流星の魔砲少女~落ちこぼれ少女、禁忌魔法《自傷バフ》で最強へ!?~ 作:自傷バフはロマン
イクスィロぺアー魔法学園の教員室では、重い空気が漂っていた。
それは、一人の生徒の退学を巡る話し合いが行われていたからであった。
イクスィロぺアー魔法学園において、退学者の半数が学園生活に馴染めなかった平民や試験を突破できなかった生徒たち。
そして自らの力を過信して入学し、挫折した者達だ。
「ルナヴィ・クスドーリムさんの退学について、改めて説明します。彼女は、学園の在籍条件である実技試験に四回連続で不合格となっています」
「ですが、彼女は筆記試験では十分な成績を収めています。授業態度も申し分ありません。もう少し機会を与えてもよいのでは?」
「気持ちは分かる。私も彼女の努力は評価している。だが、イクスィロぺアー魔法学園は魔法使いを育成する場所だ。魔法を扱えないままでは、在籍を認め続けるわけにもいかない」
「それは……そうですが」
「彼女が努力していることと、実技試験に合格できることは別問題だ。規則を曲げれば、ほかの生徒たちにも示しがつかない」
反論の声は、そこで途切れた。
誰もがルナヴィの努力を知っていた。
それでも、彼女が結果を出せていないこともまた、紛れもない事実だった。
主属性の6つ、それぞれを担当する教師陣。
彼ら、彼女らは皆このイクスィロぺアー魔法学園で教師として多くの生徒を任されている。
だからこそ、彼女……ルナヴィ・クスドーリムの特異性は分かっていた。
マギステラ王国の外れにある町ヴェイトリア、その付近の村で暮らしていた両親も不明、縁者もいない天涯孤独の少女。
常に一冊の絵本を持ち歩く少し幼い一面があることが印象的だった。
そんな彼女は、主属性の【炎】【水】【風】【土】【光】【闇】の6つ全て持つことから、授業料や入学費等を全て免除される形でイクスィロぺアー魔法学園へと入学して来た。
その全属性持ち故に、同時期に入学した貴族の生徒達の殆どは彼女が持つ属性への嫉妬し、鋭い目を向けていた。
そんなことも気にしていないのか、単に気付いていないのか。
彼女の目には、夢と希望に溢れていた。
自分も魔法を使えるようになれる、そう嬉しそうに笑う彼女の姿を多くの教師陣は微笑ましい気持ちで眺めていた。
でも、詳細な適性検査で発覚したのは彼女の持つ主属性。
その全ての適性が最低値のEであること。
そして、それが影響してかまともに魔法を扱うことが出来ないことだった。
それでも彼女は、必死に魔法を学んでいた。
教師陣の授業では、先生の言葉一問一答を漏らさないようノートへメモし分からなければ授業後に聞きに来る。
自分に必要な属性のみ出席する生徒とは違い、毎日行われる全ての授業に出席し、合間の時間は図書室の本で魔法について自主学習している。
それでも、彼女は魔法が使えなかった。
実技試験は不合格、その度に教師陣は頭を下げる彼女を見てきた。
時には床に膝をついて頭を下げられることもあった。
だからこそ、彼女の努力が報われることを教師陣は願っていた。
でも、こうして今日の試験が来てしまった。
これに合格しなければ、彼女はこのイクスィロぺアー魔法学園から退学することになる。
どうか、彼女の努力が報われてほしい。
そう思う一方で、、教師陣の誰もが理性では理解していた。
彼女は魔法を使えず、恐らくはこの学園を去ることになる事を。
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試験当日、私は待機するよう言われた部屋で先生方と試験内容の準備が終わるのを待っていた。
杖を作ってから、杖や魔法には名前をつけたりと訓練場が空いた時間は必ず魔法を練習しとうとう試験の当日になった。
「絶対に合格しなきゃ」
ぎゅっと、持ってきた流れ星の魔法使いの絵本を抱き締める。
絶対にこの試験を合格して、あの本の魔法についてもっと勉強するんだ。
そのために私は、絶対に合格する。
「ルナヴィさん、準備が出来ました。訓練場に」
「は、はい!今行きます!」
抱き締めていた絵本を荷物を、置いていた場所に置いて、案内してくれる先生の後ろを歩く。
やがてたどり着いたのは、見慣れた円形の闘技場だった。
高くそびえる石造りの壁に囲まれた訓練場は、まるでコロッセオのような造りになっている。
壁に沿って設けられた観客席には、試験を見届ける教師たちが並び、それぞれ手元のボードに目を落としていた。
その視線の先にあるのは、闘技場の中央。
そこには、いくつもの案山子が整然と並べられていた。
人間とほぼ同じ大きさの木製の人形。
その身体には、魔法による攻撃を想定してか、金属製の鎧が隙間なく着せられている。
あれに向かって魔法を放ち、一定以上の威力を示すこと。
それが、私に課せられた実技試験だった。
「…………」
見慣れた光景だった。
今まで、何度もあの案山子の前に立った。
先生の指示に従い、魔法陣を展開し教わった通りに魔法を発動させようとした。
けれど、そのたびに魔法は不発に終わった。
どれだけ努力しても、どれだけ練習しても結果は変わらなかった。
そして私は、またここに立っている。
「ルナヴィ・クスドーリムさん。こちらへ」
教師の声に、私は顔を上げる。
観客席に座る先生たちの表情は、ここからではよく分からない。
けれど、何人かがこちらを見つめていることだけは分かった。
その視線を気にしないようにして、私は一歩、また一歩と闘技場の中央へ歩き出す。
「改めて試験内容を説明します。ルナヴィ・クスドーリムさん、魔法を使いこの案山子を攻撃して下さい。魔法での攻撃が発動せず30分が経過した場合、即試験を終了し不合格とします」
「はい!」
目蓋を閉じて、胸元に手を置いて深呼吸をして、案山子へと向き直る。
30分、今までの私なら、きっと苦しくて悲しい時間だったのだろう。
けれど、今は違う。
「それでは、試験開始!」
その声が聞こえた瞬間、私は閉じていた目蓋を開いて頭につけていた星形の髪留めを外す。
「ブレッシング、
ブレッシングという詠唱を鍵として、髪留め淡い光を放つと私が作り出した杖へと変わる。
現れた杖をしっかり握りしめて、魔法陣を展開する。
中央の魔印に現れたのは天秤、私が初めて使ったあの本の魔法。
効果は、使用者のHPを半分にすることで、一時的に自身の魔力出力をALTIMA相当まで引き上げる。
たった一度、与えられたこの命を使う。
だって魔法使いになるチャンスだから。
躊躇うことも、恐れることも必要ない。
あの本には、いくつも同じような天秤の魔印が刻まれた魔法陣があった。
だから、私はこの魔法達に名前をつけた。
「スター・ブーストライヴ/アルファ!」
私の言葉と同時にカチリ、天秤が傾いた。
瞬間、僅かに体から魔力の消えていく。
そして喉元を迫り上がって来る、あの感覚。
「ごふっ!」
迫り上がって来たそれを、躊躇わず吐き出す。
ベチャリと、地面に赤い染みが広がる。
教師陣から叫び声や、怒号が聞こえる気がするが無視し口から垂れる赤いそれを、ゼノステラを持っていない方の手の甲で拭う。
体に表れ始める胸の痛み、そして苦しみ。
普通なら、こんな魔法は嫌がるかもしれない。
でも、私にとってこの魔法は───。
「アハッ!?アハハァ♡キタ……キタキタキタキタァ!!」
──前の私が愛した自傷バフ戦法を思い起こした。
自傷バフ、それは様々なゲームに置いて存在するスキルや魔法における恩恵を指す。
発動の代償として自分の身を削ることで、自身や対象に大きな力を与えることが出来る。
それが、自傷バフ。
前世の私は、これを愛用したある戦法を好んでいた。
自傷バフにより、極限まで強化した一撃で敵を仕留める、もしくは強力な攻撃を加える。
初めて使ったあの日は、スターブーストライブ/アルファの代償である痛みと苦しみに立ち上がれなかった。
でも、何日も繰り返してようやく魔法を発動したあともこのように動けるようになった。
痛みと苦しみが溢れる体を他所に、胸は早く煩く鼓動し歓喜に頬が緩む。
「なっ……!?」
誰かの声が、観客席から響いた。
「今の魔法陣は……一体!?」
「ルナヴィさん、すぐに魔法を解除しなさい!」
教師たちの声が重なる。
当然だろう、これまで一度として魔法を発動できなかった生徒が、突然血を吐き、見たこともない魔法陣を展開したのだから。
けれど、私の耳にはもう、先生たちの声など届いていなかった。
さぁ、あとは増加した火力による砲撃だけ。
一番楽しい瞬間は、ダレニモジャマサセナイ。
ゼノステラの杖先を、一番近い案山子へ向ける。
杖の先から下、嵌め込まれた五つの鉱石が星を描くように淡い光を放った。
その光に呼応するように、杖先へ魔法陣が展開される。
十字の星みたいなデザインの魔印。
カシャン!
杖の先がスライドするように展開し、中央に隠されていた、魔法を打ち出すための砲門が露出する。
この魔法の効果は、魔法の使用者が杖を向けた方向へ、連続して魔力弾を撃ち出す攻撃魔法。
発動条件は一定以上の長さで、照準を安定させる構造を備えた杖を装備していること。
魔法陣を展開された、あとは私の意思で発動できる。
本来ならば詠唱しなくても発動できるけど、詠唱した方が発動のイメージが出来る。
周囲に青白い光が集まり、細かな火花が弾ける。
「メテオブラスト・ステラート!」
次の瞬間。
轟音とともに、極光が放たれた。
真っ直ぐ伸びていく魔力弾は、一つまた一つと案山子に大きな穴を開け続けていく。
ズガン!ズカン!ズカン!と、鎧どころか人形の体すらも貫いて、貫いて、貫いて。
やがて魔力弾は、七つの人形を貫いたところで消えた。
その威力に、私は高揚感が溢れていた。
「アッハハ!やっぱりこれ……さいっこう!」
そう言いながら私は、ゼノステラを持ち直して先生方の方を向く。
先生方は呆然としており、その手には採点する為のボードが無かった。
「先生!私、魔法が使えました!合格ですよね!私!」
魔法を使える嬉しさ、魔法使いになれたという歓喜。
魔法であの人形達が壊れたということは、不合格ではなく合格。
その事実に、私は嬉しさのあまり先生たちに手を振りながらそう叫んでいた。
ストックが切れました。
暫く書きため、投稿します。
のんびりお待ちいただけると嬉しいです。