リコ視点
《回想》
「また来たよ〜!」
あの子の病室に入って、手を振る私。
お母さんとお父さんもそんな私を後ろから見ていた。
その子はベッドの中で座った状態でイーブイを撫でてて、私に少し視線を向けただけでまたイーブイに視線を戻してしまった。
小児病棟というところでは、あまりポケモンを出しちゃ駄目らしい。
他の子を引っ掻いたりしちゃったら危ないし、ポケモンが逆に危険になる可能性があるから。
でも、ここはこの子しかいない部屋。
まあまあポケモンを自由に出せるから、あまりこっちを見てくれなかった。
部屋に来る前にお医者さんからこの子のことを色々話された。
やっぱり難しい話ばっかでわからなかった。
でも、いくら経っても何も思い出さないってことはわかった。
やっぱり名前も、覚えてないだとか。
「「……」」
沈黙が続く。
何を話しかけたら私のことをちゃんと見てくれるんだろう。
何を、何をしたら……!!
「ねえ、リコがあなたの名前を考えてきたの」
「よかったら、聞くだけ聞いてくれないかい?」
「!」
お母さんとお父さんがそう言うと、その子は興味を持ったように顔を上げた。
「……名前?」
「ええ、名前よ」
「か、考えてきたの!頑張って、そのぉ……」
同じくらいの年齢の子でも話しかけるのが苦手な私。
でも、その子は急かすことなく私を見ていた。
「ルリハ!」
「……?」
瑠璃でルリ。
羽でハを取って。
「”瑠璃”と”羽”でルリハ!」
「…………ルリハ……」
気に入ってくれるかな……
いや、でも……
「いいよ」
「えっ」
さらっと言った。
本当に、さらっと。
「え、え、ええぇぇぇッ!? い、いいの!?」
「名前がわかるまでの、ただのあだ名でしょ?」
あ、そういう認識なんだ……
……でも!
「気に入ってもらえてよかったぁ!!」
私はそれが嬉しくって、笑いながら言った。
「あ、そういえば私も名前言ってなかったね! リコだよ!」
「私はルッカ」
「僕はアレックスだよ」
名乗る私たち。
それを聞いたその子……
ううん、”ルリハ”の目元が、
「……うん、よろしく」
少しだけ柔らかくなったように感じた。
ーーー☆★☆
彼女が入院してから、多分2週間くらい経過した。
「……えっ」
お母さんとお父さんがお仕事だから、今日はルリハのポケモンに頼んで連れて来てもらった。
ちなみに、それはあの時ルリハの近くにいた騎士みたいなポケモン。
ソウブレイズって言うんだって。
パルデアのポケモンらしい。
それで、病室に来たまではいいんだけど……
……立ってる?
いや、松葉杖というものはある。
でも前まで車椅子っていうもので移動してた。
右足も左足も痛いって話だったらしいから。
でもその子は今片足を床についてる。
「……治ったの?」
「うん、昨日からこれ。 一応、右足だけ」
信じられない。
詳しく話を聞くと、ちゃんと検査を受けたとのこと。
お母さんとお父さんだけで病院に行ってたのはそういうことだったのかな。
骨折というものをよくわからなかった私は治るのはそんな物なんだなぁと思っていたけど、お医者さんたちは凄い驚いてたんだって。
どうしてだろうね、早く治ったら嬉しいと思うのに。
「そうだ!お母さんたちから聞いたんだけど、私たちの家族になるって本当!?」
「ああ、そうだね。 養子としてどうかなって聞かれたくらいだけど……あなたはそれでいいの?」
「もちろんっ! ルリハと毎日一緒になれるなんて嬉しいなぁ!”お姉ちゃん”ができるなんて……」
お姉ちゃんと聞いたルリハは少し不満げに頬を膨らませていた。
「え、なんか嫌だった?」
「嫌ではないんだけど……私が上なの? 私、リコに助けられたんだし……」
「じゃあ、私がお姉ちゃん? でもルリハのほうがおっきいし……」
お互いに納得がいかない姉妹問題は、とりあえず私がお姉ちゃんってことになった。
一人っ子だったし、慣れないなぁ……
でも、家族が増えるのは嬉しいよ!
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