TS転生した俺、サキュバスらしい   作:ほんきょー

5 / 5
5.知らない時間

 小学校に入学して、最初に発表されたのはクラス分けだった。

 

 掲示された名簿を見ていくと、澪とは別のクラスになっていた。

 

「……紬と違うクラスかあ」

 

 澪がぽつりとつぶやいた。普段の澪は落ち着いていて、年齢のわりに大人びて見えることが多い。

 

 そんな澪が、今はあからさまに残念そうな顔をしている。

 

「休み時間なら会えるだろ?」

 

「……うん、そうね。お昼休みもあるものね」

 

 そう言って頷く澪を見て、俺は思わず笑みをこぼした。普段は落ち着いている澪が、こんなにも分かりやすく残念がっている。その姿が、年相応で可愛らしい。

 

 幼稚園に入ったばかりの頃は、別々に遊ぶこともあった。それがいつの間にか、一緒に遊んだり、帰り道に話したりすることが増えていた。気づけば、澪と過ごす時間は俺にとって当たり前のものになっていたらしい。

 

 別のクラスになったからといって、会えなくなるわけじゃない。それでも、これまでより一緒にいられる時間が減ると思うと、やっぱり寂しかった。

 

 とはいえ、学校が始まれば新しい友達もできる。授業を受けたり、休み時間に遊んだり、やることは幼稚園の頃とそう変わらない。

 

 こうして教室で授業を受けるのは、ずいぶん久しぶりだった。前世の学校生活を思い出しながら、先生の話を聞いた。

 

 クラスには初めて話す子も多かったけれど、休み時間に一緒に遊ぶうちに、少しずつ打ち解けていった。澪も向こうのクラスで友達と過ごしているようだった。

 

 それでも、放課後には校門で待ち合わせて、一緒に帰るようになった。

 

 幼稚園の頃は、ほとんどの時間を一緒に過ごしていたから、わざわざその日にあったことを話す必要もなかった。

 

 でも、今は違う教室で過ごしている。澪がどんなふうに過ごしていたのか、俺が知らない時間もある。

 

 帰り道、互いに今日あったことを話すようになったのは、少し不思議な感じがした。

 

 ただ、話を聞いていると、少し気になることもあった。

 

「今日ね、クラスの子に絵を見せてもらったの」

 

「へえ、どんな絵?」

 

「女の子が泣いている絵だったのだけれど、口元は笑っているように見えたの。そう言ったら、嫌な顔をされたわ」

 

「……そっか」

 

 俺は少し考えた。

 

「その子、絵を見てほしかったんじゃないかな」

 

「見たわよ?」

 

「いや、そうじゃなくて……。その子は、絵を見せて感想を聞いてほしかったのかもしれないだろ?」

 

 澪は不思議そうに首を傾げた。

 

「でも、気づいたことを言っただけよ?」

 

「うん。澪は、気づいたことをすぐ言うだろ?」

 

「ええ。それがどうかしたの?」

 

「いや、相手が何を話したいのか、先に聞いたり考えたりするといいんじゃないかな」

 

「……そうね。少し考えてみるわ」

 

 澪は納得したのか、そう答えた。

 

「今日も、クラスの子と話したの」

 

「うん」

 

「クラスの子が昨日あったことを話していたから、最後まで聞いてみたわ」

 

 俺は少し意外に思った。前に話したことを、ちゃんと覚えていたらしい。

 

「そしたら、前に言っていたことと違うところがあったの。だから、そこを指摘したら、怒ってしまったみたい」

 

「そっか……」

 

「私、最後まで話を聞いたのよ?」

 

 澪は困ったように眉を寄せていた。

 

「うん。ちゃんと聞いたんだな」

 

「ええ。でも、どうして怒ったのか分からないわ」

 

 俺は返事に迷った。

 

 話の内容が本当に食い違っていたのなら、澪の指摘自体は間違っていなかったのだろう。澪は相手の話を遮らず、前に話したことまで覚えていた。それでも、うまくいかなかった。

 

 俺が同じ状況になったら、どうするだろう。

 

 自分が言われたら嫌な気分になるかもしれない。でも、澪と同じ状況なら、俺だって指摘してしまう気がする。

 

 だからといって、澪が悪くないと簡単に言い切るのも違う気がした。

 

「……難しいな」

 

「何が?」

 

「いや、なんでもない」

 

 澪は納得していない様子だったけれど、それ以上は聞いてこなかった。

 

 帰り道、澪はいつも通り隣を歩いていた。学校であったことを話すときも、特別に落ち込んでいるようには見えない。ただ、どうして相手が怒ったのか分からない。それが不思議で仕方ないらしかった。

 

 それからも、放課後に一緒に帰るときには、学校であったことを澪から聞くようになった。

 

 友達と遊んだ話もあれば、授業で気になったことや、誰かとのやり取りについて話す日もあった。

 

 澪は前に言われたことを覚えていて、どうすればいいのか自分なりに考えているようだった。

 

 それでも、話を聞くたびに、少しずつ気になることが増えていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

亜人族は生きにくい。(作者:アインツベルン)(オリジナル:現代/コメディ)

目が覚めたら種族不明の美少女になっていたんだが、どう生きていけばいいのだろうか。


総合評価:19/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年09月15日(火) 21:13 小説情報

TS転生不老不死銀髪幸薄系美少女(作者:むけー)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

上記転生者が世界にバチボコに曇らされる話。


総合評価:37/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年07月04日(土) 18:27 小説情報

曇りすぎたTSエルフは弟子たちに救われますか?(作者:もぬゆ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

前世の記憶を思い出した主人公は、幼なじみと共に成長し強くなっていく。▼その過程でコミュ障をなんとかしたり、幸せを噛み締めたり。▼異世界特有のロマンを全力で楽しむなど、それは順風満帆に過ごしていた。▼だがここは優しい世界ではない。▼あくまで現実であり、命を脅かす魔物がそこらに蔓延る世界。▼それに気付いた頃には全てが手遅れになっていた。▼これは現実に絶望した主人…


総合評価:62/評価:-.--/連載:8話/更新日時:2026年09月23日(水) 14:28 小説情報

俺がマギカなのか……?改(作者:きのこ大三元)(原作:魔法少女まどか☆マギカ)

 目を覚ますと、そこは『魔法少女まどか☆マギカ』の世界だった。▼ ▼ しかも自分は見知らぬ少女の姿で、時系列は暁美ほむらがまだ眼鏡と三つ編みだった最初の時間軸。▼ ▼ 『叛逆の物語』まで知っている以上、この先に起こる悲劇も知っている。▼ なら、未来を変えればいい――そう思った。▼ ▼ だが、自分自身のことだけは何も分からない。▼ ▼ 長く学校を休んでいたらし…


総合評価:1899/評価:8.58/連載:48話/更新日時:2026年10月16日(金) 20:25 小説情報

居場所をなくしたTS聖女は魔法少女と出会う(作者:綺羅星瑠奈)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

世界統治の為、象徴として利用されたTS転生聖女のルナ。▼かつての仲間だった魔法使いによって前世の現代日本に転移する。▼しかしそこは魔法少女がいる世界だった。▼前世の妹にも信じてもらえず、死んだ方が楽なのではないか思っていたところで、死にかけの魔法少女に出会う。▼異世界でも現代でも居場所をなくしたサポート特化のTS聖女と困っている人を見捨てられない近接特化魔法…


総合評価:1753/評価:8.44/連載:40話/更新日時:2026年10月14日(水) 21:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>