流星の魔砲少女~落ちこぼれ少女、禁忌魔法《自傷バフ》で最強へ!?~ 作:自傷バフはロマン
試験の後、イクスィロぺアー魔法学園の医務室。
そこで私は医務室の先生に、回復魔法をかけてもらっていた。
前世を思い出して初めて受ける回復魔法は、思ったよりも地味というか、実感が湧かなかった。
確かに痛みは消えたし、心臓の鼓動も普通に戻っている。
「はい、これで大丈夫かしら。体のどこかに変な所はあるかしら?」
「ないですね、でも少しだけフラフラするというかボーッとするというか」
「それは貧血ね、話を聞いた限りかなり血を吐いたみたいだし。無理もないわ」
メリィン・フロレキュア。
このイクスィロぺアー魔法学園の医務室の先生であり、回復魔法についての授業をしている教師だ。
アルカナ・ドリームでは、メインストーリーでパーティーに入るヒーラーの生徒へ回復魔法を教えているシーンがあったっけ?
「それにしても、一体何があったの?試験で体があそこまで傷付いている状況……普通じゃないわよ?」
「え、えへへ……試験の魔法でちょっと色々とあって」
もし私が先生たちにあの本に記された魔法陣の魔法を勉強したら、使えるようになったこと。
代償として、自傷効果があることを言ったならこの魔法を使うことを止められてしまうのだろうか?
ようやく使えるようになった、魔法を止められる?
ソレダケハ、ゼッタイニダメ。
ようやく、ようやく使うことができた私の魔法。
前世から様々なゲームで愛用していた自傷バフ。
これだけは、これだけは絶対にテバナセナイ。
アハハと笑いながら話を流す。
「ちょっとって……ルナヴィさん。それ、本当に
「勿論です!だって魔法が使えるんですから!!」
そんな私に、フロレキュア先生はまるで苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
先生のこんな表情、見たことないかも。
もしかして《スターブーストライブ/アルファ》の反動、HPを半分以下にするってよっぽどのことなのかな?
回復魔法については、ゲームではある程度の種類は覚えている。
でもそんな回復魔法とは別に、回復魔法から発展させた人の状態を解析する魔法がある。
ゲームではステータス表記である程度の状態異常は、簡単に判断できる。
でも、現実で考えたら当たり前だが毒にも種類があるし麻痺といった状態異常は目で判断することは難しい。
そんな状況を解決する対象の身体の状態を把握することが出来る魔法、それを作り出したのがフロレキュア先生だ。
似たものでいえば、あの本にあった対象の魔印や魔法陣などからその魔法について解析することが出来る魔法《ステライズ・グリモアール》、そう名付けたあの魔法と似ている。
さっきの回復魔法を使う前に使っていた魔法、魔印を見てなかったけど。
もしあの魔法が、対象の身体の状態を調べるものなら私の身体を診てあのような表情を浮かべた理由は分かる気がする、
だってまぁ、代償があの効果だし。
「まぁ、いいわ。ともかく今日はもう授業に出ずに寮に戻って休みなさいな」
「はーい」
そう返事を返しながら私は寮室へと戻った。
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次の日、私は寮室にてノートを開いていた。
なぜ、授業を受けに行かないのか?
それは今朝、フロレキュア先生からの通達で今日1日静養するようにというものだった。
昨日、そして今日も授業を受けられないという事実に、私は暇を持て余している。
こっそり抜け出そうとも考えたのだけど、寮室の外から聞こえてきた話では今日は授業はしないらしい。
何でも緊急の会議が行われてるとのこと。
魔法を使えたから、退学にはならない……そう願いたい。
さて、こんなに時間があるならあの本に記された魔法について調べるのもありだと思う。
でも今、私にはまた別の問題が現れていた。
しかもそれは重要かつ、早急に解決しなければならない問題。
「お金が、ない……」
お金が、無いことだった。
そう、試験のために杖を用意するため持っていたお金の殆どを使い切ってしまったのだ。
住む場所は、この寮がある。
学費も、主属性全てがあることによる学費免除で問題はない。
食費に関しても、寮の食堂で食べれば問題ないだろう。
でも、お金が無くて困るのは沢山ある。
現状維持で良いとは思えないのは、前世の経験故だった。
どんな時も、緊急事態は想定してない所から来る。
地震や津波、台風。
知り合いの結婚や親族の入院、唐突な出費というのは悲しいことにどの世界でも共通で存在するのだ。
必要な時にお金がない、お金が無くて何も出来ないのは辛い。
本当に辛いのだ。
借金は辛い、リボ払いやクレカの支払いがたまった時とかは最悪だ。
だからこそ、早急にこの問題を解決しなければならない。
それに、今後を考えるなら学園を卒業した後の事も考えてお金は稼いでおいて損はない。
お金が無くて損することや苦しい思いをすることはあっても、お金があって困ることはないのだから。
「ゲームだったら、クエストで稼ぐんだけど現実にあるわけ無いし」
そんなことを思いながらテーブルに顔を伏せる。
学園の外にある町でアルバイトでもする?
探せば、どこかしら見つかるかもしれないが学園との両立を考えると難しい。
せっかくのゲームの知識はあっても、活かせるような金策なんてあっただろうか?
良く聞くのは冒険者になってクエストを受注して、受注したクエストを達成する事でお金を稼ぐことだけど。
「農業で馬鹿みたいに大きな野菜とか売ってたな~」
前世、アルカナ・ドリームの配信でみた金策を思い出そう。
アルドリ金策その1、『農業』。
これに関して言えば、アルカナ・ドリームにおける農業は他のゲームと少し違う。
種を撒いた場所を囲うように四つ、合計5ヵ所に種を植えて町のショップにある特殊な肥料と魔法薬『デッカナールD』を使うことで巨大な作物を育てることが出来る、という物だ。
アルドリにおける農作物において、巨大作物は他の作物と比べても高く美味しい。
でも、ゲームでは時間経過がすぐであることや魔法薬や種を簡単に手に入れられることから行われていた。
しかもごく稀に金色の作物が育つことがあり、金色の作物は更に高値で売れる。
問題はその元手がないから、出来ないことと時間がかなりかかることだろうか。
アルドリ金策その2、『釣り』。
これは元手が釣竿だけな分、元手は安い……ように思えるがこれは違う。
ゲームではなく現実な今、釣り竿とは垂らすだけじゃ魚はつれない。
餌が必要なのだ、パンや魚の餌。
そしてアイテムボックスやストレージなんてない現実では、魚をいれておく保冷機能のある鞄や袋だっている。
こっちも元手はかなりお金がかかる。
ゲームでは近場の水場にいって釣りをして、釣れた魚を売る事で稼ぐことも出来た。
それこそ、稀に魚ではなくレアなアイテムが釣れることもあるため一攫千金を狙えるのだ。
問題は、川も海も学園から少し遠くにあることだ。
今の状況でのデメリットとして考えるならば、元手がないことだろうか。
アルドリ金策その3、『冒険者』
冒険者としてギルドに登録してクエストを受注してクリアすることで報酬を得る。
そんな王道なアレだ、どんなクエストかによるが内容次第で楽に稼げる。
でも、これはこれで学園との両立が難しい気がする。
いくら大学に近い授業スタイルだとしても、連続して休むのは気が引けるのだ。
前世で私は出席日数を考えて、何回休んでも大丈夫だろうなという計算をしてこなかった。
真面目に授業に出席し続けていたのである。
「それにしても、静養かぁ……全然元気なんだけど」
体の感覚的には、特に問題はない。
寝て体の不調が全て直るなんて、それこそゲームのようだが、果たしてこれからどうするか。
本の魔法を勉強するにしても、お金の心配が沸いてしまって集中できない。
こういうときは気分転換に外に出るのも良い、でも静養するよう言われちゃったし……。
「……バレなきゃ、大丈夫だよね?」
そう思いながら私は椅子から立つと、周囲の人にバレないよう寮室を出て学園の外にある町へと向かうのだった。
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前世を思い出して二回目の町。
あのときは杖だけに集中していたから見えていなかったけど、この町には本当に色々な店が揃っている。
ゲームのメインストーリーで最初の活動拠点であり、多くのフリーダムストーリーを遊ぶプレイヤーがこの町に店や家を購入していた。
まぁ、マップの中央にある町だからそうなるのも必然な気がする。
ゲームでは分からなかったけど、ゲームの主な店以外にも沢山のお店がある。
果物屋やお肉屋、武具や装飾が露店のように広げられており他には串焼きやパンを売るお店も見える。
「まぁ、お金がないから買えないんだけど……」
そんなことを呟き、ため息をつく。
本当にお金が無いときに出掛ける事を選んだはいいけど、お金がない時ならではの虚しさが凄いなぁ。
とぼとぼと歩きながら街を歩いていると、目の前の光景が少しだけ見覚えのあるような気がした。
「見たことがあるような………」
周囲を見渡していると、一つの店に目が留まった。
服屋らしき看板のお店、その大きな窓からは服を着せたマネキンのようなものが並んでいる。
しかも着せられた服は全てが見覚えのある物ばかりだった。
「な、なんで!?」
フリルがふんだんに使われたミニスカメイド服。
高校の学生服、胸元が見えるチャイナドレス。
そうした様々な服が並んでいた。
「なんでこの服が……あ!」
そうだ、アルカナ・ドリームではメインストーリーとフリーダムストーリーどちらでも服装を自由に変更する事が出来る仕様があった。
街ごとに様々な服が売られているのだけど、この街。
イクスィロぺアー魔法学園の外にある街にある服屋は特別だった。
この街には、現実世界にあるコスプレ服。
そして現実に売っている服に近いデザインの衣服が売っている店があったのだ。
「もしかして、ここって」
「あーら♡ずいぶんと可愛らしいお客様じゃなーい?」
聞こえてきた声に振り向くと、店のドアから一人の女性が出てきた。
派手な革ジャンにサングラス。
明るい髪色に、耳元で揺れる大ぶりのアクセサリー。見るからに目立つ格好をした女性だった。
スティッチ・ルージェ。
ゲーム『フリーダムストーリー』に登場する、現代風の衣服やコスプレ衣装を販売する店『ファッション・ルージュ』の店長である。
「んー? ちょっと顔色悪くない? ちゃんと食べてるの?」
スティッチは私の顔を覗き込むと、少しだけ眉を寄せた。
「え、あの……」
「ま、そこは後で聞くとして……うん、素材はバッチリね!」
何やら一人で納得したかと思えば、スティッチは私の肩に手を置き、にっと笑った。
「ねえ、可愛いお嬢ちゃん。ちょーっとアタシに付き合ってくれない?」
「……えっと、客引きならすみません。今はお洋服を買うお金がなくて」
きょ、距離が近い。
ゲームでは話しかけたときのいらっしゃいませ、帰るときのまたのご利用をしか台詞はなかった。
静かな印象だったけど、こんなにも距離感が近いなんて……。
ネットでは彼女を可愛い子に可愛い服を着せようとする変態や、とても布面積の少ない服を作る様子のファンアートが多かった。
だからか、こんな感じに話しかけられるのはすごく新鮮だ。
「あははっ、別に買わせようってんじゃないわよ!」
スティッチさんは豪快に笑い、店の中を親指で指し示した。
「お金のことは気にしないで!アタシが服を貸してあげる。そんで、ちょーっとモデルさんになって、街を歩いてもらうだけ!」
「モデル?私がですか?」
「そ!ウチの新作を宣伝してほしいのよ。アンタなら絶対似合うって!どう?悪い話じゃないっしょ?」
確かに今日の予定はない……なんなら金策が思い付かないから、探すために街に出てきた訳だし。
でも、モデルって私なんかに務まるのかな。
前世も今世も、私は服装には無頓着だった。
元々、私の前世の性別は男だ。
前世を思い出したが、今世での記憶のお陰か女性としての面が大きく、特に生活に不便はない。
自身の服装は、おしゃれする金があるならば、その分は推し活やゲームセンターで遊ぶ為の資金に回していた。
だからか、今世でも村の女の子とは違い服に無頓着だった。
服も着やすさがシンプルで動きやすいものを選んでいたし、ドレスの着方すらわからないのだ。
「その、そういう服とは縁がなくて着方も分からないですし」
「そんなのウチが一緒に着せれば問題なーし、今ならたっぷりお小遣いあげる、どう?」
「やります、お願いします」
気付けば考えるより早く口が動いていた。
お金がない私にとって、その言葉は空腹のライオンの前に差し出されたシマウマも同然だったのである。
「オッケー、じゃ自己紹介。ウチはスティッチ、スティッチ・ルージェ。このファッション・ルージュの店主やってるわ」
「ルナヴィ・クスドーリムです、イクスィロぺアー魔法学園で魔法を勉強してます。村ではナヴィって呼ばれてました」
そうしてファッション・ルージュに入った私は、スティッチに手伝って貰いながら服へ着替えた。
そうして着替えた服なのだが……メイド服だった。
白と黒でしっかり長いロングスカートにフリルとエプロンの可愛らしさが特徴的な服。
姿見の前で軽く回ってみるが、本当に良い服だと感じる。
勿論、イクスィロぺアー魔法学園の制服も良い物だけど村で着ていた服と比べると本当に肌触りが良い服だ。
「ふっふっふ!服の次はブーツよナヴィ!靴まで合わせて、ようやく完成なんだから!さ、イスに座って座って」
スティッチに促され、イスに座る。
「はい、足を出して。」
「はい」
そう言ってスティッチが差し出したのは、艶のある黒いショートブーツだった。
足首を覆う革には細かな編み上げが施され、側面には銀色の留め具。履き口には小さな青いリボンが添えられている。
「……く、靴まで作ってるんですね」
「当然!可愛い服を着せても、足元が合ってなかったら台無しでしょ?ウチは可愛い服が好きだし、可愛い服を着た子も好きだから。好きだからこそ、ガチでこの仕事やってんの、最後までガチよ!」
「好きだから、最後までガチ。分かる気がします」
「でしょ?」
好きだからこそ、最後まで拘る。
好きだからこそ本気になれる、それは私の魔法への想いと似たところがあるような気がした。
会話を続けながら、スティッチは慣れた手つきでナヴィの足元を整え、左右のブーツを履かせていく。
「よし、立ってみて!痛いところはない?」
言われるままに立ち上がり、数歩歩いてみた。
足が圧迫されるような感覚もないし、靴擦れの感じもしない。
凄く履きやすいブーツだ。
靴なんて、全部同じかと思ってたけど結構違うんだ。
「……歩きやすいです」
「でしょ?見た目だけじゃなくて、ちゃんと履いた人が長く歩けるように素材から選んでるんだから!それにしても」
そう言いながらスティッチは自分の頬に手を当て、私の頭からつま先まで、じっくり見下ろしては見上げることを繰り返すと嬉しそうに笑った。
「やっぱりアタシの目は間違ってなかった! 銀髪に白黒の組み合わせ、思った通りバッチリじゃない!」
「あ、ありがとうございます?」
「ちょっとは自分の姿に興味持った方いいんじゃない?まぁいいや、早速いくわよ。まだ沢山の人が歩いてる時間帯なんだし、宣伝は今しかないっしょ!」
「は、はい!」
そう言いながら私はスティッチさんを追いかけてお店を出た。
取りあえずメイド服だし、メイドのような感じで歩いた方が良いのだろうか?
今世でもメイドはいる、でもその多くは貴族のお屋敷や王城で働くので私は見たことが無かった。
それこそ、買い出しでこうした街に出ることもあるのだろうけど基本的には学園を出たことがない私は、あまりメイドの所作が分からない。
前世のサブカルチャー、アニメや漫画のイメージから考える。
……あれ、メイドって確か主人の後ろを歩くんだっけ?
今の私は雇われだからスティッチさんの少しだけ後ろ……いや、三歩後ろだったかな?
それってメイドじゃなくて、お嫁さんの話だったような……?
まぁ、いいか。どっちも後ろを歩けばいいんだよね?
それならきっと大丈夫のはず。
スティッチさんと一緒に街を歩いて回る、たまに「おお……」や「何処の屋敷のメイドだ?」といった声が聞こえるけど、気にしないように静かにスティッチさんの後ろを歩く。
「ふふふ、ナヴィに頼んで正解だったわね」
「そ、そうでしょうか?」
「謙虚だねぇナヴィは」
「あらスティッチ!あんたが店を出てるなんてどうしたんだい?」
「おばさん!やっほー?実は今さ、私の作った服をこの子に着て貰ったから宣伝がてら歩いててさぁ」
その後も知り合いか分からないが、時折スティッチさんは街を歩く人達に呼び止められては一言二言雑談しては別れることを繰り返していた。
取りあえず話しかけられた時と、別れるときに会釈をするよう心がけた。
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夕方、ファッション・ルージュへと帰ってきた私はメイド服から来たときと同じ服に着替えた。
良いものを着た後だからか、いまの服は少しだけ変な感じがする。
本当に全然違うんだなぁ………。
「はいナヴィ、今回の分」
そう言ながら渡されたのは、おかねのはいった布袋。
「こんなに……ありがとうございます」
「結構宣伝になったしね、これからも暇なときはうちにモデルに来てくれたら助かるかな」
スティッチはそう言いながらパチーンとウインクする。私は渡された布袋を服のポケットへとしまってから、また頭を下げたのだった。
本日の投稿を含めた3話分のストックが出来ました。
次話は明日投稿予定です。
投稿後はまた暫く分のストックを作ってから投稿していく感じになると思います。
読んで下さりありがとうございました。