流星の魔砲少女~落ちこぼれ少女、禁忌魔法《自傷バフ》で最強へ!?~ 作:自傷バフはロマン
学校の医務室。
魔法の授業や課外授業等で運び込まれる人が多いその場所で、私は目を覚ました。
どうやら私は、使った魔法の代償なのか血を吐いて寮室で倒れていたらしい。
私の叫び声を聞いた寮長さんが、慌てて私の寮室に入り倒れた私を発見し、回復魔法を使える先生を呼びここへ運んだらしい。
すぐに授業に行こうとしたけど、今日は1日ここで過ごすよう言い付けられてしまった。
なので、こうしてベッドの上で横になって過ごしている。
本日は上級生の野外学習も重なっていて、回復魔法を使える先生は外に出ているらしい。
私一人だけ。
ベッドの上で横になり、ぼんやりと天井を見つめる。
頭の中には、昨日まで知らなかったはずの
「アルカナ・ドリームかぁ……」
それは、私が
《アルカナ・ドリーム》、略称はアルドリ。
何処かアイドルの育成ゲームみを感じる略称だけど、しっかりしたファンタジーもののゲームである。
キャッチコピーは『この世界は、貴方しだい』。
ファンタジー世界を舞台にした、自由度の高いRPGゲームだ。
魔法使いや剣士、冒険者として世界を旅したり最強を目指してみたり、魔法学園に通い勉強に明け暮れることも出来る。
鍛冶師や錬金術師になって生活したり、農業をしたり、店を経営して誰かと一緒に暮らすことも出来る。
何をするのかは、プレイヤー次第。
とにかく自由度の高いゲーム、それが《アルカナ・ドリーム》というゲームだった。
ほんと、自由すぎて掲示板や動画の幅が多すぎてたなぁ。
アルドリでネットの実況動画を調べれば様々なジャンルの動画が並ぶ。
【アルドリ】魔法学園教師チャートPart4
【アルドリ】最強の飲食店作ってみたw
【アルドリ】鍛冶音ASMR#ASMR
【アルドリ】メインストーリー攻略Part13
【アルドリ】メインキャラより先にラスボス倒してみた【RTA】
【アルドリ】グリムヴェル王国探索、目指せ一攫千金!Part20
【アルドリ】アニメキャラ再現装備
【アルドリ】最弱武器「ガントレット」を救いたい
【アルドリ】見る「アルカナ・ドリーム」
……と、このような感じになってしまうほどに。
《アルカナ・ドリーム》には大きく分けて二通りの遊び方がある。
まず『メインストーリー』、この世界を冒険する、主要キャラクターたち。
いわゆるネームドキャラたちを中心に描かれる、《アルカナ・ドリーム》本編の物語だ。
男の子を選べばソルト、女の子を選べばソルベになる主人公を操作し、仲間たちと出会いや様々な出来事を乗り越えていくというもの。
そして、もう一つが『フリーダムストーリー』。
自分だけのキャラクターを作ることが出来て、名前も容姿も生き方も自分で決めることができる。
なんと、メインストーリーのように冒険する必要はない。
それこそ冒険者になっても良ければ、魔法学園に通ってもいいし鍛冶師や料理人になってお店を開いたり、それこそのんびり農業をしたって良いのだ。
アルカナ・ドリームは世界のどこで、何をして生きるのか。
それを決めるのはプレイヤー自身。
プレイヤーによって、何千何万通りの遊び方がある。
それが既存のゲームに囚われない、自由度の高すぎるゲーム、《アルカナ・ドリーム》の遊び方だ。
そして私は、そんなアルカナ・ドリームというゲームが好きだった。
「でも、いくら好きでも転生は別かなぁ……」
そんなことを呟きながらベッドに背中を預ける。
確かに、私はアルカナ・ドリームが好きだ。
遊んだことだってある、でも私が遊んだことがあるのは1回だけなのだ。
確かにゲームは好きだと声を大にして言えるが、このゲームに入った理由は、ネットで見つけて読んだ小説……言わば二次創作と呼ばれるものがきっかけだ。
だから、一度クリアしたことで満足してしまった。
まぁ、友人から攻略情報やアドバイスを受けながら遊ぶの楽しかったなぁ。
さて、前世(過去)を振り返るのはここまでにして今のことを考えよう。
《ルナヴィ・クスドーリム》
そんな名前のキャラは私の記憶の限り、聞き覚えはない。
ゲームの詳細を詳しく覚えているわけじゃないから断言はできないけど、こんな目立つ名前と容姿ならある一定の人に受けて推しになる人がいるはずだ。
自慢じゃないが、長い銀髪にアメジストのような青紫色の瞳。
この世界では普通かもしれないが、この容姿はかなり人気になり得る条件を持っている。
今世、どんなキャラでも一定の需要がありモブキャラに愛を注ぐオタクだっている。
それなら、この子の二次創作だってあるはずなのだ。
なのに聞いたことがないし、キャラのタグだって見たことがない。
つまり、ルナヴィ・クスドーリムというキャラクターはアルカナ・ドリームにはいないと思われる。
まぁ、考えてても仕方ないか。
取りあえず私はルナヴィ・クスドーリムになってしまったのならそれはもう受け入れるしかあるまい。
「ふぁ……」
気の抜けるような声が口から漏れた。
こんなに暇になるなら、部屋からあの本を持ってくれば良かった。
こうした暇な時間があるなら図書館で魔法に関する本を読みたいと思ってしまう。
前世になかった魔法という絵空事が、学問として実在していること。
そんな驚きと興味が、以前から私が持つ魔法への思いをより強くしているような気がする。
だって、あの時の感覚は今でも覚えているから。
体が悲鳴を上げ、苦しむ傍らしっかりと消えていった魔力の感覚。
魔力が減った、ランクEの私でも魔法を使えたのだ。
あの本の魔法、どういう効果の魔法だったのか分からないけど、発動することの出来た。
あの本に書かれた魔法ならきっと……魔法を使えるかもしれない。
流れ星の魔法使いみたいになれるかもしれない。
目の前にチャンスを掴むために差しのべられた手があるのなら、それを掴みたい。
そう思った私は、保健室に書き置きを残し自室へ向かった。
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自室は寮母さんが掃除してくれたのか、床に飛び散っていた血は掃除されていること以外はそのままにされていた。
そんな部屋の様子に安堵の息を吐きながら、机におかれたままの本を手に取る。
良かった、この本が原因だとは思われなかったみたい。
即座に本を開き、前に使った魔法らしき魔法陣を見つけた。でも、やはり魔印が天秤であること以外は何も分からない。
天秤、それが何を意味しているのか分からない。
何かを比べる魔法?でも、それなら私が吐血した理由が分からない。
あれ……聞いたことが、ない?
待って、確か他のゲームであったよね?そんな効果のスキルとか魔法みたいなの。
でも、アルドリにそんな魔法はなかったような。
そんなことを考えながら本のページを捲り続けていると、人間の瞳のような絵の刻まれた魔印が特徴的な魔法陣が記載されたページがあった。
「瞳の魔印……」
確か、属性魔法の検査をする人達の魔法陣にも瞳の魔印が刻まれていた。
あの人達が使っていた魔法はアナライズ。
その人のステータスを見る事の出来る魔法で、属性検査をする人達や冒険者ギルドでよく使われている。
そしてアナライズには更に詳細を見ることが出来るディープアナライズがある。
「鑑定系の魔法…なのかな」
もし、この魔法が使えたら昨日の魔法についても分かるかな。
適性ランクが低くて、魔法が使えないからこそアナライズも使えない私だけどこれなら出来るかも。
私は本に描かれた通りに魔力を体から流し、目の前に魔法陣を展開する。
魔法の発動には、まず魔法陣を展開する所から始まる。
魔法陣の展開後に魔印が現れたなら、後は発動するために詠唱が存在する。
多くはその魔法名が詠唱になっている。
それがここで勉強してきた魔法についての私の持つ知識である。
魔法陣の中央にある魔印、そこには瞳のような絵が描かれているのだが、魔印は本にあるような開いた目ではなく、目蓋を閉じたような形をしていた。
前のときもそうだけど、やっぱり魔法を発動させるための詠唱文らしきものは、どこにも書かれていない。
展開された魔法陣を眺めていると、パチリと魔印の瞳が開いた。
ドクンッ。
体から聞こえる心臓の跳ねた音と共に、少しだけ魔力の抜ける感覚がした。
もしかしたらまた、あの痛みが来る!?
発動してから浮かんだ想像に思わず目を瞑り身、構えた。
だが、暫くしても昨日のような痛みはなかった。
「発動、した?」
恐る恐るまぶたを開け、先程の本を見る。
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魔法発動者に、一時的な魔法鑑定能力を付与する。
対象の魔法陣や魔印を視認することで、魔法の発動内容を読み解き、魔法の詳細な発動能力や効果範囲を把握することが出来る。
代償として使用者は一定期間、視力または色覚に異常をきたす。
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「読める、魔法が使えた……でも」
使った魔法についての説明文が記載された最後の部分、そこに書かれた内容。
その部分を読んだ私は本から顔を上げる、部屋のベッド。
その敷布団に敷かれた少し珍しい紫色のシーツと青色の枕が、同じ色に見えた。
昨日まで明確に差別化されていた筈の、一目見て分かった筈の二色が、分からなかった。
「……まぁ、一時的だからいっか。魔法の効果が続いているうちに昨日の魔法をみなきゃ」
どうせ一定期間だし、大丈夫だろう。
むしろその程度でこの本の魔法が分かるなら、確実に得だし。
本のページを捲る、そうしてやがて現れたのは魔印に天秤が刻まれたあの魔法陣が描かれたページ。
早速、記載された説明文に目を通す。
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魔法の行使者の生命力を半分削ることで、魔法の行使者の魔法効果を一定期間、ALTIMA相当まで引き上げる。
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「あ、ALTIMA!?」
思わず声が出た。
この世界で使われている魔法の適性ランクは上から順に【SPECIAL】【S】【A】【B】【C】【D】【E】と言われている。
でも、ゲームではそのさらに上が存在していた。
【ALTIMA】と【EXTRA】。
私が遊んでいたアルカナ・ドリームのフリーダムストーリー。
その中でだけ語られていた、通常の適性ランクには収まらない。本編中に出てきたのなら、本編の内容が崩れるだろうとゲーム会社の人が登場させなかったランクだ。
順に並べると
【ALTIMA】
【EXTRA】
【SPECIAL】
【S】
【A】
【B】
【C】
【D】
【E】
こうなる。
ゲーム実況とか、配信とかでなら見たことがある。
ALTIMAやEXTRA、この適性ランクはゲームにおける特殊ランクでSPECIALは十分に天才と呼ばれる。
EXTRAなら英雄級。
そして、そのさらに上にあるALTIMA。
これは、───災害級。
フリーダムストーリーにて、もしこれを持って始められたなら豪運の持ち主だとゲーム実況をしていたブイチューバーが話していたっけ?
「ALTIMAレベルの魔法……ふふ、ふふふ!アハハ!!そっか、私……魔法が使えるんだ」
思わず口から笑い声が漏れた。
これまで、ずっと魔法の使えない落ちこぼれとして扱われてきた。
魔法が使えない事実が認められなくて、いつかはと夢見ていた魔法が使える。
頬を、涙が伝っていた。
涙を拭って、部屋の窓際へ向かう。
窓の外には綺麗な青空が広がっている。
窓から入る風が私の長い銀髪を揺らす。
夢は絵本のような魔法使い。
絵本の魔法使いのようになるためにも、魔法の勉強は続けなきゃ。
いくらALTIMAレベルの魔法にするための魔法があっても、魔法が使えなければ意味がない。
私の全ての属性魔法の適性ランクがEなのは変わらない、まずは自分の使える目の前の魔法を覚えていこう。
「魔法の名前が無いのが少しだけ変だけど……」
属性も効果も書かれていない、不思議な魔法が記された本。
「この本の魔法なら私だって魔法が使える、いつか流れ星の魔法使いみたいな魔法使いに……私もなれるんだ!」
この1冊の本をきっかけに、アルカナ・ドリームの世界での日々がこうして始まった。
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次の日、イクスィロぺアー魔法学園教員室。
「ルナヴィさん、このままでは貴方は……退学になります」