転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある   作:1番道路

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市内大会で優勝し、大会MVPにも選ばれた小学一年生の朝倉悠真。

大量の経験点と新たな育成機能を手に入れた悠真は、ついに初めての特殊能力を取得する。

しかし、世界最高の二刀流を目指す道はまだ始まったばかり。

新たな強豪との対戦に備え、悠真の特訓が始まる。


第十話 特訓開始、初めての特殊能力

 優勝。

 

 なんともいい響きだ。

 

 桜台フェニックスに入団してから、まだそれほど時間は経っていない。

 

 それなのに、俺はすでに公式大会で優勝を経験してしまった。

 

 しかも、ただ優勝しただけではない。

 

 大会MVP。

 

 市内大会四試合で十二打数十二安打。

 

 打率十割。

 

 打点十。

 

 さらに投手としても無失点。

 

 ……いや、我ながらとんでもない成績である。

 

 もちろん、相手は小学生だ。

 

 しかも四年生以下の大会。

 

 将来的にプロ野球やメジャーリーグで活躍することを考えれば、まだまだ通過点にすぎない。

 

 だが、それでも嬉しいものは嬉しい。

 

「悠真! 優勝おめでとう!」

 

「ありがとう、お父さん!」

 

 大会から帰宅した俺を、父さんが満面の笑みで迎えてくれた。

 

 もっとも、父さんも球場で応援していたので、優勝したことは当然知っている。

 

「いやあ、凄かったな! あの決勝戦のタイムリー!」

 

「えへへ」

 

「しかも十二打数十二安打だろ? 父さん、高校時代でもそんな成績残したことないぞ!」

 

 そりゃそうだろう。

 

 俺だって前世では残したことがない。

 

 というか、普通はまず無理だ。

 

 野球は三割打てれば優秀なスポーツである。

 

 十割なんて、短い期間だからこそ成立する数字だ。

 

「あなた、悠真が疲れちゃうでしょ」

 

 母さんが苦笑しながら言った。

 

「ほら、今日はゆっくり休ませてあげて」

 

「ああ、そうだったな」

 

 父さんが笑った。

 

「悠真、今日はしっかり休めよ!」

 

「うん!」

 

 もちろん、そのつもりだ。

 

 何しろ、試合では打撃だけでなく投球もしている。

 

 身体への負担は決して小さくない。

 

 しかも、現在の俺は六歳。

 

 小学一年生だ。

 

 今から無茶をして故障するわけにはいかない。

 

 世界最高の二刀流選手になるという目標は、何十年も先まで続くのだから。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の夜。

 

 俺は自室のベッドに腰掛けていた。

 

 目の前には、半透明の画面が浮かんでいる。

 

 パワプロ育成システム。

 

 神様から貰った、俺だけの転生特典だ。

 

 そして現在。

 

 その画面には、大量の経験点が表示されていた。

 

――――――――――――――――――

 

【所持経験点】

 

 筋力:1840

 

 敏捷:1675

 

 技術:2350

 

 変化球:100

 

 精神:2160

 

【合計】

 

 8125ポイント

 

――――――――――――――――――

 

(……うーん、凄いな)

 

 八千ポイント以上。

 

 普通のパワプロなら、かなり自由に能力を強化できる数字だ。

 

 だが、今の俺には問題がある。

 

 身体の成長制限。

 

 現在の球速は七十四キロ。

 

 パワーはG20。

 

 走力も守備力も、まだまだ成長途中だ。

 

 もちろん、経験点を使えば能力を強化できる。

 

 しかし、年齢や身体の発達状況によって上限が存在している。

 

 今の俺がどれだけ経験点を投入しても、いきなり百五十キロのストレートを投げたり、百メートルを十秒台で走ったりすることはできない。

 

 まあ、当たり前だ。

 

 もし六歳児が百五十キロの球を投げ始めたら、野球どころの騒ぎではなくなる。

 

 テレビ局や研究機関が押しかけてくるかもしれない。

 

 それは困る。

 

 俺は平和に野球がしたいのだ。

 

(……となると、やっぱり特殊能力か)

 

 俺は新しく解放された機能を開いた。

 

――――――――――――――――――

 

【特殊能力取得補助機能】

 

 取得可能な特殊能力と必要経験点を確認できます。

 

【取得候補】

 

 アベレージヒッター

 

 対エース○

 

 チャンス

 

 盗塁

 

 対ピンチ

 

【取得条件】

 

 必要経験点の確保

 

 取得可能な成長段階への到達

 

【補足】

 

 特殊能力のコツを所持している場合、必要経験点が軽減されます。

 

――――――――――――――――――

 

(……なるほど)

 

 ついに特殊能力を取得できる。

 

 これは大きい。

 

 パワプロにおいて、特殊能力というのは非常に重要な要素だ。

 

 単純な基礎能力だけでは実現できないプレーを可能にする。

 

 例えばアベレージヒッター。

 

 ミート打ちを得意とする能力だ。

 

 この能力があれば、打球を適切な角度で捉えやすくなり、安打を量産しやすくなる。

 

 対エース○なら、優秀な投手を相手にしたときに有利になる。

 

 チャンスなら、得点圏での打撃能力が向上する。

 

 どれも魅力的だった。

 

(……さて、どれにするかな)

 

 俺は少し考えた。

 

 現在の俺は、打撃技術に自信がある。

 

 しかし、身体能力はまだ低い。

 

 パワーG20。

 

 この数値では、いくらバットの芯で捉えてもホームランを量産することは難しい。

 

 ならば、今は長打力よりも確実性を優先するべきだろう。

 

 ミート打ちを磨く。

 

 ヒットを増やす。

 

 それによって、試合での活躍機会を増やす。

 

 そうすれば、さらに経験点を獲得できる。

 

 つまり、育成効率も良くなる。

 

(……よし、決めた)

 

 俺はアベレージヒッターを選択した。

 

――――――――――――――――――

 

【特殊能力取得】

 

『アベレージヒッター』

 

【効果】

 

 ミート打撃時の安定性向上

 

 打球の捉え方を補正

 

【必要経験点】

 

 筋力:50

 

 技術:250

 

 精神:100

 

【取得確認】

 

 はい/いいえ

 

――――――――――――――――――

 

 必要経験点は合計四百。

 

 現在の俺なら、十分に支払える。

 

 それに、この能力は将来も役立つ。

 

 何しろ、俺の目標は打率四割だ。

 

 メジャーリーグで打率四割を記録するには、優秀なミート能力が不可欠になる。

 

(……取得!)

 

 俺は「はい」を選択した。

 

『ピロン♪』

 

 その瞬間。

 

 頭の中に、不思議な感覚が広がった。

 

 ボールを捉える位置。

 

 バットの角度。

 

 インパクトの瞬間。

 

 そして、打球の方向。

 

 それまで別々に意識していたものが、一つの感覚として繋がるような気がした。

 

(……おお)

 

 これは凄い。

 

 実際にバットを振っているわけではない。

 

 なのに、ボールを打つ感覚が以前より鮮明になっている。

 

 まるで、何千回も打撃練習を繰り返したかのようだった。

 

――――――――――――――――――

 

【特殊能力取得完了!】

 

『アベレージヒッター』

 

【現在の特殊能力】

 

 アベレージヒッター

 

【所持経験点更新】

 

 筋力:1790

 

 敏捷:1675

 

 技術:2100

 

 変化球:100

 

 精神:2060

 

――――――――――――――――――

 

(……よっしゃあ!)

 

 ついに初めての特殊能力を手に入れた。

 

 これは記念すべき出来事だ。

 

 前世では、どれほど練習しても大した選手にはなれなかった。

 

 しかし、今世では違う。

 

 練習すれば経験点が貰える。

 

 経験点を使えば能力を上げられる。

 

 そして、特殊能力まで取得できる。

 

 まさに夢のような環境だった。

 

 もっとも。

 

(……実際に試してみないとな)

 

 俺は小さく笑った。

 

 特殊能力を取得したからといって、いきなり全ての球を打てるようになるわけではない。

 

 今の身体能力には限界がある。

 

 まずは実際の練習で、どれくらい変化したのか確認してみよう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 翌日の夕方。

 

 俺は父さんと一緒に、近所の公園へ来ていた。

 

 もちろん、今日は激しい練習をするつもりはない。

 

 大会が終わったばかりだからな。

 

 軽いトスバッティングで、感覚を確認するだけだ。

 

「悠真、今日は軽くな」

 

「うん!」

 

「じゃあ、いくぞ」

 

 父さんが近い距離からボールを投げる。

 

 ゆっくりとした軌道。

 

 俺はバットを構えた。

 

(……ん?)

 

 ボールが近づいてくる。

 

 その瞬間、妙な感覚があった。

 

 以前より、ボールの中心が分かりやすい。

 

 いや、正確には、どこでバットに当てればいいかが自然と分かる。

 

 俺は軽くバットを振った。

 

 コンッ。

 

 ボールは綺麗にセンター方向へ転がった。

 

「おっ、いいね!」

 

 父さんが笑った。

 

「もう一球いくぞ」

 

「うん!」

 

 二球目。

 

 今度は少し内側。

 

 俺はバットの角度を調整する。

 

 コンッ。

 

 また綺麗な打球。

 

 三球目。

 

 少し外側。

 

 コンッ。

 

 今度は反対方向へ。

 

「……ん?」

 

 父さんが首を傾げた。

 

「悠真、なんか前より上手くなってないか?」

 

「そう?」

 

「ああ。バットの芯で捉えるのが上手くなった気がする」

 

 ……さすが父さん。

 

 よく見ている。

 

 確かに、俺自身もそう感じていた。

 

 以前より打球を捉える感覚が自然になっている。

 

 しかも、無理に力を入れなくても、狙った方向へ打ちやすい。

 

(……なるほどな)

 

 これがアベレージヒッターか。

 

 もちろん、ミート能力そのものが上がったわけではない。

 

 現在のミートはF35のままだ。

 

 しかし、同じ能力値でも打撃の質が変わっている。

 

 これは非常に大きい。

 

「父さん、もう少しやっていい?」

 

「いいけど、あと少しだけな」

 

「うん!」

 

 俺は頷いた。

 

 そして、軽いトスバッティングを続けた。

 

 打球は以前より安定していた。

 

 ボールを引っ張る。

 

 センターへ返す。

 

 反対方向へ流す。

 

 そうした打ち分けが、以前より自然にできる。

 

 何とも気持ちがいい。

 

 ただし、少し強く振ってみると、やはり打球の勢いはそれほど変わらなかった。

 

(……まあ、当然か)

 

 パワーG20。

 

 筋力不足は簡単には解消されない。

 

 だが、今はこれで十分だ。

 

 身体が大きくなれば、いずれパワーも伸びる。

 

 そのとき、このミート技術が大きな武器になるはずだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 数日後。

 

 桜台フェニックスの練習日。

 

「悠真!」

 

「おはよう、大地!」

 

「おう!」

 

 大地が元気よく駆け寄ってくる。

 

「今日もバッティング練習しようぜ!」

 

「いいよ!」

 

「今度こそお前より打つからな!」

 

「頑張って!」

 

「なんだよ、その余裕!」

 

 大地は少し頬を膨らませた。

 

 俺は笑った。

 

 そういえば、最近の大地は随分と打撃が上手くなった。

 

 以前は外角のボールを打つのが苦手だったが、最近は反対方向への打球も増えている。

 

 練習の成果が出ているのだろう。

 

 ただし、本人はまだ満足していないらしい。

 

「悠真ばっかりヒット打ってずるいよな」

 

「ずるくないよ」

 

「だって、市内大会で全部ヒットだろ?」

 

「うん」

 

「俺なんか、三振もしたのにさ」

 

 大地は少し悔しそうだった。

 

 俺は考えた。

 

 確かに、俺には育成システムがある。

 

 普通の選手とは比べものにならないほど有利な環境だ。

 

 しかも、前世の経験もある。

 

 だが、それを大地に説明するわけにはいかない。

 

 ならば、できることは一つだ。

 

「大地、ちょっと打ってみて」

 

「ん?」

 

「スイングを見たいんだ」

 

「いいけど……」

 

 大地はバットを構えた。

 

 そして、素振りをする。

 

 ブンッ!

 

(……なるほど)

 

 悪くないスイングだ。

 

 ただし、少し力みがある。

 

 特に肩。

 

 速い球を打とうとすると、上半身に力が入りすぎているようだ。

 

「大地、もうちょっと力を抜いてみたら?」

 

「力を抜く?」

 

「うん。最初から思いっきり振ろうとしないで、ボールをよく見てから振る感じ」

 

「……そんなので打てるのか?」

 

「試してみようよ」

 

 大地は少し考えてから頷いた。

 

「分かった!」

 

 そして、もう一度バットを構える。

 

 今度は少し肩の力を抜いた。

 

 ブンッ!

 

 さっきより滑らかなスイングだった。

 

「おっ?」

 

 大地が驚いた顔をした。

 

「なんか振りやすい!」

 

「でしょ?」

 

「もう一回!」

 

 大地は何度も素振りを繰り返した。

 

 そのたびに、少しずつ動きが良くなっていく。

 

 やはり、素質はある。

 

 後は練習次第だろう。

 

「悠真!」

 

「なに?」

 

「ありがとな!」

 

 大地が嬉しそうに笑った。

 

「これならもっと打てそう!」

 

「よかった!」

 

 俺も笑顔になった。

 

 こうしてチームメイトが成長するのを見るのも、悪くない。

 

 いや、むしろかなり嬉しい。

 

 何しろ、野球はチームスポーツなのだから。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の打撃練習。

 

 俺は打席に入っていた。

 

 相手は山本コーチ。

 

 今日は打撃投手を務めてくれている。

 

「朝倉、いくぞ!」

 

「はい!」

 

 コーチがボールを投げた。

 

 外角へのストレート。

 

(……ここだ)

 

 俺は軽く踏み込んだ。

 

 そして、バットを振る。

 

 カキンッ!

 

 打球はセンター方向へ飛んだ。

 

「おっ!」

 

 山本コーチが声を上げる。

 

「いい当たり!」

 

 二球目。

 

 内角。

 

 今度は引っ張る。

 

 カキンッ!

 

 打球はレフト方向へ。

 

 三球目。

 

 外角低め。

 

 反対方向へ打ち返す。

 

 カキンッ!

 

 ライト方向への鋭い打球。

 

「……おいおい」

 

 山本コーチが苦笑した。

 

「朝倉、お前また上手くなったんじゃないか?」

 

「そうですか?」

 

「ああ。特にバットの出し方が良くなってる」

 

 そこへ田島監督がやってきた。

 

「山本、どうした?」

 

「朝倉の打撃ですよ」

 

「ん?」

 

「以前より明らかに安定してるんです」

 

 田島監督は俺を見た。

 

「朝倉、もう一回打ってみろ」

 

「はい!」

 

 俺はバットを構え直した。

 

 コーチが投げる。

 

 真ん中やや外寄り。

 

(……よし)

 

 俺は踏み込んだ。

 

 腰を回す。

 

 バットを振り抜く。

 

 カキィンッ!

 

 打球は綺麗なライナーになってセンター方向へ飛んだ。

 

「……ほう」

 

 田島監督が感心したように呟いた。

 

「いい打撃だな」

 

「ありがとうございます!」

 

「特に、バットの芯で捉えるのが上手い」

 

 監督は腕を組んだ。

 

「朝倉、お前はボールが来る前から、どこへ打つか考えてるのか?」

 

「はい!」

 

「ほう?」

 

「守ってる人の位置を見たり、ボールが来る場所を考えたりしてます!」

 

 監督は目を丸くした。

 

「……一年生でそこまで考えてるのか」

 

 山本コーチも苦笑した。

 

「本当に変わった子ですよね」

 

 ……また変わった子扱いか。

 

 まあ、否定はできないが。

 

 何しろ、中身は前世で二十八年生きた人間なのだから。

 

 それにしても、アベレージヒッターの効果は予想以上だった。

 

 単純に打率が上がるだけではない。

 

 打球方向の調整。

 

 インパクトの安定性。

 

 そして、タイミングの取り方。

 

 そうした細かい技術が、以前より自然にできる。

 

(……これはいいな)

 

 俺は内心で笑った。

 

 今後、経験点を貯めて特殊能力を増やしていけば、どれほどの選手になれるのだろうか。

 

 考えるだけで楽しみになってくる。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 練習終了後。

 

 田島監督が選手たちを集めた。

 

「みんな、ちょっと話がある」

 

 俺たちはベンチ前に集まる。

 

「この前の市内大会で優勝したことで、地区交流大会への出場が決まった」

 

「おおー!」

 

 子供たちから歓声が上がった。

 

 地区交流大会。

 

 なるほど。

 

 市内大会の次は、さらに広い地域の大会というわけか。

 

 これは楽しみだ。

 

「今度の大会には、周辺の市町村からも強豪チームが参加する」

 

 田島監督が続ける。

 

「市内大会より強い相手もいるだろう。簡単には勝てないと思う」

 

「はい!」

 

「それから、試合数が増える可能性もある。投手の登板については、これまで以上に慎重に考えるつもりだ」

 

 その言葉に、俺は頷いた。

 

 当然だろう。

 

 今の俺は六歳。

 

 どれほど投球フォームが良くても、身体への負担は考慮しなければならない。

 

 それに、チームには藤原先輩や山岸先輩もいる。

 

 投手を分担すれば、無理なく大会を戦える。

 

「朝倉」

 

「はい!」

 

「お前には引き続き打線の中心として期待してるぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただし、投手としては短い登板が中心になる。無理はさせないからな」

 

「分かりました!」

 

 俺は元気よく返事をした。

 

 むしろ、その方がありがたい。

 

 今の段階では、投手としての経験を少しずつ積めれば十分だ。

 

 そして、野手として試合に出れば、打撃や守備でも経験点を獲得できる。

 

 まさに二刀流ならではの利点だろう。

 

「それじゃあ、次の大会も頑張るぞ!」

 

「おおっ!」

 

 選手たちの声が揃った。

 

 俺も小さく拳を握った。

 

 また新しい大会が始まる。

 

 しかも、今度はさらに強い相手と戦える。

 

 これは楽しみだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の夜。

 

 俺は自室で育成システムを開いていた。

 

 まずは現在の能力を確認する。

 

――――――――――――――――――

 

【朝倉悠真】

 

 年齢:6歳

 

 学年:小学1年生

 

 投打:右投右打

 

 ポジション:投手・遊撃手・外野手

 

【野手能力】

 

 弾道:1

 

 ミート:F35

 

 パワー:G20

 

 走力:F31

 

 肩力:G27

 

 守備力:F35

 

 捕球:G34

 

【投手能力】

 

 球速:74km/h

 

 コントロール:F40

 

 スタミナ:G18

 

 変化球:なし

 

【特殊能力】

 

 アベレージヒッター

 

――――――――――――――――――

 

(……うん)

 

 まだまだ弱い。

 

 いや、六歳児としては十分すぎる能力だ。

 

 だが、目標は世界最高の二刀流選手。

 

 この程度で満足するわけにはいかない。

 

 特に投手能力。

 

 現在の球速は七十四キロ。

 

 まだ変化球も覚えていない。

 

 コントロールは比較的高いが、それでもF40。

 

 将来的に百七十キロを超える速球を投げるには、まだまだ成長が必要だ。

 

 もちろん、今すぐ強化できるわけではない。

 

 身体の成長制限がある。

 

 だが、焦る必要はない。

 

 何しろ、俺はまだ六歳。

 

 これから十年以上かけて身体を成長させることができる。

 

 その間に経験点を貯め、特殊能力を取得し、技術を磨けばいい。

 

 そして、いずれは投手としても打者としても最高の能力を手に入れる。

 

 そんな未来を思い描いていたときだった。

 

『ピロン♪』

 

 新しい通知が表示された。

 

――――――――――――――――――

 

【育成目標更新】

 

『地区交流大会優勝』

 

【達成条件】

 

 地区交流大会で優勝する

 

【達成報酬】

 

 筋力ポイント+400

 

 敏捷ポイント+400

 

 技術ポイント+400

 

 精神ポイント+400

 

【特別報酬】

 

 育成効率補正の強化

 

【追加目標】

 

『大会無敗記録』

 

【達成条件】

 

 地区交流大会で全試合勝利する

 

【追加報酬】

 

 特殊能力コツ獲得

 

――――――――――――――――――

 

(……おお!)

 

 新しい育成目標だ。

 

 しかも、報酬が大きい。

 

 経験点合計千六百ポイント。

 

 さらに育成効率補正の強化まである。

 

 これはぜひ達成したい。

 

 それに、追加目標も魅力的だ。

 

 大会無敗記録。

 

 つまり、全試合勝利して優勝するということだ。

 

 まあ、トーナメント大会なのだから、優勝するには基本的に全試合勝つ必要があるわけだが。

 

 それでも、特殊能力のコツを獲得できる可能性があるのは嬉しい。

 

(……よし)

 

 俺は小さく拳を握った。

 

 次の目標は地区交流大会優勝。

 

 相手は市内大会よりも強いチームになるだろう。

 

 しかも、俺のことを知っている選手や指導者も増えているかもしれない。

 

 簡単には打たせてもらえない可能性もある。

 

 だが、それでいい。

 

 強い相手と戦えば、それだけ多くの経験を積める。

 

 そして、経験点を獲得すれば、さらに能力を強化できる。

 

 今の俺にとって、試合は最高の成長機会なのだから。

 

 もちろん、勝つためには俺一人の力では足りない。

 

 大地。

 

 松本先輩。

 

 高橋先輩。

 

 藤原先輩。

 

 そして、他のチームメイトたち。

 

 みんなで力を合わせる必要がある。

 

 そのためにも、これからさらに練習しよう。

 

 打撃。

 

 守備。

 

 走塁。

 

 そして投球。

 

 全てを少しずつ高めていく。

 

 俺は画面を閉じた。

 

 そして、布団に潜り込んだ。

 

 初めての特殊能力。

 

 アベレージヒッター。

 

 その効果は、想像以上だった。

 

 今後はさらに多くの特殊能力を取得できるようになるだろう。

 

 対エース○。

 

 チャンス。

 

 盗塁。

 

 対ピンチ。

 

 そして、いずれは金特殊能力。

 

 アーチスト。

 

 安打製造機。

 

 怪童。

 

 ドクターK。

 

 強心臓。

 

 そういった能力を手に入れれば、どれほどの選手になれるのだろうか。

 

 考えるだけで胸が高鳴る。

 

 だが、それはまだ先の話だ。

 

 今は目の前の練習と試合を大切にしよう。

 

 世界最高の二刀流選手になるためには、一歩ずつ成長していくことが重要なのだから。

 

「……よし」

 

 俺は小さく呟いた。

 

 次の大会も絶対に勝つ。

 

 そして、もっともっと強くなる。

 

 そんな決意を胸に、俺は静かに目を閉じた。

 

 六歳。

 

 小学一年生。

 

 俺の二度目の野球人生は、まだ始まったばかりだった。




第十話をお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、悠真が初めて特殊能力「アベレージヒッター」を取得するお話でした。

育成システムの経験点を活用することで、身体の成長制限に左右されにくい技術面を強化していきます。

また、悠真自身の成長だけでなく、大地をはじめとするチームメイトたちとの関係も大切に描いていきたいと思います。

次回は地区交流大会が開幕。

市内大会とは異なる強豪たちを相手に、悠真と桜台フェニックスが新たな戦いに挑みます。

次回、第十一話「地区交流大会、広がる才能の噂」。
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