転生したらエースだった件 作:みけまる(AI執筆)
先に仕掛けたのはガルドだった。
大柄な身体に似合わない鋭い踏み込みで間合いを詰め、武装色で黒く硬化させた刃を振り下ろす。ドロウ中将はそれを正面から受け止めたが、刃同士がぶつかった衝撃は周囲の石畳にまで伝わり、広場へ甲高い音が響いた。
なかなかの威力だ。
二億五千万ベリーという懸賞金は、海賊団の規模やこれまでの被害だけでついたものではないらしい。ガルド自身も相当に鍛えられており、身体能力も武装色の覇気も、これまでベルナ周辺で捕まえてきた海賊とは一線を画している。
もっとも、先日戦ったフォッサと比べれば、まだ及ばないだろう。
そして、目の前でガルドと戦っているドロウ中将も、かなりの実力者だった。
「ドロウ中将が優勢か」
隣で戦いを見ていたサボが言った。
「ああ」
ガルドの攻撃は重く、武装色を纏った刃には十分な殺傷力がある。しかし、ドロウ中将は無理に力比べを続けようとせず、相手の踏み込みに合わせて身体を動かし、刃の軌道を外していた。
ガルドが勢いに任せて攻め込めば、その力を利用して体勢を崩し、空いたところへ拳を叩き込む。防御から反撃へ移る動きに迷いがなく、相手の攻撃をよく見ていることが分かった。
何度か攻防を重ねるうちに、二人の実力差は少しずつ明らかになっていった。
「チッ……!」
ガルドが舌打ちし、力任せに刃を横薙ぎに振るった。
ドロウ中将は身を沈めて斬撃を潜ると、そのまま懐へ踏み込み、武装色を纏った拳を腹へ叩き込んだ。
「ぐっ……!」
巨体が後方へ押し飛ばされ、ガルドの靴底が石畳を削る。それでも倒れることはなく、数歩下がったところで踏みとどまると、すぐに刃を構え直した。
「海軍の犬が……!」
「海賊風情がよく吠える」
ドロウ中将は追撃せず、ガルドの動きを見据えていた。
「二億五千万だろうが関係ねェ。ここで終わりだ、ガルド・ベイン」
「ほざけェ!」
ガルドが再び地面を蹴った。
ただし、今度は真正面から斬りかかろうとはしなかった。広場を囲む建物へ向かって走り、壁を蹴って方向を変えると、横合いから刃を振り下ろす。
ドロウ中将がそれを躱すと、ガルドは着地と同時に距離を取り、別の角度から攻撃を仕掛けた。
正面からの力比べでは勝てないと判断したのだろう。建物を利用して動き回り、相手に攻撃の狙いを絞らせないようにしている。
悪くない判断だ。
もっとも、ドロウ中将もその程度で見失うような相手ではなかった。ガルドの動きに合わせて位置を変え、広場の端へ追い詰めていく。
その様子を見ていたおれは、少し気になることがあった。
「……おい、サボ」
「ああ。まだ人が残ってるな」
広場の外へ続く通りには、逃げ遅れた住民たちの姿があった。
母親らしい女が子供の手を引いて走り、その後ろでは老人が壁に手をつきながら歩いている。窓から外を窺っている者もおり、周辺の建物にもまだ人が残っている可能性が高かった。
先ほどまで救助していた区域とは違うため、避難が十分に進んでいないのだろう。
イスカも気づいたらしく、二人の方へ声を上げた。
「ドロウ中将! そちらにはまだ住民がいます!」
だが、戦闘は止まらなかった。
ガルドの刃を躱したドロウ中将が、腰に下げていた武器へ手を伸ばす。
取り出したのは、銃にしては随分と太い筒状の武器だった。
何だ、あれは。
そう思った直後、銃口から大量の炎が噴き出した。
「なっ……!」
放たれた炎が広場を横切り、ガルドへ迫る。
ガルドは咄嗟に横へ跳んで直撃を避けたが、その背後には民家があった。
炎が木造の壁へぶつかり、窓枠や軒先へ燃え広がっていく。
「冗談だろ……!」
建物の中から悲鳴が聞こえた。
考えている暇はない。
「サボ、手分けするぞ!」
「分かった!」
おれが燃え始めた家へ向かうと、サボは隣の建物へ走った。イスカもすぐに海兵たちへ指示を飛ばし、周辺に残っている住民の避難を始めている。
「まだ住民が残っている! 建物の中も確認しろ! 消火班はこっちだ!」
おれは燃えている家の扉を蹴破り、中へ飛び込んだ。
炎そのものは問題ないが、家の中には煙が充満し始めていた。息を止めながら一階を確かめると、二階から苦しそうな咳が聞こえてくる。
階段にも火が回っていたので、手すりを蹴って一気に上がった。
二階の廊下には煙が溜まり、奥の部屋から老人の呻き声が聞こえていた。
「おい、大丈夫か!」
「う……」
床に倒れていた老人は、呼びかけにかろうじて反応した。
まだ意識はある。
おれは身体を抱え上げ、近くの窓を蹴り破った。そこから外へ飛び出し、月歩で高度を調整しながら通りへ降りる。
ちょうど海兵が駆け寄ってきたので、老人を預けた。
「煙を吸ってる。北の広場にいるデュースに診せてくれ!」
「分かりました!」
海兵が頷き、老人を運んでいく。
おれは再び燃えている家を見上げた。
火の勢いはまだそれほど強くない。周囲への延焼を防げば、被害を抑えられるはずだ。
そう考えていたところで、視界の端に新たな炎が映った。
振り返ると、ドロウ中将が再びあの武器を構えていた。
ガルドは広場の端に追い込まれており、その背後には別の建物が並んでいる。
「おい、待て!」
声が届くより早く、炎が放たれた。
ガルドは刃を振り、迫ってきた炎を散らしながら横へ逃れる。しかし、斬り裂かれた炎はそのまま消えることなく、周囲の建物へ降りかかった。
燃え始めた軒先から屋根へ火が走り、隣り合う家にも炎が広がっていく。
「きゃあああっ!」
窓の向こうから女の悲鳴が上がった。
別の家では子供が泣き叫んでいる。
玄関から飛び出してきた男の背中には火がついており、近くにいた海兵が慌てて地面へ押し倒すと、上着を使って消火を始めた。
海賊を倒すための攻撃が、逃げ遅れた住民を次々と危険に晒している。
「ドロウ中将!」
イスカの声が広場に響いた。
「まだ市民が残っています! 攻撃を止めてください!」
ドロウ中将は一瞬だけイスカへ顔を向けた。
「邪魔だ、イスカ少尉。下がってろ」
「ですが、このままでは被害が広がります!」
「こいつを逃がせば、また別の町が襲われる。それだけだ」
「しかし……!」
「海賊を討つのがおれの仕事だ。お前は自分の仕事をしろ」
それだけ言うと、ドロウ中将は再びガルドへ向き直った。
イスカは何か言いかけたものの、それ以上言葉を続けられなかった。
おれは燃え広がる家々へ目を向ける。
サボが二階の窓から子供を抱えて飛び出し、近くの海兵へ預けていた。その隣では別の海兵たちが扉を壊し、逃げ遅れた住民を探している。
皆が必死に救助しているのに、そのすぐ近くではドロウ中将がガルドを追い回し、また炎を放とうとしていた。
このままでは、いくら助けても追いつかない。
「サボ!」
子供を海兵へ渡したサボが振り返った。
「どうした!」
「救助任せていいか!」
「ああ。何かするのか?」
「あいつを止める!」
おれが広場を指すと、サボもそちらへ目を向けた。
燃えている家々を見たあと、ドロウ中将の手にある武器へ視線を移す。
「……分かった。こっちは任せろ!」
「頼んだ!」
サボなら大丈夫だ。
おれはそのまま広場へ戻った。
ガルドの斬撃を躱したドロウ中将が、また例の武器を向けようとしている。
「いい加減にしやがれ!」
地面を蹴り、一気に二人の間へ割って入った。
炎が放たれる直前にドロウ中将の腕を掴み、銃口を空へ向ける。
直後、勢いよく噴き出した炎が頭上へ吹き上がった。
「……何のつもりだ」
ドロウ中将がおれを睨む。
「場所を変えろ。まだ住民が残ってる」
「退け」
「断る」
掴んだ腕に力を込める。
ドロウ中将は振りほどこうとしたが、おれの手はほとんど動かなかった。
その目が険しくなる。
「……賞金稼ぎが、海軍の任務を邪魔する気か?」
「町を燃やすのが任務なのか?」
「海賊を討つのがおれの任務だ」
言い終わるより早く、ドロウ中将の身体が沈んだ。
掴まれた腕を無理に引き抜こうとはせず、空いている拳をおれの腹へ打ち込んでくる。
おれは手を離して腕で受けた。
武装色同士がぶつかり、足元の石畳に亀裂が走る。
なかなか重い一撃だったが、身体が押されるほどではない。
ドロウ中将もそれに気づいたらしく、わずかに目を細めた。
その時、背後で足音がした。
ガルドだ。
こちらの様子を窺っていたらしいが、ドロウ中将の注意が逸れたと見るや、広場の端へ向かって走り出した。
「ハッ! 勝手にやってろ!」
そのまま路地へ姿を消す。
「待て!」
ドロウ中将が追おうとしたので、おれは再び前へ出た。
「退け!」
「まず火をどうにかしろ!」
「邪魔をするな、小僧!」
怒りを露わにしたドロウ中将が拳を振るった。
動きは見えている。
身体をずらせば簡単に避けられるが、後ろにはまだ建物が残っていた。攻撃を空振りさせて、そのまま壁へ突っ込まれても困る。
おれは武装色を纏った腕で拳を受け、衝撃を殺しながら相手の手首を掴んだ。
ドロウ中将が体勢を立て直そうとする前に膝を腹へ入れ、身体を捻って広場の中央へ投げ飛ばす。
「ぐっ……!」
大柄な身体が宙を舞った。
だが、ドロウ中将もただ投げられるような相手ではない。空中で姿勢を整え、石畳へ両足で着地した。
「……なるほどな」
ドロウ中将は口元を拭いながら、おれを見据えた。
「ガープ中将の孫だけあって、腕は立つようだな」
「へえ、知ってんのか」
「本部じゃ有名な話だ」
「そりゃどうも」
「海軍にいたのならだ。ここでおれに逆らえばどうなるか分かってるんだろうな?」
「さあ、皆目見当もつかねぇな」
「ふざけるな!」
ドロウ中将が踏み込んできた。
先ほどガルドと戦っていた時よりも、明らかに攻撃が激しくなっている。
右の拳を外へ流せば、すぐに左が追ってくる。こちらが間合いを外そうとすると、踏み込んで蹴りを繋げてきた。
いずれの攻撃にも武装色が纏われており、まともに受ければ相応の威力がある。
だが、こちらには見聞色もある。
攻撃の起こりを捉え、拳の軌道を外しながら、必要なところだけ武装色で受け止める。ドロウ中将も簡単には崩れないが、少なくともこちらが押されるような相手ではなかった。
反撃できる機会も何度かあった。
拳を潜れば顎が空き、蹴りを躱せば軸足が残る。そこへ十分な力を込めて攻撃すれば、大きく吹き飛ばすこともできるだろう。
ただ、今は場所が悪い。
広場の周囲には建物が並び、まだ住民や海兵が避難と消火を続けている。ドロウ中将を無闇に吹き飛ばせば、その先に何があるか分からない。
おれ自身が被害を増やしては、止めに入った意味がなくなってしまう。
そこで、ドロウ中将の攻撃を受け流しながら手首を取り、体勢を崩して広場の中央へ押し戻すことにした。
「逃げてばかりか!火拳!?」
「好きに思ってろ!」
ドロウ中将は舌打ちし、再び拳を振り上げた。
その時、視界の端で燃えていた屋根の一部が崩れた。
焼けた梁が傾き、隣の建物へ倒れかかっている。
まずいな。
おれはドロウ中将から距離を取ると、月歩で建物の間へ飛び込んだ。
落ちてきた梁を蹴り飛ばし、火の粉を撒き散らしながら通りの中央へ落とす。これなら少なくとも、隣の家へ燃え移ることはないだろう。
だが、着地した時にはドロウ中将がすぐ後ろまで迫っていた。
「よそ見とは余裕だな!」
「誰のせいだと思ってんだ!」
振り下ろされた拳を両腕で受け止める。
足元の石畳が沈み、亀裂が周囲へ広がった。
そのまま力を込めて押し返すと、ドロウ中将の身体が後ろへ下がる。
こいつは、本当に周りの被害を気にしていないらしい。
さっきから何度も家が燃え、住民が悲鳴を上げている。海兵たちも救助に追われているのに、ドロウ中将は一度としてそちらへ向かおうとしなかった。
海賊を討つことしか考えていないのか。
「あんた!あれが見えてるんだろ!?」
「だからどうした!」
即答だった。
「海賊さえいなけりゃあ、おれがこうして火を放って回る必要もなくなるんだ! 奴らを野放しにする方が、よっぽど多くの人間が死ぬ!」
「……そうかよ」
もう十分だった。
こいつは住民が巻き込まれていることを知らないわけじゃない。分かったうえで、自分のやり方を変えるつもりがないのだ。
ドロウ中将が腕を引き、地面に落ちていた武器へ手を伸ばそうとする。
まだ使う気か。
おれはその腕を蹴り上げ、武器をさらに遠くへ弾き飛ばした。
「ぐっ……!」
ドロウ中将が顔を歪める。
その向こうに、イスカの姿が見えた。
広場の端で海兵たちを指揮していたはずだが、いつの間にか動きを止めている。
顔から血の気が引き、こちらを見つめたまま立ち尽くしていた。
「イスカ少尉!」
近くの海兵に呼ばれ、イスカの肩が跳ねた。
「……あ、ああ」
返事が遅れた。
すぐに我に返ったように負傷者の方へ走っていったが、明らかに様子がおかしい。
火が苦手なのは知っている。
以前、本人から故郷で火事に遭った話を聞いたこともあった。だから、燃えている町を見て動揺するのは不思議じゃない。
ただ、さっきまでのイスカは、そんな状況でも海兵を指揮して救助に当たっていた。
それが今は、まるで何か信じられないものを見たような顔をしている。
しかも、イスカが見ていたのは燃えている家ではなかった。
ドロウ中将だ。
……何だ?
考えを巡らせようとしたところで、ドロウ中将が再び攻撃を仕掛けてきた。
今度は背後に誰もいない。
おれは振り抜かれた拳を身を沈めて躱すと、そのまま懐へ踏み込んだ。
武装色を纏った拳を腹へ叩き込む。
「がっ……!」
ドロウ中将の身体が大きく折れた。
そのまま広場の中央へ向けて打ち抜くと、巨体が石畳を何度も転がり、離れた場所でようやく止まった。
しばらく動かなかったが、やがて片膝をつき、ゆっくりと立ち上がる。
呼吸は荒くなっている。
それでも戦意は衰えておらず、すぐに拳を構え直した。
やはり、海軍中将だけのことはある。
身体能力も覇気も相当に鍛えられているし、攻防の中でこちらの動きを見極めようとする余裕もある。
もっとも、倒すだけならそれほど時間はかからないと思う。
問題は、周囲への被害だ。
こいつは自分が攻撃した先に何があろうと、構わず仕掛けてくる。こちらがまともに応戦すれば、広場の建物まで巻き込むことになりかねない。
おれは周囲へ目を向けた。
海兵たちが住民を誘導し、燃えた家々では消火活動も始まっている。先ほどより避難は進んでいるようだが、まだ完全に安全とは言えない。
サボの姿は見当たらなかった。
向こうの通りで救助を続けているのだろうか。
そう思ったところで、ドロウ中将が再び踏み込んできた。
おれも構え直す。
今度は先ほどより深く踏み込み、こちらが受け流そうとした拳を途中で引いて、反対の腕を振るってきた。
その切り替えは悪くない。
だが、攻撃を変えたところで、こちらの見聞色を振り切れるわけではなかった。
拳を躱し、懐へ入る。
脇腹へ一発入れようとしたところで、その向こうに海兵が見えた。
おれは拳を引き、代わりに肩を押し込んでドロウ中将の身体を反転させる。
「チッ!」
すぐに肘が返ってきた。
それを外し、続く拳を受け止めながら足元を崩す。相手が踏みとどまろうとしたところで手首を取り、再び広場の中央へ押し戻した。
ドロウ中将も一方的に投げられ続けるつもりはないらしく、次からは掴まれる前に腕を引き、距離を取ろうとしてきた。しかし、そうすればこちらも追いかける必要がなくなる。
周囲へ向かわせなければ、それでいい。
何度か攻防を繰り返すうちに、ドロウ中将の苛立ちはますます強くなっていった。
「癪に障る野郎だ!」
「そっちこそな!」
ドロウ中将が腕を振りほどき、怒鳴った。
「お前が邪魔をしなけりゃ、ガルドはとっくに仕留めていた!」
「逃げたなら後で捕まえりゃいいだろ!」
「簡単に言うな! 奴がまた別の町を襲ったらどうする!」
言いたいことが分からないわけじゃない。
ガルドほどの海賊を逃がせば、別の島でまた略奪を繰り返す可能性はある。海軍として、何としてもここで捕まえたいという考えも理解できる。
だが、そもそもガルドを追い詰めていたのはドロウ中将の方だった。
あれだけの実力差があるなら、周囲を焼き払わずとも捕まえる方法はあったはずだ。
それを指摘したところで、こいつが納得するとも思えないが。
ドロウ中将の拳を受け止め、力を込めて押し返す。
相手の足が石畳を擦り、じりじりと後ろへ下がった。
純粋な力比べでも、おれの方が上だ。
ドロウ中将もそれを悟ったらしく、押し合うのをやめて身体を捻り、横へ逃れると距離を取った。
おれは追撃せず、周囲の状況を確かめる。
その時だった。
「エース!」
聞き慣れた声が飛んできた。
振り返ると、広場へ続く通りからサボが走ってきていた。
ただし、一人ではない。
片手で誰かの襟元を掴み、その大きな身体を石畳の上へ引きずっている。
見覚えのある巨体だった。
“血煙”のガルド・ベイン。
懸賞金二億五千万ベリーの海賊が、意識を失ったままサボに引きずられていた。
顔には殴られた跡が残り、先ほどまで握っていた刃も見当たらない。
サボ自身も服に煤や土がついていたが、大きな怪我をしている様子はなかった。
広場へ入ったサボは、まず燃えている家々へ目を向けた。
それからおれとドロウ中将を見比べ、引きずってきたガルドを石畳の上へ下ろす。
「逃げていくのが見えたから追いかけたんだ。こいつで間違いないよな?」
「ああ、間違いねえ」
「思ったより逃げ足が速くてな。ちょっと手間取った」
サボはそう言いながら、気絶しているガルドを見下ろした。
「まあ、もう逃げられないだろ」
「そうだな」
おれも拳を下ろした。
少し離れた場所で、ドロウ中将が動きを止めていた。
その視線は、石畳に転がされたガルドへ向けられている。
海軍が追っていた二億五千万ベリーの賞金首は、もう意識を失っている。
逃げる心配もない。
それでも、広場の向こうではまだ家々が燃えていた。
海兵たちは消火と救助を続けており、少し離れた場所には、負傷者の搬送を手伝っているイスカの姿もある。
ガルドは捕まった。
この場で争う理由はなくなった。
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