転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある   作:1番道路

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第十五話 七歳の誕生日、新たな成長段階

 七歳。

 

 ついに、この日がやってきた。

 

「悠真! お誕生日おめでとう!」

 

「おめでとう、悠真!」

 

「ありがとう!」

 

 父さんと母さんの祝福を受けながら、俺は満面の笑みを浮かべた。

 

 リビングのテーブルには、大きな誕生日ケーキが置かれている。

 

 七本のろうそく。

 

 その向こうには、嬉しそうに笑う両親。

 

 何とも幸せな光景だった。

 

 転生してから、もう七年。

 

 前世の記憶を持ったまま赤ん坊から人生をやり直すという、普通ならあり得ない経験をしている俺だが、こうして家族に祝ってもらう誕生日は素直に嬉しい。

 

 もっとも。

 

 今日の俺には、もう一つ楽しみにしていることがあった。

 

 パワプロ育成システム。

 

 その新たな成長段階の解放である。

 

(……七歳になったぞ)

 

 俺は内心で期待に胸を膨らませていた。

 

 以前からシステムに表示されていた条件。

 

 年齢七歳以上。

 

 基礎運動能力の発達。

 

 投球フォーム評価B以上。

 

 打撃技術評価B以上。

 

 これらを満たすことで、次の成長段階が解放されるらしい。

 

 そして現在、俺の投球フォーム評価はA。

 

 打撃技術についても、これまでの練習でB以上に到達している。

 

 つまり、条件は全て満たしているはずだ。

 

 あとはシステムの通知を待つだけ。

 

 ……なのだが。

 

「悠真、何をぼーっとしてるの?」

 

「えっ?」

 

 母さんに声をかけられ、俺は我に返った。

 

「ほら、ろうそく消して!」

 

「あ、うん!」

 

 いかんいかん。

 

 せっかくの誕生日なのだから、今は家族との時間を大切にしよう。

 

 俺は大きく息を吸った。

 

 そして。

 

「ふーっ!」

 

 七本のろうそくを一気に吹き消した。

 

「おめでとう!」

 

 父さんと母さんが拍手する。

 

 俺も笑顔になった。

 

 ……うん。

 

 やっぱり誕生日というのは、いいものだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

「それじゃあ、プレゼントだ!」

 

 夕食を終えた後。

 

 父さんが何やら大きな箱を持ってきた。

 

「えっ、なに?」

 

「開けてみな!」

 

 俺は箱を受け取った。

 

 包装紙を丁寧に剥がす。

 

 すると、中から現れたのは――。

 

「……グローブ!」

 

 新品の野球用グローブだった。

 

 しかも、今使っているものより少し大きい。

 

 黒を基調とした、なかなか格好いいデザインだ。

 

「前のグローブ、少し小さくなってきただろ?」

 

「うん!」

 

「だから、そろそろ新しいものが必要かなと思ってな」

 

 父さんが笑った。

 

「店でいろいろ相談してきたんだ。まだ身体も成長するから、今の手に合うものを選んでもらった」

 

 なるほど。

 

 確かに、最近は以前のグローブが少し窮屈になっていた。

 

 身体が成長している証拠だろう。

 

「ありがとう、お父さん!」

 

「おう!」

 

 俺は早速グローブに手を入れた。

 

 新品特有の革の感触。

 

 まだ少し硬いが、手にはしっかり馴染んでいる。

 

(……いいな、これ)

 

 前世でも、新しい野球道具を買ってもらったときは嬉しかった。

 

 特にグローブ。

 

 自分専用の道具というのは、やはり特別なものだ。

 

「大事に使うんだぞ」

 

「うん!」

 

「それから、明日さっそく使いたいだろうけど、最初は少しずつ慣らしていこうな」

 

「分かってる!」

 

 俺は力強く頷いた。

 

 新品のグローブは、いきなり実戦で使うよりも、少しずつ柔らかくしていった方がいい。

 

 そのあたりは前世の経験からも理解している。

 

「それと、悠真」

 

「なに?」

 

 母さんが笑いながら言った。

 

「野球ばっかりじゃなくて、お勉強もちゃんとするのよ?」

 

「してるよ!」

 

「本当に?」

 

「本当!」

 

 実際、勉強で困ることはほとんどない。

 

 何しろ、前世では社会人だったのだ。

 

 小学校一年生の勉強で苦戦するようでは困る。

 

 もっとも、字を丁寧に書くのは少々面倒だったが。

 

「ならいいけど」

 

 母さんは苦笑した。

 

「二年生になっても頑張ってね」

 

「うん!」

 

 そう。

 

 もうすぐ小学二年生になる。

 

 野球だけでなく、学校生活も新しい一年が始まろうとしているのだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の夜。

 

 俺は自室のベッドに腰掛けていた。

 

 両親には、もう寝ると伝えてある。

 

 時刻は午後八時半。

 

 七歳児としては、そろそろ就寝する時間だ。

 

 だが、その前にどうしても確認したいことがあった。

 

(……さて)

 

 俺は意識を集中させた。

 

 半透明の画面が視界に現れる。

 

 パワプロ育成システム。

 

 そして、その瞬間。

 

『ピロン♪』

 

 待ちに待った電子音が響いた。

 

――――――――――――――――――

 

【成長段階更新!】

 

 朝倉悠真

 

 年齢:7歳

 

【成長段階】

 

 幼少期・基礎形成段階

 

     ↓

 

 少年期・初期成長段階

 

【解放条件】

 

 年齢7歳以上:達成

 

 基礎運動能力の発達:達成

 

 投球フォーム評価B以上:達成

 

 打撃技術評価B以上:達成

 

【成長段階移行】

 

 完了!

 

――――――――――――――――――

 

(……よっしゃあ!)

 

 思わず拳を握った。

 

 ついに来た。

 

 少年期・初期成長段階。

 

 これまで何度も悩まされてきた身体能力の成長制限が、ようやく緩和されるのだ。

 

 続いて、新しい通知が表示された。

 

――――――――――――――――――

 

【成長段階特典】

 

『少年期・初期成長段階』

 

【能力上限の緩和】

 

 球速:75km/h → 85km/h

 

 パワー:G25 → G35

 

 走力:F40 → F50

 

 肩力:F40 → F50

 

 守備力:F40 → F50

 

 捕球:F40 → F50

 

 ミート:F40 → F50

 

 コントロール:F50 → E60

 

 スタミナ:G25 → F40

 

【追加機能】

 

・年齢別育成メニュー更新

 

・身体成長予測機能解放

 

・基礎能力強化の適用範囲拡大

 

【注意】

 

 能力上限は安全に成長できる範囲を示すものです。

 

 実際の身体発達に応じて、利用可能な強化幅は変動します。

 

――――――――――――――――――

 

(……おおおっ!)

 

 凄い。

 

 球速の上限が一気に十キロも上がった。

 

 七十五キロから八十五キロ。

 

 しかも、コントロールはE60まで。

 

 野手能力も全体的に上限が引き上げられている。

 

 これは非常に大きい。

 

 今までは経験点が余っていても、能力を上げられなかった。

 

 だが、これからは違う。

 

 温存してきた経験点を使って、さらに成長できるのだ。

 

(……いや、待てよ)

 

 俺は少し考えた。

 

 確かに上限は引き上げられた。

 

 しかし、全ての能力を今すぐ上限まで強化するべきだろうか。

 

 答えは否だ。

 

 まず、身体への負担がある。

 

 いくらシステムが安全な範囲で能力を強化してくれるとはいえ、急激な変化は避けた方がいい。

 

 それに、経験点の効率も考える必要がある。

 

 普通の練習で上げられる部分は、練習で伸ばした方がいい。

 

 その方が経験点を節約できる。

 

 つまり、今までと同じ方針だ。

 

 無理なく、効率的に。

 

 それが最善だろう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 俺は現在の能力を確認した。

 

――――――――――――――――――

 

【朝倉悠真】

 

 年齢:7歳

 

 投打:右投右打

 

 ポジション:投手・遊撃手・外野手

 

【野手能力】

 

 弾道:1

 

 ミート:F40

 

 パワー:G20

 

 走力:F32

 

 肩力:G28

 

 守備力:F40

 

 捕球:F40

 

【投手能力】

 

 球速:75km/h

 

 コントロール:F50

 

 スタミナ:G19

 

 変化球:なし

 

【特殊能力】

 

 アベレージヒッター

 

【投球フォーム】

 

 評価:A

 

――――――――――――――――――

 

(……ふむ)

 

 ここからどの能力を伸ばすべきか。

 

 まず考えるべきは、投手能力だろう。

 

 特に球速。

 

 これまでは七十五キロで頭打ちだった。

 

 しかし、今は八十五キロまで上げられる。

 

 十キロの差は非常に大きい。

 

 小学四年生の主力投手と同等の球速を、七歳で投げられるようになるということだからだ。

 

 しかも、俺にはコントロールがある。

 

 球速八十五キロ。

 

 コントロールE60。

 

 もし両方を達成できれば、低学年の大会では相当な投手になれるだろう。

 

 だが。

 

(……いきなり八十五キロはやめておくか)

 

 システムの説明にも、身体の発達状況に応じて強化幅が変わると書かれていた。

 

 それに、今まで七十五キロしか投げていなかったのに、突然八十五キロになるのは周囲から見ても不自然だ。

 

 いや、そもそも俺の成長速度自体が十分に不自然なのだが。

 

 それでも、段階的に成長させた方がいいだろう。

 

 まずは七十八キロ。

 

 そして、コントロールを少し上げる。

 

 野手能力については、走力と肩力を優先しよう。

 

 今の俺はミート能力が高い。

 

 しかも、アベレージヒッターまで取得している。

 

 打撃技術については、同年代どころか上級生にも十分通用する。

 

 しかし、走力と肩力はまだまだ不足している。

 

 守備範囲を広げるためにも、走力は重要だ。

 

 そして肩力。

 

 将来的に強肩の遊撃手になるためにも、今から伸ばしておいて損はない。

 

(……よし)

 

 方針は決まった。

 

 俺は能力アップ画面を開いた。

 

――――――――――――――――――

 

【能力アップ】

 

 球速

 

 75km/h → 78km/h

 

【必要経験点】

 

 筋力:120

 

 技術:80

 

 精神:40

 

【身体負担評価】

 

 許容範囲内

 

【推奨】

 

 段階的な投球フォーム調整

 

 実投球数の制限

 

――――――――――――――――――

 

(……問題なさそうだな)

 

 俺は「はい」を選択した。

 

『ピロン♪』

 

 その瞬間、身体に不思議な感覚が走った。

 

 肩や腕が急に大きくなったわけではない。

 

 しかし、身体の使い方が少し変わったような気がする。

 

 下半身から上半身へ。

 

 そして腕へ。

 

 力を伝える感覚が、以前より自然になった。

 

 まるで、今まで無駄になっていた力を効率よく使えるようになったかのようだった。

 

――――――――――――――――――

 

【能力アップ完了】

 

 球速:75km/h → 78km/h

 

――――――――――――――――――

 

(……よし!)

 

 まずは三キロ上昇。

 

 悪くない。

 

 続いてコントロール。

 

 現在F50。

 

 こちらはE60まで強化可能になっている。

 

 だが、今回はF55までにしておこう。

 

 あとは実際の練習で成長させればいい。

 

『コントロールがF50からF55になりました』

 

 よし。

 

 次は野手能力だ。

 

 走力。

 

 現在F32。

 

 こちらをF40まで強化する。

 

 さらに肩力。

 

 現在G28。

 

 こちらはF35まで上げることにした。

 

『走力がF32からF40になりました』

 

『肩力がG28からF35になりました』

 

 身体に、いつもの不思議な感覚が広がる。

 

 足の運び。

 

 重心移動。

 

 送球時の身体の使い方。

 

 それらが、少しずつ鮮明になっていく。

 

(……いいね)

 

 俺は満足して画面を閉じた。

 

 もちろん、これで終わりではない。

 

 実際に身体を動かして、新しい能力に慣れる必要がある。

 

 だが、今日は誕生日。

 

 もう夜も遅い。

 

 明日から少しずつ試していこう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 翌朝。

 

 俺は父さんと一緒に近所の公園へ来ていた。

 

 昨日貰った新しいグローブを持っている。

 

 今日は軽いキャッチボールと、グローブを慣らすための練習をする予定だ。

 

「悠真、新しいグローブはどうだ?」

 

「すごくいい!」

 

「そうか!」

 

 父さんは嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、軽く投げてみようか」

 

「うん!」

 

 俺は頷いた。

 

 まずは短い距離でキャッチボール。

 

 父さんがボールを投げる。

 

 ぱしっ!

 

 新しいグローブで捕球する。

 

 まだ少し硬いが、問題ない。

 

 そして、投げ返す。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「おっ?」

 

 父さんが少し驚いた顔をした。

 

「悠真、今の球、ちょっと速くなかったか?」

 

「そう?」

 

「ああ。前より勢いがある気がする」

 

 ……さすが父さん。

 

 よく見ている。

 

 もっとも、球速が三キロ上がっただけなので、キャッチボールで明確に分かるほどの違いがあるかは微妙なところだ。

 

 それでも、投球フォームの感覚が変わったことは事実だった。

 

「昨日、投げ方を考えたんだ!」

 

「そうか!」

 

 父さんは納得したように頷いた。

 

「フォームが良くなると、同じ力でも速い球を投げられることがあるからな」

 

「うん!」

 

 実際、その通りである。

 

 今の俺は、筋力そのものが劇的に増えたわけではない。

 

 身体の使い方が少し改善された結果、球速が上がっているのだ。

 

 もちろん、今後は筋力の成長も必要になる。

 

 だが、それは身体が大きくなってからでいい。

 

「よし、もう少し距離を伸ばしてみるか!」

 

「うん!」

 

 俺たちは無理のない範囲でキャッチボールを続けた。

 

 新しいグローブは、まだ少し硬い。

 

 しかし、手にはしっかり馴染んでいる。

 

 父さんとのキャッチボール。

 

 新しいグローブ。

 

 そして、成長した投球能力。

 

 実に充実した時間だった。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 それから数日後。

 

 俺は小学校の始業式を迎えた。

 

 ついに小学二年生である。

 

 教室も変わり、新しい担任の先生が紹介された。

 

 もちろん、授業内容も少し難しくなる。

 

 ……もっとも、前世の記憶がある俺にとっては、まだまだ簡単な内容なのだが。

 

 それでも、学校生活そのものは楽しい。

 

 友達と遊び、授業を受け、給食を食べる。

 

 そうした日常も、二度目の人生ならではの楽しみだった。

 

 そして放課後。

 

 俺は自宅で宿題を済ませ、軽い自主練習をしていた。

 

 もちろん、無理な投球練習はしない。

 

 今日はバットを使った素振りと、守備の足運びを確認する練習だ。

 

 システムの練習効率補正も働いているので、短時間でも十分に経験点を獲得できる。

 

『打撃練習成功』

 

『技術ポイント+8』

 

『守備練習成功』

 

『敏捷ポイント+6』

 

 こうした小さな積み重ねが、将来の大きな成長に繋がる。

 

 俺はそれを理解していた。

 

 だからこそ、毎日の練習を大切にしている。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 新学期最初の土曜日。

 

 俺は桜台フェニックスの練習に参加していた。

 

「悠真!」

 

「おはよう、大地!」

 

「おう!」

 

 大地が元気よく駆け寄ってくる。

 

「お前、二年生になったんだよな!」

 

「そうだよ」

 

「じゃあ、もう一年生じゃないんだな!」

 

「当たり前でしょ」

 

「へへっ!」

 

 大地は笑った。

 

 ちなみに、大地は小学三年生になっている。

 

 相変わらず一学年上だ。

 

「今年もよろしくな!」

 

「よろしく!」

 

 俺たちは笑いながらハイタッチした。

 

 そのとき、田島監督の声が響いた。

 

「集合!」

 

 選手たちが集まる。

 

「みんな、進級おめでとう!」

 

「ありがとうございます!」

 

「今日から新しい学年での練習が始まるぞ!」

 

 監督は笑った。

 

「それから、今年は新しい選手も何人か入団する予定だ。先輩になった選手は、しっかり面倒を見てやれよ!」

 

「はい!」

 

 そうか。

 

 新しい一年生が入ってくるのか。

 

 つまり、俺も先輩になるということだ。

 

 ……何とも不思議な気分だな。

 

 前世では二十八歳の会社員だった俺が、今世では小学二年生として後輩を迎える。

 

 人生というのは、本当に面白い。

 

「それじゃあ、練習を始めるぞ!」

 

 監督の声で、全員が動き始めた。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 練習の最初はキャッチボールだった。

 

 俺の相手は、いつもの大地。

 

「悠真、いくぞ!」

 

「うん!」

 

 大地がボールを投げる。

 

 ぱしっ!

 

 俺は捕球し、投げ返した。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「……ん?」

 

 大地が首を傾げた。

 

「悠真、ちょっと球速くなった?」

 

「そうかな?」

 

「いや、絶対速くなってるって!」

 

 ……またか。

 

 どうやら、周囲から見ても少し違いが分かるらしい。

 

「誕生日だったから、ちょっと成長したのかも!」

 

「そんな急に成長するかよ!」

 

 大地が笑った。

 

 まあ、普通はそうだよな。

 

 だが、俺には育成システムがある。

 

 誕生日を境に成長段階が変わり、能力上限が緩和されるという、普通ならあり得ない成長をしているのだ。

 

 もちろん、そんなことを説明できるはずもない。

 

 俺は笑って誤魔化した。

 

「じゃあ、もう一球!」

 

「おう!」

 

 俺たちはキャッチボールを続けた。

 

 その様子を、田島監督と山本コーチが少し離れた場所から見ていた。

 

「……山本」

 

「はい」

 

「朝倉、少し大きくなったか?」

 

「そうですね。前より身体がしっかりしてきた気がします」

 

「投げ方も良くなってるな」

 

「ええ」

 

 田島監督は腕を組んだ。

 

「今年はもっと成長するかもしれんな」

 

「そうですね」

 

 山本コーチも頷いた。

 

 二人はまだ知らない。

 

 悠真の成長が、これからさらに加速していくことを。

 

 そして、すでに小学二年生としては常識外れの能力を持ち始めていることを。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 練習終了後。

 

 田島監督は、俺を呼び止めた。

 

「朝倉、ちょっといいか?」

 

「はい!」

 

「今年も投手と野手の両方を続けたいか?」

 

 ……当然だ。

 

 俺は迷わず頷いた。

 

「はい!」

 

「そうか」

 

 監督は笑った。

 

「じゃあ、今年も両方やっていこう。ただし、投球数と登板間隔は今まで以上に気をつけるぞ」

 

「分かりました!」

 

「それから、今年は少しずつ守備位置も増やしてみようと思っている」

 

「守備位置ですか?」

 

「ああ。ショートだけじゃなくて、外野も経験してもらいたい」

 

 なるほど。

 

 外野か。

 

 悪くない。

 

 むしろ、俺としては大歓迎だ。

 

 目標はオールS。

 

 全ての守備能力を高めるなら、いろいろなポジションを経験しておくべきだろう。

 

「やりたいです!」

 

「よし!」

 

 監督は満足そうに頷いた。

 

「じゃあ、今年はショートと外野、それから投手を中心にやっていこう」

 

「はい!」

 

 俺は元気よく返事をした。

 

 こうして、俺の小学二年生としての野球生活が始まった。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の夜。

 

 俺は育成システムを開いていた。

 

 現在の能力を確認する。

 

――――――――――――――――――

 

【朝倉悠真】

 

 年齢:7歳

 

 学年:小学2年生

 

 投打:右投右打

 

 ポジション:投手・遊撃手・外野手

 

【野手能力】

 

 弾道:1

 

 ミート:F40

 

 パワー:G20

 

 走力:F40

 

 肩力:F35

 

 守備力:F40

 

 捕球:F40

 

【投手能力】

 

 球速:78km/h

 

 コントロール:F55

 

 スタミナ:G19

 

 変化球:なし

 

【特殊能力】

 

 アベレージヒッター

 

【投球フォーム】

 

 評価:A

 

――――――――――――――――――

 

(……うん)

 

 かなり成長した。

 

 特に走力と肩力。

 

 以前よりも大幅に向上している。

 

 球速も七十八キロ。

 

 まだまだ目標には遠いが、七歳としては十分な数字だろう。

 

 そして、何より重要なのは、今後さらに上限を伸ばせるということだ。

 

 八歳。

 

 九歳。

 

 十歳。

 

 年齢を重ねるたびに、身体能力の上限が緩和されていくはずだ。

 

 そのたびに経験点を使って能力を強化すれば、普通の選手とは比較にならない速度で成長できる。

 

 もちろん、自然な練習による成長も忘れない。

 

 むしろ、システムによる強化と実際の練習を組み合わせることで、最大限の効果を発揮できるはずだ。

 

(……楽しみだな)

 

 俺は自然と笑みを浮かべた。

 

 小学二年生。

 

 七歳。

 

 新しい成長段階。

 

 そして、投打二刀流の継続。

 

 全てが順調だった。

 

 だが、まだ始まったばかりだ。

 

 これから先、もっと強い選手たちと出会うことになるだろう。

 

 全国大会。

 

 甲子園。

 

 日本プロ野球。

 

 メジャーリーグ。

 

 その全てで活躍するためには、まだまだ成長が必要だ。

 

 俺は小さく拳を握った。

 

「……よし」

 

 今年も頑張ろう。

 

 投手としても。

 

 打者としても。

 

 そして、世界最高の二刀流選手になるために。

 

 俺の二度目の野球人生は、また新しい一年を迎えたのだった。

 




次回予告(本文外)
第十七話「五年生の壁、七歳の挑戦者」
春季少年野球大会の初戦。緑川ホークスのエースは、小学五年生ながら百キロを超える速球を投げる本格派投手だった。
ベンチスタートとなった悠真は、試合中盤の勝負どころで代打を告げられる。
三学年上の強豪投手を相手に、七歳の天才打者が挑む。
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