転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある 作:1番道路
次の相手は、強力な打線を誇る南原ドラゴンズ。
七歳の二刀流・朝倉悠真は、新たな強敵に挑む。
準決勝。
なんともいい響きだ。
昨年、市内大会で優勝した俺たち桜台フェニックスは、今年も順調に勝ち進んでいた。
いや、順調というのは少し違うか。
一回戦の北町ライオンズ。
二回戦の白峰シャークス。
そして、準々決勝の青陵ブルーウイングス。
どの試合も決して簡単ではなかった。
特に青陵との試合は、最後まで勝敗の分からない接戦だった。
だが、俺たちは勝った。
去年の敗戦から学び、守備と走塁を強化してきた成果が、ようやく形になったのだ。
そして今日。
俺たちは次の対戦相手について、田島監督から説明を受けていた。
「次の相手は南原ドラゴンズだ」
南原ドラゴンズ。
初めて聞く名前だった。
「この大会では、ここまで三試合で二十点以上取っている」
「二十点!?」
大地が驚いた声を上げた。
周囲の選手たちもざわつく。
なるほど。
相当な強打のチームらしい。
「特に上位打線が強い。三番と四番はどちらも四年生で、長打力がある」
田島監督が続ける。
「ただし、打撃の強いチームだからといって、必要以上に怖がることはない。大切なのは無駄な走者を出さないことだ」
「はい!」
俺たちは声を揃えた。
確かに、その通りだ。
長打を打たれても、走者がいなければ失点は最小限で済む。
逆に、四球や失策で走者を溜めれば、一気に大量失点する危険がある。
少年野球では特に重要なことだろう。
(……面白そうだな)
俺は自然と笑みを浮かべた。
強打のチーム。
できれば投手として対戦してみたい。
◇ ◇ ◇
練習が始まった。
今日の重点項目は、外野からの中継プレーと走者を置いた場面での守備だった。
「悠真!」
「ん?」
大地が俺を呼んだ。
「今日は俺、絶対エラーしないからな!」
「頑張ろう!」
「お前もちゃんと投げろよ!」
「もちろん!」
大地は笑いながら守備位置へ戻っていった。
俺もショートへ向かう。
もっとも、現在の俺の肩力では、外野の深い位置から強烈な送球をすることは難しい。
だからこそ、中継プレーが重要になる。
俺たちは繰り返し、外野からの返球を受けて各塁へ送る練習を行った。
「ショート、中継!」
「はい!」
外野手が投げたボールを受け取る。
素早く身体を回転させ、三塁へ送球。
ぱしんっ!
「よし!」
山本コーチが頷いた。
「今のはいいぞ、朝倉!」
「ありがとうございます!」
すると、視界の隅に通知が現れた。
『ピロン♪』
――――――――――――――――――
【練習評価】
守備連携訓練
評価:A
【獲得経験点】
技術ポイント+12
敏捷ポイント+8
精神ポイント+5
【改善項目】
中継位置の判断速度
――――――――――――――――――
(……なるほど)
まだ改善の余地はあるらしい。
悪くない。
どれだけ成長しても、こうして課題が見つかるのはありがたい。
◇ ◇ ◇
練習終了後。
俺は田島監督に呼ばれた。
「朝倉、ちょっといいか」
「はい!」
「次の準決勝だが、お前には先発を任せようと思っている」
……おお!
「本当ですか!?」
「ああ。ただし、長いイニングを投げさせるつもりはない。今までどおり球数と身体の状態を優先する」
「分かりました!」
俺は大きく頷いた。
「藤原にも準備してもらう。お前が投げ終わったら、いつもどおりショートへ回ってもらう予定だ」
「はい!」
なるほど。
先発は俺。
その後は藤原先輩が投げる。
悪くない継投だ。
もちろん、藤原先輩は本来チームの主力投手である。
俺が先発するからといって、エースの立場が変わるわけではない。
今の俺は、短いイニングを任せてもらう投手だ。
それでも十分に嬉しかった。
「それから、打順は三番だ」
「はい!」
「打撃でも期待してるぞ」
「頑張ります!」
田島監督は満足そうに頷いた。
……よし。
投手として先発。
打者として三番。
まさに二刀流ではないか。
◇ ◇ ◇
その日の夜。
俺は育成システムを開いていた。
――――――――――――――――――
【朝倉悠真】
年齢:7歳
学年:小学2年生
【投手能力】
球速:78km/h
コントロール:F55
スタミナ:G
【野手能力】
ミート:F40
パワー:G20
【特殊能力】
アベレージヒッター
対エース○
【取得可能なコツ】
粘り打ち
リベンジ○
――――――――――――――――――
(……さて)
経験点は十分にある。
だが、身体能力には成長段階による制限がある。
七歳になったことで上限は緩和されたものの、無理に能力を伸ばせばいいというものでもない。
俺は少し考えた。
今回の相手は強打のチーム。
ならば、重要なのはコントロールだろう。
四球を減らし、打者が打ちにくいコースへ投げ分ける。
それだけでも失点する危険は大きく減る。
(……よし)
俺は技術ポイントと精神ポイントを消費し、コントロールを強化することにした。
『ピロン♪』
【コントロールがF55からF58になりました】
(おお!)
身体の感覚が少し変わった。
指先の動きが、以前より繊細になった気がする。
もちろん、これで全ての球を狙った場所へ投げられるわけではない。
実際の投球で再現できるようにするには、練習が必要だ。
だが、確かな前進だった。
俺は満足して画面を閉じた。
準決勝。
相手は強打の南原ドラゴンズ。
そして、俺は先発投手。
(……楽しみだな)
七歳の二刀流。
その実力を、また一つ証明する機会がやってきた。
第二十三話をお読みいただき、ありがとうございます。
準決勝の相手は強打の南原ドラゴンズ。悠真は再び先発投手を任されました。
次回、第二十四話「強打のドラゴンズ、七歳の先発投手」。