ルリハ視点
雷雲へ突っ込んでから、しばらく。
これだけ荒れた天気には、エクスプローラーズという三人組も流石に諦めた。
……と思っていた。
「……ん?」
窓の外。
雨に濡れたガラスの向こうに、何かが見えた。
まだいる。
しかも……
「ちょっと待って、近くない?」
ウイングデッキ付近。
さっきよりずっと近い。
雷雲にまで突っ込んだのにまだ追いかけてきたの?
デッキに貼られている透明な壁のようなものに攻撃して、壊そうとしている。
……どれだけペンダントが欲しいんだ。
私が若干引いている横で、お姉ちゃんもそれに気づいた。
「あの、来てます!」
モリーさんがすぐスマホロトムで繋いでいた電話に叫ぶ。
「フリード! エクスプローラーズがウイングデッキに!」
『何だと!? ウイングデッキを畳めるか?』
「電源が死んでる。……仕方ない」
モリーさんは出口の方に歩いていく。
「アンタたちはここにいて」
「え、どこに……?」
「手動で畳む」
モリーさんがガラスドアを開けた。
強い風と雨粒が入ってくる。
そして、すぐにドアが閉まる
……行ってしまった。
私は一緒に展望室に残されたお姉ちゃんを見る。
不安そうだ。
……そりゃそうだよね。
学校にいたと思ったら知らない人たちに追われて、知らない飛行船に乗って、嵐に突っ込んで……
その追っ手が、まだ来る。
……これで大丈夫な人はそうそういないだろう。
「大丈夫、何とかなるって」
そう言ってから、少しだけ考えた。
……違う。
何とかなる、じゃない。
「……ううん。私が、何とかするから」
私が、何とかしないと。
何もかも謎のままだけど、お姉ちゃんを守らないと
「……ねえ、ルリハ。私……」
彼女が何かを言おうとした、その時。
――バキィンッ!!
「「!?」」
大きな音が響いた。
ウイングデッキを守っていたバリアが破られた様子。
……本格的にまずいな。
嵐に突っ込んだから、チルタリスで空を飛ぶわけにもいかない。
アメジオたちに飛行船に入られたら、追い詰められて終わりだ。
ここでチルタリスが守っているポケモンたちも危険かもしれない。
……やるしかない、か。
「チルタリス、ここでポケモンたちを」
「チルゥ!」
私は立ち上がる。
ニンフィアは私が何をするつもりなのか分かってくれたらしく、私の肩に飛び乗った。
「フィーア!」
「……」
私とニンフィアは出口へ向かう。
そして、ガラスドアに手をかけようとした。
「ルリハ!?」
後ろからお姉ちゃんの声。
その声に、ドアに伸ばした手を引っ込め、私は振り返った。
「私が足止めする」
「でも……!」
「大丈夫だよ。ここで待ってて」
一人にするのは不安だけど、お姉ちゃんもそこまで弱くないはず。
何より、ペンダントを持ってるのは私ではなく、お姉ちゃん。
わざわざ相手の前へ出る必要はないだろう。
「…………」
お姉ちゃんが私から顔を背けた。
……?
どうしたんだろう。
ーーー☆★☆
その頃、私の知らないところで彼女の頭の中は。
『ちょっと待って』
大混乱していたらしい。
『この展開……』
謎のペンダントを狙われ、怪しい集団から追い回され、飛行船へ逃げ込んでも追いつかれ。
夢とかドラマくらいでしか見ることがなさそうなもの。
……そして、最愛の妹が前へ出て。
『そんな妹がかっこいいセリフを言うって……』
何かに気づいたようだ。
『私、私……!』
ペンダントの謎?
妹の正体?
エクスプローラーズの狙い?
いや、そんなものではない。
『物語のヒロインですかァァァッ!?!?』
――そんな内心、私は当然知りませんでした。
私たちの背後では、そんな彼女の心情を再現しているかのように大きな雷が落ちた。
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