流星の魔砲少女~落ちこぼれ少女、禁忌魔法《自傷バフ》で最強へ!?~ 作:自傷バフはロマン
魔法を使う、一人の少女がいました。
その子は魔法を使い、人助けをすることが大好きでした。
毎日空を飛び、困っている人がいれば助けに行く。
人々の平穏を脅かす存在が現れれば、勇気と魔法で立ち向かう。
どれだけ相手が強くても。 どれだけ強大な敵でも。
決して諦めず、魔法で巨悪を討ち払いました。
そして──もし敵が何かを抱え、悪となってしまったのなら。
その子は優しさで寄り添い、手を差し伸べました。
例えどれだけ遠くにいても。
空を飛ぶ魔法で、流れ星のような速さで駆け付ける。
やがて人々は、その子をこう呼ぶようになりました。
『流れ星の魔法使い』。
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───昔、村でおばさんが読んでくれたそのお話は、今でもよく覚えている。
主人公の魔法を使う女の子が、色んな人たちを魔法で助けてくれる。
どんなに強い敵が現れても、決して諦めない。
もし敵だとしても。
もし何かを抱えているのなら、手を差し伸べる。
そんな、ありふれた絵本。
だけど──私にとっては、一番の宝物だった。
そして、支えだった。
どんなに難しい授業も、私に向けられる視線も。
全部……全部、耐えられた。
「アンタさぁ、そんな絵本持ち歩いて……恥ずかしくないの?」
「っ…………」
私は、胸元に抱えた絵本を抱きしめた。
ルナヴィ・クスドーリム。
マギステラ王国にある、イクスィロぺアー魔法学園に通う十二歳の生徒だ。
そして───私は、この学園で《落ちこぼれ》と呼ばれている。
魔法使いになることを夢見て、私はこの学園へやってきた。
きっかけは、村へやってきた魔法適正検査員による【属性魔法】の検査だ。
魔法には【主属性】と呼ばれる六種類の属性がある。
【炎】【水】【風】【土】【光】【闇】。
人々はその中からいくつかの属性を授かり、それぞれの属性に応じた魔法を扱うことができる。
そして私には、その六種類すべての属性があることが判明した。
『六属性、全部持ちだ!』
『凄いじゃないか!』
『きっとこの子は凄い魔法使いになるぞ!』
『村の誇りだ!』
村の人たちは、そう言って喜んでくれた。
私も、嬉しかった。
これなら私も、いつか『流れ星の魔法使い』のような魔法使いになれる。
そう、思っていた─────でも。
現実は、そんなに甘くなかった。
学園で行われた、より詳細な適性検査。
その結果は酷かった。
【炎】――E
【水】――E
【風】――E
【土】――E
【光】――E
【闇】――E
『…………え?』
六つ全部が、最低ランク。
イクスィロぺアー魔法学園での適性検査で知ったのは、属性があっても適正ランクが低ければまともな魔法を扱えないと言う事だった。
適正ランクは上から【SPECIAL】【S】【A】【B】【C】【D】【E】。
中でも、SPECIALの適正ランクを持つ人は稀少で、入学する際の学費が免除されるほど特別な扱いを受ける。
なのに、私はすべての属性があるのに。
すべての属性の魔法の適正があるのに、適性ランクが最低ランクのE。
それが、私の適性検査の結果だった。
どの属性も持っている。 なのに、どの属性の魔法もまともに使えない。
「全属性持ち」という噂だけが一人歩きしたのか。 それとも、単純に悪目立ちしたのか。
私は、学園の殆どの人から《落ちこぼれ》と蔑まれるようになった。
他の子達が、2~3の自分の適性と相性の良い先生の授業受けるなか。
私は一日に行われるすべての属性の授業に参加した。
魔法を使いたい、魔法使いになりたい。
他の子たちが、自分の適性属性と相性の良い授業を受ける中。
私は違った。
炎属性、水属性、風属性、土属性。
光属性、闇属性。
一日に行われる、すべての属性魔法の授業に参加した。
一つでもいい。
少しでもいい。
魔法を使えるようになりたかった。
魔法使いになりたかった。
『流れ星の魔法使い』みたいな。
そんな魔法使いに。
授業が終われば、放課後は図書館へ向かった。
魔法の基礎を勉強して。
術式を覚えて。
何度も何度も練習した。
村の人達に期待されたから、答えたかった。
努力して、努力して、努力した。
沢山勉強して、放課後は図書館で勉強した。
それでも……私は、魔法が使えなかった。
「本当に、いつまでも夢見るわけ?いい加減、現実を見たらどうなの?」
「………」
私からクスクス此方を見て笑う声が消える。
その言葉に、私は何も返せなかった。
だって、それは誤魔化しようもない事実で現実だから。
必死に努力した、出られる授業全てに出た。
本も読んだ、放課後も勉強した。
どれだけ努力しても、魔法は使えなかった。
周囲から向けられる視線。
クスクスと笑う声。
「落ちこぼれ」と呼ばれる声。
もう、慣れていた……慣れていると思い込む。
ではないと、私は折れてしまうから。
私は、胸元の絵本を強く抱き締める。
『流れ星の魔法使い』。
幼い頃から、何度も何度も読んだ。
どんなに強い敵が現れても、諦めなかった女の子。
困っている人がいれば、どこまでも飛んでいく女の子。
敵であっても、手を差し伸べる女の子。
私は、あの子みたいになりたかった。
「ま、まだ」
小さな声で、そう呟いた。
「まだ、勉強してない魔法があります……そしたら、きっと魔法を──」
「いい加減、夢物語やめなよ落ちこぼれ」
「っ」
そんな言葉と共に向けられた視線は、冷たかった。
氷みたいに冷たくて、目を泡へるだけで体が固まって動けなくなる。
怖い、目の前の人達が怖い。
怖い、魔法が使えないことを認めることが怖い。
「アンタが往生際悪く学園にしがみ付くの、見てて本当にイライラするわけ」
「……ごめん、なさい」
「謝るくらいなら、さっさと辞めれば?」
「……それは」
ナヴィの手が、絵本を強く抱き締める。
「いや、です。私は、魔法使いになりたいから……」
「まだ言うんだ」
「その絵本のせい?」
「え……?」
「アンタがいつまでも夢見てるのって、その絵本のせいなんじゃない?」
向けられた手が本へ伸びる。
この本をどうするのか、考えても悪い方の予感しかしなかった。
私は反射的に背後へ一歩、下がった。
「やめて、下さい……これだけはっ」
教室においておいた教科書も、文房具。
気付けば何故か、壊れてたり破られていた。
何回も、何回も。
「へぇ……」
「そんなに大事なんだ?」
その言葉に、ただ黙って本を抱き締きしめる。
村を出るときに、そんなに好きならとおばさんがくれた大切な本だから。
これだけは、これだけは───。
「じゃあ、これをなくしたら?」
「……え?」
次の瞬間、私の腕から絵本が引き抜かれた。
「あっ、か!返して……!」
「そんなに慌てなくてもいいじゃん、それに返して欲しいなら言い方ってあるんじゃない?私は貴族でアンタは、平民何だからさ?」
即座に私は両膝を着いて頭を下げる。
私は別に貴族だと羨んだことも、妬んだこともない。
自分が不自由なく生きられるのであれば、それでよかった。
でも、ここへ来てから私は貴族と平民の違いを嫌でも知ることになった。
私がこうして嫌がらせをされても、どの先生もこの貴族の生徒へ指導をしない。
その身分の高さから、行き過ぎた行動への指導よない。
授業では身分の高い人を優先して先生は教鞭を取る、だから私のような平民は黒板の見えにくい端の席になる。
これが、身分の差。
これが普通の事なのだと知った。
「お願いします……返してください……!」
「ふふっ」
額を地面に擦り付け、必死に懇願する。
笑い声が聞こえる、頭はあげない。だってまだ許されてないから。
「顔をあげなさい?返して上げる、ほーら!」
その言葉と共に顔を上げると、ニヤリと笑った生徒が本を宙へ放り投げた。
そして宙へ放り投げられた絵本へ向けて、彼女の周囲の生徒の内の一人が炎の魔法を放つ。
宙にある本へと向けられ、絵本がじわじわと燃えながら落ちてくる。
「あら!大変、早く拾った方が──」
落ちてくる絵本、革の部分が黒く変色していくそれを掴もうと私は駆け出していた。
落ちてきたそれを掴んだ。
本を掴む手に感じる熱、それがジンジンと自身の手を焼いていく。
本の炎を消そうと叩いてみるが、炎は消えるどころか勢いを増していく。
嫌な臭いがする、でもこの本がこのままじゃなくなってしまう。
どうしよう?どうすればこの炎を消せる?
そう考えたとき、少し先に様々な生徒が腰かけたり談笑する噴水のある広場が見えた。
水なら、水の中なら。
そう考えたときには私は噴水へ向けて走っていた。
沢山の人が私を見る。
驚く人や慌てる人、此方に気付かない様子の人を走りながら避けその勢いのまま私は噴水の中に身を投げた。
「――っ!」
噴水から水飛沫が上がる。
「アッハハハ!バッカじゃないのあの平民、絵本のためにそこまで?アハハハハ!本当に可哀想、水の魔法が使えれば直ぐに鎮火できたのにねぇ!」
水中で生徒達の悲鳴と、彼女と彼女の取り巻きの笑い声が聞こえた。
「な、なんだ!?どうしたんだ!?」
「噴水に人が飛び込んだぞ!?」
「直ぐに先生を呼べ!!」
直ぐに水中から顔を上げて本を水の中から持ち上げる。
水の中に入れられたからか少しふやけているようだけど、本についた炎は無事に消えていた。
流れ星の魔法使い、本は少し変色したけど、問題なく読める内容に留まってくれていた。
「よかった……もう燃えてない」
安堵したからか、本をキャッチした両手の平がズキリと痛み慌てて噴水の中に両手をいれる。
そして自分の体を見下ろし、濡れた制服を見てため息をついた。
どうしよう、まだ授業の時間があるのにこんなのじゃ教室に入れて貰えない……。
今日の授業、遅い時間だから来る人も少なくて先生に教えて貰えるチャンスだったのに。
濡れた制服のままじゃ、図書館も無理かな……。
また、やっちゃった。
後の事を考えずに動いてしまうのは私の悪い癖だなぁ。
あのあと、濡れた制服のまま少しの間先生方にどうして噴水に飛び込んだのか等聞かれたり、噴水に飛び込んだことに関する説教を受けた。
どうせ、言っても対応して貰えないのなら最初から期待しない方がよいから何とか誤魔化した。
『ルナヴィさん!?いったい何があったんですか!』
『その、本が急に燃えちゃって火を消さなきゃって思って。それで噴水に』
『本当に、そうなんですか?』
『え?』
『本当に、本が急に燃えたから消すために噴水に飛び込んだんですか?』
『……はい』
『……分かりました、今後は噴水には飛び込まないで下さいね』
体は少しの寒気を感じているが、火傷した手はジクジクと熱かった。
先生から解放されて学園を歩く。
思ったより長く先生達と離していたのか、制服から水が滴り落ちることは無くなっていた。
でも濡れたあとだからか、少し服が変な感じ。
何とか守れた本を持って学園を歩く。
なんか、少しボーッとするような気もする、風邪は引きたくないな。
受けられない授業のノート、誰から見せて貰えるか考えないといけないし。
そうだ、服も乾いたしこのまま図書室にいこう。
きっともっと勉強すれば、魔法を───。
『夢物語やめなよ、落ちこぼれ』
私は、どうしてこんなに必死になってるんだろう。
自分でもわかってる筈なのに。
属性魔法の検査の日。
六つすべての属性を持っていると知ったとき、私は本当に嬉しかった。
きっと私も、この絵本の主人公みたいになれる。
魔法を使って。
空を飛んで。
困っている人を助けて。
どんなに強い敵が現れても、諦めない。
そんな魔法使いに。
でも、詳細な検査で分かったのは私の適性ランクは、六属性すべてE。
属性を持っていても、まともに魔法を使うことができない最低ランク。
だからか、どの魔法もうまく使えない。
イクスィロぺアー魔法学園でたった一人、魔法を使えない落ちこぼれ。
それが、私だった。
だから私は、夢を見続けるしかなかった。
夢を諦めたら、『流れ星の魔法使い』になりたいと思うことまで諦めてしまったなら。
きっと私は、本当に何もなくなってしまう。
村の人たちから向けられた期待も。
何度勉強しても使えない魔法も。
難しくて、何度も読み返した魔法の教科書も。
全部、全部無駄だったと思ってしまう。
「………」
そう思い込むようにして、私は歩き続けた。
まだ、諦めちゃダメ。
方法はある、あるはずだから
まだ、試していない魔法があるはずだから……。
頬を伝う涙を、服の裾で拭いながら歩く。
ボーッとしてしまう思考のまま、私は学園の図書室へと歩みを進めた。
イクスィロぺアー魔法学園の図書室、そこには世界にある様々な魔法に関する事が記された魔法書が蔵書されている。
ここは学園の生徒だけでなく、先生たちが自分の研究する魔法に使っている。
図書室の扉を開いて中に入ると、入り口近くのテーブルに沢山の本が積み重さなって置かれていた。
凄い、新しい本なのかな……。
こういった新しい本も、読むのが優先されるのは当然貴族で私が読むまで待つとしたら一ヶ月ほど…いやそれ以上かかるかもしれない。
周囲を見るが、いつもいる司書さんの姿が見えない。
いつもなら本を読みながら、図書室の様子を見ているのに。
それに不思議と図書室にいる人が全然いない……今は授業中だからなのかな?
沢山の本の中の一冊に不思議と目が止まった。
すごく古そうな感じがする本で、背表紙にも表紙にも何も書かれていなかった。
気になり、思わず本を手に取る。
誰もいないことを確認して、本を開きそこに記された最初の文字に目を見開いた。
「っ!?知らない、魔法!」
本の文字が所々擦れて消えていたり、インクが滲むなかどうにか読めたのは魔法。
どの先生の授業でも聞いたことの無い、見たことの無い魔方陣。
なんの魔法で、なんの属性かも分からない。
でも、何でだろう。
この魔法なら、出来るような気がした。
どうしてか、何でそう思うのかも分からない。
今までの経験からして何処かで感じていた、読んでも私には出来ないのだろうと諦めてしまいそうな、察してしまいそうな感覚が無かった。
「この魔法なら、私もっ!」
初めて魔法が使えるかもしれない。
根拠も何もない直感的な衝動に借られた私はその本を持って図書室を出て自分の部屋へ走った。
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寮室に駆け込んだ私は即座に机の上に先程の本を広げる。
いくつもの魔法らしき物と魔方陣が描かれているけど、どれも教科書では見たことの無いものばかりだった。
その中の1ページの魔方陣に目が止まった。
魔法を行使するときに現れる魔方陣の中央には、その魔法を象徴する絵……
魔方陣、その中央には秤のような魔印が刻まれている。
「秤?なにかを定める?もしくは鑑定系かな……」
でも、鑑定系の魔方陣に刻まれるような目のような魔印が刻まれてない。
魔法が周囲に被害を及ぼすような感じもしないし、これから試しても大丈夫だよね。
私はその魔法陣の通りに、魔力を体から流して目の前に魔方陣を展開する。
ここまでなら、他の魔法でも出来る。
問題はここから発動できるかどうか……。
「……これで、あってるのかな」
本に書いてある通りに魔力を流しながら本を確認する。
「詠唱が……ない?」
けれど、主属性魔法全てに通ずる魔法を発動させるための詠唱文はどこにも書かれていない。
普通なら魔法を展開した後に詠唱して、魔法が発動するはずなのに。
カチリ。
そんなことを考えていると、そんな金属のような音が聞こえた気がして展開している魔法陣を見る。
「え、魔印が」
中央には刻まれた魔印、平行に並んでいたその天秤が傾いた。
瞬間、僅かに体から魔力の消えていく感覚。
魔法が起動した、そう思ったが目の前では何も起こらなかった。
「やっぱり、ダメだったのかな────」
ドクンっ!!
「ごぼっ!?」
胸がドクンと鼓動した瞬間、喉を勢い良く上がってくる感覚に困惑と驚きから吐き出したそれは……赤かった。
「……え?」
口許から垂れる赤い液体、口のなかに感じるドロッとした何かは鉄のような味がした。
寮の床に飛び散った液体………血に私は背筋を冷たい何かが伝ってくるような気がした。
でも、その目の前の事実に恐怖するよりも先に。
ドグンッ!!
「ぁ゛あ゛?!」
熱い、胸が、痛い。
苦しい、痛い……痛い痛い痛い!?。
「ぁ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
立っていられず地面に座り込む。
まるで体を炎魔法で焼かれるような、今日に燃えている本を掴んだときより熱くて激しい痛み。
どんどんと熱くなる体、まるで体を溶かされているような熱。
バキバキと骨が鳴り響くような錯覚を受けるほどの激痛。
自分の体を強く抱き締める。
痛みも熱も引くどころか、増していくような気すらしている。
段々と鈍くなっていく感覚。
遠退いていく意識。
私は痛みからか、それのも恐怖からか。
目からは涙が流れていた。
なに、これ。
私、死ぬ?
嫌だ、嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!
魔法使いになるんだって村のみんなの期待に答えるんだって…そう思ってきたのに。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
痛みからか、目の前の光景は見慣れた両室じゃ無かった。
真っ暗な部屋でぼんやり明るく光る四角い箱、そんな箱に映る私の通うイクスィロぺアー魔法学園の風景。
そんな風景の中で見覚えのない文字が浮かび上がる。
身体中を走る激痛。
熱からか、ボーッとする頭。
身体に力が入らない。
目の前の景色が、暗くなったり明るくなったりを繰り返している。
「…………ヴィ……!!」
誰かの声が聞こえた気がした。
聞き慣れた声……誰の声だっけ。
「ルナ……ヴィ!!」
目を開けようとする。
けれど、瞼が重い。
「ルナヴィさん!?」
今度は、はっきり聞こえた。
寮長……さん?
どうしてここに……。
寮長さんの、声が聞こえる。
口が動かない……返事が、できない。
身体が動いてくれない。
「……ぁ……」
声にならない声が漏れた。
「大丈夫、大丈夫だから……!」
なんて言ってるのかな、声が凄い遠く聞こえる。
けれど、それよりも頭の中に浮かぶ光景の方が鮮明だった。
「大変……!誰か、先生を……!」
目の前に見える幻の光景、意識が朦朧するなか何故か私はその言葉と光景に見覚えがある気がした。
「わた、し……知って、る?」
代わりに、頭の中へ知らないはずの記憶が流れ込んでくる。
やがて、目の前のぼんやり明るく光る四角い箱に浮かび上がってきた文字がわかった。
『アルカナ・ドリーム』
「アル、カナ・ドリー……ム?」
その文字を呼んだ時、私の意識は完全に途切れた。