The PlatinumS 〜魔導師見習いと白金のドラゴン〜   作:岩橋竜也

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どうも、岩橋竜也(いわはし たつや)と言います。ハーメルンに初めて投稿する小説なのでどうぞよろしくお願いいたします。


第1部
目覚めの刻


『——魂の深淵より生み出されしを「生得守護霊(プライマリ・スピリット)」と呼ぶ。

 

守護霊の多くは、時を歪め、理を捻折り、現象を害する「異能(エフェクト)」を宿して顕現する。人々はその奇術のような能力を称え、競い合って磨きをかける。

 

……だが、ゆめゆめ忘れることなかれ。 能力を持たぬ者——「通常守護霊(ノーマル・スピリット)」をただの無能と蔑むことの愚かしさを。

 

異能を持たぬということは、即ち「魂の全てを物理的・魔導的質量そのものに注ぎ込んでいる」ことに他ならない。

 

もしも——真に圧倒的な素の力(ステータス)を誇る通常守護霊が目覚めたならば。 その絶対的な「威圧感」の前に、いかなる巧みな異能も、等しく粉砕されることとなるだろう……』

 

(チャールズ・ブレイザー著『古今霊導体論』より)

 

「ショーゴ、お願いだから開けてちょうだい! ご飯も食べないでそんな真っ暗なところに閉じこもってたら、体に毒よ!」

 

重厚な地下室の扉の前。トレイに乗せた昼食を抱えた女性、メグミ・サイキは、心配そうに固い木枠をトントンと叩いた。

 

「ダメだよ、お母さん! 近づいちゃダメだ!」

 

扉の奥から返ってきたのは、泣き出しそうな少年の悲鳴だった。

 

「僕……僕の近くにいたら、お母さんまで怪我しちゃう! お願いだからあっちに行ってよ!」 「怪我なんてするわけないでしょう? あなたは私のかわいいショーゴなのよ。ほら、あなたの大好きなオムライス作ったの。一緒に食べましょう?」

 

優しく語りかけるメグミ。けれど扉の向こうの息子、ショーゴ・サイキは必死に首を振っていた。

 

「そんな問題じゃないんだよ! 部屋の鉄格子が……壁が、勝手にぐにゃぐにゃに溶けちゃったんだ! 僕の意思じゃない……僕の中に、恐ろしい怪物がいるんだ!!」 「怪物だなんて……」

 

困り果てて眉を下げるメグミ。その時、背後の階段から能天気な足音が聞こえてきた。

 

「何やら大騒ぎをしておるのう、メグミ」「あ、パパ! 来てくれたのね!」

 

階段を降りてきたのは、ド派手なアロハシャツの上に黒魔導師のコートを羽織った不釣り合いな格好の老人——カロク・サイキだった。 彼は骨董品店『サイキ堂』の店主であり、若い頃は数々の闇の精霊戦を生き抜いた、伝説の元・黒魔導師だ。

 

「パパ、あの子ったら『自分の中に怪物がいる』って、鍵をかけて出てきてくれないの……」 「やれやれ、相変わらず我が娘はおっとりしておるのう。まあ任せておけ、ワシが様子を見てくる」

 

カロクは頼もしく胸を叩くと、鍵を受け取って地下牢の深部へと足を踏み入れた。

 

◇

 

「来ちゃダメだ、おじいちゃん! 僕に近づかないで!」

 

重厚な石造りの地下牢。 鉄格子の奥、暗がりの中で体育座りをしていたショーゴ・サイキは、必死の声で叫んだ。

 

カツン、カツンと能天気な足音を響かせて現れたカロクは、鉄格子の前で腰を降ろした。

 

「母さんから泣きつかれて飛んで帰ってみれば、こんなカビ臭い牢屋に立てこもっておるとはのう」 「笑い事じゃないよ! 僕には……僕には『悪霊』が憑いてしまったんだ!」 「悪霊、じゃと?」

 

「少し前に僕の魂から何かが目覚めたんだ。最初は小さな影だったのに、僕が不安になったり怒ったりすると、僕の意思とは関係なく背後に出てきて周りのものを破壊しちゃうんだよ!」

 

ショーゴは震える手で牢の片隅を指さした。 極太の鉄格子が数本、まるで巨大な猛獣に噛みちぎられたかのようにぐにゃりと歪み、ドロドロに溶けた跡が残っていた。

 

「加減が利かないんだ! こんな恐ろしい怪物が僕の中にいる限り、僕は外に出ちゃいけないんだよ! おじいちゃんや母さんを傷つけたくないんだ!」

 

必死の訴え。けれど、カロクはショックを受けるどころか、ニヤリと不敵に笑った。

 

「フン……なるほど。どれ、ワシが直々にその『悪霊』とやらを拝んでやるとするか」

 

カロクが懐から一枚のカード——魔導呪符(スペル・チャーム)を取り出す。

 

「顕現せよ、従属精霊《ストーン・ゴレム》!」

 

魔法陣が眩しく発光し、地面の石畳が盛り上がって体長三メートルを超える巨岩の兵士が出現した。重厚なプレッシャーが地下牢を満たす。

 

「な、何をするの、おじいちゃん!?」 「何、ただのテストじゃ。——行けい、ゴレム! ショーゴを叩きのめせ!」 「ガアアアアアッ!」

 

巨岩の拳が容赦なく振り下ろされる。回避不可能な距離。

 

「やめて……やめてよおぉぉッ!!」

 

悲鳴と同時に、『それ』は弾け飛んだ。

 

——ドォンッ!!

 

爆発的な大気圧の変動。 地下牢の全空間が、常軌を逸した「重圧」に支配される。

 

「なっ……!? この重圧は……!」

 

カロクの顔から余裕が消えた。巨岩のゴレムが、強烈な圧のために指一本動かせず硬直する。 ショーゴの背後の空間が、ゆらりと歪んだ。

 

現れたのは、白金の輝きを纏う巨大な龍のシルエット。 鋭い爪、巨大な翼、そして見る者を平伏させる——圧倒的な『威圧感』。

 

まだハイライトの宿らない結晶のように冷徹な白金(プラチナ)の瞳。その視線一つ、鼻息一つすらもが、全空間を圧倒する絶対的な『威圧感』となって地下牢の隅々までを支配していた。

 

特殊な効果など何一つ発動していない。 ただそこに「存在する」という事実だけで、空間のルールすら物理的に塗り替えていく——これこそが、ノーマル・スピリット最高峰が放つ規格外の『威圧感』だった。

 

『——グ、ルァアアアアアアアアアアッッ!!』

 

咆哮一撃。 純度の高すぎる魔力の奔流が、一瞬でゴレムを飲み込む。 バリバリバリッ!!と天地を揺るがす破砕音が響き、三メートルの巨岩兵士が何の抵抗もできずに粉々に砕け散った。

 

「ひっ……!」

 

頭を抱えて縮こまるショーゴ。 立ち込める煙の中、カロクは呆然と立ち尽くしていた。アロハシャツは風圧でズタズタ、背後の壁には深々と亀裂が入っている。

 

ゆっくりと眼鏡の眉間を押し上げたカロクは——次の瞬間、腹から高笑いを破裂させた。

 

「ハッハッハッハ! ガハハハハハッ!!」 「お、おじいちゃん……?」

 

「見事! 見事じゃぞ、ショーゴ! これは悪霊などではない! お前の魂そのものが具現化した、最高峰の『生得守護霊(プライマリ・スピリット)』じゃ!」

 

カロクは歪んだ鉄格子を足で蹴り飛ばし、牢の中へ足を踏み入れた。

 

「相手の魔法を無効化するだの、ダメージを反射するだのといった小細工(効果)は一切ない! ただ圧倒的な素の力(ステータス)だけで全てを叩き潰す『通常守護霊(ノーマル・スピリット)』の頂点——《白金の龍(プラチナム・ドラゴン)》じゃ!」

 

「でも……僕にはコントロールできないよ! 加減が利かなくてみんなを傷つけちゃう……!」 「なら、学べ!」

 

カロクはショーゴの目をまっすぐに見つめた。

 

「力を恐れて逃げるな。己の魂(スピリット)を御し、正しく使う術を身につけろ。お前が真の契霊士(コントラクター)になれば、その龍はお前と大切な者を守る最強の盾となり、剣となる」

 

「僕が……強い契霊士に……」

 

両手を見つめるショーゴ。背後に佇む《白金の龍》は、静かに鼻息を漏らし、主の決意を待つように佇んでいる。

 

(おじいちゃんを守りたい。お母さんを守りたい。僕のせいで誰かが傷つくのを、ただ逃げて怯えるだけで終わりたくない……!)

 

「……わかったよ、おじいちゃん。僕、学ぶよ」

 

ショーゴは自らの足で地下牢の外へと一歩を踏み出した。

 

「僕に教えてほしい。——この白金の守護霊と一緒に、戦う方法を!」

 

少年の物語が今、始まろうとしていた。

 

【守護霊:白金の龍(プラチナム・ドラゴン)】

分類: 通常守護霊(ノーマル・スピリット)/光属性/ドラゴン族

ステータス: パワー S / スピード A / 射程(レンジ)A / スタミナ A / コントロール力 E / 成長性 A

必殺技: 『爆裂疾風丸(ブロー・オブ・デストラクション)』

解説: 白金の眩い光で万物を平伏させる伝説のドラゴン。どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。特殊効果を持たない通常守護霊(ノーマル・スピリット)の最高峰。ショーゴの「コントロール力」が未熟なため現在は制御不能だが、高い「成長性(A)」を秘めており、今後の契霊士としての修行や呪符との連携でさらなる覚醒を残している。




小説初投稿です。初心者ですが多めに見てください。
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