転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある   作:1番道路

18 / 20
第十八話 四年生以下の大会、二刀流の本領

 野球には、いろいろな楽しみ方がある。

 

 豪快なホームランを打つこと。

 

 鋭い打球を好守備で捕ること。

 

 盗塁を決めること。

 

 そして、打者を三振に仕留めること。

 

 俺はその全部が好きだ。

 

 前世では、投手としても野手としても中途半端だった。

 

 高校時代は投手を務めることもあったが、球速は百三十キロ台前半。

 

 打撃でも、特別な成績を残したわけではない。

 

 だからこそ、今世では両方を極めたいと思っている。

 

 投手として百七十キロを超えるストレートを投げる。

 

 打者として年間六十本以上のホームランを放つ。

 

 さらに、打率四割。

 

 走塁も守備も一流。

 

 そんな非常識な選手になることが、俺の目標だった。

 

 そして今日。

 

 その夢へ向けた、新しい挑戦が始まろうとしていた。

 

「悠真! 早く行こうぜ!」

 

「分かってるって!」

 

 大地に急かされながら、俺はグローブを持ち直した。

 

 春季少年野球大会。

 

 四年生以下の部。

 

 その一回戦が、今日行われるのだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

「それにしても、今度こそ勝ちたいよな」

 

 大地がそう言った。

 

「うん」

 

「この前の五年生以下の大会、悔しかったし」

 

「そうだね」

 

 緑川ホークスとの試合。

 

 俺たちは一対三で敗北した。

 

 相手のエース、橘颯太先輩は本当にいい投手だった。

 

 百キロを超えるストレート。

 

 安定したコントロール。

 

 そして、堂々とした投球。

 

 小学五年生としては、間違いなく一流だろう。

 

 俺自身は代打でタイムリーヒットを打つことができた。

 

 だが、チームとしては負けた。

 

 それが悔しかった。

 

 だからこそ、今回は勝ちたい。

 

 しかも、四年生以下の大会なら、俺にも投手としての出番がある。

 

 ようやく本格的に二刀流として活躍できる機会が来たわけだ。

 

「悠真、今日は投げるのか?」

 

「監督次第だけど、多分」

 

「よっしゃ!」

 

 大地が嬉しそうに笑った。

 

「お前が投げると、すっげえ安心するんだよな!」

 

「まだまだだけどね」

 

「何言ってんだよ。お前、七十八キロも投げるじゃん!」

 

 まあ、確かに。

 

 七歳で七十八キロ。

 

 小学二年生としては、かなり速い方だろう。

 

 しかも、コントロールはF55。

 

 同年代の打者相手なら、十分に勝負できる。

 

 ただし、相手は四年生以下。

 

 三年生や四年生の主力打者も出場する。

 

 力で押し切れるとは限らない。

 

 だからこそ、配球が重要になる。

 

(……楽しみだな)

 

 俺は自然と笑みを浮かべた。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 大会会場に到着すると、すでに多くのチームが集まっていた。

 

 今回の参加チームは十六。

 

 優勝するには四試合勝つ必要がある。

 

 俺たち桜台フェニックスは、市内大会の優勝経験があるため、多少は注目されているらしい。

 

 実際、グラウンドの外では、他チームの指導者らしき人たちがこちらを見ていた。

 

「……あれが桜台か」

 

「去年優勝したところだろ?」

 

「一年生で三番を打ってた子がいるらしいぞ」

 

「今年は二年生か」

 

 そんな声が聞こえてくる。

 

 ……どうやら、俺のことらしい。

 

 まあ、去年の大会で十二打数十二安打なんて記録を残せば、多少は話題になるだろう。

 

 だが、それも過去の話だ。

 

 今は新しい大会。

 

 去年の成績だけで勝てるわけではない。

 

 俺は気持ちを切り替えた。

 

「集合!」

 

 田島監督の声が響いた。

 

 俺たちはベンチ前に集まる。

 

「今日の相手は北町ライオンズだ」

 

 監督が説明を始めた。

 

「去年は準決勝まで進んだチームだ。守備が堅く、投手もいい」

 

 なるほど。

 

 初戦からなかなかの強豪らしい。

 

「それから、今日は先発を少し変える」

 

 監督は俺の方を見た。

 

「朝倉」

 

「はい!」

 

「今日はお前に先発を任せる」

 

 ……おおっ!

 

 ついに来た。

 

 公式戦初先発。

 

 俺は思わず目を輝かせた。

 

「はい!」

 

「ただし、最初から長く投げさせるつもりはない。一回を目安にして、球数と状態を見て交代する」

 

「分かりました!」

 

「投げ終わったらショートへ移る。打順は三番だ」

 

「はい!」

 

 完璧じゃないか。

 

 先発投手。

 

 三番打者。

 

 そして、ショート。

 

 まさに二刀流。

 

 これ以上ない起用だった。

 

 もちろん、投球数の制限はある。

 

 だが、今の俺にとってはそれで十分だ。

 

 何しろ、まだ七歳なのだから。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 試合開始前。

 

 俺はブルペンで軽く投球練習をしていた。

 

 捕手は中村先輩。

 

 今年から四年生になった、頼れる正捕手だ。

 

「朝倉、調子はどうだ?」

 

「いい感じです!」

 

「そうか。じゃあ、いつもどおりな」

 

「はい!」

 

 俺は頷いた。

 

 そして、ボールを握る。

 

 左足を上げる。

 

 重心を移動させる。

 

 身体を回転させる。

 

 腕を振る。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ナイスボール!」

 

 中村先輩が声を上げた。

 

「前より球が来るな!」

 

「ありがとうございます!」

 

「しかも、相変わらずコントロールいいし」

 

 ……まあ、システムのおかげなんだけどな。

 

 もちろん、それだけではない。

 

 監督やコーチから教わったフォームの改善。

 

 普段の基礎練習。

 

 そして、前世の経験。

 

 それらが合わさって、今の投球ができている。

 

 俺は満足してボールを受け取った。

 

 そのとき。

 

『ピロン♪』

 

――――――――――――――――――

 

【公式戦イベント発生】

 

『二刀流の進化』

 

 未達成条件:

 

 公式戦で投球評価A以上を獲得する

 

【追加条件】

 

・先発登板

 

・打撃での活躍

 

・投球と打撃の両方でチームに貢献

 

【特別報酬】

 

『二刀流育成補助機能』

 

――――――――――――――――――

 

(……よし)

 

 あとは投球で結果を残すだけ。

 

 もちろん、試合の勝利が最優先だ。

 

 だが、イベントも達成したい。

 

 何しろ、二刀流育成補助機能という名前からして、かなり便利そうだからな。

 

 俺は小さく拳を握った。

 

     ◇ ◇ ◇

 

「プレイ!」

 

 審判の声が響いた。

 

 春季少年野球大会、四年生以下の部。

 

 一回戦。

 

 北町ライオンズ対桜台フェニックス。

 

 試合開始だ。

 

 先攻は北町。

 

 つまり、俺たちは後攻である。

 

 そして、マウンドには俺。

 

 朝倉悠真。

 

 七歳。

 

 小学二年生。

 

 公式戦初先発だった。

 

(……さて)

 

 俺はボールを握った。

 

 最初の打者は四年生の左打者。

 

 小柄だが、構えがしっかりしている。

 

 おそらく、ミート重視のタイプだろう。

 

 中村先輩が外角低めにミットを構えた。

 

 俺は頷いた。

 

 初球。

 

 左足を上げる。

 

 重心を移動させる。

 

 腕を振る。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ストライク!」

 

 よし。

 

 まずはストライク。

 

 二球目。

 

 内角高め。

 

 打者は見送った。

 

「ボール!」

 

 ワンボール、ワンストライク。

 

 三球目。

 

 外角低め。

 

 今度は少しストライクゾーンへ入れる。

 

 打者がバットを出した。

 

 カンッ!

 

 打球はセカンド方向へ。

 

 大地が捕球した。

 

 一塁へ送球。

 

「アウト!」

 

 一死。

 

(……よし)

 

 まずは一人。

 

 悪くない立ち上がりだ。

 

 続く二番打者。

 

 今度は右打者だった。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ストライク!」

 

 二球目。

 

 内角。

 

 ファウル。

 

 ツーストライク。

 

 追い込んだ。

 

 だが、ここからが重要だ。

 

 今の俺は変化球を持っていない。

 

 つまり、基本的にはストレートだけで勝負することになる。

 

 だからこそ、コースを使い分けなければならない。

 

 三球目。

 

 外角高め。

 

 打者が振った。

 

 カキンッ!

 

 打球はショート方向へ。

 

 遊撃手の吉田先輩が捕球。

 

 一塁へ送球する。

 

「アウト!」

 

 二死。

 

 あと一人。

 

 そして三番打者。

 

 北町ライオンズの主力打者らしい。

 

 身体も大きく、構えに力強さがある。

 

(……これは少し注意だな)

 

 俺はボールを握り直した。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ストライク!」

 

 二球目。

 

 内角高め。

 

 カンッ!

 

 ファウル。

 

 ツーストライク。

 

 追い込んだ。

 

 しかし、三球目。

 

 真ん中やや高めに入った球を、相手が見逃さなかった。

 

 カキィンッ!

 

 鋭い打球がセンター方向へ飛んだ。

 

「センター!」

 

 高橋先輩が前進する。

 

 しかし、打球はその手前に落ちた。

 

 センター前ヒット。

 

(……なるほど)

 

 やはり、四年生の主力打者は簡単ではない。

 

 七十八キロのストレートでも、甘く入れば打たれる。

 

 当然のことだ。

 

 だが、ここで焦る必要はない。

 

 二死一塁。

 

 まだ十分に抑えられる。

 

 続く四番打者。

 

 大柄な右打者だった。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ストライク!」

 

 二球目。

 

 内角高め。

 

「ボール!」

 

 三球目。

 

 外角低め。

 

 打者がバットを振る。

 

 カンッ!

 

 ファウル。

 

 ワンボール、ツーストライク。

 

 追い込んだ。

 

 俺は中村先輩を見た。

 

 中村先輩は外角低めにミットを構えている。

 

 なるほど。

 

 ここは、確実にコースを突くべきだろう。

 

 俺は頷いた。

 

 四球目。

 

 左足を上げる。

 

 重心を安定させる。

 

 腕を振る。

 

 シュッ!

 

 ボールは外角低めへ。

 

 打者が振った。

 

 ブンッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 三振!

 

 スリーアウト!

 

 チェンジ!

 

「よっしゃあ!」

 

 桜台のベンチから歓声が上がった。

 

 俺はマウンド上で小さく拳を握った。

 

(……よし!)

 

 公式戦初先発。

 

 一回無失点。

 

 被安打一本。

 

 奪三振一。

 

 悪くない結果だ。

 

 ただし、投球数は十三球。

 

 監督から言われていた球数の目安にも近づいている。

 

 おそらく、ここで交代になるだろう。

 

 それでも十分だった。

 

 そして、その瞬間。

 

『ピロン♪』

 

――――――――――――――――――

 

【公式戦投球評価】

 

 投球回:1回

 

 被安打:1

 

 奪三振:1

 

 与四球:0

 

 失点:0

 

 自責点:0

 

 投球数:13

 

【投球評価】

 

 A

 

【育成イベント】

 

『二刀流の進化』

 

 投球評価A以上:達成

 

――――――――――――――――――

 

(……やった!)

 

 ついに最後の条件を達成した。

 

 これで、二刀流育成補助機能が解放されるはずだ。

 

 しかし、まだ試合は終わっていない。

 

 今はシステムよりも、試合に集中しよう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 一回裏。

 

 桜台フェニックスの攻撃。

 

 俺は投手からショートへ守備位置を変更する予定だったが、打順はそのまま三番だ。

 

 先頭打者は高橋先輩。

 

 相手の先発投手は、四年生の右腕。

 

 球速は八十キロ台後半だろうか。

 

 なかなか速い。

 

 しかし、橘先輩ほどではない。

 

 しかも、コントロールに少しばらつきがある。

 

(……これは狙えるな)

 

 俺はベンチから相手投手を観察した。

 

 初球。

 

 外角高め。

 

「ボール!」

 

 二球目。

 

 内角。

 

「ストライク!」

 

 三球目。

 

 真ん中付近。

 

 カキンッ!

 

 打球はセンター前へ。

 

 ヒット!

 

「よし!」

 

 先頭打者が出塁した。

 

 続く二番打者。

 

 送りバントを成功させ、一死二塁。

 

 そして俺の打席が回ってきた。

 

「三番、ピッチャー、朝倉君」

 

 俺はバットを持って打席へ向かった。

 

 相手投手がこちらを見る。

 

 少し驚いた様子だった。

 

 まあ、仕方ない。

 

 七歳の小学二年生が三番打者なのだから。

 

 しかも、先ほどまで投手を務めていた。

 

 普通なら考えられない起用だろう。

 

 だが、俺にとっては当然のことだ。

 

 目指しているのは史上最強の二刀流選手なのだから。

 

 俺はバッターボックスに入った。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ボール!」

 

 二球目。

 

 内角高め。

 

 俺はバットを出した。

 

 カンッ!

 

 ファウル。

 

 ワンボール、ワンストライク。

 

 三球目。

 

 外角へのストレート。

 

 少し甘い。

 

(……来た!)

 

 俺は踏み込んだ。

 

 腰を回す。

 

 そして、バットを振り抜いた。

 

 カキィンッ!

 

 鋭い打球がセンター方向へ飛んだ。

 

「センター!」

 

 相手の中堅手が前進する。

 

 しかし、打球はその手前に落ちた。

 

 センター前ヒット!

 

 二塁走者が三塁を回る。

 

 外野からホームへ送球。

 

 しかし、間に合わない。

 

「セーフ!」

 

 桜台が先制!

 

 スコアは一対〇。

 

「よっしゃあ!」

 

 ベンチから歓声が上がった。

 

 俺は一塁ベース上で拳を握った。

 

(……よし!)

 

 先制タイムリーヒット。

 

 しかも、公式戦初先発で無失点。

 

 投打両方で結果を残せた。

 

 まさに二刀流の活躍だ。

 

 その瞬間。

 

『ピロン♪』

 

――――――――――――――――――

 

【育成イベント達成!】

 

『二刀流の進化』

 

【達成条件】

 

 投手能力強化:達成

 

 野手能力強化:達成

 

 公式戦打撃評価A以上:達成

 

 公式戦投球評価A以上:達成

 

【達成報酬】

 

 筋力ポイント+200

 

 敏捷ポイント+200

 

 技術ポイント+300

 

 精神ポイント+300

 

【特別報酬】

 

『二刀流育成補助機能』

 

 解放!

 

――――――――――――――――――

 

(……よっしゃあ!)

 

 ついに来た。

 

 二刀流育成補助機能。

 

 名前からして非常に便利そうだ。

 

 しかも、経験点まで大量に獲得できた。

 

 合計千ポイント。

 

 これは大きい。

 

 だが、今は試合中。

 

 まずは勝利を目指そう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 二回表。

 

 俺はショートの守備位置についていた。

 

 マウンドには、四年生の藤原先輩。

 

 去年からチームの主力投手として活躍している先輩だ。

 

 俺は一回で交代となったが、投手としての役割は十分に果たせたと思う。

 

 ここからは野手として貢献しよう。

 

 そう考えていたのだが。

 

 北町ライオンズの打線は、想像以上に粘り強かった。

 

 先頭打者が四球で出塁。

 

 続く打者が送りバント。

 

 一死二塁。

 

 さらに七番打者がライト前ヒット。

 

 一死一、三塁。

 

 そして八番打者。

 

 初球。

 

 カンッ!

 

 打球はセカンド方向へ。

 

 大地が捕球した。

 

 しかし、三塁走者がスタートを切る。

 

 ホームへ送球するには少し厳しい。

 

「一塁!」

 

 俺が叫ぶと、大地は一塁へ送球した。

 

「アウト!」

 

 その間に三塁走者がホームイン。

 

 同点。

 

 桜台一対一北町。

 

(……仕方ないな)

 

 今の守備判断は間違っていない。

 

 無理にホームへ投げても、セーフになる可能性が高かった。

 

 それなら、確実にアウトを取った方がいい。

 

 そして、続く九番打者を藤原先輩が三振に仕留めた。

 

 スリーアウト。

 

 チェンジ。

 

 試合は振り出しに戻った。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 三回裏。

 

 スコアは一対一。

 

 桜台の攻撃。

 

 先頭打者は九番。

 

 四球で出塁。

 

 続く一番、高橋先輩が送りバントを成功させる。

 

 一死二塁。

 

 二番打者はセカンドゴロ。

 

 二死三塁。

 

 そして、俺の第二打席が回ってきた。

 

「三番、ショート、朝倉君」

 

 絶好のチャンスだ。

 

 俺はバットを持って打席へ向かった。

 

 相手投手は、まだ先発の四年生。

 

 ただし、少し疲労が見えている。

 

 球速そのものは大きく落ちていない。

 

 しかし、制球が少し甘くなっている。

 

(……狙えるな)

 

 俺はバットを構えた。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ボール!」

 

 二球目。

 

 内角高め。

 

「ストライク!」

 

 三球目。

 

 外角へのストレート。

 

 少し高い。

 

(……来た!)

 

 俺は踏み込んだ。

 

 腰を回す。

 

 そして、バットを振り抜いた。

 

 カキィンッ!!

 

 今度は、これまでより少し強い打球音だった。

 

 打球は右中間へ飛んだ。

 

「ライト! センター!」

 

 相手の外野手が追いかける。

 

 しかし、打球は二人の間に落ちた。

 

 さらに、芝生の上を転がっていく。

 

(……よし!)

 

 俺は一塁を蹴った。

 

 二塁へ向かう。

 

 三塁走者がホームイン。

 

 勝ち越し!

 

 桜台二対一北町。

 

「走れ!」

 

 ベンチから声が飛ぶ。

 

 俺は二塁ベースへ滑り込んだ。

 

「セーフ!」

 

 二塁打!

 

「よっしゃあ!」

 

 ベンチが歓声に包まれた。

 

 俺は二塁ベース上で拳を握った。

 

(……いいね!)

 

 勝ち越しのタイムリーツーベース。

 

 しかも、前より少し打球が強くなっている。

 

 これはパワーをG25まで強化した効果だろうか。

 

 もちろん、まだ長距離打者と呼べるほどの力はない。

 

 だが、少しずつ成長していることは確かだった。

 

 そして、次の四番、松本先輩。

 

 初球。

 

 カキンッ!

 

 打球はライト前へ。

 

「回れ!」

 

 三塁コーチが腕を回す。

 

 俺は三塁を蹴った。

 

 外野からホームへ送球。

 

 しかし、間に合わない。

 

「セーフ!」

 

 桜台が追加点!

 

 スコアは三対一。

 

「やったああ!」

 

 ベンチが大騒ぎになった。

 

 俺も思わず笑顔になる。

 

 ようやく二点差。

 

 これなら、かなり有利に試合を進められるだろう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 四回表。

 

 北町ライオンズの攻撃。

 

 スコアは三対一。

 

 二点リード。

 

 しかし、相手も簡単には諦めなかった。

 

 先頭打者がヒットで出塁。

 

 続く打者が四球。

 

 無死一、二塁。

 

 さらに送りバントで一死二、三塁。

 

 大ピンチだった。

 

「タイム!」

 

 田島監督がマウンドへ向かった。

 

 俺もショートから集まる。

 

「藤原、ここまでよく投げた」

 

「……はい」

 

 藤原先輩は少し悔しそうだった。

 

 だが、球数も増えている。

 

 ここで交代するのは妥当な判断だろう。

 

 監督はベンチを振り返った。

 

「村上!」

 

「はい!」

 

 三年生の村上先輩が返事をした。

 

 今年から投手として練習を始めた選手だ。

 

 球速はそれほど速くないが、コントロールが安定している。

 

 俺と少し似たタイプかもしれない。

 

 村上先輩はマウンドへ向かった。

 

 そして、最初の打者。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ストライク!」

 

 二球目。

 

 内角。

 

 カンッ!

 

 打球はショート方向へ。

 

(……来た!)

 

 俺は素早く反応した。

 

 前進する。

 

 ボールを捕球。

 

 そして、三塁走者を見る。

 

 走者は少し飛び出しかけていた。

 

(……戻るな)

 

 俺はホーム送球の構えを見せた。

 

 それを見た走者が三塁へ戻る。

 

 その瞬間、一塁へ送球した。

 

 ぱしんっ!

 

「アウト!」

 

 二死二、三塁。

 

 よし。

 

 失点を防ぎながらアウトを取れた。

 

 続く打者。

 

 初球。

 

 カンッ!

 

 打球はセンター方向へ飛んだ。

 

 高橋先輩が前進する。

 

 そして、捕球。

 

「アウト!」

 

 スリーアウト!

 

 チェンジ!

 

「よっしゃあ!」

 

 桜台のベンチから歓声が上がった。

 

 大ピンチを無失点で切り抜けた。

 

 これは大きい。

 

 俺は村上先輩に声をかけた。

 

「ナイスピッチングです!」

 

「おう!」

 

 村上先輩は嬉しそうに笑った。

 

 やはり、野球はチームスポーツだ。

 

 俺一人が活躍するだけでは勝てない。

 

 こうして他の投手が踏ん張ってくれるからこそ、勝利に近づけるのだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 五回表。

 

 最終回。

 

 スコアは三対一。

 

 桜台フェニックスが二点リードしていた。

 

 マウンドには、引き続き村上先輩。

 

 先頭打者をショートゴロに打ち取った。

 

 俺が捕球し、一塁へ送球。

 

「アウト!」

 

 一死。

 

 続く打者はセカンドフライ。

 

 二死。

 

 あと一人。

 

 しかし、ここで北町の打者が粘った。

 

 四球で出塁。

 

 二死一塁。

 

 さらに次の打者がレフト前ヒット。

 

 二死一、二塁。

 

 再びピンチを迎えた。

 

(……最後まで気が抜けないな)

 

 俺はショートの守備位置で構え直した。

 

 そして、次の打者。

 

 北町の四番だ。

 

 初回に俺が三振に仕留めた選手だった。

 

 村上先輩が初球を投げる。

 

 外角低め。

 

「ストライク!」

 

 二球目。

 

 内角。

 

「ボール!」

 

 三球目。

 

 真ん中やや外寄り。

 

 カキィンッ!

 

 鋭い打球が三遊間へ飛んだ。

 

(……っ!)

 

 俺は一気に左へ動いた。

 

 グローブを伸ばす。

 

 ぱしっ!

 

 捕球成功!

 

 しかし、身体が流れている。

 

 ここから一塁へ投げるには、少し厳しい体勢だ。

 

 だが、二塁は近い。

 

(……こっちだ!)

 

 俺は素早く身体を起こし、二塁へ送球した。

 

 ぱしんっ!

 

 二塁ベースに入った大地が捕球する。

 

「アウト!」

 

 スリーアウト!

 

 ゲームセット!

 

「やったああああ!」

 

 桜台フェニックスのベンチが歓声に包まれた。

 

 スコアは三対一。

 

 見事な勝利だった。

 

 俺は大地とハイタッチした。

 

「ナイスキャッチ!」

 

「悠真こそナイスプレー!」

 

「ありがとう!」

 

 俺たちは笑い合った。

 

 久しぶりの公式戦勝利。

 

 やはり、勝つというのは嬉しいものだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 試合終了後。

 

 俺たちはベンチ前に集まった。

 

「みんな、よくやった!」

 

 田島監督が笑顔で言った。

 

「いい試合だったぞ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「特に今日は守備が良かったな。最後まで集中できていた」

 

 監督は俺たちを見渡した。

 

「朝倉もナイスピッチング、ナイスバッティングだった」

 

「ありがとうございます!」

 

「それから、村上もよく投げた。藤原も粘ってくれたし、みんなで勝てた試合だったな」

 

「はい!」

 

 俺は笑顔で頷いた。

 

 まさに、その通りだ。

 

 今日は俺も投打で活躍できた。

 

 しかし、それだけではない。

 

 大地の守備。

 

 村上先輩の好投。

 

 松本先輩のタイムリー。

 

 そして、他の選手たちの連携。

 

 全員の力で勝ち取った勝利だった。

 

 去年、青陵ブルーウイングスに負けたときとは違う。

 

 チーム全体が、確実に成長している。

 

(……いい感じだな)

 

 俺は自然と笑みを浮かべた。

 

 この調子なら、今年も優勝を狙えるかもしれない。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の夜。

 

 俺は自室で育成システムを開いていた。

 

 まずは今日の試合結果を確認する。

 

――――――――――――――――――

 

【公式戦結果】

 

 春季少年野球大会

 

 四年生以下の部・一回戦

 

 桜台フェニックス 3

 

 北町ライオンズ 1

 

 勝利!

 

【朝倉悠真】

 

〈打撃成績〉

 

 2打数2安打

 

 二塁打:1

 

 打点:2

 

 得点:1

 

〈投手成績〉

 

 投球回:1回

 

 被安打:1

 

 奪三振:1

 

 与四球:0

 

 失点:0

 

 自責点:0

 

〈守備成績〉

 

 守備機会:3

 

 失策:0

 

【総合評価】

 

 S

 

【獲得経験点】

 

 筋力:100

 

 敏捷:90

 

 技術:180

 

 精神:150

 

【イベント報酬】

 

 筋力:200

 

 敏捷:200

 

 技術:300

 

 精神:300

 

――――――――――――――――――

 

(……おお)

 

 大量の経験点。

 

 しかも、総合評価S。

 

 これは嬉しい。

 

 特に今回は、投手としても野手としても活躍できた。

 

 まさに二刀流。

 

 目指している姿に少し近づけた気がする。

 

 だが、俺が本当に気になっていたのは、ここからだった。

 

 新しく解放された機能。

 

 二刀流育成補助機能。

 

 俺は早速画面を開いた。

 

――――――――――――――――――

 

【二刀流育成補助機能】

 

 投手能力と野手能力を並行して育成するための補助機能です。

 

【主な機能】

 

・投手・野手の育成計画統合

 

・練習負荷の自動分析

 

・能力強化の優先順位提案

 

・投打両面の経験点獲得効率改善

 

・二刀流専用育成目標の表示

 

【追加効果】

 

『二刀流適性補正』

 

 投手練習と野手練習の両方を適切に行った場合、経験点獲得効率が上昇します。

 

【注意】

 

 身体の疲労や成長段階による制限は変更されません。

 

――――――――――――――――――

 

(……凄いな)

 

 予想以上に便利な機能だった。

 

 特に、投打両面の経験点獲得効率改善。

 

 これは非常に大きい。

 

 何しろ、俺は投手と野手の両方を育成する必要がある。

 

 普通の選手と比べて、必要な経験点が圧倒的に多いのだ。

 

 しかし、この機能があれば、少しはその差を埋められるかもしれない。

 

 しかも、練習負荷の自動分析まである。

 

 これはありがたい。

 

 投手としての練習と、野手としての練習。

 

 両方を行う以上、身体への負担には十分に注意しなければならない。

 

 特に今は七歳。

 

 無理な練習は禁物だ。

 

 だが、この機能を使えば、適切な練習量を判断しやすくなる。

 

(……いいね)

 

 俺は満足して頷いた。

 

 そして、二刀流専用育成目標を開く。

 

――――――――――――――――――

 

【二刀流専用育成目標】

 

『少年二刀流の第一歩』

 

【達成条件】

 

・公式戦で投手として3試合以上登板

 

・公式戦で打撃成績を残す

 

・投手・野手の両能力を強化

 

・身体コンディションを良好に維持

 

【達成報酬】

 

 経験点獲得効率補正の強化

 

【特別報酬】

 

 二刀流専用特殊能力コツ獲得チャンス

 

――――――――――――――――――

 

(……ほう)

 

 二刀流専用特殊能力。

 

 そんなものまで存在するのか。

 

 これは非常に気になる。

 

 パワプロには、投手と野手の両方で活躍する選手を想定した能力もある。

 

 だが、今回のシステムでは、さらに独自の能力が存在するのかもしれない。

 

 もしそうなら、ぜひ取得したい。

 

 俺は小さく拳を握った。

 

(……よし)

 

 次の試合も頑張ろう。

 

 投手としても。

 

 打者としても。

 

 そして、チームの勝利に貢献する。

 

 それを繰り返していけば、自然と成長していくはずだ。

 

 何しろ、俺にはパワプロ育成システムがある。

 

 普通の選手より、遥かに効率よく能力を伸ばせるのだから。

 

 もちろん、それだけで満足するつもりはない。

 

 練習も続ける。

 

 試合経験も積む。

 

 そして、強い相手と戦う。

 

 その全てが、将来の自分に繋がるのだから。

 

 俺は画面を閉じた。

 

 そして、布団に潜り込む。

 

 次の試合も楽しみだ。

 

 七歳。

 

 小学二年生。

 

 まだまだ身体は小さい。

 

 だが、投手としても打者としても、確実に成長している。

 

 いつか必ず、世界最高の二刀流選手になる。

 

 その目標へ向かって。

 

 俺はこれからも、努力を続けるのだった。

 




次回予告(本文外)
第二十話「雪辱の一戦、青陵ブルーウイングス」
春季大会準々決勝。
対戦相手は、昨年の地区交流大会で桜台フェニックスを破った青陵ブルーウイングス。
緻密な守備と走塁を武器とする強豪に対し、成長した悠真とチームメイトたちが挑む。
一年前の敗戦から学んだ成果を発揮し、桜台フェニックスは雪辱を果たせるのか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。