転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある   作:1番道路

22 / 30
青陵ブルーウイングスとの準々決勝は最終回へ。

二対一のリードを守り切れば、昨年の雪辱を果たせる。

しかし、青陵の四番打者が悠真の前に立ちはだかる。


第二十二話 雪辱達成、仲間と掴んだ勝利

 五回表。

 

 青陵ブルーウイングス、最後の攻撃。

 

 先頭打者は四番。

 

 俺はマウンド上で、相手の構えを観察していた。

 

(……やっぱり大きいな)

 

 小学四年生。

 

 俺より二学年上。

 

 身長だけでなく、肩幅や腕の太さも違う。

 

 これが成長期の身体能力の差というものだろう。

 

 もっとも、俺にはパワプロ育成システムがある。

 

 現在の球速は七十八キロ。

 

 コントロールはF55。

 

 この年齢では、間違いなく優秀な部類だ。

 

 さらに、前世で培った野球経験もある。

 

 十分に勝負できる。

 

「プレイ!」

 

 審判の声が響いた。

 

 中村先輩がサインを出す。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

 俺は頷いた。

 

 そして、投げる。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ストライク!」

 

(よし)

 

 いいコースだ。

 

 打者は見送った。

 

 二球目。

 

 今度は内角。

 

 少し高めを狙う。

 

 シュッ!

 

 カキンッ!

 

「ファウル!」

 

 追い込んだ。

 

 だが、ここからが難しい。

 

 四番打者だけあって、タイミングの取り方が上手い。

 

 球速には十分対応できているらしい。

 

 ならば。

 

(……コースで勝負だ)

 

 三球目。

 

 外角低め。

 

 ストライクゾーンの端を狙った。

 

 打者が踏み込む。

 

 バットが出る。

 

 カキィンッ!

 

(……打たれた!)

 

 鋭い打球が左中間へ飛んだ。

 

「センター!」

 

 外野手が走る。

 

 だが、打球はその前に落ちた。

 

 センター前ヒット。

 

 無死一塁。

 

(……さすがだな)

 

 俺は小さく息を吐いた。

 

 いい打者だった。

 

 こちらも悪い球ではなかったと思う。

 

 それでも打たれる。

 

 野球とは、そういうものだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 続く五番打者。

 

 青陵のベンチが何やら指示を出している。

 

(……バントか?)

 

 俺は少し警戒した。

 

 案の定、打者がバントの構えを見せる。

 

 初球。

 

 外角へストレート。

 

 コツンッ。

 

 打球は三塁線方向へ転がった。

 

「サード!」

 

 村田先輩が素早く前進する。

 

 そして、二塁へ送球した。

 

「アウト!」

 

 ……おお!

 

 一塁走者を二塁で封殺。

 

 打者走者は一塁に残ったが、これで一死一塁。

 

「ナイスサード!」

 

 俺が声をかけると、村田先輩が笑った。

 

「お前もちゃんとカバーしろよ!」

 

「はい!」

 

 まったくだ。

 

 投手も守備の一員。

 

 マウンドに突っ立っているだけではいけない。

 

 しかし、今のプレーは大きかった。

 

 得点圏への進塁を防げたのだから。

 

 続く六番打者。

 

 今度は初球から振ってきた。

 

 カンッ!

 

 打球はショート方向。

 

 藤原先輩が捕球する。

 

「大地!」

 

「おう!」

 

 二塁へ送球。

 

 大地がベースを踏む。

 

「アウト!」

 

 そして、一塁へ転送。

 

 ぱしんっ!

 

「アウト!」

 

 ダブルプレー!

 

 ……のはずだった。

 

 しかし、青陵の打者走者も足が速い。

 

 審判の判定は――。

 

「セーフ!」

 

 惜しい!

 

 併殺は完成しなかった。

 

 だが、二死一塁。

 

 あと一つ。

 

 あと一つアウトを取れば、俺たちの勝ちだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 七番打者。

 

 青陵のベンチから大きな声が飛んでくる。

 

「繋げ!」

 

「まだ終わってないぞ!」

 

 当然だろう。

 

 相手だって必死なのだ。

 

 俺は帽子のつばを軽く直した。

 

 中村先輩がタイムを要求し、マウンドへやってきた。

 

「朝倉、あと一人だ」

 

「はい!」

 

「球数もそろそろ多くなる。落ち着いていこう」

 

「分かりました!」

 

「変に力むなよ」

 

「はい!」

 

 中村先輩が笑った。

 

「お前なら大丈夫だ」

 

 ……ありがたい。

 

 こういう言葉は、本当に力になる。

 

 捕手がホームへ戻る。

 

 俺はボールを握った。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ストライク!」

 

 二球目。

 

 内角へ投げる。

 

 打者が振った。

 

 カンッ!

 

「ファウル!」

 

 ツーストライク。

 

 追い込んだ。

 

 三球目。

 

 少し外へ外す。

 

「ボール!」

 

 打者は手を出さなかった。

 

(……冷静だな)

 

 なかなかいい選球眼だ。

 

 さて、四球目。

 

 中村先輩のサインは、外角低めのストレート。

 

 俺は頷いた。

 

 左足を上げる。

 

 体重移動。

 

 腰の回転。

 

 そして、腕を振る。

 

 シュッ!

 

 打者が振った。

 

 カキンッ!

 

 打球は一二塁間へ。

 

(……まずい!)

 

 抜ければ一、三塁。

 

 場合によっては同点の危険もある。

 

 しかし。

 

「うおおっ!」

 

 大地が飛び込んだ。

 

 グローブを伸ばす。

 

 ぱしっ!

 

 捕った!

 

「大地!」

 

 俺が叫ぶ。

 

 大地は身体を起こし、素早く一塁へ投げた。

 

 ぱしんっ!

 

「アウト!」

 

 スリーアウト!

 

 試合終了!

 

「ゲームセット!」

 

 審判の声が響いた。

 

 その瞬間。

 

「よっしゃああああ!」

 

 桜台フェニックスのベンチが歓声に包まれた。

 

 桜台フェニックス、二対一。

 

 青陵ブルーウイングスに勝利!

 

 昨年の雪辱を果たしたのだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

「悠真あああ!」

 

 大地が駆け寄ってきた。

 

「勝ったぞ!」

 

「うん!」

 

「俺、最後捕ったぞ!」

 

「凄かった!」

 

「だろ!?」

 

 大地は満面の笑みだった。

 

 俺も思わず笑う。

 

 ……本当に凄かった。

 

 あの打球が抜けていれば、試合はまだ続いていたかもしれない。

 

 それを止めたのは大地だ。

 

 もちろん、大地だけではない。

 

 藤原先輩の投球。

 

 村田先輩の守備。

 

 中村先輩のリード。

 

 そして、全員で繋いだ勝ち越し点。

 

 誰か一人でも欠けていたら、勝てなかった可能性がある。

 

(……これが野球だよな)

 

 俺は改めて実感した。

 

 どれだけ凄い選手になっても、野球は一人ではできない。

 

 だからこそ、面白いのだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 その日の夜。

 

 俺は自室で育成システムを開いていた。

 

『ピロン♪』

 

――――――――――――――――――

 

【特別イベント達成!】

 

『雪辱の一戦』

 

【試合結果】

 

桜台フェニックス 2

青陵ブルーウイングス 1

 

勝利!

 

【個人評価】

 

打撃:A

守備:A

走塁:A

投球:A

 

総合評価:S

 

【達成報酬】

 

筋力ポイント+100

敏捷ポイント+150

技術ポイント+250

精神ポイント+200

 

強豪対戦ボーナス獲得

 

【特別報酬】

 

特殊能力『リベンジ○』取得のコツ

 

――――――――――――――――――

 

(……おお!)

 

 大量の経験点。

 

 しかも、特殊能力のコツまで獲得した。

 

 実にありがたい。

 

 だが、今回の試合で得た最大の収穫は、経験点ではなかった。

 

 仲間の成長。

 

 これに尽きる。

 

 去年負けた青陵に、今年は勝てた。

 

 しかも、俺一人の力ではなく、チーム全体で勝利を掴んだ。

 

 その事実が、何より嬉しかった。

 

 そして。

 

 俺たちの大会は、まだ終わっていない。

 

 次は準決勝。

 

 優勝まで、あと二勝。

 

(……よし)

 

 俺は画面を閉じた。

 

 史上最強の二刀流選手。

 

 その夢へ向かって、また一歩前進できた気がした。




第二十二話をお読みいただき、ありがとうございます。

桜台フェニックスは青陵ブルーウイングスに二対一で勝利。昨年の雪辱を果たしました。

次回、第二十三話「準決勝、新たな強豪との対決」。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。