか?」
サボが周囲を見ながら尋ねた。
「おそらく本隊だ」
イスカが答える。
「ドロウ中将も来ているはずだ」
ドロウ中将。
以前からイスカが何度も名前を出していた、直属の上官だ。
彼女にとっては特別な恩人でもあるらしい。
おれも会うのは初めてだったので、どんな人物なのか少し気になっていた。
さらに進むと、通りの先が開けてきた。
石造りの建物に囲まれた、町の中央広場だ。
その周囲にも海賊が何人も倒れていたが、広場の中央にはまだ立っている男がいた。
大柄で、いかにも荒くれ者といった風貌の海賊だった。
手配書で何度も見た顔だ。
“血煙”のガルド・ベイン。
懸賞金二億五千万ベリー。
ようやく見つけた。
だが、ガルドはこちらを見ていなかった。
その正面に、もう一人の男が立っている。
背中には海軍のコートを羽織り、堂々とした姿勢でガルドと向かい合っていた。
イスカが足を止める。
「ドロウ中将……」
男は振り返らなかった。
燃える町を背に、ただガルド・ベインを見据えていた。
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