剣鬼の翼さんが最終的に装者を曇らせながら可惜夜に希う話 作:スーパーゴッドハンド
それ以降の防人翼さん好き。
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とある専門家の発表によると、一生のうちノイズに襲われる確率は通り魔に襲われる確率よりも遥かに低いらしい。
通り魔に襲われる確率は100万分の1〜300万分の1程度なので、ノイズに襲われる人間は不運の宝くじに当たるほど稀だと言えるだろう。
「だから、仕方ない」
「運が悪かった。台風に襲われたようなものだ。君にできることなど何もなかった」
その言葉で納得できたのなら、どれほど幸せだっただろうか。
目の前で家族を、文字通り
それがどれだけ辛いことか。
許せない。許せない。許せない。
家族が死んで、あんな存在意義すら分からない怪物が今も存在していることが、どうしても許せない。
何も知らず、間抜けな面を下げて生きている街の連中を殴り飛ばし、この怒りを一から十まで叩き込んでやりたい。
『仕方ない』と偉そうに吐かした阿呆どもの家族を惨殺し、そいつらの前に家族の首を並べてやりたい。
お前たちが今感じている絶望。それがあたしの感じた怒りだ。
あたしを殺したいと思うだろ? 当たり前だ。
それが人間として当然の感情だ。
こんなドス黒い怒りを抱えたまま、普通に生きるなんて出来っこない。
もう、ただの人間には戻れない。
♯2 鬼と人
数キロにも及ぶエレベーターシャフトを、壁の僅かな凹凸に手足を掛けて降りていく。
筋肉が悲鳴を上げても止まらない。指先から血が滲み、感覚が失せても、ただ身体を支えて回復を待った。
赤外線センサーは、周囲の構造から死角を推測して紙一重でかわす。扉が閉ざされていれば、這いつくばってエアダクトを迂回する。
少女はさながら獣だった。
ノイズに家族を皆殺しにされてから、生きる時間は全てノイズを殺す方法を探る為に使った。
人並み外れた嗅覚と、常軌を逸した洞察力。もともと優れていた頭脳の回転を、焼き切れるほど酷使した。
チンピラの噂話。裏社会の真偽不明なゴシップ。記録の片隅の不自然な空白。
そんな糸くずのような情報を拾い集め、血みどろになりながら一本の糸により合わせた。
その道のりは、決して綺麗なものではなかった。
情報を得るために不良を殴り、ヤクザを殴り、報復に来た連中を返り討ちにした。
脅されようが、恨まれようが、知ったことではない。
相手が何者であろうと、彼女にとっては目的へ至るための障害か、利用できる情報源でしかなかった。
その果てに辿り着いたのがこの場所だ。
何処ぞのチンピラが息巻いていた噂──この国の秘密機関ではノイズに対抗するための兵器を開発しており、それがテロにも利用できるはずだという情報。
彼女にテロなぞ興味は無い。
彼女に正義なぞ興味は無い。
ただ、その場所にあるというノイズを殺せる兵器だけに興味があった。
一匹でも多くのノイズを塵にしてやりたい。
自分の家族の感じた怒りを、痛みを数ミリだけでも良いから奴等に味わわせてやりたい。
だから、そのために国の機関に不法侵入することに躊躇いなど微塵もありはしなかった。
どうせ自分の家族を守ることも出来なかった能無し共。
悲しもうが苦労しようが死のうがどうでも良かった。
「ノイズをぶっ殺すための、あたしの絶対たる力はどこにある……!?」
吐き捨てるように呟き、彼女は廊下を進んだ。
人の気配はない。足音も、話し声も、機械の駆動音さえ聞こえなかった。
奇妙なほど静かな廊下。
それなのに、彼女の獣の如き警戒心がざわつく。
そう感じた。
周囲を見回す。
何もいない。
物陰を確認する。
やはり、何もいない。
気のせいか。
彼女はようやく息を吐いた。
(……求めたものが目の前で、しかもいつ見つかるかも分からないからって、警戒し過ぎか?)
そんな意識の一瞬の隙。
「貴殿、いつからここに入り込んだ?」
不意に、背後から声がした。
「此処は防人としての重要地点。
完全に意識の外から飛び込んできた声に、彼女はとっさに身体をひねった。
足がもつれ、転がるように体勢を崩す。それでもすぐに立て直し、声のした方向へと向き直る。
「どうした? 迷い人なら外に案内するが?」
そこに立っていたのは、青髪の少女だった。
年齢は彼女と同年代。音符のように結われた奇妙な髪型と腰に携えた二本の日本刀。
およそ一般人には見えなかった。
間違いなくこの場所の関係者。
自分はこの場所の侵入者。
なら──さっさと気絶させなければ。
理屈などないチンピラのロジックで、彼女は青髪の少女へ向けて殴りかかった。
凶器を腰に差しているとはいえ、所詮は自分と同年代の少女だ。
これまで何人もの敵を殴り倒してきた。男とも、武器を持った相手とも何度もやり合ってきた。
先手を取れば勝てると判断した。
拳を握り、少女の顔面めがけて打ち込む……はずだった。
「しまっ……! 手心を見誤ったか!?」
「!?」
何が起きたのか、理解できなかった。
拳を振り抜いたはずの右腕が、ありえない方向へ跳ね上げられる。手首を掴まれた感触があった直後、強烈な力で視界が反転した。
床が遠ざかり、天井が迫る。
自分が逆さまになっていた。
抵抗する間も受け身を取る余裕もない。背中から無慈悲に床へ叩きつけられた。
肺から空気が弾き出され、激痛が遅れて爆発する。
何だ、今のは。
自分は確かに殴りかかった。
それなのに、どうして地面に倒れている?
目の前では、青髪の少女が青ざめた顔で駆け寄ってきていた。
先ほどまでの静かな佇まいはどこへやら、ひどく慌てた様子で彼女を覗き込んでいる。
(……人投げ飛ばしといて、そっちがビビってんじゃねえよ……っ)
文句の一つでも叩きつけてやりたかったが、身体が思うように動かない。
意識が遠のく。
近づいてくる彼女から、ふわりと甘い香りが漂う。それは冷たく、鋭く、背筋を凍らせるような気配。
まるで、研ぎ澄まされた刃を鼻先に突きつけられているかのような。
甘くて、恐ろしいほどに冷たい。そんな匂い。
それが、天羽奏と風鳴翼の出会いだった。
───
地下深くの実験室は、今や一つの牢獄として機能していた。
部屋の中央。重厚な椅子に縛り付けられているのは、一人の少女。特注の拘束服は、手足の自由はおろか指先一本の動きさえ許さない。日本では凶悪犯に対してさえ使用がためらわれる代物である。
少女の容姿は酷く整っていた。
だが、その瞳に宿る光は異様だ。周囲のすべてを敵と見なし、隙あらば喉笛に食らいつこうとする──檻に囚われた手負いの獣そのもの。
研究班、前線部隊、そしてエージェント。二課に所属する十数名が、少女を取り囲むようにして警戒していた。
その中には、翼の姿もある。
「対象の身元が判明しました。天羽奏。十四歳。……皆神山の件における、ただ一人の生存者です」
張り詰めた空気の中、オペレーターの報告が響く。
研究チームの中心に立つ櫻井了子が、顎に手を当てて小さく息を吐いた。
「皆神山。確か、聖遺物の発掘チームがノイズに急襲された事件ね。偶然現場を訪れていた少女だけが生き残った、と」
「はい。家族は全員、ノイズの炭素化に巻き込まれて死亡しています」
三年前の襲撃以来、二課は施設への侵入者に対して極めて敏感になっている。目の前の少女が単なる不法侵入者なのか、それとも何らかの意図を持って送り込まれた存在なのか。その判断を誤るわけにはいかなかった。
この過剰な警戒は、かつて翼の師である女剣士を迎え入れた際にも行われた。
表向きは「命の恩人」として扱いながらも、彼女の行動は二課によって24時間監視されていた。
郊外の道場を貸し与えたのも得体の知れない変な女剣士を野放しにするより、人類最強の男の管理下に置く方が安全だと判断したためだ。
そして今彼らの視線は、拘束された少女へと集中していた。
「知っての通り、私たちを狙う相手はたいてい聖遺物絡みよ。彼女が何らかの聖遺物を使われている可能性だってある。
彼女がシラフな保証なんて何処にも無い」
「無論、理解はしているさ。だがな、了子くん」
凄みのある低い声が、了子の言葉を遮った。
「それでも、子供を監禁するような真似を『仕方ない』と諦めてしまうのは、大人として間違った姿だろう」
男の名前は風鳴弦十郎。
国防という世界においては知らぬものなどいない、文字通り世界最強の男。
彼の言葉は理想論だ。だが、この男が口にするとそれだけで場を制圧する絶対的な説得力があった。
弦十郎の気迫に押されたのか、了子は肩をすくめ、視線を列の端に立つ少女へと向けた。
「じゃあ、直接手を合わせた貴女はどう思ったの? 翼ちゃん。聖遺物かなんかで操られているような気配はあった?」
「……そうですね。素人ながら、かなり出来ました」
翼は淡々と、感情を交えずに事実だけを告げた。
「とても、
「……そういうとこ聞いたんじゃ無いんだけど」
翼の呟きに了子は呆れて顔を覆った。
何にと問われれば、この少女の
───
復讐は善か悪か。それは議論の絶えないテーマ。かつては人間の義務として扱われることもあった復讐だが、現代では私刑は法で禁じられ、復讐者はただの犯罪者として処理される。
そういう意味において、天羽奏がこの時代に生まれ落ちたのは悲劇だったと言えるだろう。
天羽奏は、紛れもない復讐者だ。
目的のためなら過去を切り捨て、安らげる陽だまりにも背を向ける。己の命も、尊厳も、正気すらもためらいなく犬に食わせる覚悟があった。
自分が狂いかけている自覚はある。道を踏み外していることも、とうに分かっている。
それでもノイズを皆殺しにできるなら、喜んで修羅に堕ちる気概があった。
結局、奏は二課の一員として迎え入れられた。
理由は単純だ。「ノイズを殺すためなら手段を問わない」という底なしの狂気が、二課の求める人材要件と見事に合致したからである。
「……それで、なんであたしがアンタと同室なんだ?」
「同年代である以上、仲良くなれるだろうという了子女史の心遣いだ。よろしく頼むよ」
二課の居住区画。あてがわれた部屋で、奏は露骨に顔をしかめた。
当然ながら予定外の編入である奏に個室など用意されてはいない。かといって廊下に放り出すわけにもいかず、同年代である翼の部屋に押し込まれることになった。
事情は分かる。だが感情は別だ。対する風鳴翼は、淡々とした事務的な口調で答えるだけ。わざとなのかと問いたくなるほどに癪に触った。
「生憎、あたしはよろしくなんて言うつもりはないんで」
吐き捨てるように言い放ち、奏は鋭く睨みつけた。
奏は同室となったこの風鳴翼という女が、ひどく嫌いであった。
彼女からは、明確な『壁』を感じるのだ。
それは他者を拒絶するためのものではない。もっと根本的な、生き物としての在り方の異常性。
息をすることすら偽っているかのような、歪な気配。自身のすべてを「正しき防人」「心優しき善人」として取り繕う、薄気味悪いほどのセルフプロデュースの跡が、ひしひしと伝わってくるのだ。
これほど分かりやすく、それでいて底が見えない壁はない。
まるで濁りきった薄氷だ。表面を綺麗に取り繕っているくせに、その下には正体不明の深淵が広がっている。
こんなクソみたいな薄氷の女に、自分の生き様をとやかく言われる筋合いはない。
「あたしに必要以上に関わるなよ」
「───そうか。残念だ」
奏の鋭い拒絶に対し、翼はひどく悲しそうに肩を落とした。
しかし次の瞬間、翼は脱いだばかりの自分の下着を、無造作に部屋の隅へと放り投げた。
「──ッ!」
奏の眉間が、限界まで険しく引きつる。
そう、この部屋は足の踏み場もないほどの惨状だった。
読み終えた雑誌、脱ぎ散らかされた衣服。それらがジャングルのように乱立している。悲しげな顔を取り繕いながら、息を吐くように部屋を汚す女。
この絶望的なまでのズボラさもまた、奏の神経を逆撫でする重大な要因であった。
───
そうして、二課本部での奏の生活が始まった。
最初の数日は、徹底的な身体検査に費やされた。
それがシンフォギアの適性検査を兼ねていると知った瞬間、奏は検査台の上で歓喜に打ち震えた。ただ適性を測るだけだというのに、血走った眼を開き、肉食獣のように異様な笑みで口角を吊り上げる。
その常軌を逸した執念に検査にあたった研究員たちは一様に青ざめ、恐怖すら抱いた。
また別の日。奏は案内されたトレーニングルームで、自らの肉体を破壊しかねない殺人的な負荷の訓練を開始した。
シンフォギアを纏うには、強靭な身体と鍛錬が必要不可欠。その一言だけを原動力に、筋肉が悲鳴を上げ、血を吐くようなペースで己を追い込んでいく。
案内役であった翼は、狂ったように汗を流す奏の姿を、まるで値踏みするように冷ややかに眺めていた。
やがて視線を外すと、自身の木刀に尋常ではない鉛の重りを取り付け、黙々と素振りを始める。
奏の荒い呼吸が響く中、翼はただ機械のように、恐るべき正確さで剣を振り続けていた。
奏と翼の関係は、常にその繰り返しだった。
奏がノイズを殺すために自傷紛いの無茶を続け、やがて限界を迎えて床に崩れ落ちそうになる。
その瞬間──翼がぴたりと素振りをやめ、倒れる奏の身体を寸前で受け止めるのだ。
「無茶はよくない。君が倒れることは、悪しきことだ」
それは、絵に描いたような防人としての正論。
仲間が傷つくのは悪しきことであり、それを助けるのは至極正しき善いことだから。
薄氷の下の死の気配など微塵も感じさせない、完璧に作り上げられた心優しき善人の顔で翼は奏を制止し続けるのだ。
異常な執念で命を削る少女と、優等生の仮面の裏に底知れぬ深淵を隠した少女。
弦十郎をはじめとする大人たちは、防音ガラスの向こうからそんな子供たちの姿を、ただ重苦しい表情で見守るしかなかった。
息の詰まるような、危うい共同生活。
そんな日々が一週間ほど過ぎた頃だろうか。
天羽奏は、二課の敷地内にある裏山を歩いていた。
ノイズを打倒したいし、そのためのシンフォギアという力も喉から手が出るほど欲しい。だが、いつまでも監視下に置かれている状況には当然不満も募る。
足首に監視用のGPSを取り付けることを条件に、この裏山だけは特別に自由な散策が許されていた。
裏山は静かだ。人がいないのだから当然だろう。
世間では、静かな場所にいるとリラックスできるなどと言うが、そんなものは健康的な人間にだけ許された特権なのかもしれない。
例えば、家族の付き添いで発掘現場へ赴き、そこでノイズに家族を皆殺しにされた少女にとって、静寂は最悪の環境だろう。
騒音という名の『意識を逸らしてくれるもの』がない以上、嫌でも家族の最期を、悪夢のように思い出してしまう。
あの日から文字通り動き続けていた彼女にとって、それは立ち止まって初めて知る事実だった。
悲しみが胸を支配する。
だがそれは良く無い。それでは、自分は『怒り』ではなく『悲しみ』で動くことになる。
悲しみはダメだ。いつか癒えてしまう。癒えてしまったら、誰があの家族のことを思ってやるのだろう。
戻ろう。そう思った矢先だった。
静かな場所には、不快な記憶を呼び起こすだけでなく、別の効果もある。
微かな音を遠くまで届ける、という効果だ。
「───フッ!ハアッ!」
声がした。少女が何かを叫んでいるような声。
同時に、空気を切り裂くような風切り音が連続して聞こえてくる。
「…………」
一人でいることに飽き飽きしていた奏は、光に寄り寄る虫のように音のする方へと引き寄せられた。
草むらを掻き分けた先には、古びた道場があった。それが何の施設かは知らないが、大方、訓練にでも使われていたのだろう。
奏は体を動かすことは好きだ。
ノイズに家族を奪われ、彼女を構成する多くの要素は歪に変化してしまったが、運動と歌が好きだという事実だけが変わらずに残っていたのは幸運だろう。
開け放たれた縁側へ近づき、中を覗き込む。
そこにいたのは、同室のあのズボラ女だった。
奏を投げ飛ばした夜にも腰に差していた日本刀。その刃を剥き出しにし、道場の中央でゆっくりと、ただひたすらに振るっている。
「ん?」
間の悪いことに、ズボラ女はこちらに気が付いた。
特に驚いた様子もなく日本刀を鞘に納めると、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
「ああ! 奏! どうしたの? 今日は検査は休み?」
その口調に、ずっこけそうになった。
大人たちと会話を交わす際の、あの堅苦しい侍のような口調ではない。年頃の少女と何も変わらない、ふんわりとした話し方。
二重人格か何かか?
「…………別に。あたしがどこにいようと勝手だろ。それよりなんだよ、その喋り方」
「────素だよ。普段のあれは、防人、もしくは剣士を理解するためのふさわしき仮面。
そういう奏はいつもそんな獣みたいな喋り方してるの? 疲れない?」
当たり前のように、彼女は小首を傾げた。
そんなわけがない。仮面を付け替えるなんて、ドラマに出てくる嫌な姑みたいじゃないか。
「人をお前みたいな変人扱いするんじゃねえよ」
「私なんかのことより、奏。今、私の貴女への気持ちを伝えておくね。」
「───は? お前、なにいって?」
「私、貴女のこと応援してる。きっとシンフォギアを自分のものにできるって」
「なんなんだ、お前」
嬉しそうに笑う翼に、奏はますます引いた。
「あのよお。あたしは客観的に見て、その……ヤバい奴だろ。復讐のためにここの力を利用しようとしてるなんて、普通に受け入れられないと思ってたんだが」
「ん〜。まあ、かもしれないね。シンフォギアは人類のための力。それを我欲のために使うのは悪しきこと」
翼は事もなげに言う。
「だけど、貴女はそれだけじゃないと思うの。だって、貴女は
「――は?」
「復讐鬼なんて、貴女を表す言葉がある。けど復讐なんて、人の心がないとできないことでしょ? 復讐が善か悪か、なんて私にはわからないけど。大事な人を殺されて、
翼は、ひどく真っ直ぐに奏を見つめていた。
「そんな貴女なら、たとえ悪しき理由で始まったとしても、
「勘弁してくれ、あたしはそんな人間じゃない。あたしをバカにするな」
奏はほんの少しだけ怖くなって、翼を拒絶した。
彼女の言葉は不気味だった。
そこには、嘘偽りといったものが何一つ見当たらない。
「あたしには、アンタが分からない」
奏はそれだけを伝えるしか無かった。