ルリハ視点
「お前らが、悪名高きエクスプローラーズのお仲間だったとはな」
そう言いながら、フリードさんがリザードンの背中から降りる。
……ん?
フリードさんの肩、ピカチュウがいる。
しかも、いかにもキャプテンって感じの帽子被ってる。
可愛い……
いや、待て。
何となくだけど、このピカチュウ……
……可愛いって言ったら怒りそう。
私のニンフィアもそうなんだよね。
私が『可愛い〜♡』って言うと、『僕、男の子なんだけど……』って返してくる。
まあ、やっぱり可愛いんだけどね。
「アメジオだ」
「俺はフリード。 ライジングボルテッカーズのリーダーだ」
……ライジングボルテッカーズ?
聞いたことないんですけど。
しかも、リーダー?
エクスプローラーズも知らない。
ライジングボルテッカーズも知らない。
今日一日で知らない組織が二つ増えた。
……何なの今日。
「嵐に飛び込むなんて、無謀な連中だな」
それについてはちょっと分かる。
「無断乗船してきた奴に言われたくないね」
それもそう。
どっちも正論。
……いや、無断乗船してるぶん、アメジオたちのほうが駄目なのか?
いやでも誘拐に勘違いされるようなことをしたのはこっち……?
アメジオの視線がこちらへ向く。
一瞬、私と目が合った。
「……目的が終われば、すぐに出ていく」
「おっと、そいつは無理な相談だ」
「では、先ほどの続きをやるか?」
「望むところだ」
……学校での悲劇、再来。
いや、ここは公共の場ではないとはいえ。
ウイングデッキがバトルコートになってるとはいえ。
一応バリアがあるとはいえ……
…………本気ですか?
最悪、この船までもがぶっ壊れるのでは……
フリードさんは、リザードンをボールへ戻してしまった。
私は首を傾げる。
アメジオのソウブレイズと戦うのは、リザードンのままで戦うのだと思っていた。
それに、さっき学園でのバトルを見ていた感じ、ソウブレイズの特性はもらいびではなく、もう一個の方のくだけるよろいだ。
……ほのおタイプの攻撃が無効化されないから、リザードンでも戦えるとは思うのだが。
アメジオも大体私と同じ考えだったらしい。
「どういうつもりだ?」
「決まってんだろ。 行くぜ、キャップ!!」
「ピッカチュウ!」
ピカチュウがフリードさんの肩から飛び降りる。
堂々とソウブレイズの前へ。
……キャップ。
この子、キャップって言うんだ。
帽子を被ってるから?
……いや、さすがに違うか。
「……ピカチュウ? 舐められたものだな」
「それはこっちのセリフだ」
フリードさん、かなり自信あるな。
アメジオもそれ以上は何も言わない。
「……では、手加減なしだ」
バトルが始まる。
私はお姉ちゃんと一緒に、コートの横でそれを見ることになった。
…………
助けてくれるのは、嬉しい。
本当に、ありがたいんだけど。
私、まだ子供だけど。
……多分。
いや、年齢は知らないし、少なくとも見た目は子供だけど。
…………私、そこまで弱くないのに……
さっき戦えそうだったじゃん。
もうちょっと待ってほしかった。
「キャップ、かげぶんしん!」
「ピィカ!」
次の瞬間には、キャップの姿が増えた。
一匹、二匹、三匹、四匹。
いや、まだ増える。
……分身、多っ!?
ウイングデッキいっぱいに、キャップの姿。
一斉にソウブレイズに突っ込んでいく。
「ソウブレイズ、サイコカッター!」
「ソウッ!!」
ソウブレイズが腕を振る。
鋭い斬撃が次々に放たれた。
どんどんキャップの分身が消えていく。
しかし全部ではない。
消えていく分身の中でも、一匹のキャップがソウブレイズへ急接近している。
「かみなりパンチ!」
「むねんのつるぎ!」
キャップの拳に電撃が集まる。
対するソウブレイズは、腕の炎の剣を振るった。
ヤバい、斬られ――
……って、あれ?
ソウブレイズが振るった剣にキャップは間違いなく当たった。
でも、キャップがかき消されるようにどこかへ行ってしまった。
……まさか、今のも分身?
じゃあ、本物はどこ?
その瞬間、バリアの外で展望室の真上。
空から、一本の雷が落ちた。
ドォンッ!!
思わず目を細める。
そして、雷の中心にはキャップがいた。
「ピィィィカ……!」
全身に雷を纏いながら立っている。
雷を引き寄せたってことは……
特性ひらいしん?
バトルに嵐を利用するとは思わなかった。
「いいぞ、キャップ! 行け、ボルテッカー!!」
「ピッカァァァァァ!!」
キャップが飛び出す。
雷を纏ったまま、高い場所から飛び降り、ソウブレイズに向かって駆け抜けた。
「まだだ、ソウブレイズ! サイコカッター!」
「ソウッ!!」
ソウブレイズが迎え撃つ。
ボルテッカーとサイコカッター。
二つの技がぶつかる。
「……!」
ソウブレイズがキャップの突進を受け止め、弾く。
その時、反動で出たサイコカッターの斬撃が飛んだ。
向かった先は、展望室。
「あっ!」
あそこには、モリーさんがいる。
……でも、それだけじゃない。
さっきのポケモンたちも、その子たちを見てくれてるチルタリスだっている。
考えるより先に、私には届くはずもないのに手を伸ばす。
…………私が今、できることは……
「ニンフィア!!」
「フィアァァァッ!!」
相棒の名前を呼ぶ。
ニンフィアも分かっていた様子で、でんこうせっかで飛び出した。
「シャドーボール!!」
「フィアッ!!」
ニンフィアはサイコカッターの前に回り込むと、黒い球体を作って放つ。
飛んでいくサイコカッターへ、真正面から。
二つの技が衝突すると、サイコカッターが砕けて消えた。
「ありがとう」
「フィア〜♪」
……よかった。
間に合った。
もし今のが展望室に飛び込んでたら……
これ、やっぱりここでバトル続けるの危なくない?
いや、私がここで頑張れってこと?
その時、
「やめて……!」
隣から、お姉ちゃんの声がした。
「やめてください!!」
大きな声だった。
フリードさんも、アメジオも。
キャップも、ソウブレイズも。
そして、私も彼女を見る。
「……えっ?」
何かあった時のために前へ伸ばしていた手。
その声を聞いた私は、気づけばその手を降ろしていた。
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