VRMMO後遺症   作:虚空小白

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第2話 罹患者A・K

 瀬川は喫茶店で痩せこけた女性に名刺を渡し、取材を始めた。

 

 彼女は罹患者の母親で、娘は一カ月前にこの世を去っている。

 

 彼女は息を吐いた。

 

「私はゲームのことはわかりません。でも、あの子の目が輝いていたのを、今でも覚えています」

 

 ハンカチで目元を拭った。

 

「本名はイニシャルで構いません。娘さんの名前と年齢を教えてください」

 

「名前は金子愛、17歳でした」

 

「匿名にしますので、ご安心ください」

 

「はい」

 

「愛さんは、どのような怪我だったのですか?」

 

「下半身不随です。中学生の卒業式の帰り道に、車に撥ねられたのが原因です」

 

 彼女はハンカチを握りしめた。

 

「相手は高齢の男性で、アクセルとブレーキを踏み間違えたと言っていました」

 

 彼女は肩を震わせて涙を流した。

 ハンカチで目元を拭った。

 

「すみません。新しい制服を見つめるあの子の姿を思い出してしまって」

 

「ゆっくりで構いません。話を聞かせてください」

 

「進学先は、通信制に変えました。車椅子で通学するのには不便でしたので」

 

「なるほど」

 

「ある日、ゲームに興味がなかったあの子が、珍しくゲームの話をしてきました」

 

 瀬川はコーヒーを一口飲んだ。

 

「それは、VRMMOですか?」

 

「確か、そのような名前だったと思います。欲しいとねだられたので、買うことを許しました」

 

 くすっ、と笑った。

 

「ゲームが届いた日のことです。あの子は私に言いました」

 

「何と言われたんですか?」

 

「絶対に起こさないでね、と。私は頷きましたが、何を言っているのかわかりませんでした」

 

 瀬川は説明を始めた。

 

「私もあまり詳しいほうではありませんが、VRMMOは人工的にレム睡眠に似た状態を作り出すようです。ゲームをしている間は夢を見ている、と言えば伝わりますか」

 

「ええ。今でも覚えています。目を覚ましたあの子が嬉しそうに笑っていたのを」

 

「愛さんは何か言っていましたか?」

 

「歩けた、と。私には何を言っているのかわかりませんでしたが、喜んでいるあの子の姿を見て、安心しました」

 

「安心ですか?」

 

「はい。親なのでわかってしまうんです。事故に遭った日から、あの子が作り笑いをしていることに」

 

 彼女の声が僅かに揺れた。

 

「私と夫に心配をかけないよう、無理をして笑っていたんです」

 

 瀬川は踏み込んだ質問を始めた。

 

「愛さんの死因について、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

 彼女は静かに目を伏せた。

 ハンカチを目元に当て、答えた。

 

「自殺です」

 

「遺書は残っていましたか?」

 

「世界が死んだので、私も死にます。パパ、ママ、ごめんなさい、と」

 

 彼女は声を押し殺して泣いた。

 

 瀬川に子どもはいない。

 

 彼女にかける言葉が見つからなかった。

 

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